15 / 24
第1章 ~ノワール国~
【七梨side】
しおりを挟む
俺は何をやっているのだろ…。この世界に来てしまったのは受け入れるとしても…この歳になって無一文とは…。
確か甘味処~七竜~の店長をしてた筈なんだけど…はぁ~…金が無いってのは辛い…。
「やーーーーーー!」
爆乳少女のエルザだったか1番手の彼女が手にしている木剣を俺に向けて突進してくる。
あどけなく一生懸命な彼女の攻撃だが当たってあげる訳にもいかず…何より当たれば痛いし…くいっと半身だけ反らして避ける。
ついでに相手の突進力を利用して足を引っ掻ける。
「きゃっ!?」
受け身が遅れたのかとれないのかは知らないが…べちゃっと倒れる。
「あ~ん!痛い~~!!」
頭が痛いな…ここに居る【ヴァルキリー隊】と呼ばれる20人の女子を鍛えるのが仕事と言われたけども…。
「突進力はあるけど攻め手が弱い。」
ふぅ剣を握るのは久々だ。現代では御法度だし剣より拳を使う事の方が多いし。
「次、行きます!ヤーー!」
これもまた幼いかけ声と共に木剣の先端が伸びてくる。ぬ!顔面突きか?でも遅い…顔面に伸びてくる木剣の先端をひょいっと首だけ動かして交わす。
彼女はそのままの態勢で俺に体当たりする形になった。
「あぅ!?」
「おっと」
体重差がある為ぶつかった衝撃で後ろへ彼女の体が傾く。転倒を防ぐため俺は咄嗟に彼女の背中へと手を回した。
この女性というか【ヴァルキリー隊】の装備はエリカ王女様の意向で軽装である。薄着…つまり露出が多い。
剥き出しの背中に直接手が触れる。
「ひゃぅ!?」
「ふぅ、大丈夫かい?」
みるみる彼女の顔が赤くなっていく…微動だにしないし…このまま爆発するんじゃないかと不安になった。
「おい、どうした?何処か痛めたか?」
「ひゃっ!?あ!あの!!すいません!!だ、男性に抱かれるのは初めてで…その……。」
イヤイヤ、抱いちゃいねぇ…支えただけだ…。ん?ちょっとまて今男性は初めてと言ったか!?なんか闇を感じるのは俺だけか…?
「ま、まぁとにかく怪我とかはないな…。」
「はい、大丈夫…です。」
顔が真っ赤…あんなので抱かれたのなら彼女は今後幾つもの男や魔物に抱かれることになるのだろうか…。
そそくさと一礼して彼女は下がっていく。
「なら、次はアタイが!!」
やれやれ、今度は短髪黒髪で大剣を背にした大柄の女性が向かってきた。
175の俺より背が高い…190?2メートルは有るのか?腕回りも俺よりあるし筋肉がすげえなぁ。ガ○ツか!?なんだか仲間の薫を連想する。
まぁ薫は220だしアイツは筋肉の集大成みたいなものだしな。
「アタイはヴァルキリー隊特攻隊長のアイガ!お前が本当に強いか見せてもらうじゃないか!!」
ぬ、大見得をきられて名乗られたな。これは返すのが礼儀か?
彼女は背中の大剣ではなく通常の木剣を向けてくる。
そう言えば、出会い頭に剣を向けてきた時も背中の大剣ではなかったな。何故初めからその大剣を構えないのか疑問を問いかける。
アイガと名のる筋肉…いや女性はふっと一笑。
「狭い所でこんな大剣を振り回す馬鹿がいるかよ。」
うん、ごもっとも。
「それに、あんたからは微塵も殺気が感じなかった。それが理由だ。」
ほぅ、感心感心。ちゃんと見てるし見えてるようだ。
改めてアイガは俺に木剣を構え直す。
「ぬ」
「あ?どうかしたか?」
これは驚いた。隙が無い。【ヴァルキリー隊】の中でもこのアイガは格が違う。小学生と高校生くらいに違う。
なかなかの場数を踏んできたのだろうな。
ほぅほぅと感心していると「こっちからいくぜ!!」
アイガが走り出して一閃。
下から上にかけて俺の木剣を振り払う。やはり他の子とは違う慣れてる。
「ほぅら!胴体がガラ空きだぜ!!」
どうする?一度受けてみる?けどなぁ痛いのは嫌だなぁ~どうす…。
「……………ぼほっ!?」
脇腹に響く思わず地面に片膝をついて脇腹を押さえる。激痛…痛いし…重い…!!これはきっと内出血で黒くなるな。
まったく考えすぎた…実戦なら胴体から真っ二つじゃないか!
