113 / 189
第四章・風の精霊の国
106話・お外で泊まる前編
しおりを挟む
「ここに、洞窟があるんだ」
まるで、キャンプみたい。木の国までまだ距離があるみたいで、ぴーちゅん達が飛べなくなる夜を過ごす為の場所に私達は降りた。
ぴーちゅんのもふから、大きな布を取り出し集めた葉っぱの上にかける。
ルードが、木の魔法で植物を成長させ、色んな果物を実らせる。便利だ!! 家庭菜園で是非欲しい魔法だ。
そう言うと、ルードは笑っていた。次の国で契約頑張って下さい、と。
でも、契約しても、言うことを聞かない精霊がいることを思い知らされた私は、他の精霊さんも、同じ様に裏切られないか心配である。
木の精霊さんは優しい子でありますように……。
水の魔法を使って、川魚を捕らえ、石を積んだかまどで調理する。火の魔法で、楽チン火起こし。
意外だったのは、アリスとスペードが一緒に行動していることだった。ケンカにならなければいいけれど。
魔法で快適キャンプを楽しみながら、私達は夜が明けるのを待つ。
ーーー
むくり
何時だろう?
時間なんてわからないけれど、辺りの暗さからまだ夜中だと思う。
ズキリズキリと、頭に痛みが走った。真夜中に目が覚めたからかな。
もそもそと、寝てる場所から抜け出して、外に出るとアリスとルードが火の側で、座っていた。
ルードは目を閉じている。寝ているのかな?
私だけ、中で横になって休ませて貰うのは悪いような気がする。
「アリスちゃん、交代で起きてるの?」
ピクリと耳を動かしてアリスが振り向いた。
「あれ、リサちゃん。起きちゃったの?」
「うん、少しなら交代しようか?」
隣に座ると、アリスが肩にかけていた布を私にかけてくれた。
「大丈夫。ボク夜の方が得意だから」
ふにゃりと笑いながら、私の頭をぽんぽんと撫でた。
して貰えると思ってなかったから、嬉しかったり――。顔が少しだけ赤くなった気がする。
「スペードさんは?」
「少し用事って言って、出てるよ。朝までには戻るって」
え、こんなとこで用事って何やってるんだろう。むしろ、いったい何があるんだろう……。
「怪しすぎる――」
私がそう言うと、アリスは苦笑いを浮かべていた。
「彼は、確かに怪しいけど、嘘をついてはいない。たぶん、本当のことだ」
二人で行動していた時に何か話していたのかな。
「自分の心を他人に握られるのが、こんなに怖いんだね」
アリスは呟き続ける。
「他人から知らされる位なら――」
そう言って、アリスが目を閉じる。何か、決めかねているんだろうか?
少しの沈黙のあと、目を開き私をじっと正面に見据える。もう一度、横を向いたと思ったら、肩を抱き寄せられ私の頭とアリスの肩がくっつく。
ルードに聞かれないようにだろうか、小さな声で彼は言う。
「ごめんね。ボクは異世界に、元の世界に帰る方法を一つ、前から知ってるんだ」
まるで、キャンプみたい。木の国までまだ距離があるみたいで、ぴーちゅん達が飛べなくなる夜を過ごす為の場所に私達は降りた。
ぴーちゅんのもふから、大きな布を取り出し集めた葉っぱの上にかける。
ルードが、木の魔法で植物を成長させ、色んな果物を実らせる。便利だ!! 家庭菜園で是非欲しい魔法だ。
そう言うと、ルードは笑っていた。次の国で契約頑張って下さい、と。
でも、契約しても、言うことを聞かない精霊がいることを思い知らされた私は、他の精霊さんも、同じ様に裏切られないか心配である。
木の精霊さんは優しい子でありますように……。
水の魔法を使って、川魚を捕らえ、石を積んだかまどで調理する。火の魔法で、楽チン火起こし。
意外だったのは、アリスとスペードが一緒に行動していることだった。ケンカにならなければいいけれど。
魔法で快適キャンプを楽しみながら、私達は夜が明けるのを待つ。
ーーー
むくり
何時だろう?
時間なんてわからないけれど、辺りの暗さからまだ夜中だと思う。
ズキリズキリと、頭に痛みが走った。真夜中に目が覚めたからかな。
もそもそと、寝てる場所から抜け出して、外に出るとアリスとルードが火の側で、座っていた。
ルードは目を閉じている。寝ているのかな?
私だけ、中で横になって休ませて貰うのは悪いような気がする。
「アリスちゃん、交代で起きてるの?」
ピクリと耳を動かしてアリスが振り向いた。
「あれ、リサちゃん。起きちゃったの?」
「うん、少しなら交代しようか?」
隣に座ると、アリスが肩にかけていた布を私にかけてくれた。
「大丈夫。ボク夜の方が得意だから」
ふにゃりと笑いながら、私の頭をぽんぽんと撫でた。
して貰えると思ってなかったから、嬉しかったり――。顔が少しだけ赤くなった気がする。
「スペードさんは?」
「少し用事って言って、出てるよ。朝までには戻るって」
え、こんなとこで用事って何やってるんだろう。むしろ、いったい何があるんだろう……。
「怪しすぎる――」
私がそう言うと、アリスは苦笑いを浮かべていた。
「彼は、確かに怪しいけど、嘘をついてはいない。たぶん、本当のことだ」
二人で行動していた時に何か話していたのかな。
「自分の心を他人に握られるのが、こんなに怖いんだね」
アリスは呟き続ける。
「他人から知らされる位なら――」
そう言って、アリスが目を閉じる。何か、決めかねているんだろうか?
少しの沈黙のあと、目を開き私をじっと正面に見据える。もう一度、横を向いたと思ったら、肩を抱き寄せられ私の頭とアリスの肩がくっつく。
ルードに聞かれないようにだろうか、小さな声で彼は言う。
「ごめんね。ボクは異世界に、元の世界に帰る方法を一つ、前から知ってるんだ」
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる