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第8話 見た目で判断されちゃ困るわ
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「はじめまして」
玄関へ向かった私は、扉をそっと開け隙間から外の二人を覗き込んだ。
片方はボサボサの白髪と同色の口髭を蓄えた、派手な柄の半袖短パン姿の中年男性。
もう片方は黒のロングヘアにモノトーンのドレス、やけに赤い目元と唇をした……そう、俗にいう地雷感のある見た目の女性だ。
男性が目を丸くする。
「……驚いたな。前々から不気味な建物だとは思っていたが、まさか少女の霊まで住み着くようになるとは」
「はい?」
幽霊って、もしかして私のこと?
だとしたら、初対面で随分と失礼な男だな。
女性が上半身を引いて声を上ずらせる。
「えっ! この子、幽霊なの!?」
「生きてるよ……」
どこの世界に、わざわざ暗い室内から眩しい日の下に飛び出してくる幽霊がいるんだ。
ニーナといい、この二人といい……テンセイシャはどこか抜けている人が多いのだろうか。
「悪いわね。知らない顔が現れたものだから、早とちりしてしまったわ」
「はあ……」
「あたしはマリーカ。で、こっちの変なオッサンはジノスよ。ここにいるってことは、あんたもテンセイシャなのよね。よろしく」
「アンジェだよ。こちらこそ、よろしくね」
その後、私はジノスとマリーカを食堂へと案内。
ニーナがお茶を淹れてくれる旨を伝え、三人でテーブルについた。
仄かに気まずさの漂う雰囲気の中、マリーカがどこからか黒い箱を取り出しテーブルに置く。
「そういえば、これお土産なんだけど……」
「ああ、どうも。これはご丁寧に」
「中身は魔王クッキーよ。さあ、開けてみて」
「魔王クッキー?」
私は疑問を感じながらも、勧められるがままに蓋を開けた。
中には、なんの変哲もない楕円形のクッキーが三十個ほど綺麗に並べられている。
見た目に不自然な点は一切感じられないが、魔王要素はどこだろう?
「仰々しい名前の割りに案外、普通の見た目だね」
「おっと、見た目で判断されちゃ困るわ。味は絶品、夜光大陸一の人気を誇る銘菓なんだから」
夜光大陸とはこの世界で二番目に大きい大陸の名前。
魔物と呼ばれる人ならざる存在が全土に分布しており、未開拓な場所も多いのだとか。
ちなみに、私たちの今いる場所は陽光大陸と呼ばれている。
夜光大陸を抑え世界一の大きさを誇る大陸であり、主に人間が統治している土地だ。
「へえ、夜光大陸の食べ物なんて珍しいね」
「でしょ?」
「……一応、尋ねておくけど激辛だったりしないよね?」
「クッキーは辛い食べ物じゃないわよ?」
名前に「悪魔」とか「魔王」が付く食べ物に、なんとなく辛いイメージがあるのは私だけだろうか。
すると、ジノスが箱に向けてしれっと手を伸ばす。
「では、一ついただこう」
「ああ、あなたが一目散に飛びつくんだ……」
とはいえ、毒見してもらえると考えたら好都合か。
ジノスは箱からクッキーを一枚手に取り、一口かじる。
彼は数秒ほど咀嚼した後……口をすぼめて身体を震わせた。
「何、その表情? 酸っぱいの?」
とても、美味しいものを食べた時のリアクションとは思えない。
少し食べる気が失せた。
「それじゃあ、あたしも一つもらうわね」
マリーカもジノスに続いてクッキーを口に放り込む。
彼女はしばらく咀嚼した後……眉間にシワを寄せてうつむく。
「だから何、その表情? 酸っぱいの? 苦いの?」
そもそも、口に入れていいものなのかすら疑わしい。
クッキーごときにあれだけ複雑そうな表情を浮かべられたら、毒物の混入を疑ってしまう。
もはや、食べる気など完全に失せてしまった。
「ねえ、これ何味?」
「アルピカンヌザバストリー味だ」
「なんて?」
アルピ……なんとかってなんだ。
知っている味なら端っこだけでもかじってみようかと思ったけど、これじゃあ無理だな。
玄関へ向かった私は、扉をそっと開け隙間から外の二人を覗き込んだ。
片方はボサボサの白髪と同色の口髭を蓄えた、派手な柄の半袖短パン姿の中年男性。
もう片方は黒のロングヘアにモノトーンのドレス、やけに赤い目元と唇をした……そう、俗にいう地雷感のある見た目の女性だ。
男性が目を丸くする。
「……驚いたな。前々から不気味な建物だとは思っていたが、まさか少女の霊まで住み着くようになるとは」
「はい?」
幽霊って、もしかして私のこと?
だとしたら、初対面で随分と失礼な男だな。
女性が上半身を引いて声を上ずらせる。
「えっ! この子、幽霊なの!?」
「生きてるよ……」
どこの世界に、わざわざ暗い室内から眩しい日の下に飛び出してくる幽霊がいるんだ。
ニーナといい、この二人といい……テンセイシャはどこか抜けている人が多いのだろうか。
「悪いわね。知らない顔が現れたものだから、早とちりしてしまったわ」
「はあ……」
「あたしはマリーカ。で、こっちの変なオッサンはジノスよ。ここにいるってことは、あんたもテンセイシャなのよね。よろしく」
「アンジェだよ。こちらこそ、よろしくね」
その後、私はジノスとマリーカを食堂へと案内。
ニーナがお茶を淹れてくれる旨を伝え、三人でテーブルについた。
仄かに気まずさの漂う雰囲気の中、マリーカがどこからか黒い箱を取り出しテーブルに置く。
「そういえば、これお土産なんだけど……」
「ああ、どうも。これはご丁寧に」
「中身は魔王クッキーよ。さあ、開けてみて」
「魔王クッキー?」
私は疑問を感じながらも、勧められるがままに蓋を開けた。
中には、なんの変哲もない楕円形のクッキーが三十個ほど綺麗に並べられている。
見た目に不自然な点は一切感じられないが、魔王要素はどこだろう?
「仰々しい名前の割りに案外、普通の見た目だね」
「おっと、見た目で判断されちゃ困るわ。味は絶品、夜光大陸一の人気を誇る銘菓なんだから」
夜光大陸とはこの世界で二番目に大きい大陸の名前。
魔物と呼ばれる人ならざる存在が全土に分布しており、未開拓な場所も多いのだとか。
ちなみに、私たちの今いる場所は陽光大陸と呼ばれている。
夜光大陸を抑え世界一の大きさを誇る大陸であり、主に人間が統治している土地だ。
「へえ、夜光大陸の食べ物なんて珍しいね」
「でしょ?」
「……一応、尋ねておくけど激辛だったりしないよね?」
「クッキーは辛い食べ物じゃないわよ?」
名前に「悪魔」とか「魔王」が付く食べ物に、なんとなく辛いイメージがあるのは私だけだろうか。
すると、ジノスが箱に向けてしれっと手を伸ばす。
「では、一ついただこう」
「ああ、あなたが一目散に飛びつくんだ……」
とはいえ、毒見してもらえると考えたら好都合か。
ジノスは箱からクッキーを一枚手に取り、一口かじる。
彼は数秒ほど咀嚼した後……口をすぼめて身体を震わせた。
「何、その表情? 酸っぱいの?」
とても、美味しいものを食べた時のリアクションとは思えない。
少し食べる気が失せた。
「それじゃあ、あたしも一つもらうわね」
マリーカもジノスに続いてクッキーを口に放り込む。
彼女はしばらく咀嚼した後……眉間にシワを寄せてうつむく。
「だから何、その表情? 酸っぱいの? 苦いの?」
そもそも、口に入れていいものなのかすら疑わしい。
クッキーごときにあれだけ複雑そうな表情を浮かべられたら、毒物の混入を疑ってしまう。
もはや、食べる気など完全に失せてしまった。
「ねえ、これ何味?」
「アルピカンヌザバストリー味だ」
「なんて?」
アルピ……なんとかってなんだ。
知っている味なら端っこだけでもかじってみようかと思ったけど、これじゃあ無理だな。
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