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第四章・風の精霊の国
104話・私の力は?
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この人、何て……?
「何でボク達がタカマガハラに行くのを知ってるのかな?」
「あ、やっぱり行くんすね?」
にこにこしながら、カマをかけてきたのだろうか?
「僕の行き先がタカマガハラなんで、一緒に連れていってもらいたいなーと思ってたんすけどね。良かった良かった」
「連れていくなんて言ってないよ?」
「いいんすか? 僕、色々知ってる事があるんすけどね。例えば、リサちゃんに教えたことの詳細や、タカマガハラへの行き方、異世界召喚のもとの世界帰還のやり方、なんかね」
アリスとルードが、ピクリと反応する。
私も、最後のは知ってしまっているんだけれど……。驚かないと、変に思われるかな。
「今、教えてくれるつもりは――」
「ないっすねー。ギブアンドテイクっすよ」
「怪しさしかありません。信じなくてもいいのでは」
ルードが、きっぱりと言うとスペードは意地悪な笑みを浮かべた。
「それじゃあ、信じてもらえるように、ルード君が秘密にしてることを話してあげようっすか? それともお兄さんへのコンプレックスのお話でも――」
「それは脅しですか?」
ルードが、困惑している。出てくるはずのない、兄というフレーズがスペードの口から飛び出したからだろうか。
「アリスト君がリサちゃんに隠してる事、リサちゃんがアリスト君に隠してる事――」
帽子で隠して見えないはずのスペードの視線を感じぞくりとする。まるで全てを見透かされているような、そんな気配がした。
私が隠している事……。ぎゅっと、握りしめた手は少し震えていた。
「わかったよ。人の秘密はその人の大事な部分だ。勝手に人前にさらさないでくれるかい?」
アリスが、スペードの同行を認めた。
本当かどうかわからないけれど、心の中を読めるって、まるで精霊達みたい……。でも、彼らと違って、悪意をもって心の中を他人に話そうとするスペードは、すごく怖い。
「良かったっす。僕もあまり気分がいいものじゃないっすからね」
口調が軽い感じに戻ったスペードは、口元もいつもの様に戻した。
「それじゃあ、ご一緒させてもらうお礼に、一個教えておきますね」
え、どれを教えてくれるつもりなの。まさか、逆転の――。
にやりと、スペードは笑いながら続けた。
「精霊達が魔物になるというお話です」
違ったことに、私は安堵の表情を浮かべてしまった。
アリスが、私の顔をじっと見ていた事に気付かずに……。
「昔のこの世界には、そもそも魔物はいなかったっす。この世界の住人皆が、聖なる力と魔なる力、両方を持っていて、バランスをとっていたんす。魔力で魔法を使ったら、聖なる力で浄化する。そうすることで精霊は精霊でいられるんす。精霊は魔力も好きですが、聖なる力も好きなんすよね」
え、ちょっと待って? 聖なる力で浄化って? 私10なんですけど。
「ところが今は、聖なる力を持つ者が極端に産まれなくなり、精霊が浄化されずに魔獣や濃い魔力の体を持った魔物へと変貌したっすよ」
「待って下さい、その話ですと、浄化の魔法は聖なる力を使うということですよね?」
「そうっすね」
「リサ様は聖なる力が……10なのですが、それでも使える魔法なのですか?」
なんだか、ちょっと遠慮させてしまった。ごめんね、10で……。
「10……。それは、いつわかった話っすか?」
「こちらの世界に来てすぐです」
「測定方法が間違ってたか、器具かなんかが壊れてたんじゃないっすか?」
「そんなはずは!」
「んー、10はありえないっすよ。彼女の聖なる力、魔なる力はどちらも1000かそれ以上じゃないっすかねー?」
「なっ!」
「見えるんすよね? リサちゃん。そして浄化の魔法が使える。それならそれ位あってもおかしくないっすよ」
はい? 何て言いました? この人。
「あ、あぁ、そうか。来たときは、10だったのかもしれませんっすね。それから何かした事は、なかったっすか?」
え、あの後って……?
「あっと、一つだけって言ったのに、これ以上は黙秘するっす」
そう言って、ぎゅっと帽子を押さえたスペードは喋るのを止めた。
「リサちゃん」
アリスがこちらを見ている。彼も同じ事を思い出しているのだろうか?
あの後、……そうだ、あの後、アリスに出会って、マタタビのお礼にこの指輪を貰って――。
でも、魔法の練習で、誰も反応してくれなかったのは、何故?
あの時、すでに精霊の姿は見えていた。自分の力がますますわからなくなる。
聞きたいけれど、口をきつく結んでしまったスペードからはもう何も聞くことは出来なさそうだった。
「何でボク達がタカマガハラに行くのを知ってるのかな?」
「あ、やっぱり行くんすね?」
にこにこしながら、カマをかけてきたのだろうか?
「僕の行き先がタカマガハラなんで、一緒に連れていってもらいたいなーと思ってたんすけどね。良かった良かった」
「連れていくなんて言ってないよ?」
「いいんすか? 僕、色々知ってる事があるんすけどね。例えば、リサちゃんに教えたことの詳細や、タカマガハラへの行き方、異世界召喚のもとの世界帰還のやり方、なんかね」
アリスとルードが、ピクリと反応する。
私も、最後のは知ってしまっているんだけれど……。驚かないと、変に思われるかな。
「今、教えてくれるつもりは――」
「ないっすねー。ギブアンドテイクっすよ」
「怪しさしかありません。信じなくてもいいのでは」
ルードが、きっぱりと言うとスペードは意地悪な笑みを浮かべた。
「それじゃあ、信じてもらえるように、ルード君が秘密にしてることを話してあげようっすか? それともお兄さんへのコンプレックスのお話でも――」
「それは脅しですか?」
ルードが、困惑している。出てくるはずのない、兄というフレーズがスペードの口から飛び出したからだろうか。
「アリスト君がリサちゃんに隠してる事、リサちゃんがアリスト君に隠してる事――」
帽子で隠して見えないはずのスペードの視線を感じぞくりとする。まるで全てを見透かされているような、そんな気配がした。
私が隠している事……。ぎゅっと、握りしめた手は少し震えていた。
「わかったよ。人の秘密はその人の大事な部分だ。勝手に人前にさらさないでくれるかい?」
アリスが、スペードの同行を認めた。
本当かどうかわからないけれど、心の中を読めるって、まるで精霊達みたい……。でも、彼らと違って、悪意をもって心の中を他人に話そうとするスペードは、すごく怖い。
「良かったっす。僕もあまり気分がいいものじゃないっすからね」
口調が軽い感じに戻ったスペードは、口元もいつもの様に戻した。
「それじゃあ、ご一緒させてもらうお礼に、一個教えておきますね」
え、どれを教えてくれるつもりなの。まさか、逆転の――。
にやりと、スペードは笑いながら続けた。
「精霊達が魔物になるというお話です」
違ったことに、私は安堵の表情を浮かべてしまった。
アリスが、私の顔をじっと見ていた事に気付かずに……。
「昔のこの世界には、そもそも魔物はいなかったっす。この世界の住人皆が、聖なる力と魔なる力、両方を持っていて、バランスをとっていたんす。魔力で魔法を使ったら、聖なる力で浄化する。そうすることで精霊は精霊でいられるんす。精霊は魔力も好きですが、聖なる力も好きなんすよね」
え、ちょっと待って? 聖なる力で浄化って? 私10なんですけど。
「ところが今は、聖なる力を持つ者が極端に産まれなくなり、精霊が浄化されずに魔獣や濃い魔力の体を持った魔物へと変貌したっすよ」
「待って下さい、その話ですと、浄化の魔法は聖なる力を使うということですよね?」
「そうっすね」
「リサ様は聖なる力が……10なのですが、それでも使える魔法なのですか?」
なんだか、ちょっと遠慮させてしまった。ごめんね、10で……。
「10……。それは、いつわかった話っすか?」
「こちらの世界に来てすぐです」
「測定方法が間違ってたか、器具かなんかが壊れてたんじゃないっすか?」
「そんなはずは!」
「んー、10はありえないっすよ。彼女の聖なる力、魔なる力はどちらも1000かそれ以上じゃないっすかねー?」
「なっ!」
「見えるんすよね? リサちゃん。そして浄化の魔法が使える。それならそれ位あってもおかしくないっすよ」
はい? 何て言いました? この人。
「あ、あぁ、そうか。来たときは、10だったのかもしれませんっすね。それから何かした事は、なかったっすか?」
え、あの後って……?
「あっと、一つだけって言ったのに、これ以上は黙秘するっす」
そう言って、ぎゅっと帽子を押さえたスペードは喋るのを止めた。
「リサちゃん」
アリスがこちらを見ている。彼も同じ事を思い出しているのだろうか?
あの後、……そうだ、あの後、アリスに出会って、マタタビのお礼にこの指輪を貰って――。
でも、魔法の練習で、誰も反応してくれなかったのは、何故?
あの時、すでに精霊の姿は見えていた。自分の力がますますわからなくなる。
聞きたいけれど、口をきつく結んでしまったスペードからはもう何も聞くことは出来なさそうだった。
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