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第3話 婚約者ができました?
ep.34
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王城で開かれる夜会というのは、どうしてこうもキラキラしているのだろう。
大きなシャンデリアや豪奢な飾りつけはもちろんこのこと、来ている人たちもすごく華やかだ。
流行のドレスに身を包んだ淑女たち。色とりどりのドレスを着た彼女たちは、まるで花のよう。
自国でも場違いな感じがすごくするのだから、隣国ではもっと場違いに思えてしまうのが当然だと思う。
それに加えて隣に立つ人物が煌びやかなオーラを纏っているのだから、わたしの場違いレベルは急上昇中だ。
「リディ、顔が強ばっているよ?」
「し、仕方ないでしょ。慣れない隣国の王城の夜会に参加しているのよ? 緊張するなと言う方が無理な話だわ」
小声で言ってきたエリクに、ボソボソと返す。
言葉は同じでも、緊張するものは緊張する。そのうえ、エリクにすごい熱い視線があちこちから集まっていて、彼の隣にいるわたしを値踏みするような視線を感じるから、余計に緊張してしまう。
……あれ? これってほぼエリクのせいじゃない?
「緊張、ねぇ……?」
含みのあるエリクの言い方にムッとする。
わたしが緊張している原因の半分くらいはエリクのせいなのに!
「ほら、リディ。美味しそうな料理がたくさんだよ」
「あのねぇ! 食べ物で釣られるわたしじゃな……あっ! なにあの料理! 美味しそ……」
う、と言いかけてハッとする。
エリクはニコニコと笑っていた。「ほら、やっぱり食べ物で釣られるんじゃない」というエリクの心の声すら聞こえる気がする。
……だって、すごく美味しそうなんだもの。
エリクに釣られて料理の並ぶ方を見たのが間違いだった。ずらりと並んだ美味しそうな料理たち。彩りも鮮やかでお洒落。美味しそうな匂いも漂っていて、ぐうとお腹の虫が切ない悲鳴をあげた。
しかし、悲しいかな。
コルセットをぎゅうぎゅうに締められたせいで、ろくに食べれそうにない。ああ、料理と共に並ぶデザート……バウムクーヘンが食べたい…ひと欠片くらいなら食べられるかしら……。
「……リディ、わかっていると思うけど、挨拶周りが先だからね」
「もっ……もちろんよ!」
ええ、わかっていましたよ。
ただちょっとバウムクーヘンに引き寄せられそうになっただけで、ちゃんと自分の役目はわかっている。
「黙ってエリクの横でニコニコしていればいいんでしょ? そのくらいわかっているわ」
「だといいんだけど……」
なによ、その疑わしげな目は?
ニコニコしているくらい余裕だわ! これでもわたし、伯爵令嬢なので!
疑わしげなエリクににっこりと笑ってみせる。
そこに伯爵様がやってきて、わたしたちの間に漂う不穏な空気を察したらしく、首を傾げる。
「……なにかありましたか?」
「なにもないよ」
すかさずエリクがにっこりと答えて、わたしもそんなエリクの隣でニコニコとしてみせる。
伯爵様は不思議そうにしていたけれど、それ以上追求する気はないようで、わたしたちを案内し始める。
王族の方々から始まり、国の重要人物たちを紹介され、ちんぷんかんぷんな話題をするエリクの傍でただニコニコしているだけの簡単なお仕事。
いえ、でもね? 笑顔を保つって意外とたいへん。
頬が変なふうに痛い……笑顔が引き攣りそう……堪えなくちゃ……。早くバウムクーヘン食べたいなぁ……。
ようやく挨拶が終わったあとには、わたしの顔の筋肉が凝り固まって、ニコニコしたまま動かなくなっていた。
ニコニコしたくないのに、顔が動かない……頬が痛い……。
まあ、ブスッとした顔をしているよりはいいはずだから……そう思おう。そしてご褒美にバウムクーヘンを食べよう。
「リディの顔、戻らないねえ」
笑いを堪えたように言うエリクにムッとする。
ムッとしたところで、顔は動かないのだけど!
