前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

文字の大きさ
41 / 66

第41話 魔王、池照と出会う

しおりを挟む
「大間、お前犬と喋れるのか? なんて言ってるんだ?」

 話しかけられ不愉快に思ってしまうのは、コイツが真由と体育祭で同じ実行委員になったからに他ならない。暇があれば真由の隣に立ち、これみよがしに見せつけてくる。
 恋人とかそういう関係じゃないとはわかってるが、いらいらしてしまう。
 そこに立つのは前世から約束してるオレだと叫びたい。
 出来てないけど――。

「喋られるわけないだろ。何言ってるんだよ」

 オレは首を掻きながら口をムッと結んだ。

「そうかそうか、残念。お前なら気がついてると思ってたんだがなぁ」
「ん、何が」
「ギャンッ!! グルルル」
「おいこら、ケルベロス。人様に吠えるな!!」
「なぁ、大間。この世の人間達はいい暮らしをしていると思わないか?」
「は? 突然なんだ。そりゃあ、歴史的に見て昔に比べりゃ暮らしやすい世界になってるだろうな。機械やら便利になってるだろうし――」

 はははと池照は腹を抱えて笑う。失礼だな。聞いてきたのはそっちだろう。

「力がすべてじゃない事がだよ。信仰だって自由。命をかけてこいなんて言われない。どうして最初からここに生まれてなかったのか」
「池照? 何を言って……」
「魔王を倒せ、世界を人間達のものにするんだなんて言われなくていいんだ」
「は? はは、何を言って。ゲームか? 魔王が出るゲームといえば」
「あの世界はゲームなんかじゃなかった。魔王も、勇者マユ様も」

 池照は頬を紅潮させ目尻を下げる。

「僕は勇者マユを復活させたい。だから、手伝ってくれないか? 大間、いや魔王」
「は? はぁ?」
「この場所には大量の小鬼ゴブリンがいたはずだ。魔王、お前が回収したんだろう? 教室で使っていた使い魔達のように」

 見えていた!? こいつにも!?
 まだだ、まだ焦るな。まだバレているとは決ってない。だが、勇者マユの復活という言葉は気になる。まさか、マユと真由もオレのように一つになることが出来るのだろうか。
 オレが話さないまま距離をとったせいだろうか、池照の笑顔は一変不機嫌な表情になった。

「あぁ、誤魔化す必要はない。僕は見ていたから。同じように使い魔を使ってね」
「……」
「なぁ、大間。魔王になってくれないか?」
「……」
「魔王が復活すれば、勇者は立ち向かわなければならない。そうすることで勇者マユは復活するはずだ」

 オレが魔王になれば……? だが、それはマユのお願いとは逆である。魔王の力を使わないでとお願いされたのだから。

「お前は誰なんだ。本当に池照なのか……」

 オレはそう確認する事しか思い浮かばなかった。もしかして、こいつも妹の時のような幻を見せるタイプの魔物だったりしないだろうか。

「ははは、そうか。僕達は前の世界で顔を合わせた事はなかったな。お前のツラを拝む前に転生させられたからなぁ!!」

 池照の顔がほんのわずかな時間で違う顔に変わった。魔物や魔族なんかじゃなく、勇者マユにヒイロと呼ばれていた男の姿になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

滅びた勇者の弟に転生したけど、兄の残した絆で世界を救うことになりました

eringi
ファンタジー
最強の勇者として名を馳せた兄が、魔王との最終決戦で命を落とした。 兄を尊敬していた普通の青年・遥斗は、死の間際に異世界へ転生。だが目を覚ますと、自分は伝説の勇者の“弟”として生まれ変わっていた。 かつて兄が守った世界は、今や崩壊寸前。人々の希望は失われ、兄の名さえも忘れ去られようとしている。 兄の残した仲間たち、託された剣、そして血に刻まれた勇者の記憶。 「俺は俺のやり方で、この世界を救う」――かつての英雄の弟が、亡き兄を超えるために歩み出す。 家族愛と仲間の絆が織りなす、再生のファンタジー。

処理中です...