あの腕力から考えて、あの大剣だろ…3~40cmの丸太ならスパッといくんじゃないか。
「なんだい、か弱いねぇ!そんな程度でアタイ達に剣を教えるって?冗談にも程ってものがあるよ!」
…言ってくれるなぁ。ここはちょっとでも言い返すかと顔を上げる。
「ごほっ!ごほっ!いいか、ごほっ!俺はごほっ!ごほっ!ごふっ!あー、ごほっげっほげぇほ!待って気管に…ごほっ!唾が…げっほ!げぇほ!」
「情けないねぇ男の癖に!」
わはは!と笑われている。笑っている。笑ってくれている。
ちょっとイラっとしてきたな。
「ごほっ…ふぅーー…やっと落ち着いた。」
立ち上がって大きく深呼吸。
「まだ、続ける気かい?よしといた方が身のためだよ?」
むっ!
「だまらっしゃい!このままだと今日の日当もままならないだろ!」
「はぁ?何だって?」
…給料泥棒とは言わせんぞ!
「おい、軽く本気だしてやる前に1つだけ忠告というか助言というかアドバイスだ…全部同じ意味だ!」
「そんな体でアタイに助言だと?寝言は寝てから言いなよ。優男。」
そうさ俺は優しいさ!だから教えるのさ!!
「お前は視野が狭い。」
木剣を腰に姿勢は低く…余計な力は入れず…目は相手を見据える。
「鏡花口伝剣術改め…七竜式闘剣術。」
「ほぅ、噂に聞くサムライかい!来いよ!どんな剣だろうアタイが受け止めてやるよ!!」
うすら笑いしてくれて…。
とっ…。
最初の踏み込みで相手の間合いに入る。
「っ!?」
本来なら1本ではなく複数本必要だけど手加減しないとね。
相手を中心に円形上に動き一手目二手目はわざと受けさせる。本番はここから三手目から速度を一気に加速させて、そこから派生する連続の斬撃。
唐竹
袈裟斬り
逆袈裟
右薙ぎ
左薙ぎ
逆風
切れる位置切れる角度になると迷わず切る。
「剣戟乱舞」
「なっ!?なにぃ!?」
三手目からカウントし十手目まで全て当てる。やはりこのアイガは視野が狭い。
最後の一撃は1度剣を鞘に戻し居合いで切り飛ばすのだけどアイガの目の前で木剣を止める。
「目の前に集中し過ぎ。一撃必殺はいい心がけだけど…せめて二手三手先を頭に入れておきな…。」
「………。」
ぬ?飛んだか?数発ほど良いのが入ったものな。
「…加減はしたし木剣だけど女の子を切るのは気が引ける。」
「………。」(女の子だと!?)
ガタン!と音をたてて両膝から崩れるアイガ。気を失った様だけど手から木剣は放さないのは見事だと思う。
「ふぅ、愉快だねぇ…。」
残りの【ヴァルキリー隊】が怪訝な顔になっていく、まぁこればかりは仕方ない。俺は【めんどくさい】という言葉は使いたくないから【愉快】に置き換えている。仲間達はその事を理解しているけど知らない人はやはりいい気はしないだろうね……知らんけど。
「もう皆一気に来い!全員同時に相手してやる。」
早くゆっくりしたいから一人一人を相手にしていたら時間がかかってしまう。
それにだいたい予想ができたからそれを確認できたらいい。
「おい小僧。」
ぬ?俺のことか?振り向く。居ない……視線を落とす。居た。俺の腰くらいの身長でモッサモッサしている髭のおっさん?確か【ドワーフ】とかなんとか?もう一度言う。髭がモッサモッサしている。
ただ、モッサモッサしているおっさんを後ろから抱き締めてる褐色肌の超絶美女に目が行ってしまう。彼女はたしか【ダークエルフ】とか言ったか?【魔族】や【モンスター】とか【この世界】は何でもありだな。
「小僧よ、お前の強さは本物のようだな。」
「ぬ?本物の強さってのはまだ解らんけどね。その辺の奴らには負けんよ。」
「若いときに【勇者様】と一緒に旅した俺が言うんだからな。小僧お前も光に包まれたのか?」
なんじゃそりゃ!?
