桜の死神とシンデレラ

佐々倉 桜

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真夏の夜の出会い。

その 2

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 龍乃芽町にある築5年25階建てタワーマンション。

 一人暮らしの部屋に女を担いで帰るのは客観的に見ても危険だったと思う。
 入り口でコンビニへ向かうとすれ違った管理人には酔っぱらいを拾ったと言っておいた。元々顔馴染みの管理人だから大丈夫だろう。
 エレベーターに乗って23階を押す。よく言うマンションのでもある防音問題や隣人同士のなどはこのマンションでは聞いたことがない。
 上下左右の壁は完全防音だし俺住んでいる所は角部屋で隣は老夫婦が住んでいる。
 その老夫婦とはよい距離感を保っているから、自分には無縁だと思っている。

 カードロック式の鍵を開け担いだ女の靴を脱がす。
 出来ることなら洗ってからベットに寝かせたいが…野良犬や野良猫じゃないんだ。
 そのままベットに寝かす……多少の汚れは後でまとめて洗おう。

 アタッシュケースの中身を金庫へと移してからシャワーを浴びる。
 髪を洗いながら…これからの事を考えてみる。

「さて、どうする…。」

 声に出してみても誰も答えない…ならこれからどうする?

 泡を流して……暫し黄昏てから…先ずは何か食べてから考えよう。

 着替えてから先ほどの女の様子を見る。
 心身ともに疲れているのかぐっすりだ…。(決して俺の一撃が効いている訳ではない。)

 腹が減った…。

 見知らぬ女を1人で部屋に置いていくのもどうだろう…と言うことで買い物へは行けない。
 と言うことは出前、デリバリーか……何を頼む?というか頼めるのか?スマホの時計………午後11時30分。

 よし、ピザ位ならギリギリ頼めるな。

 気持ちを言えばザル蕎麦が食べたかった。1時間半早かったら頼めたのだが…。
 ここはもう仕方がない…これ以上遅れるとピザも危うい。
 スマホで店名検索してサイトにアクセス…電話番号…。

「はい、お電話ありがとうございます。グレードピザです。ご注文ですか?」

 男の店員の声が頭に響くが…シーフードミックスとカルボナーラ、コーラと…寝ている女は…烏龍茶でいいか…。

 「かしこまりました。では出来次第お届けに参ります。失礼します。」

 これで、飯の問題は解決だ。

 机に座りノートパソコンとタブレットを立ち上げる。

 仕事の完了の事後処理をまとめて次の仕事の予定を確認する。

 仕入先、依頼者、発注者、モノの届け先…と日時と場所。
 確認することは山ほどある。
 フリーランスと言えば聞こえはいいが1人で全部やるのは流石にしんどい…。

 パソコンとタブレットと睨み合いをしていたらチャイムがなる。注文のピザが届いたのだろう。
 インターフォンの画面を確認するとやはり配達員。
 部屋のドアを開けて会計を済ませる。
 なかなかいい香りじゃないか…これは食欲をそそる………。

 居間に入るとさっきまで寝ていた女が立って窓の外を除いていた。

「おはよう。」

 咄嗟に出た言葉だが、もう時計の針は午前に突入しようとしていた。
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