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第1話
しおりを挟む「キミは強い女性だから一人でも大丈夫だけど、彼女には僕がいないとダメなんだ!」
「ベン様・・・!」
は?
私とうちの両親と義両親、全員に集合かけておいて言うことがそれかい。
しかも不倫相手まで連れてくるとかお前正気か!?
不倫で脳みそお花畑のバカ夫は正論を宣言できたと思っているようで、誇らしげな顔で不倫相手を見つめている。
不倫相手もいかにもか弱い女ですと言わんばかりのたれ眉、上目遣いでバカ旦那を見つめ返す。
なんだこれ。
あ、申し遅れました。私ジェシカ・ブラウンと申します。
ただいまバカ夫に離縁を迫られているところでございますの。
ちなみにバカ夫とは結婚1年未満、子無しですわ。
馴れ初めは私が別の方との婚約を破棄されて落ち込んでいるときに励ましてくれたのがきっかけでしたの。
当時の私にはそれはとても救いになりました。
彼の「辛いなら僕に頼って、何もしなくていいんだよ。」というセリフには勇気を貰ったものでした。
ところがどうでしょう。
たった今分かりましたわ。
バカ夫は自分の事を「悲劇のヒロインを助ける王子様」だと思っていることを。
きっと私が落ち込んでいたときも、私というよりも悲劇のヒロインを助ける俺かっけぇぇ!と思っていたに違いありませんわ。
それも腹立たしいですが、なによりこの私が一番嫌いなタイプの女、そう、今目の前にいる不倫相手のような、男に上目遣いで弱々しい私アピールしているような女と同じように見られていたことが一番カンに障りますの。
一気に冷めましたわ。
おうおう、離婚でもなんでもしてやろうじゃありませんの。
ちらりと周りを見回すと、うちの両親は怒りで顔が引きつり、義両親はお二人そろって顔面蒼白。
義両親のお二人はとても良くしてくださいましたので、心中をお察ししますととても心が痛みますわ。
そこで閃きましたの。
バカ旦那にももう興味も未練もございませんが、このまま何もなく別れてやるのは癪ですわ。
なので一芝居打つことにしましたの。
両手で顔を覆い、さも悲しんでいるかのように肩を震わせ、
「うぅ、お二人の絆を拝見しましたら、もう私の入りこむ隙間などないのですね。ここは大人しく身を引きますわ。」
「ジェシカっ!流石我が妻、何という出来た女なのだ!」
バカ夫は喜色満面。お花畑の頭では都合のよすぎる展開に少しの疑問も持たないよう。
「ただ、これから女一人で生きていくのは大変でございます。ですのでこの哀れな女にせめて財産を残していただけはしませんでしょうか?」
「うむ、そうだな!領地の半分はお前に残そう」
チョロい。
私の見立て通り、バカ夫は悲劇のヒロインに良い恰好をしたいだけなのだ。
一瞬不倫相手の目が鋭くなりましたが、そんなこと知ったことではありませんわ。
「ありがとうございます。あ、そうそう。こちらの絵は結婚式の様子を描かせたものですの。ダイヤモンドを散りばめたティアラとドレスのセットはとても評判でしたのよ。ご招待のお客様も500名以上お呼びしましたわ。お料理もご好評いただいて本当に良いお式でしたわ。」
とても柔らかに、不倫相手に微笑みかける。
「ベン、2度目の結婚式なのですから1度目よりも素晴らしいものにしてくださいね。お相手のお嬢さんに恥をかかせてはいけませんよ。私陰ながら応援しておりますわ。」
不倫相手は対抗心むき出しの鋭い目をしておりましたが、私の狙い通り。
幸せな結婚生活送れるとよろしいですわね。
それでは私はもう関係のない人間ですのでこの辺で失礼しますわ。ごきげんよう。
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