「違うのか?【勇者様】達は揃って光に包まれてこの【エルドラド】へとたどり着いたと聞いたがな。」
「俺は落ちてきただけなんだが…。」
「ならスキルってのはあるのか?あと小僧専用の【神騎】は何処にあるんだ?ノワールには【神騎】が無いからな強大な戦力になるってもんだぜぃ。」
「すきる?」
ん?スキル…特技ってことか?というか。
「なんだ?そのしんきってのは?」
「「「「え?」」」」
なんだ皆して声を揃えやがって。
「【神騎】を知らないのかい?ボウヤ。」
美人エルフがポカンとしている。
「ふん可笑しな話だな。」
モッサモッサの髭を触りながらおっさん…もといオヤジさんと呼ばれた人…ん?人って呼んでいいのか?まぁいいか。モッサモッサの人は首をかしげる。
「あ、あの~…。」
ぬ?童顔爆乳少女が手を挙げている。名前は…。
「ゴルザ!」
「エルザです!!!」
「(ぬ~…)…ごめん。」
数分で人の名前を忘れるのは気を付けないとならんな…。俺のとさかも垂れ下がる。
「ふふっ変わった人ですね。」
ぬ!?
「謝ったのに変わった人と言われると傷つくな…。」
「あぁ!すいません!そんなつもりじゃ無かったんです。」
目の前で両手を左右に振るのと同時に目の前で左右に揺れてるのが2つ…。
「貴方の様な強い人が素直に謝るのが不思議で…。」
「ぬ?悪いなと思ったら謝るのが普通じゃないのか?」
「私の知ってる男の人は…なんといいますか…我が強いといいますか…。」
…あぁ、なんとなく言いたいことは解った。
「ぬ~…で?話かい?」
「はい、あの~…シチリさん?でいいでしょうか?」
「おう、目の前の俺はシチリさんだ。」
「はい。シチリさん。で、ですね。あのシチリさんはこの辺では見ない服を着てますよね?あと【神騎やスキル】についても知らないし…それに【落ちてきた】とは?」
あぁ、そう言えば俺が【この世界】に落ちてきた事は言うなと言われてたっけか。
ぬー…困ったな。
「この小僧は【勇者様】達と同じで【異世界】から来たのよ!」
おい!おっさん!!
「えっ!?」
「「「えっーーーーーー!?」」」
再び響く絶叫に耳を塞ぐ。
…うるせぇ…。
「あら旦那様、その事については箝口令がでてなかったかしら?」
「あ?おぉ!そう言えばそうだったな。こいつぁうっかりだ!がはは!」
「もぅ、お茶目さんなんだから!そんなとこも素敵よ!ん~~」
…おっさんの頬にキスしてる…ラブラブしてんなぁ~。
「おい、そこのバカップルよ!(というかバカ2人よ!)」
「なんだ小僧。」
「なによ。」
「さっさと帰って箝口令という言葉の意味を調べてろ、俺はこれからヴァルキリー隊の相手をするから…。」
さっさと帰れ!!
「ん~…そうだな!そろそろ暗くなるし、小僧に【勇者の剣】も渡したしもう用は無いな。おい今度は俺の店に来な!詳しく話を聞こうじゃないか!」
大雑把な感じたが物分かりはいいのかな?
