114 / 189
第四章・風の精霊の国
107話・お外で泊まる後編
しおりを挟む
「えっと……」
それって、どういう意味? 私の心臓もドキリと跳ねる。アリスも知っていて、黙っていた?
静かに、アリスは続ける。
「逆転の儀って言ってね。召喚者が行う儀式なんだ。これを行えば、リサちゃんは家に帰ることが出来るんだ」
ごめんなさい、私も知ってます……。私は膝の上で手をぎゅっと握りしめた。少し湿っているのは、冷や汗だろうか。
「ただね、これは兄上がやらないと成立しないし、カナまで一緒に戻ってしまうから。ボクが言ってもきっと断られる」
そっか、私だけじゃなく、カナちゃんも一緒に戻ることになるのか。それは国としても、カトル王子としても避けたい事態だろう。カトル王子が私まで帰れないと言ったのは、そういうことだったからなのかな。
「召喚の儀を行った代償で、失ってしまった魔力と最愛の人の記憶。それをカナに求めているからね。兄上は――」
……それって、つまり。え、凄く重要な事をいま聞かされてます!?
召喚には、代償が必要なの? なんで王子様にそんな役を……。ってそうか、他の人が使うと、逆転の儀の主導権がその人に握られるのか。
「第一王子なのに国を守るための魔力を持たなくなってしまった兄上は、カナと一緒になることが絶対に必要なんだ。だから、リサちゃんだけが帰る方法を探そうと、そう思ってた」
そっか、カナちゃんと私はセットだから、一人だけ戻る方法をってことだったんだ。なんだ、そっか……。
少しだけ期待していた言葉と違っていて、胸がチクりとする。
私が帰りたくないと言ってしまうとカナちゃんまで帰られなくなる。それなら私も、探さなきゃ。一人だけでも、帰れる方法を――。そして、伝えなきゃ、アリスに私の気持ちを――。
「アリスちゃん、私ね――」
「リサちゃん、ボクはね――」
声が重なった、その時だった。
「リサ様、アリスト様――」
すっと、ルードが目を開く。
「交代します」
それだけ言って、彼は視線を外に向けていた。
聞いていたんだろうか――。
「うん、ボクも休むから。はい、リサちゃんも横になってきちんと休んでおいてね」
「はい……」
話が中途半端で、モヤモヤする。結局、私は彼に自分の今の気持ちを伝えることが出来なかった。
洞窟の中に戻り、葉っぱのベッドに横になる。
ズキズキと頭と心が痛む。
ちゃんと、伝えたい。
たとえ、私の一方通行な気持ちだったとしても。
私は、いつ彼に伝えようか考えながら、痛む頭と心を押さえて眠りに戻った。
ちゃんと寝て、足手まといにならないように。それから、カナちゃんだけを元の世界に戻す方法を探さないと。
私の中で、色々な考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。
正しい答えは、あるのかな……。目を閉じても、考えはぐるぐると頭の中を回り続ける。
「そうだ……、魔物や魔獣がもとは精霊さんなら、予言の魔物も元は精霊さんだったのかな――」
スペードが言った言葉が浮かび、考えることが増えた。
眠れなくなりそう。寝ないと、と思っているのに、眠れない。
「カトル王子の最愛の人の記憶……」
次々に浮かんでくる考えに、私は身悶える。
よし、羊を数えよう! そう決めて、数え出した。
羊が一匹、羊が二匹……。私はどこまで数えられたかな?
気がつくと、朝日が入り口から差し込んでいた。
それって、どういう意味? 私の心臓もドキリと跳ねる。アリスも知っていて、黙っていた?
静かに、アリスは続ける。
「逆転の儀って言ってね。召喚者が行う儀式なんだ。これを行えば、リサちゃんは家に帰ることが出来るんだ」
ごめんなさい、私も知ってます……。私は膝の上で手をぎゅっと握りしめた。少し湿っているのは、冷や汗だろうか。
「ただね、これは兄上がやらないと成立しないし、カナまで一緒に戻ってしまうから。ボクが言ってもきっと断られる」
そっか、私だけじゃなく、カナちゃんも一緒に戻ることになるのか。それは国としても、カトル王子としても避けたい事態だろう。カトル王子が私まで帰れないと言ったのは、そういうことだったからなのかな。
「召喚の儀を行った代償で、失ってしまった魔力と最愛の人の記憶。それをカナに求めているからね。兄上は――」
……それって、つまり。え、凄く重要な事をいま聞かされてます!?
召喚には、代償が必要なの? なんで王子様にそんな役を……。ってそうか、他の人が使うと、逆転の儀の主導権がその人に握られるのか。
「第一王子なのに国を守るための魔力を持たなくなってしまった兄上は、カナと一緒になることが絶対に必要なんだ。だから、リサちゃんだけが帰る方法を探そうと、そう思ってた」
そっか、カナちゃんと私はセットだから、一人だけ戻る方法をってことだったんだ。なんだ、そっか……。
少しだけ期待していた言葉と違っていて、胸がチクりとする。
私が帰りたくないと言ってしまうとカナちゃんまで帰られなくなる。それなら私も、探さなきゃ。一人だけでも、帰れる方法を――。そして、伝えなきゃ、アリスに私の気持ちを――。
「アリスちゃん、私ね――」
「リサちゃん、ボクはね――」
声が重なった、その時だった。
「リサ様、アリスト様――」
すっと、ルードが目を開く。
「交代します」
それだけ言って、彼は視線を外に向けていた。
聞いていたんだろうか――。
「うん、ボクも休むから。はい、リサちゃんも横になってきちんと休んでおいてね」
「はい……」
話が中途半端で、モヤモヤする。結局、私は彼に自分の今の気持ちを伝えることが出来なかった。
洞窟の中に戻り、葉っぱのベッドに横になる。
ズキズキと頭と心が痛む。
ちゃんと、伝えたい。
たとえ、私の一方通行な気持ちだったとしても。
私は、いつ彼に伝えようか考えながら、痛む頭と心を押さえて眠りに戻った。
ちゃんと寝て、足手まといにならないように。それから、カナちゃんだけを元の世界に戻す方法を探さないと。
私の中で、色々な考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。
正しい答えは、あるのかな……。目を閉じても、考えはぐるぐると頭の中を回り続ける。
「そうだ……、魔物や魔獣がもとは精霊さんなら、予言の魔物も元は精霊さんだったのかな――」
スペードが言った言葉が浮かび、考えることが増えた。
眠れなくなりそう。寝ないと、と思っているのに、眠れない。
「カトル王子の最愛の人の記憶……」
次々に浮かんでくる考えに、私は身悶える。
よし、羊を数えよう! そう決めて、数え出した。
羊が一匹、羊が二匹……。私はどこまで数えられたかな?
気がつくと、朝日が入り口から差し込んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる