魔導士カイラは許されない〜インキュバスの呪いで貞操帯をかけられた少年〜

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マティアス

甘い時間

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 萎えていたカイラの肉茎が、ヴェルトの手の中で膨らんでゆく。

「カイラ君、気持ち良いかい」

 マティアスに聞かれぬよう、ヴェルトはカイラの耳元で囁いた。

 カイラは頬を赤らめながらコクリと頷く。

「ゆっくりやるからね。我慢しようね」

「はい……♡」

 体が火照ってきたカイラはヴェルトの肩に両手を回し、小さな声で返事をした。

   ***

 夢魔の貞操帯を前に、マティアスは研究者としての興奮を覚えていた。

 なかなかこの手の類の呪いにはお目にかかれないからだ。

(この機会にたっぷり調べさせてもらおう……いやぁ、あのカイラとか言うイモ息子、思わぬ収穫であった。まさかこの呪いを調べる為にクロウに声をかける訳にもいかぬし……さてとどこから調べてやろうか)

「……あ♡」

 我慢し切れずにカイラが漏らした甘い吐息がマティアスの耳に入る。

(凄いな、男に触られてがっている……私にはとても理解できん)

 気を散らさぬようマティアスは貞操帯に注目する。

(素材は……特に変哲のない、ただの金属だな)

「ふ……っ♡」

(鍵穴もない。外れるきっかけは、『誰かが自分と性的な行為に及ぼうとした時』で良いのか?)

「ん……♡」

(なかなか高度な呪いがかけられているな。生意気な奴め)

「は……っ♡」

(…………)

「ヴェルト殿」

「はい?」

「もう少しゆっくり。とな?」

 やんわりと『うるさい』と伝えたのがきちんと伝わったらしく、ヴェルトから「分かりました」という言葉が返ってきた。

「カイラ君、頑張って声抑えようか」

「っ、ごめんなさい……♡」

 声を我慢しようと決めたにも関わらず、ヴェルトの手の心地よさにカイラは何度も甘い吐息を吐いてしまう。

「あの、ヴェルトさん」

「ん?」

「僕の口……塞いで、くれませんか」

「良いよ」

 ヴェルトはカイラの口元を大きな手で覆った。

「~~ッッ♡」

 声を出さぬよう堪え、身を捩らせ、ヴェルトの背に爪を立てる。


(可愛いなぁ……カイラ君)

 話しかけるとより興奮してすぐに達してしまう可能性があるので、ヴェルトはその言葉を心の中に閉じ込めておく事にした。

 カイラの呪いのせいもあるのだろう。ヴェルトの中にある性的な欲求が次第に膨らんでゆき、下半身が反応し始める。

(帰ったらカイラ君の事可愛がるか)

 心にそう決めて、ヴェルトはカイラに愛撫し続ける。


 それからしばらくして。

「よし、もう十分だ。ヴェルト殿、もう良いぞ」

「もう良いって。カイラ君よく我慢したね」

 ヴェルトはカイラの耳元で囁き、カイラの苦しそうな屹立を本格的に扱き始める。

 「カイラ君」とヴェルトは耳元で囁く。

「イっていいよ」

「~~ッッ♡♡」

 カイラは気持ちよさそうに身を震わせ、紙の中へ精を吐き出した。

「はっ……はっ……♡」

 絶頂が終わった時、マティアスの手から貞操帯が離れて再びカイラの下半身を捕らえた。

「凄いな、全く隙が無い」

 マティアスは振り返りカイラに目をやる。

 ヴェルトという剣士に抱きしめられ、頬を紅潮させ目を潤ませる少年。

(……一部の女に受けそうだな)

 とマティアスは金の匂いを感じた。

「次にカイラ、貴様の体を見てみようか。……大丈夫か、カイラ」

「っ、はい。大丈夫、です」

 カイラはフラフラと立ち上がる。

「カイラ、座ったままでいい……ヴェルト殿、少し離れていてくれ。近くにいられると気が散る」

(マティアスはまだ子供っぽいから大丈夫……か)

 ヴェルトは渋々頷きソファから離れた。

 ヴェルトと入れ替わるように、マティアスはカイラの隣に座る。

「あの、僕の側に寄ると呪いが……」

「大丈夫だカイラ。私の精神力を舐めるな」

 マティアスはカイラの体に触れる。

「…….3つだ、3つ掛けられている。可哀想に、どの効果も年頃の貴様には辛いだろう? そのうえ人もどんどん離れてゆく……すぐに解除せねばな。その為には、この呪いをかけた夢魔に呪いを解かせるか、倒すかしかない」

 離れているヴェルトが口を開く。

「僕達も夢魔を探してるんですが、なかなか足取りが掴めないんです。人に聞く訳にもいかないし」

 マティアスは「ふぅむ」と唸る。

「賢明である。人に訊ねたらカイラに呪いがかけられている事が知れ渡り、邪な思いを持って近付く者も現れるかもしれぬ」

 ヴェルト殿。とマティアスは呼びかける。

「貴様もカイラの呪いに影響を受けているのではないか」

 「えぇ」とヴェルトは頷いた。

(実を言うと今もね……早く帰りたいよ)

「貴様からも夢魔の魔力の残滓ざんしを微かに感じる。2つだ……ひとつはつい最近に。もうひとつは1ヶ月か2ヶ月くらい前であろう」

 カイラに手をなかなか出さなかったが故に、一時的に自慰封印の呪いをかけられた。

 そしてガゼリオに犯された時に、体を敏感にさせるような魔法をかけられたのだ。

 忘れようとしていたガゼリオの事を思い出し、ヴェルトの表情に陰が差す。

「ん? ……ヴェルト殿?」

「っ、ごめんごめん」

 とヴェルトはヘラヘラ笑って続ける。

「言われた通り、僕も夢魔に魔法をかけられた事があります」

「大変であるな。それでも尚、貴様はカイラから離れようとしない。……カイラ。この男、大切にしてやれよ」

「は、はい」

「さて、少し休憩にするか。私とアマネは隣の部屋にいるからな。何かあれば言ってくれ」

 と言い残し、マティアスはアマネを連れて研究室から出て行ってしまった。


「……カイラ君、嫌じゃないかい? 大丈夫?」

 ソファに戻ったヴェルトは、心配そうな表情でカイラの顔を覗き込んだ。

「えぇ、大丈夫です」

 とカイラは出されたハーブティーを一口飲んで「美味しい」と呟いた。

(嘘だろ、僕の舌がおかしいだけか?)

「あの、ヴェルトさん」

「ん? なに?」

「さっきマティアスさんから言われて気になったんですけど……ヴェルトさん、なんで僕と一緒にいてくれるんでしょうか?」

 マティアスの言う通り、この呪いは周りの人間を巻き込む。

 ヴェルトだけでなくハルキオン。そしてカイラは知らないがガゼリオもその毒牙にかかった。

 特にヴェルトに関しては常に劣情を掻き立てられている上に、2度も夢魔の魔法をかけられ弄ばれている。

 そのような中でも、ヴェルトはカイラから離れずずっと一緒にいる。

 カイラの問いにヴェルトは唸った後、こう話し始めたのだ。

「放っておけないからかなぁ」

 とだけ言ってティーカップの中を眺め始めた。

「……え、それだけですか?」

「人が一緒にいる理由なんてそんなもんじゃない?」

 とヴェルトは笑った。

 カイラと一緒にいる理由よりも、カイラから離れる理由の方が多いはずなのに。

「……うーん、強いて言えば、昔付き合ってた彼女に似てるからかな」

「彼女ですか? そういえばヴェルトさんの恋愛関係の話って聞いた事無かったです」

「そうだったっけ? ……でまあ、髪や目の色も同じだし、なんかこう……全体の雰囲気が似てるというか。魔法も勉強してたからね、今思うと共通点多いかも」

 カイラの頭に、美しい茶髪と緑の瞳をもった、ヴェルトと同じくらいの年齢の女性が思い浮かぶ。

「そうなんですか? ……えへへ、じゃあ僕にとって魔導士の先輩なんですね」

「まぁもうとっくに死んでるんだけどね」

 あまりに平然とした様子で言うので、カイラは冷水を掛けられたかのような表情を浮かべる。

「もう……10年になるよ。彼女が病気になっちゃって、そのまま死んじゃった」

 野暮な事を言ってしまったと、カイラの心が罪悪感で満たされてゆく。

「ヴェルトさん……ごめんなさい」

「なんでカイラ君が謝るのさ。僕がしだした話だよ」

 とヴェルトは微笑んでみせる。

「この話はここで終わりにしよっか。ちょっと暗い話題だからね」

 それからしばらく、2人はゆったりと過ごしていた。

 マティアスとアマネが隣の部屋から戻って来たので、ヴェルトは再び邪魔をしないようソファから離れる。

 再び入れ替わるようにマティアスはソファに腰掛け、カイラに向き直る。

「さてと____」

 マティアスが本格的に呪いの解析を始めようとした時だった。

 マティアスとカイラの背後にあった未知の植物が大きくうねり始めたのだ。

 植木鉢から根を抜き始める。まるで人間がぬかるみから足を出す時のような感じで。

「む……!?」

 何が起こっているのか分からず、その場にいた全員が一瞬だけ固まってしまう。

 その隙を突かれてしまった。

 植物からツルが伸びて、マティアスとカイラの体を絡めて持ち上げてしまったのだ。

「何っ!?」

 マティアスが驚きの声を上げた。

 そして人間の足ではとても追えぬ速さで、根をタコのように器用に動かし2人を連れ去ってしまったのだ。

「か、カイラ君!?」
「ご主人!」

 取り残されたヴェルトとアマネは愕然とし同時に叫ぶ。

「モンスターの類なんじゃないの、あの植物!」

「たいへんたいへーん!」

 アマネは足をバタバタさせカニのように横歩きで往復し続ける。

「ねぇ、どこ行ったか分かんない!?」

「ん、多分この屋敷のどこかだと思うんだけど……この屋敷複雑でさぁ、アマネもよく分かんないんだよね」

「少しで良い、道案内して」

「誰がオマエなんか____」

 目を吊り上げるアマネに対し、ヴェルトは人斬りのような面持ちで腰に提げていた剣を鞘から抜き始めた。

「あ~ん! ウソ、ウソ! ウソだってぇ~! 案内するからゆるしてね~!」

 と媚びるような声色でアマネが研究室から飛び出したので、ヴェルトは毛むくじゃらを追いかけた。
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