「気が向いたら寄らせてもらうよ。」
「おう!じゃあな!」
入り口に向かってずんずん歩き出す。…あの人どんだけ歩くの遅いんだよ。
「旦那様、ちょい待ち」
トワさん(だったけ?)が自分の帽子に着いている鳥の羽を目の前のオヤジさんの胸の辺りの服に刺す。
(…鳥の羽…小学校の募金を思い出す。)
「…地の鎖を解き放て…飛べ」
彼女の一言でオヤジさんの身体は宙に浮く。
ぬ!?浮かんだ!?
「これでよし!」
トワさんは浮いてる?オヤジさんの手を繋いで歩き出す。浮かんで引っ張られるオヤジさんは風船の様だ。
「おぉ、すまねぇな。あばよ!小僧!」
すげぇ、なんだあれ!浮いてるよな!あの人!え!?ワイヤーとか?まさか!?
「あ、あのぅシチリさん?」
「ぬっ!?」
「本当に【伝説の勇者】様なのですか?」
正直言って【伝説の勇者】のでの字も解らんのだけれども…。
「ここの世界に落ちてきたのは本当だよ。」
もう話すしかないかな…けど俺自身理解してないから話すもなにも説明も出来ないしなぁ。
「まぁ、あれだ…俺については箝口令ってのが出てるから周りに話さないようにな。」
壁に掛けてある木剣を手にして二刀流の形に。
「そんなことより何より…全員構えな。今回は寸止め無しで当てていくからな。」
「え?」
「遅いわー!!」
ヴァルキリー隊に斬り込んで行く。
…数分後、床に息をきらしてへたりこんでる女子に木剣を持って立っている俺。
…客観的に見ると危ない。
「はい、今日はここまでな。」
「あ、ありがとう…ござ…ました……。」
よし!終わった!風呂だ!ベットだ!飯だ!!
……その時の俺は完全に浮かれていた。完全サバイバルをしていたから多少のことでも耐えられた。
余り物のご飯(低カロリー)、大丈夫構わない!最後の入浴(掃除付)これも大丈夫!それでもサッパリする…ただ…。
俺に用意されたベットは…。
「おい、この際大きさはどうでもいいけど…なんで広間なんだ?」
大きな広間にポツンと1つのベット……いじめか!?
「男は危険だから!そこで我慢して!!」
ぬ~…ここは俺が折れるしかないだろうな…。
仕方ない、久々にベットで寝れるのだから。今まで野宿みたいなものだったからな…体が休まらないよ。特に馬小屋が酷かったな、漫画やアニメでたまに休む描写があるけども…実際獣臭で眠れん。
…やれやれこっちの世界に来て1週間はなるのかな?日にちの感覚が完全に狂ってる。
縁あってこの国の姫さんー…あっ【姫】というと嫌な顔をするから【王女】と呼べと言われたけど…同じ意味合いじゃね?と思うのは俺だけだろうか。
まぁともかく【この世界】に来てから一週間は過ぎた。一週間も過ぎたのだが…どうしたら元の世界に戻れるのか皆目検討もつかない。
なのでもう、なるようになればよいと思うことにした!だってしょうがないじゃないか…はぁ…兎に角もう寝ようかな。
バフッと音を立てながらベットに倒れるとふかふかな布団の感触がいい。流石は女の園生活環境が充実している。こんなに寝心地がよいベットはいつ以来か…。
なんだかんだで、ここ【楽園】という所で世話になることになったが。
ジーーーーーーーーーー。
ジーーーーーーーーーー。
ジーーーーーーーーーー。
めっちゃ見られてる…。
彼女達はここ【楽園】で生活をしている…なんと言ったか…そうだ!ヴァルキリー隊だ。ここノワール国のエリカ王女専属の20人による部隊。
めっちゃ見てくるけど俺余程警戒されてるな。
ふぅ…ここで生活していくのかぁ…と思いながら意識が遠退いてい…。
「キャーーーーーーー!」
……かなかった。
「!?!?」
痛烈な悲鳴で目が覚める。
「なんだ?」
ベットから跳ね起き上着と貰った日本刀を手に部屋を飛び出る。
「どこからの悲鳴だ!?」
ここは異世界、剣と魔法と魔物の世界。
一瞬の油断が命取り!
確か甘味処~七竜~の店長をしてた筈なんだけど…はぁ~…金が無いってのは辛い…。
「やーーーーーー!」
爆乳少女のエルザだったか1番手の彼女が手にしている木剣を俺に向けて突進してくる。
あどけなく一生懸命な彼女の攻撃だが当たってあげる訳にもいかず…何より当たれば痛いし…くいっと半身だけ反らして避ける。
ついでに相手の突進力を利用して足を引っ掻ける。
「きゃっ!?」
受け身が遅れたのかとれないのかは知らないが…べちゃっと倒れる。
「あ~ん!痛い~~!!」
頭が痛いな…ここに居る【ヴァルキリー隊】と呼ばれる20人の女子を鍛えるのが仕事と言われたけども…。
「突進力はあるけど攻め手が弱い。」
ふぅ剣を握るのは久々だ。現代では御法度だし剣より拳を使う事の方が多いし。
「次、行きます!ヤーー!」
これもまた幼いかけ声と共に木剣の先端が伸びてくる。ぬ!顔面突きか?でも遅い…顔面に伸びてくる木剣の先端をひょいっと首だけ動かして交わす。
彼女はそのままの態勢で俺に体当たりする形になった。
「あぅ!?」
「おっと」
体重差がある為ぶつかった衝撃で後ろへ彼女の体が傾く。転倒を防ぐため俺は咄嗟に彼女の背中へと手を回した。
この女性というか【ヴァルキリー隊】の装備はエリカ王女様の意向で軽装である。薄着…つまり露出が多い。
剥き出しの背中に直接手が触れる。
「ひゃぅ!?」
「ふぅ、大丈夫かい?」
みるみる彼女の顔が赤くなっていく…微動だにしないし…このまま爆発するんじゃないかと不安になった。
「おい、どうした?何処か痛めたか?」
「ひゃっ!?あ!あの!!すいません!!だ、男性に抱かれるのは初めてで…その……。」
イヤイヤ、抱いちゃいねぇ…支えただけだ…。ん?ちょっとまて今男性は初めてと言ったか!?なんか闇を感じるのは俺だけか…?
「ま、まぁとにかく怪我とかはないな…。」
「はい、大丈夫…です。」
顔が真っ赤…あんなので抱かれたのなら彼女は今後幾つもの男や魔物に抱かれることになるのだろうか…。
そそくさと一礼して彼女は下がっていく。
「なら、次はアタイが!!」
やれやれ、今度は短髪黒髪で大剣を背にした大柄の女性が向かってきた。
175の俺より背が高い…190?2メートルは有るのか?腕回りも俺よりあるし筋肉がすげえなぁ。ガ○ツか!?なんだか仲間の薫を連想する。
まぁ薫は220だしアイツは筋肉の集大成みたいなものだしな。
「アタイはヴァルキリー隊特攻隊長のアイガ!お前が本当に強いか見せてもらうじゃないか!!」
ぬ、大見得をきられて名乗られたな。これは返すのが礼儀か?
彼女は背中の大剣ではなく通常の木剣を向けてくる。
そう言えば、出会い頭に剣を向けてきた時も背中の大剣ではなかったな。何故初めからその大剣を構えないのか疑問を問いかける。
アイガと名のる筋肉…いや女性はふっと一笑。
「狭い所でこんな大剣を振り回す馬鹿がいるかよ。」
うん、ごもっとも。
「それに、あんたからは微塵も殺気が感じなかった。それが理由だ。」
ほぅ、感心感心。ちゃんと見てるし見えてるようだ。
改めてアイガは俺に木剣を構え直す。
「ぬ」
「あ?どうかしたか?」
これは驚いた。隙が無い。【ヴァルキリー隊】の中でもこのアイガは格が違う。小学生と高校生くらいに違う。
なかなかの場数を踏んできたのだろうな。
ほぅほぅと感心していると「こっちからいくぜ!!」
アイガが走り出して一閃。
下から上にかけて俺の木剣を振り払う。やはり他の子とは違う慣れてる。
「ほぅら!胴体がガラ空きだぜ!!」
どうする?一度受けてみる?けどなぁ痛いのは嫌だなぁ~どうす…。
「……………ぼほっ!?」
脇腹に響く思わず地面に片膝をついて脇腹を押さえる。激痛…痛いし…重い…!!これはきっと内出血で黒くなるな。
まったく考えすぎた…実戦なら胴体から真っ二つじゃないか!
