私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?

花月夜れん

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第四章・風の精霊の国

107話・お外で泊まる後編

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「えっと……」

 それって、どういう意味? 私の心臓もドキリと跳ねる。アリスも知っていて、黙っていた?
 静かに、アリスは続ける。

「逆転の儀って言ってね。召喚者が行う儀式なんだ。これを行えば、リサちゃんは家に帰ることが出来るんだ」

 ごめんなさい、私も知ってます……。私は膝の上で手をぎゅっと握りしめた。少し湿っているのは、冷や汗だろうか。

「ただね、これは兄上がやらないと成立しないし、カナまで一緒に戻ってしまうから。ボクが言ってもきっと断られる」

 そっか、私だけじゃなく、カナちゃんも一緒に戻ることになるのか。それは国としても、カトル王子としても避けたい事態だろう。カトル王子が私まで帰れないと言ったのは、そういうことだったからなのかな。

「召喚の儀を行った代償で、失ってしまった魔力と最愛の人の記憶。それをカナに求めているからね。兄上は――」

 ……それって、つまり。え、凄く重要な事をいま聞かされてます!?
 召喚には、代償が必要なの? なんで王子様にそんな役を……。ってそうか、他の人が使うと、逆転の儀の主導権がその人に握られるのか。

「第一王子なのに国を守るための魔力を持たなくなってしまった兄上は、カナと一緒になることが絶対に必要なんだ。だから、リサちゃんだけが帰る方法を探そうと、そう

 そっか、カナちゃんと私はセットだから、一人だけ戻る方法をってことだったんだ。なんだ、そっか……。
 少しだけ期待していた言葉と違っていて、胸がチクりとする。
 私が帰りたくないと言ってしまうとカナちゃんまで帰られなくなる。それなら私も、探さなきゃ。一人だけでも、帰れる方法を――。そして、伝えなきゃ、アリスに私の気持ちを――。

「アリスちゃん、私ね――」
「リサちゃん、ボクはね――」

 声が重なった、その時だった。

「リサ様、アリスト様――」

 すっと、ルードが目を開く。

「交代します」

 それだけ言って、彼は視線を外に向けていた。
 聞いていたんだろうか――。

「うん、ボクも休むから。はい、リサちゃんも横になってきちんと休んでおいてね」
「はい……」

 話が中途半端で、モヤモヤする。結局、私は彼に自分の今の気持ちを伝えることが出来なかった。
 洞窟の中に戻り、葉っぱのベッドに横になる。

 ズキズキと頭と心が痛む。
 ちゃんと、伝えたい。
 たとえ、私の一方通行な気持ちだったとしても。

 私は、いつ彼に伝えようか考えながら、痛む頭と心を押さえて眠りに戻った。
 ちゃんと寝て、足手まといにならないように。それから、カナちゃんだけを元の世界に戻す方法を探さないと。
 私の中で、色々な考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。
 正しい答えは、あるのかな……。目を閉じても、考えはぐるぐると頭の中を回り続ける。

「そうだ……、魔物や魔獣がもとは精霊さんなら、予言の魔物も元は精霊さんだったのかな――」

 スペードが言った言葉が浮かび、考えることが増えた。
 眠れなくなりそう。寝ないと、と思っているのに、眠れない。

「カトル王子の最愛の人の記憶……」

 次々に浮かんでくる考えに、私は身悶える。
 よし、羊を数えよう! そう決めて、数え出した。
 羊が一匹、羊が二匹……。私はどこまで数えられたかな?

 気がつくと、朝日が入り口から差し込んでいた。
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