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中編
弁慶の槍
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掠は逃げている。
追いかけてきているのは10台位だろうか。さすがに今10人を相手にするのはキツい。あまりに時間がかかりリスクが大きい。何よりも
『めんどくさい!!』
結局白狐に追いつけず自分は潰されてしまいました、では話にならない。
逃げている間にさっきまで走っていたルートを外れてしまった。もうどっちへ行ったらいいかも分からない。後ろの集団も諦めるつもりはなさそうだ。
『あー、くそっ!しつこいなー』
とうとう逃げきるのが困難だと分かり掠は覚悟を決めて停まった。すぐさま単車の集団が周りを取り囲む。
『何逃げとんねんコラ!白狐どこや言うとんねんぞ!聞いとんのか!?』
『あのね!あたしはあいつの仲間じゃないの。あたしの仲間から単車盗んで乗り回されててあたしも今探してるの。分かったらどいて』
『嘘言うてんなや。さっき仲良く走っとったやないか!変な言い逃れしよったら知らんぞ』
『は~あ…』
掠は溜め息をつくと単車を降り女たちの方に向き直った。レザーグローブをはめると細い目で視線を向ける。
『なんやお前。やる気か?』
相手が構えるのを待たず掠は殴りかかった。
『そうだよ、やる気だよ!』
ふいを突かれてもろに1人がくらっていると慌てて周りが引き剥がしにかかった。
『なんやコイツ!放さんかい!』
が、掠は関係なくまずその1人を徹底的にやっつけた。そうしたら次だ。横から引っぱられようと殴られようと2人目の胸ぐらを放さず暴れ続けた。
だが今日まだ一睡もしていない掠には明らかな疲れとダメージが残っている。いつものようにはいかず次第に手を出される数が増えると一気に形成は逆転してしまった。
女たちは代わる代わる掠を殴り、蹴り続け完全に袋叩きにした。
『白狐はどこや!早よ言わんかい!』
(痛ってぇーな、クソヤロウども…)
ついに倒れてしまうとゴミのように踏みつけられ髪をつかまれて無理矢理顔を持ち上げられた。
掠にはもうなす術がない。そもそも彼女が1人で白狐を追っていたのも無謀すぎたのだ。
『聞いとんのか!奴はどこや!』
(なにがどこやだ、くそったれ…)
『なんやその目は!』
それでも反抗的な目でにらみ続ける掠に女たちは更に暴行を加えた。
(綺夜羅…)
いつもならこんな時は必ず綺夜羅が助けてくれた。だが今その綺夜羅もいない。
あの狐の仮面のせいで…
『くそっ…』
悔しい思いを握りしめ、這いつくばったまま地面に叩きつけると、すぐそこで誰かが言った。
『よぉ、そこの奴。お前ひょっとして綺夜羅って奴の仲間か?』
『湘南ナンバーのKH。単車から見ても間違いなさそうだね。CBRは見当たらないみたいだけど』
そこには掠の知らない人物が立っていた。
『おうテメーら。そんな人数で囲むなんてずいぶんカッコわりー真似してんじゃねーかよ』
『なんやお前ら!』
『あたしか?あたしは神奈川で1番カッコいい暴走族さ』
『じゃあ、あたしは東京で1番可愛い走り屋かな』
哉原樹と七条琉花がなんとか掠の所にたどり着いた。
『オラ、かかってこいよ』『ほら、かかってきなよ』
『お前らも白狐の仲間やな?えぇ加減居場所言わんと殺すぞ』
相手の女たちは掠を放すと樹と琉花を囲み、まず威圧した。2人はもちろんそんなもの気にもしない。
『来ねぇのか?じゃあ、こっちからいくぜ!』
樹は回し蹴りで周りの女を蹴散らすと1番近くにいた女につかみかかりひざを顔面にぶちこんだ。ひるんだ所にボディを1発打たれるとそれでもう相手はうずくまってしまった。
『次…』
そう言って樹はまた近くの人間につかみかかっていく。左右のパンチにローキックまでくらうと相手はとても立っていられなかった。
琉花は逆に近づいてくる者から素早く殴り倒していった。動きが速く、繰り出されるパンチは綺麗で強烈だった。
ほんの10数秒で相手は圧倒的な力の差を感じたらしく腰が引けている。
それをこの2人が見逃す訳もなく片っ端から滅多打ちにしていった。
ボクサーの琉花にキックボクサーの樹。1度拳を交えたからなのか抜群のコンビネーションだ。
2人は互いを助けない。
お前ならいけんだろ?
あんたならやれるんでしょ?