あの腕力から考えて、あの大剣だろ…3~40cmの丸太ならスパッといくんじゃないか。
「なんだい、か弱いねぇ!そんな程度でアタイ達に剣を教えるって?冗談にも程ってものがあるよ!」
…言ってくれるなぁ。ここはちょっとでも言い返すかと顔を上げる。
「ごほっ!ごほっ!いいか、ごほっ!俺はごほっ!ごほっ!ごふっ!あー、ごほっげっほげぇほ!待って気管に…ごほっ!唾が…げっほ!げぇほ!」
「情けないねぇ男の癖に!」
わはは!と笑われている。笑っている。笑ってくれている。
ちょっとイラっとしてきたな。
「ごほっ…ふぅーー…やっと落ち着いた。」
立ち上がって大きく深呼吸。
「まだ、続ける気かい?よしといた方が身のためだよ?」
むっ!
「だまらっしゃい!このままだと今日の日当もままならないだろ!」
「はぁ?何だって?」
…給料泥棒とは言わせんぞ!
「おい、軽く本気だしてやる前に1つだけ忠告というか助言というかアドバイスだ…全部同じ意味だ!」
「そんな体でアタイに助言だと?寝言は寝てから言いなよ。優男。」
そうさ俺は優しいさ!だから教えるのさ!!
「お前は視野が狭い。」
木剣を腰に姿勢は低く…余計な力は入れず…目は相手を見据える。
「鏡花口伝剣術改め…七竜式闘剣術。」
「ほぅ、噂に聞くサムライかい!来いよ!どんな剣だろうアタイが受け止めてやるよ!!」
うすら笑いしてくれて…。
とっ…。
最初の踏み込みで相手の間合いに入る。
「っ!?」
本来なら1本ではなく複数本必要だけど手加減しないとね。
相手を中心に円形上に動き一手目二手目はわざと受けさせる。本番はここから三手目から速度を一気に加速させて、そこから派生する連続の斬撃。
唐竹
袈裟斬り
逆袈裟
右薙ぎ
左薙ぎ
逆風
切れる位置切れる角度になると迷わず切る。
「剣戟乱舞」
「なっ!?なにぃ!?」
三手目からカウントし十手目まで全て当てる。やはりこのアイガは視野が狭い。
最後の一撃は1度剣を鞘に戻し居合いで切り飛ばすのだけどアイガの目の前で木剣を止める。
「目の前に集中し過ぎ。一撃必殺はいい心がけだけど…せめて二手三手先を頭に入れておきな…。」
「………。」
ぬ?飛んだか?数発ほど良いのが入ったものな。
「…加減はしたし木剣だけど女の子を切るのは気が引ける。」
「………。」(女の子だと!?)
ガタン!と音をたてて両膝から崩れるアイガ。気を失った様だけど手から木剣は放さないのは見事だと思う。
「ふぅ、愉快だねぇ…。」
残りの【ヴァルキリー隊】が怪訝な顔になっていく、まぁこればかりは仕方ない。俺は【めんどくさい】という言葉は使いたくないから【愉快】に置き換えている。仲間達はその事を理解しているけど知らない人はやはりいい気はしないだろうね……知らんけど。
「もう皆一気に来い!全員同時に相手してやる。」
早くゆっくりしたいから一人一人を相手にしていたら時間がかかってしまう。
それにだいたい予想ができたからそれを確認できたらいい。
「おい小僧。」
ぬ?俺のことか?振り向く。居ない……視線を落とす。居た。俺の腰くらいの身長でモッサモッサしている髭のおっさん?確か【ドワーフ】とかなんとか?もう一度言う。髭がモッサモッサしている。
ただ、モッサモッサしているおっさんを後ろから抱き締めてる褐色肌の超絶美女に目が行ってしまう。彼女はたしか【ダークエルフ】とか言ったか?【魔族】や【モンスター】とか【この世界】は何でもありだな。
「小僧よ、お前の強さは本物のようだな。」
「ぬ?本物の強さってのはまだ解らんけどね。その辺の奴らには負けんよ。」
「若いときに【勇者様】と一緒に旅した俺が言うんだからな。小僧お前も光に包まれたのか?」
なんじゃそりゃ!?
