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第五章・木の精霊の国
123話・羽化って何ですか?!
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「アリス……ちゃん……」
「リサちゃん!」
「泣いてるの……?」
私は、目の前にいるアリスの頬に手を伸ばす。涙が流れたようなあとが見えた。
「私は大丈夫だよ?」
力なく笑って見せると、そっと手を握り返してくれた。
私はゆっくりと起き上がり、自分の状態を確かめる。すると、両方の腕に見覚えのない腕輪がはまっていた。何……これ?
「ここは?」
「命の木のウロにある、他種族用の簡易宿だそうです」
ルードが反対側から声をかけてきた。彼も疲れた顔をしている。ごめんね、心配かけてしまったかな。
「さすがリサっすね! おめでとうっす」
スペードが少し離れた場所から話す。彼はニコニコ笑っている。
おめでとうっていったい、何の事?
「羽化したっすよ」
はっ? 羽化?!
私は急いで、自分の背中を確認するが羽などはえていない。いや、そもそも私、虫じゃないし!
「その二本の腕輪」
カランと揺れる腕輪をスペードは指差す。
「右腕の白いのが聖なる力の王、左の黒いのが魔なる力の王の証。リサは、聖王兼魔王になったんす。その腕輪、この世界では三人しか持ったことがない貴重品っすよ! リサは四人目っす!」
まって! 何それ、聖女、魔女からランクアップ? まさかの王様? いやいやいや! 魔王とか魔女よりさらに不穏なんですけど。
「あの、話が見えません! 私は普通のふっつーーのただの一般人です!」
帽子を押さえながら、スペードは続ける。
「まあ、力の上限が解放されたってだけで、心配しなくても特にこう何かがかわるわけじゃないっすよ。これからも順調に育って下さいっす」
「リサちゃん」
アリスが、頭に手を回してゆっくりと撫でてくれる。何度も何度も優しく。
「落ち着いて」
そう言われて、私はこくりと頷いた。
頭の中を整理しないと、訳がわからなすぎて爆発しそうだしね。
けれど、落ち着こうと言ったアリスは冷たいオーラを発しているように感じる。
「それで、スペードはあの虫達をわざと連れてきたのかい?」
アリスは凍るように冷たい声でスペードに問う。
ニコニコ笑っているスペードは、帽子を軽く片手で押さえて答えた。
「それは違うっすよ。アリスト君も気がついているんすよね? 魔物は浄化して欲しくて聖なる力に引かれる。光に向かう、虫の様に。僕はただそのスピードをコントロールしてるだけっすよ。被害を少なくする為に――。正しい道に進むようにね」
「それがリサちゃんにとって最悪の結果になったとしてもか!?」
アリスの強い問い掛けに、スペードは一切口元を崩さない。
「そうっす。力を引き出さないと、魔物に殺されるのはリサだけじゃなくなるっすからね。頑張って貰わないと――」
「ボクが、強くなる! リサちゃんはボクが守る!」
アリスがそう力強くいうと、スペードの口元が少しだけ歪んだ。その感情は、憎悪? 嫌悪? それとも――。
「子供の戯れ言っすね。その指輪があったところで浄化魔法が使えない君とリサとの力の差は歴然じゃないっすか。しかも、アリスト君は今回、無力な猫になって――。守る? どの口が――」
「それでも、ボクは――。彼女を守る剣になる! 決めたんだ」
アリスの言葉が嬉しくて、私の心に深く突き刺さった。
「リサちゃん!」
「泣いてるの……?」
私は、目の前にいるアリスの頬に手を伸ばす。涙が流れたようなあとが見えた。
「私は大丈夫だよ?」
力なく笑って見せると、そっと手を握り返してくれた。
私はゆっくりと起き上がり、自分の状態を確かめる。すると、両方の腕に見覚えのない腕輪がはまっていた。何……これ?
「ここは?」
「命の木のウロにある、他種族用の簡易宿だそうです」
ルードが反対側から声をかけてきた。彼も疲れた顔をしている。ごめんね、心配かけてしまったかな。
「さすがリサっすね! おめでとうっす」
スペードが少し離れた場所から話す。彼はニコニコ笑っている。
おめでとうっていったい、何の事?
「羽化したっすよ」
はっ? 羽化?!
私は急いで、自分の背中を確認するが羽などはえていない。いや、そもそも私、虫じゃないし!
「その二本の腕輪」
カランと揺れる腕輪をスペードは指差す。
「右腕の白いのが聖なる力の王、左の黒いのが魔なる力の王の証。リサは、聖王兼魔王になったんす。その腕輪、この世界では三人しか持ったことがない貴重品っすよ! リサは四人目っす!」
まって! 何それ、聖女、魔女からランクアップ? まさかの王様? いやいやいや! 魔王とか魔女よりさらに不穏なんですけど。
「あの、話が見えません! 私は普通のふっつーーのただの一般人です!」
帽子を押さえながら、スペードは続ける。
「まあ、力の上限が解放されたってだけで、心配しなくても特にこう何かがかわるわけじゃないっすよ。これからも順調に育って下さいっす」
「リサちゃん」
アリスが、頭に手を回してゆっくりと撫でてくれる。何度も何度も優しく。
「落ち着いて」
そう言われて、私はこくりと頷いた。
頭の中を整理しないと、訳がわからなすぎて爆発しそうだしね。
けれど、落ち着こうと言ったアリスは冷たいオーラを発しているように感じる。
「それで、スペードはあの虫達をわざと連れてきたのかい?」
アリスは凍るように冷たい声でスペードに問う。
ニコニコ笑っているスペードは、帽子を軽く片手で押さえて答えた。
「それは違うっすよ。アリスト君も気がついているんすよね? 魔物は浄化して欲しくて聖なる力に引かれる。光に向かう、虫の様に。僕はただそのスピードをコントロールしてるだけっすよ。被害を少なくする為に――。正しい道に進むようにね」
「それがリサちゃんにとって最悪の結果になったとしてもか!?」
アリスの強い問い掛けに、スペードは一切口元を崩さない。
「そうっす。力を引き出さないと、魔物に殺されるのはリサだけじゃなくなるっすからね。頑張って貰わないと――」
「ボクが、強くなる! リサちゃんはボクが守る!」
アリスがそう力強くいうと、スペードの口元が少しだけ歪んだ。その感情は、憎悪? 嫌悪? それとも――。
「子供の戯れ言っすね。その指輪があったところで浄化魔法が使えない君とリサとの力の差は歴然じゃないっすか。しかも、アリスト君は今回、無力な猫になって――。守る? どの口が――」
「それでも、ボクは――。彼女を守る剣になる! 決めたんだ」
アリスの言葉が嬉しくて、私の心に深く突き刺さった。
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