無言の中に確かな信頼があるから息はピッタリだった。
掠は呆気に取られて見ていた。
(え?誰?すっげぇ強い…)
とにかく強い。気持ちいい位に次々に相手をのしていくとほぼノーダメージで全員やっつけてしまった。
『すご…』
『おう!あたしは神奈川で1番すごい暴走族だからな!』
『樹ちゃん。さっきと違くない?』
『バカっ、いいんだよ。気にすんなって。あっはっは!』
『君が掠ちゃんでしょ?大丈夫?ボロボロじゃん。みんな心配してるから1回病院戻ろ』
掠は結局白狐を捕まえられなかった自分を責めた。
『でもあたし、あいつを探さなきゃ…』
『気持ちは分かるけどよ』
『みんなが心配してるよ?1回戻って考えた方がいいって』
2人が掠をなだめているとまた1台の単車が走ってくる。単車は樹たちの前で停まった。
『なんやこれ…おい、お前ら何寝とんねん』
女たちの仲間らしく後から来た女はうずくまる仲間たちに渇を入れた。
『だらしないわぁ~、しょーもな。陽炎朱雀はケンカもでけへん言われてまうやないか』
『浬さん…』
陽炎朱雀の女たちは合わせる顔がないといった感じで誘木浬の方を見れなかった。浬はやれやれと口元だけで笑う。
仲間たちは悪くなんてない。全ては傷つけられた仲間たちのカタキを取る為にそれぞれが気持ちで動いた結果だからだ。
浬は木刀、のようなものを持ち出した。
あれはなんだろうか。一見木刀だと思ってしまったが普通の木刀より50センチ程長く、まるで槍のようだ。
『お前らがやったんやな?』
『あたしらは知り合いが囲まれてたのを助けただけだ』
『なるほど。2人でこいつら倒しはった訳や。ならしめてかからんとあかんなぁ…』
浬は木刀のような槍を振り回し始めた。その姿は牛若丸と戦ったという武蔵坊弁慶を思わせた。武器の長さで間合いが上手くつかめず樹も琉花も近づけずにいる。
1発目の打撃は樹の腹に飛んできた。
『うっ!』
射程距離が読めない。まるで伸縮自在の特殊な武器を使われているようだ。
『痛って~。ちくしょう』
浬は槍の先を目の前の地面に落とし、何か棒術のような構えをとった。
琉花が1歩踏みこむとそれと同時に槍の先が足めがけて飛んできた。琉花はその動きに対応し足を引いてよけたが槍は軌道を変え更に加速して琉花のアゴを下から突き上げた。
『うぐっ!』
かと思えば右から左からと大振りで槍をなぎ払い琉花の全身に連撃を叩きつけていく。
それを見て樹が逆から攻撃をしかけていくが横から槍が勢いよく振り回され近づいていけない。基本純粋な殴り合いが専門な樹と琉花は長尺物を振り回しながら戦う浬にやりづらさを覚えた。相性ははっきり言って最悪だ。
『よし、それなら』
樹と琉花は目で互いに視線を送り合うと2人で同時に左右から突撃した。
『無駄やぞ!』
左右同時攻撃も物ともせず2人を寄せつけない浬だったが樹はそれでも向かっていく。琉花は槍の射程距離の1歩外でじっと構え見ている。
『おとりのつもりか?読め読めやないか』
浬は遠慮なく樹に槍の連撃を叩きつける。しかし琉花のマークも外しはしない。2人はこの槍に抗う術を持っていない。浬はまずそう思っていた。
だが樹は槍をくらいながらもローキックを1発返した。浬は加減などしていない。樹の体は間違いなく痣だらけのはず。
『なんや、我慢比べでもしたいんか?』
尚も槍をくらい続ける樹だったがその顔は平然としている。
『いーや。したくないね』
もちろん我慢しているが樹は引かない。打撃をもらうのを承知でまたローキックを放った。まさかの同じ場所への攻撃に浬の顔が一瞬歪む。
その時を待っていたのは琉花だった。瞬時に浬の懐に潜りこむと3発のパンチを打ちこんだ。
『うっ!』
うめき声をあげるとすかさず槍を振り回し、また距離をとった。
『ちっ…やるやないか。こいつらがやられる訳や』
さほど効いた様子もない。2人からしても浬は想像以上の敵ということになる。
『ん?』
後方からサイレンが聞こえる。パトカーが赤灯を回しておそらくここへ向かっている。
『この場はここで引いたるけどな、お前らが敵ということはこれではっきりした。次は白狐の所へ嫌でも案内さしたる。あたしは陽炎朱雀の誘木浬や。仲間の仇は必ず取りにくる。邪魔するもんは許さん。』
浬と陽炎朱雀の女たちは単車に跨がると行ってしまった。パトカーも浬たちを追っていく。