「違うのか?【勇者様】達は揃って光に包まれてこの【エルドラド】へとたどり着いたと聞いたがな。」
「俺は落ちてきただけなんだが…。」
「ならスキルってのはあるのか?あと小僧専用の【神騎】は何処にあるんだ?ノワールには【神騎】が無いからな強大な戦力になるってもんだぜぃ。」
「すきる?」
ん?スキル…特技ってことか?というか。
「なんだ?そのしんきってのは?」
「「「「え?」」」」
なんだ皆して声を揃えやがって。
「【神騎】を知らないのかい?ボウヤ。」
美人エルフがポカンとしている。
「ふん可笑しな話だな。」
モッサモッサの髭を触りながらおっさん…もといオヤジさんと呼ばれた人…ん?人って呼んでいいのか?まぁいいか。モッサモッサの人は首をかしげる。
「あ、あの~…。」
ぬ?童顔爆乳少女が手を挙げている。名前は…。
「ゴルザ!」
「エルザです!!!」
「(ぬ~…)…ごめん。」
数分で人の名前を忘れるのは気を付けないとならんな…。俺のとさかも垂れ下がる。
「ふふっ変わった人ですね。」
ぬ!?
「謝ったのに変わった人と言われると傷つくな…。」
「あぁ!すいません!そんなつもりじゃ無かったんです。」
目の前で両手を左右に振るのと同時に目の前で左右に揺れてるのが2つ…。
「貴方の様な強い人が素直に謝るのが不思議で…。」
「ぬ?悪いなと思ったら謝るのが普通じゃないのか?」
「私の知ってる男の人は…なんといいますか…我が強いといいますか…。」
…あぁ、なんとなく言いたいことは解った。
「ぬ~…で?話かい?」
「はい、あの~…シチリさん?でいいでしょうか?」
「おう、目の前の俺はシチリさんだ。」
「はい。シチリさん。で、ですね。あのシチリさんはこの辺では見ない服を着てますよね?あと【神騎やスキル】についても知らないし…それに【落ちてきた】とは?」
あぁ、そう言えば俺が【この世界】に落ちてきた事は言うなと言われてたっけか。
ぬー…困ったな。
「この小僧は【勇者様】達と同じで【異世界】から来たのよ!」
おい!おっさん!!
「えっ!?」
「「「えっーーーーーー!?」」」
再び響く絶叫に耳を塞ぐ。
…うるせぇ…。
「あら旦那様、その事については箝口令がでてなかったかしら?」
「あ?おぉ!そう言えばそうだったな。こいつぁうっかりだ!がはは!」
「もぅ、お茶目さんなんだから!そんなとこも素敵よ!ん~~」
…おっさんの頬にキスしてる…ラブラブしてんなぁ~。
「おい、そこのバカップルよ!(というかバカ2人よ!)」
「なんだ小僧。」
「なによ。」
「さっさと帰って箝口令という言葉の意味を調べてろ、俺はこれからヴァルキリー隊の相手をするから…。」
さっさと帰れ!!
「ん~…そうだな!そろそろ暗くなるし、小僧に【勇者の剣】も渡したしもう用は無いな。おい今度は俺の店に来な!詳しく話を聞こうじゃないか!」
大雑把な感じたが物分かりはいいのかな?
