暴走♡アイドル2 ~ヨゾラノナミダ~

雪ノ瀬瞬

文字の大きさ
77 / 142
中編

大阪喧嘩會

しおりを挟む
『おい、お前ら白狐知っとるな?今すぐ連れてこいや』

『だ、か、ら、よぉ、つい今も知らねぇって言ってたとこなんだよ!ちなみにオメーらハリネズミみてーな頭の奴かオタクっぽい女知らねぇか?』

 玲璃がまたそのフレーズかと頭をかきむしりながら逆に質問で返すと、衝撃の言葉が返ってきた。

『あぁ、そいつやったら知っとるぞ』

 捻れた茶色い短髪の女がうすら笑いを浮かべて言った。

『知ってる?そいつどこにいた?』

『ハリネズミっぽい頭の奴はどっかのゴミ置き場に捨てられとったぞ』

 それを聞いて思わず旋が前に出ていく。

『何それ、どーゆーこと?まさかそれあんたたちがやったなんて言わないでよね』

『あぁ、やったわ』

『数はどこ?今すぐ答えて』

『さぁ、どこやったかなぁ』

『ふざけないで!早く答えろ!』

 旋が声を荒らげ珠凛は一気に顔を険しくさせた。

『みんな気ぃつけてや!こいつら般若娘(はんにゃむすめ)の奴らや!』

『般若娘?』

『うん。大阪喧嘩會(おおさかけんかかい)言う、ちょっとイカれた連中の集まりや。暴走族でもチーマーでもない、ケンカする為だけに生きとるような奴らや。多分さっきの奴らとは全然違う。だからあいつらも逃げたんや。さっきの奴が言うてたのは藺檻槐言うて、今のそこの頭の奴や』

『さすが、よぉ知っとるのぉ。侍咲薇』

 できることなら関り合いになりたくないという咲薇の思いと裏腹に般若娘の女たちは動き出した。

『5対5なら丁度えぇやんか、マンツーで』

『じゃ、あたしこいつ』

『ウチピンクの奴行くわ』

 まるでゲームかスポーツでもするように決めた相手の前に立ちはだかり、般若娘とのマンツーマンが始まってしまった。

『なんや、そしたらあたし1人やないか。風矢咲薇はターゲットやないねんから』

 藺檻槐はガードレールによっかかるとタバコに火をつけた。

『えぇやん。さっきは槐えぇとこ持ってったやろ』

『せやな。ほんならえぇわ』

 先程の不死鳥の人間たちとは確かに違うようだ。般若娘の4人はケンカ慣れしているのもそうだが、殴り合い蹴り合うことを楽しんでいるようだった。

 玲璃が押され、麗桜が攻められずに苦しんでいる。旋も珠凛もさっさと倒して数の所へ行きたかったがなかなかそうはさせてくれそうにない。

 藺檻槐は味方がやられれば手を叩いて笑い、逆にやり返せば「おぉっ!」と声をあげ完全に観戦を楽しんでいた。

『藺檻、この子らは違うねん。白狐の仲間なんかと違う、ホンマにただの被害者なんや。やり合ってもなんの解決にもならんのやで?なんでそんなにこの子らを狙うねん』

『はっはは!何か、勘違いしとるみたいやけどな、そんなんはウチらには関係あれへん。これはゲームなんや』

『ゲームやと?』

 真剣に訴える咲薇を見て槐が嘲笑う。 

『あぁそうや。他の奴らがどんな理由で白狐を狙っとんのかは知らんけどな、みんながそうやって必死になって捕まえようとしてるターゲットをウチが先に捕まえてしばく。そういうゲームや。せやからこれは白狐というラスボスを倒すまでのただの過程ということや。他のチームはおそらく余計なもめ事は起こすなと言われとるのやろうな。だがウチは出会う敵は全て倒す。それだけのことや』

 大阪喧嘩會とは咲薇たちの1つ上の代が結成したチームで、単車は乗るが集会はせず、ギャングやチーマーのように群れでたむろすということもしない少し変わったタイプのチームだ。