『なぁ…なんかあいつスゲー勘違いしてねぇか?』
『ね。探してるのはあたしたちの方なのにさ。どーなっちゃってるの?』
『それは…』
掠は2人に事情を説明した。
追いかけてきているのは10台位だろうか。さすがに今10人を相手にするのはキツい。あまりに時間がかかりリスクが大きい。何よりも
『めんどくさい!!』
結局白狐に追いつけず自分は潰されてしまいました、では話にならない。
逃げている間にさっきまで走っていたルートを外れてしまった。もうどっちへ行ったらいいかも分からない。後ろの集団も諦めるつもりはなさそうだ。
『あー、くそっ!しつこいなー』
とうとう逃げきるのが困難だと分かり掠は覚悟を決めて停まった。すぐさま単車の集団が周りを取り囲む。
『何逃げとんねんコラ!白狐どこや言うとんねんぞ!聞いとんのか!?』
『あのね!あたしはあいつの仲間じゃないの。あたしの仲間から単車盗んで乗り回されててあたしも今探してるの。分かったらどいて』
『嘘言うてんなや。さっき仲良く走っとったやないか!変な言い逃れしよったら知らんぞ』
『は~あ…』
掠は溜め息をつくと単車を降り女たちの方に向き直った。レザーグローブをはめると細い目で視線を向ける。
『なんやお前。やる気か?』
相手が構えるのを待たず掠は殴りかかった。
『そうだよ、やる気だよ!』
ふいを突かれてもろに1人がくらっていると慌てて周りが引き剥がしにかかった。
『なんやコイツ!放さんかい!』
が、掠は関係なくまずその1人を徹底的にやっつけた。そうしたら次だ。横から引っぱられようと殴られようと2人目の胸ぐらを放さず暴れ続けた。
だが今日まだ一睡もしていない掠には明らかな疲れとダメージが残っている。いつものようにはいかず次第に手を出される数が増えると一気に形成は逆転してしまった。
女たちは代わる代わる掠を殴り、蹴り続け完全に袋叩きにした。
『白狐はどこや!早よ言わんかい!』
(痛ってぇーな、クソヤロウども…)
ついに倒れてしまうとゴミのように踏みつけられ髪をつかまれて無理矢理顔を持ち上げられた。
掠にはもうなす術がない。そもそも彼女が1人で白狐を追っていたのも無謀すぎたのだ。
『聞いとんのか!奴はどこや!』
(なにがどこやだ、くそったれ…)
『なんやその目は!』
それでも反抗的な目でにらみ続ける掠に女たちは更に暴行を加えた。
(綺夜羅…)
いつもならこんな時は必ず綺夜羅が助けてくれた。だが今その綺夜羅もいない。
あの狐の仮面のせいで…
『くそっ…』
悔しい思いを握りしめ、這いつくばったまま地面に叩きつけると、すぐそこで誰かが言った。
『よぉ、そこの奴。お前ひょっとして綺夜羅って奴の仲間か?』
『湘南ナンバーのKH。単車から見ても間違いなさそうだね。CBRは見当たらないみたいだけど』
そこには掠の知らない人物が立っていた。
『おうテメーら。そんな人数で囲むなんてずいぶんカッコわりー真似してんじゃねーかよ』
『なんやお前ら!』
『あたしか?あたしは神奈川で1番カッコいい暴走族さ』
『じゃあ、あたしは東京で1番可愛い走り屋かな』
哉原樹と七条琉花がなんとか掠の所にたどり着いた。
『オラ、かかってこいよ』『ほら、かかってきなよ』
『お前らも白狐の仲間やな?えぇ加減居場所言わんと殺すぞ』
相手の女たちは掠を放すと樹と琉花を囲み、まず威圧した。2人はもちろんそんなもの気にもしない。
『来ねぇのか?じゃあ、こっちからいくぜ!』
樹は回し蹴りで周りの女を蹴散らすと1番近くにいた女につかみかかりひざを顔面にぶちこんだ。ひるんだ所にボディを1発打たれるとそれでもう相手はうずくまってしまった。
『次…』
そう言って樹はまた近くの人間につかみかかっていく。左右のパンチにローキックまでくらうと相手はとても立っていられなかった。
琉花は逆に近づいてくる者から素早く殴り倒していった。動きが速く、繰り出されるパンチは綺麗で強烈だった。
ほんの10数秒で相手は圧倒的な力の差を感じたらしく腰が引けている。
それをこの2人が見逃す訳もなく片っ端から滅多打ちにしていった。
ボクサーの琉花にキックボクサーの樹。1度拳を交えたからなのか抜群のコンビネーションだ。
2人は互いを助けない。
お前ならいけんだろ?
あんたならやれるんでしょ?
