上 下
31 / 82
魔法の学園

明日の授業

しおりを挟む
「眷属獣?」
「そう、明日その授業があるのですが、まだ未契約の人は契約からなので」
「まず、何それなんだけど」
「この世界に漂う神の精神体カケラと自分の精神体をくっつけて作るお手伝いさんですわ。まあだいたい小動物の姿になるのですが」

 お風呂上がりソファーでほわっとしているところにイソラが来て、隣に座り明日の授業の話を始める。くっついていたヨウはべりっとはがされた。

「クラスで未契約は結愛とすずだけです。あ、明日なら、ヨウも、ということになるのかしら」
「ボクはもう契約してる」
「まあ、そうでしょうね」
「そうなんだ」
「あ、私はちなみに――」

 立ち上がりおもむろに手を前に伸ばす。

「この子が私の眷属獣。アーロ」

 彼女の腕に、猛禽類のとがった嘴と脚の爪をもった鳥がとまる。

「とても飛ぶのがはやい子なんですが、迷子になりやすくて」

 困った困ったとイソラはアーロの頭を指先でつんつんしていた。

「話したりは出来ないの?」
「えぇ、でも言っている言葉はわかってくれるので、アーロ、クッキーを一枚ここに」

 腕から飛び立つとアーロはクッキーを探して部屋の中をうろうろする。見つけたのか、下降していくと、ガシャーンとお皿かなにかがひっくり返る音がした。

「ついでに、おドジさんで……」
「あ、あはは」

 戻ってきたアーロの足にはきちんと一枚クッキーがあった。

「いい子なのですが少し扱いづらいですわね」

 そういうと、拗ねたように首をふり、アーロは消えた。ソファーに座り直しアーロから受け取ったクッキーをイソラは口に運ぶ。
 彼女がかぷりと噛みつくと、下半分がぽろりと服の上に落ちた。

「はぁ、まあこんな感じですわ。すずの眷属獣は可愛げのある子だとよいですね」
「アーロも可愛いと思うけど」

 ふわっとした胸の羽毛。くるりとした丸い目。凛々しい横顔。

「ま、まあアーロと私は一心同体ですから」

 そんなことをいいながら、イソラは落ちたクッキーの半分を赤い顔をしながら口に運んでいた。

「ヨウの眷属獣はどんなの?」
「ん?」

 床に座って拗ねていたヨウはぷいっと振り向いた顔をまた見えないようにそっぽむける。

「すずの眷属獣がいない時だけ」
「え?」

 彼はそう言って、立ち上がり自分の部屋に向かった。

「どういう意味だろう?」
「さぁ?」

 いない時だけって、今じゃないのかな? 契約していないんだから。

「さぁ、そろそろ寝ましょうか」
「そうだね。イソラ、ありがとう。色々教えてくれて」
「ま、私達に礼など不要ですわ。師匠なのですから」
「ふふふ」

 一人で悩まなくていい事が、とても心地よい。この世界いまを守る為なら私、聖女になってもいいかもしれない。
 一人じゃ何も出来ないけれど。

「どうしました?」
「ううん、何でもない。お休みなさい。イソラ」
「お休みなさい、すず」

 ヨウの部屋の前に立ち、ノックとおやすみを言って私は自分の部屋に行き、眠った。

 また、夢を見た。テトの横に、結愛が立ち何かを言う場面だった。
 私は誰かに抑えられて、動けない。何も出来ない。

 ふっと目が覚めると、一筋涙が流れ落ちた。
しおりを挟む

処理中です...