 だがそこに集まる人間はまず喧嘩を愛し腕っぷしに自信のある者ばかりで、人数は少数ながら周りからはかなり危険視されている。

 中でも初代の隊長は関西一強い女と歌われるほどの人物で、「その女にだけは手を出すな」と大阪のみならず周辺の地域のチームからも恐れられていた。

 今回イデアや浬も大阪喧嘩會とは関わるな、とチームの人間に伝えていた訳だ。

 やはりなんとしても逃げておくべきだったと咲薇が思った時だ。

『…じゃあテメーのゲームはここで終わりだな』

 槐が振り向く前にボコボコにされ気を失っていたはずの数が後ろからがっしりとつかみかかった。そして一気にバックドロップした。怒りの鉄槌だ。

 だがここまでふいを突かれたのに槐は打ちつけられる前に自分だけ地に手を着き、バク転のようにして逃れてしまった。なかなかの運動神経と身体能力だ。

『しつこい奴や。おとなしく寝てたらえぇものを』

『うるせぇ!』

 数はボロボロでかなり息を切らしている。今のもダメ押しの一撃だろう。

『まぁえぇ。丁度相手がおらんかったとこや。今度こそお前は再起不能やぞ』

 槐が数の方に歩きだすとその間に咲薇が立った。

『なんや風矢咲薇。お前があたしの相手してくれる言うんか?』

 槐がそうやって咲薇を威圧すると、彼女の頭にソフトクリームが真っ逆さまに押しつけられた。

『冷たっ!!な、なんやぁ!!』

 振り返るとそこには鬼のような形相をした緋薙豹那が立っていた。そして誰が何を思うよりも速く豹那の拳が叩きこまれ槐は勢いよくふっ飛んでいった。

『おいガキ。遺書は書き終わったのかい?探しちまったじゃないか』

『豹那!』

 真っ先に玲璃が声をあげた。

『玲璃。久しぶりに殴ってやろうか?先にお前からでもいいんだよ?もう少しあたしという存在を敬ったらどうなんだい?せめて「さん」を付けろってもう何回言った?全く、お前って奴は…』

 玲璃がニカッと笑ってみせると豹那は呆れて口元を緩めた。

『まだや!!』

 咲薇の声が響くのと同時に槐の反撃のパンチが豹那の顔面をとらえ弾いた。助走をつけ体重を乗せたおもいきりのいい一撃だ。だが豹那は足を1歩引かされただけで耐えた。その目はしっかりと獲物をにらみつけている。

 それを見ていた般若娘のメンバーは衝撃を受け手を止めてしまった。

『あいつやりよるな。槐がふっとばされたん初めて見たわ』

『槐も今おもいっきしいったのにな。あの女普通に立っとるぞ』

 般若娘たちは槐の心配をしているのではなく、豹那に興味を示している。

(今だ!)

 ボクサーの麗桜はそういう隙を見逃さない。相手の腹に1発拳を打ちこんで相手がひざを着くと隣の旋に加勢した。

『やるじゃん麗桜ちゃん!』

『へへ、たたみかけるぞ!』

 旋もそれに合わせて2対1で攻撃し見事なコンビネーションで2人目も倒してのけると二手に別れて玲璃と珠凛の助太刀に走った。

 そしてふいを突かれ1発返された豹那だったが、さすがにそれだけではひるまず槐と向かい合い、遠い目で標的を捕捉していた。

『そういえば遺言も聞いてなかったね。なんか言い残したいことはあるのかい?』

『なんやお前…勝てる気でおるんか?おめでたい奴や。あんま舐めんなや?』

 2人は互いに間合いに立ちながら殺気むき出しで鬼と般若のように妖しく笑いながらにらみ合う。

『ふっ!』

 今度は槐が先にしかけた。飛びかかると大きく振りかぶり豹那の顔面めがけて鋭い拳を放った。

 その動きを豹那は見えていたが彼女はそれをよけなかった。逃がさない為だ。豹那は殴られた反動を利用してカウンターの右フックを一気に叩きこむ。槐はまた殴り飛ばされアスファルトの上に転がされた。

『ちっ、バカ力め』

 この時すでに槐は、豹那の想像を超える強さを肌で感じていた。しかし逃げるつもりなど一切なく最後までやり合う気でいた。

 そんな彼女の戦意をくじく人物がまさかここに現れようとは、槐も思っていなかった。

『みんな大丈夫!?』

 豹那に遅れてそこに雪ノ瀬瞬が到着した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...