無言の中に確かな信頼があるから息はピッタリだった。
掠は呆気に取られて見ていた。
(え?誰?すっげぇ強い…)
とにかく強い。気持ちいい位に次々に相手をのしていくとほぼノーダメージで全員やっつけてしまった。
『すご…』
『おう!あたしは神奈川で1番すごい暴走族だからな!』
『樹ちゃん。さっきと違くない?』
『バカっ、いいんだよ。気にすんなって。あっはっは!』
『君が掠ちゃんでしょ?大丈夫?ボロボロじゃん。みんな心配してるから1回病院戻ろ』
掠は結局白狐を捕まえられなかった自分を責めた。
『でもあたし、あいつを探さなきゃ…』
『気持ちは分かるけどよ』
『みんなが心配してるよ?1回戻って考えた方がいいって』
2人が掠をなだめているとまた1台の単車が走ってくる。単車は樹たちの前で停まった。
『なんやこれ…おい、お前ら何寝とんねん』
女たちの仲間らしく後から来た女はうずくまる仲間たちに渇を入れた。
『だらしないわぁ~、しょーもな。陽炎朱雀はケンカもでけへん言われてまうやないか』
『浬さん…』
陽炎朱雀の女たちは合わせる顔がないといった感じで誘木浬の方を見れなかった。浬はやれやれと口元だけで笑う。
仲間たちは悪くなんてない。全ては傷つけられた仲間たちのカタキを取る為にそれぞれが気持ちで動いた結果だからだ。
浬は木刀、のようなものを持ち出した。
あれはなんだろうか。一見木刀だと思ってしまったが普通の木刀より50センチ程長く、まるで槍のようだ。
『お前らがやったんやな?』
『あたしらは知り合いが囲まれてたのを助けただけだ』
『なるほど。2人でこいつら倒しはった訳や。ならしめてかからんとあかんなぁ…』
浬は木刀のような槍を振り回し始めた。その姿は牛若丸と戦ったという武蔵坊弁慶を思わせた。武器の長さで間合いが上手くつかめず樹も琉花も近づけずにいる。
1発目の打撃は樹の腹に飛んできた。
『うっ!』
射程距離が読めない。まるで伸縮自在の特殊な武器を使われているようだ。
『痛って~。ちくしょう』
浬は槍の先を目の前の地面に落とし、何か棒術のような構えをとった。
琉花が1歩踏みこむとそれと同時に槍の先が足めがけて飛んできた。琉花はその動きに対応し足を引いてよけたが槍は軌道を変え更に加速して琉花のアゴを下から突き上げた。
『うぐっ!』
かと思えば右から左からと大振りで槍をなぎ払い琉花の全身に連撃を叩きつけていく。
それを見て樹が逆から攻撃をしかけていくが横から槍が勢いよく振り回され近づいていけない。基本純粋な殴り合いが専門な樹と琉花は長尺物を振り回しながら戦う浬にやりづらさを覚えた。相性ははっきり言って最悪だ。
『よし、それなら』
樹と琉花は目で互いに視線を送り合うと2人で同時に左右から突撃した。
『無駄やぞ!』
左右同時攻撃も物ともせず2人を寄せつけない浬だったが樹はそれでも向かっていく。琉花は槍の射程距離の1歩外でじっと構え見ている。
『おとりのつもりか?読め読めやないか』
浬は遠慮なく樹に槍の連撃を叩きつける。しかし琉花のマークも外しはしない。2人はこの槍に抗う術を持っていない。浬はまずそう思っていた。
だが樹は槍をくらいながらもローキックを1発返した。浬は加減などしていない。樹の体は間違いなく痣だらけのはず。
『なんや、我慢比べでもしたいんか?』
尚も槍をくらい続ける樹だったがその顔は平然としている。
『いーや。したくないね』
もちろん我慢しているが樹は引かない。打撃をもらうのを承知でまたローキックを放った。まさかの同じ場所への攻撃に浬の顔が一瞬歪む。
その時を待っていたのは琉花だった。瞬時に浬の懐に潜りこむと3発のパンチを打ちこんだ。
『うっ!』
うめき声をあげるとすかさず槍を振り回し、また距離をとった。
『ちっ…やるやないか。こいつらがやられる訳や』
さほど効いた様子もない。2人からしても浬は想像以上の敵ということになる。
『ん?』
後方からサイレンが聞こえる。パトカーが赤灯を回しておそらくここへ向かっている。
『この場はここで引いたるけどな、お前らが敵ということはこれではっきりした。次は白狐の所へ嫌でも案内さしたる。あたしは陽炎朱雀の誘木浬や。仲間の仇は必ず取りにくる。邪魔するもんは許さん。』
浬と陽炎朱雀の女たちは単車に跨がると行ってしまった。パトカーも浬たちを追っていく。
『なぁ…なんかあいつスゲー勘違いしてねぇか?』
『ね。探してるのはあたしたちの方なのにさ。どーなっちゃってるの?』
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