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第五章・木の精霊の国
126話・二人っきりってどうするんだっけ!
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「ありがとうございます」
「いえ、お世話になりますので」
私達は、葡萄の収穫を手伝っている。巨峰なんかと比べて小さなその粒は、それでも自身の美味しさを誇示するように白と黒に輝いている。
「黒い粒の方が、赤い色がでるんですよ」
ぶどうポリフェノールのことかな? 赤ワインもいいけど私は白が好きかな。
ーーー
木々や、緑色に囲まれた店内は優しい光でどこかホッとする。
光ってるのは、ホタルみたいな虫さんなのかな?
「やー、それにしてもいい時期に着いたね。ちょうど収穫祭じゃないか。今の時期ならお酒もジュースもある時期だから、子どもでも楽しめるよ」
「こっちには出来立て、あっちには年代物もあるぞー」
「一緒にチーズやハム、ソーセージなんかもあるからね」
そう話す木霊人は、命の木の場所と違ってそれぞれが個性的な感じで華やかだ。
「もうすぐ、土の国から使者が来るから大忙しなのさ」
「そうなんですか」
「あぁ、土に栄養をたっぷり含ませて貰うお礼に、ここのお酒を渡す決まりなんだ。彼らはお酒が大好きだからね」
「はい、どうぞ。あなたはジュースで良かったのよね」
そう言って、私達の前にコップに注がれた赤と白のワインが、ルードの前には白いシュワシュワと泡を少しだけたてる飲み物が置かれた。
「発酵途中のジュースっすから、ルード君でも大丈夫っすよ」
おそるおそる、ルードが口に運ぶと、
「美味しい……。甘いですね」
と、言っていた。私も飲んでみたくなって、お願いしておいた。
「そういえば、大魔法使いのお家から持ってきたのってどんなものを?」
「私は、時魔法の資料があればとそれらしいものを。しかし、使う人間が限られるような記述があり――。おそらく、この魔法の再現は無理かと――。もう少し見直すつもりですが」
「そうなんだ。アリスちゃんは?」
「ボク? ボクは帰還の魔法がないかなーっていうのと、もう一個持ってきたかな。まだあまり読めてないから、今からだね」
しっかり探してくれている。どうしても見つからなかったら、スペードに聞いてみようかな。彼なら知ってそう。ただ、借りは作りたくないけれど!
「二人とも選んだのに、いい事が載ってるっすよ」
ほらね? きっと、何か知ってるんだろうな……。
ーーー
「じゃあ、僕らはこっちなんで。おやすみっす」
そう言って、ルードを引っ張って隣の部屋に行くスペード。
え、あ、えっと――。
お互い、ホロ酔いなアリスと私は、さっきからなのか、今の話からなのか頬が紅潮している。
あ――、や――、二人っきりって、どうするんだっけ?
何故か、緊張してしまう。
頬っぺたが紅く染まって、耳を少し垂れさせ、眼が少し潤んでいるアリスがふにゃっと笑う。もう、可愛いなぁ。
「明日もはやいし、寝ようかー」
「そ、そうだね」
変な妄想始める前に寝ちゃおう! そうしよう。
ベッドが……、くっついてりゅrhぃyfあc。
混乱の魔法でもかけられたように頭の中がぐるぐるする。
え、これ誰かがくっつけたんですよね。だって、もとの場所の跡が!
「リサちゃん?」
「はいぃぃ」
私が慌てていると、アリスはゆっくりと優しく私を抱きしめた。
「いい匂い」
そう言ったアリスはそのまま、お姫様抱っこしてきて――、私は――! ストンと、片方のベッドにおろされる。
アリスは隣のベッドに腰をおろす。
「じゃあ、おやすみー」
「――おやすみなさい」
まだ、ちゃんと気持ちも伝えていないのに、何を考えてるんだ、私は!
恥ずかしくて、穴があったらではなくベッドに潜り込む。
邪念よ、去れー! どっか行けー!
そう、考えていると、アリスもベッドに横になった気配がした。寝てしまうのかぁ、そう思った時、後ろから手がまわされた。
「アリスちゃん!?」
「今から言うことは酔ってるボクの独り言だから。答えなくてもいいよー。リサちゃんはまだ、あっちの、――元いた世界に戻りたい?」
それは――。少し間を置いて、私は小さく首を横に振った。
気がつくかはわからないけれど――。
向こうの世界に戻るということは、アリスと会えなくなるということ。私は、アリスの側にいたい。
少しアリスの腕に力が入った気がした。
「――ボクはね、リサちゃんに帰って欲しくないって、思ってしまってるんだ。ごめんね」
アリスの言葉で頬と身体が熱くなるのがわかった。
「リサちゃん、――――」
ふっと、彼の力が抜けて、軽くなった気がした。
もぞもぞと掛け布団から顔を出すと、可愛い寝顔がそこにあった。
「寝ちゃってる」
つんつんと頬っぺたをつついてみるが、動かない。
あ、もしかして、アリスは昨日、寝ていない?
私が、倒れたあとずっと看ててくれてたのかな。
「ありがとう、アリスちゃん。私、アリスちゃんのこと好きだよ。この世界で一緒に、ずっと一緒にいたい。今度は起きてる時にちゃんと言うね」
猫耳を撫でると、寝息をたてていたアリスがくすぐったそうにピルピルと耳を動かし、少し嬉しそうに笑っていた。
「いえ、お世話になりますので」
私達は、葡萄の収穫を手伝っている。巨峰なんかと比べて小さなその粒は、それでも自身の美味しさを誇示するように白と黒に輝いている。
「黒い粒の方が、赤い色がでるんですよ」
ぶどうポリフェノールのことかな? 赤ワインもいいけど私は白が好きかな。
ーーー
木々や、緑色に囲まれた店内は優しい光でどこかホッとする。
光ってるのは、ホタルみたいな虫さんなのかな?
「やー、それにしてもいい時期に着いたね。ちょうど収穫祭じゃないか。今の時期ならお酒もジュースもある時期だから、子どもでも楽しめるよ」
「こっちには出来立て、あっちには年代物もあるぞー」
「一緒にチーズやハム、ソーセージなんかもあるからね」
そう話す木霊人は、命の木の場所と違ってそれぞれが個性的な感じで華やかだ。
「もうすぐ、土の国から使者が来るから大忙しなのさ」
「そうなんですか」
「あぁ、土に栄養をたっぷり含ませて貰うお礼に、ここのお酒を渡す決まりなんだ。彼らはお酒が大好きだからね」
「はい、どうぞ。あなたはジュースで良かったのよね」
そう言って、私達の前にコップに注がれた赤と白のワインが、ルードの前には白いシュワシュワと泡を少しだけたてる飲み物が置かれた。
「発酵途中のジュースっすから、ルード君でも大丈夫っすよ」
おそるおそる、ルードが口に運ぶと、
「美味しい……。甘いですね」
と、言っていた。私も飲んでみたくなって、お願いしておいた。
「そういえば、大魔法使いのお家から持ってきたのってどんなものを?」
「私は、時魔法の資料があればとそれらしいものを。しかし、使う人間が限られるような記述があり――。おそらく、この魔法の再現は無理かと――。もう少し見直すつもりですが」
「そうなんだ。アリスちゃんは?」
「ボク? ボクは帰還の魔法がないかなーっていうのと、もう一個持ってきたかな。まだあまり読めてないから、今からだね」
しっかり探してくれている。どうしても見つからなかったら、スペードに聞いてみようかな。彼なら知ってそう。ただ、借りは作りたくないけれど!
「二人とも選んだのに、いい事が載ってるっすよ」
ほらね? きっと、何か知ってるんだろうな……。
ーーー
「じゃあ、僕らはこっちなんで。おやすみっす」
そう言って、ルードを引っ張って隣の部屋に行くスペード。
え、あ、えっと――。
お互い、ホロ酔いなアリスと私は、さっきからなのか、今の話からなのか頬が紅潮している。
あ――、や――、二人っきりって、どうするんだっけ?
何故か、緊張してしまう。
頬っぺたが紅く染まって、耳を少し垂れさせ、眼が少し潤んでいるアリスがふにゃっと笑う。もう、可愛いなぁ。
「明日もはやいし、寝ようかー」
「そ、そうだね」
変な妄想始める前に寝ちゃおう! そうしよう。
ベッドが……、くっついてりゅrhぃyfあc。
混乱の魔法でもかけられたように頭の中がぐるぐるする。
え、これ誰かがくっつけたんですよね。だって、もとの場所の跡が!
「リサちゃん?」
「はいぃぃ」
私が慌てていると、アリスはゆっくりと優しく私を抱きしめた。
「いい匂い」
そう言ったアリスはそのまま、お姫様抱っこしてきて――、私は――! ストンと、片方のベッドにおろされる。
アリスは隣のベッドに腰をおろす。
「じゃあ、おやすみー」
「――おやすみなさい」
まだ、ちゃんと気持ちも伝えていないのに、何を考えてるんだ、私は!
恥ずかしくて、穴があったらではなくベッドに潜り込む。
邪念よ、去れー! どっか行けー!
そう、考えていると、アリスもベッドに横になった気配がした。寝てしまうのかぁ、そう思った時、後ろから手がまわされた。
「アリスちゃん!?」
「今から言うことは酔ってるボクの独り言だから。答えなくてもいいよー。リサちゃんはまだ、あっちの、――元いた世界に戻りたい?」
それは――。少し間を置いて、私は小さく首を横に振った。
気がつくかはわからないけれど――。
向こうの世界に戻るということは、アリスと会えなくなるということ。私は、アリスの側にいたい。
少しアリスの腕に力が入った気がした。
「――ボクはね、リサちゃんに帰って欲しくないって、思ってしまってるんだ。ごめんね」
アリスの言葉で頬と身体が熱くなるのがわかった。
「リサちゃん、――――」
ふっと、彼の力が抜けて、軽くなった気がした。
もぞもぞと掛け布団から顔を出すと、可愛い寝顔がそこにあった。
「寝ちゃってる」
つんつんと頬っぺたをつついてみるが、動かない。
あ、もしかして、アリスは昨日、寝ていない?
私が、倒れたあとずっと看ててくれてたのかな。
「ありがとう、アリスちゃん。私、アリスちゃんのこと好きだよ。この世界で一緒に、ずっと一緒にいたい。今度は起きてる時にちゃんと言うね」
猫耳を撫でると、寝息をたてていたアリスがくすぐったそうにピルピルと耳を動かし、少し嬉しそうに笑っていた。
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