「気が向いたら寄らせてもらうよ。」
「おう!じゃあな!」
入り口に向かってずんずん歩き出す。…あの人どんだけ歩くの遅いんだよ。
「旦那様、ちょい待ち」
トワさん(だったけ?)が自分の帽子に着いている鳥の羽を目の前のオヤジさんの胸の辺りの服に刺す。
(…鳥の羽…小学校の募金を思い出す。)
「…地の鎖を解き放て…飛べ」
彼女の一言でオヤジさんの身体は宙に浮く。
ぬ!?浮かんだ!?
「これでよし!」
トワさんは浮いてる?オヤジさんの手を繋いで歩き出す。浮かんで引っ張られるオヤジさんは風船の様だ。
「おぉ、すまねぇな。あばよ!小僧!」
すげぇ、なんだあれ!浮いてるよな!あの人!え!?ワイヤーとか?まさか!?
「あ、あのぅシチリさん?」
「ぬっ!?」
「本当に【伝説の勇者】様なのですか?」
正直言って【伝説の勇者】のでの字も解らんのだけれども…。
「ここの世界に落ちてきたのは本当だよ。」
もう話すしかないかな…けど俺自身理解してないから話すもなにも説明も出来ないしなぁ。
「まぁ、あれだ…俺については箝口令ってのが出てるから周りに話さないようにな。」
壁に掛けてある木剣を手にして二刀流の形に。
「そんなことより何より…全員構えな。今回は寸止め無しで当てていくからな。」
「え?」
「遅いわー!!」
ヴァルキリー隊に斬り込んで行く。
…数分後、床に息をきらしてへたりこんでる女子に木剣を持って立っている俺。
…客観的に見ると危ない。
「はい、今日はここまでな。」
「あ、ありがとう…ござ…ました……。」
よし!終わった!風呂だ!ベットだ!飯だ!!
……その時の俺は完全に浮かれていた。完全サバイバルをしていたから多少のことでも耐えられた。
余り物のご飯(低カロリー)、大丈夫構わない!最後の入浴(掃除付)これも大丈夫!それでもサッパリする…ただ…。
俺に用意されたベットは…。
「おい、この際大きさはどうでもいいけど…なんで広間なんだ?」
大きな広間にポツンと1つのベット……いじめか!?
「男は危険だから!そこで我慢して!!」
ぬ~…ここは俺が折れるしかないだろうな…。
仕方ない、久々にベットで寝れるのだから。今まで野宿みたいなものだったからな…体が休まらないよ。特に馬小屋が酷かったな、漫画やアニメでたまに休む描写があるけども…実際獣臭で眠れん。
…やれやれこっちの世界に来て1週間はなるのかな?日にちの感覚が完全に狂ってる。
縁あってこの国の姫さんー…あっ【姫】というと嫌な顔をするから【王女】と呼べと言われたけど…同じ意味合いじゃね?と思うのは俺だけだろうか。
まぁともかく【この世界】に来てから一週間は過ぎた。一週間も過ぎたのだが…どうしたら元の世界に戻れるのか皆目検討もつかない。
なのでもう、なるようになればよいと思うことにした!だってしょうがないじゃないか…はぁ…兎に角もう寝ようかな。
バフッと音を立てながらベットに倒れるとふかふかな布団の感触がいい。流石は女の園生活環境が充実している。こんなに寝心地がよいベットはいつ以来か…。
なんだかんだで、ここ【楽園】という所で世話になることになったが。
ジーーーーーーーーーー。
ジーーーーーーーーーー。
ジーーーーーーーーーー。
めっちゃ見られてる…。
彼女達はここ【楽園】で生活をしている…なんと言ったか…そうだ!ヴァルキリー隊だ。ここノワール国のエリカ王女専属の20人による部隊。
めっちゃ見てくるけど俺余程警戒されてるな。
ふぅ…ここで生活していくのかぁ…と思いながら意識が遠退いてい…。
「キャーーーーーーー!」
……かなかった。
「!?!?」
痛烈な悲鳴で目が覚める。
「なんだ?」
ベットから跳ね起き上着と貰った日本刀を手に部屋を飛び出る。
「どこからの悲鳴だ!?」
ここは異世界、剣と魔法と魔物の世界。
一瞬の油断が命取り!
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる