私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?

花月夜れん

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最終章・聖女じゃなくて

157話・二人の光の精霊だった者

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 光の精霊だった二人はお互いに、じっと目を合わせている。
 何か、話しでもしているんだろうか。

「カナ! カナ!」

 カトル王子がカナちゃんのもとに向かった。リードを押し退けて自分の胸の中に彼女を抱える。押し退けられた彼は、カナちゃんを心配するように見ており、カトル王子に何か言おうとして言いよどんでいるように見えた。

「起きてくれ! 魔物が現れた! カナの本物の聖女の力で――」
「殿下――」

「ライトコールノ王子――、ボクノハナヨメヲ――――」

 その様子を見ていた真っ白なライトの目から赤い涙が溢れ落ちる。そして隣の魔物も、同じ様に涙を流す。

「リサ! 結界を彼らに」

 スペードが叫ぶ。

「はいっ!! ライト!」

 間違ってないだろうか、私はカトル王子とカナに結界をはった。
 その直後、魔物が王子達に襲いかかった。

 ガキィン

 魔物の爪が弾かれる。それが何かわかったのか魔物は後ろに跳び白ライトの元に戻る。

「ドウシテジャマヲスル――。コノクニハ――ウラギリモノダ――」

 裏切り者? 過去に何かあったの? でも、そのことは私達は何も知らないよ。

「聖女ハウラギル、ソノユビワモ――オナジ――」

 彼はカナちゃんの指を指差す。聖女が裏切る? 彼と契約していた聖女は、彼を裏切った?

「コノクニナンテ……聖女……ホロビテシマエ!!!!」

 白ライトと魔物のライトが、耳をつんざく咆哮を同時にあげた。
 とても苦しそうな、哀しそうな。

「ルード、手伝ってもらっていいかい!」
「はい、アリスト様」

 二人がいつものように武器を構える。

「ウォータ」

 水の強化魔法を私は二人にかけた。

「皆、避難しろ! 戦える勇気のある者はここへ」

 リードが、衛兵達へ号令をかけている。しかし、聖女が気を失っているという事実が、彼らに与える恐怖を増幅させる。
 何人が避難し、何人が残ったのだろう。
 名前も知らない、誰かまで私は守れるのだろうか。出来れば皆、逃げて欲しい。

「殿下、その中ならきっと安全です。カナ様を――」

 リードは、そう言ってからきゅっと自分の手を握りしめ、こちらへときた。そして、ルードの横に並んだ。

「私も、戦えます」

 ショートソードを両手に構え、リードが言った。
 私は、もう一度ウォータを呼び、彼にも強化魔法をかけた。
 彼はとても驚いた顔をしていたが、すぐに視線を前方へと戻す。小さく、彼の、ありがとうございますという声が聞こえた気がした。

「リード、ルードは魔物の方に行ってくれ、ボクは人型の方に」
「「はい」」

 リード、ルード、よく似た二人の声が重なる。

「リサちゃん、ごめんね。もう一度、出来る?」

 わからない、……だって今日はもういっぱい浄化魔法をしている。だけど、――やるしかないよね。
 私はこくりと頷いて覚悟を決める。
 ライトに、お願いされたから――。二人とも浄化してって――。
 彼らを、救いたい。

「やるよ! 私は二人を浄化する。そして、滅びの予言を覆してみせる!」

 アリスとの、未来のために! そして、カナちゃんとの約束を果たすために!
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