「し、仕方ないでしょ。ずっとニコニコしてたのよ。怒っている顔をしていよりはいいでしょう? そもそも、まず最初にエリクはわたしに感謝するべきだわ」
「あーはいはい。感謝してるしてる。アリガトウ」
「心が籠っていない!」
文句を言うわたしにエリクはどこ吹く風だ。
本当に意地悪なんだから!
「ずっと同じ顔されているのもねぇ……」
そうエリクが呟くと、おもむろにわたしの頬を手で挟む。
……なんか、嫌な予感が……。
「ぼくがマッサージしてあげる」
いい、と断る前にエリクがわたしの頬をふにふにと揉み出す。
いやぁ! やめて! ここ王城だから! 人目が或場所でブサイクな顔晒したくない!!
「ひゃめへ……! ひはい!」
「リディの頬触るの楽しいな……」
「はほひふぁまひへ!」
エリクの魔の手からなんとか逃れる。お陰でもとに戻ったけれど、もっと他にやり方はなかったのだろうか。まったくもう、エリクったら……レディの扱いがなってないのだから!
ともかく、バウムクーヘンのもとへ向かおうと歩き出すたと、ドンッと誰かにぶつかった。
あっ、やってしまった……!
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
ぶつかった相手は倒れてしまっていて、わたしは慌てて声をかける。
相手はわたしと同い歳くらいの女の子だった。私よりも華奢な子だから、わたしに吹き飛ばされてしまったらしい。
……ちなみに、わたしは普通の体型です。決して太っているわけではないので勘違いしないように!
彼女に声をかけると、ピクリと彼女の体が震える。
え……ちょっと当たっただけで、こんなふうになる……? 打ちどころが悪かったのかな……?
どうしたらいいのかわからなくてあわあわしていると、エリクがやって来た。
「なにをやらかしたの、リディ」
ちょっと、なんでわたしがやらかした前提なの?
確かにぶつかったけれど、どちらかといえば彼女の方からぶつかって来たのに。
そんな不満を呑み込んでエリクに現状を説明する。
「彼女とぶつかってしまって……でも、なにか彼女の様子がおかしいの」
「ふぅん……」
エリクはそう返事をすると、彼女に優しく声をかける。
「大丈夫ですか?」
しゃがみこんで彼女をエリクが抱き起こし、わたしもしゃがんで彼女にもう一度謝る。
「ごめんなさい……わたし、あまり周りよく見ていなくて……」
「…………て……」
「え……?」
小さく彼女がなにかを言ったけれど、上手く聞き取れない。
もう一度聞こうと彼女に声をかけようとすると、ガシッと思いのほか強い力で彼女に手を掴まれた。
「……たす……けて……!」
今度ははっきり聞こえたその声に目を見開いた瞬間ら彼女がゴホッ、と咳を零す。
そして、その咳と共に赤い液体が彼女の口から漏れて、綺麗な彼女のドレスを汚す。
「な、なに……ねえ、エリク、どうなっているの……?」
「まずいな……」
エリクが小さく、忌々しそうに呟いた時、周りにいた人たちが彼女の様子に気づいて悲鳴をあげる。
彼女はゴホッゴホッと苦しそうに咳をしていて、その度に血が零れた。
エリクは持っていたハンカチで彼女の口を押さえながら、「誰か! 彼女を医師のもとへ!」と指示を出す。
「エリク……」
なにか、怖いことが起きている。
どうしてこうなったのか、まったくわからないけれど、わたしたちが〝なにか〟に巻き込まれてしまったのは確かだ。
小さくエリクの服を掴むと、エリクはわたしに聞こえるくらいの声で、優しく言う。
「大丈夫。怖がらなくても大丈夫だよ、リディ。きみはぼくが絶対に守るから」
小さく、安心させるように笑ったエリクに、わたしの胸がどきんと脈打つ。
けれど、それとは対称的に、エリクがそう言うのだから絶対大丈夫だという安心感も生まれて。
「……うん」
わたしは小さく、頷いた。
大きなシャンデリアや豪奢な飾りつけはもちろんこのこと、来ている人たちもすごく華やかだ。
流行のドレスに身を包んだ淑女たち。色とりどりのドレスを着た彼女たちは、まるで花のよう。
自国でも場違いな感じがすごくするのだから、隣国ではもっと場違いに思えてしまうのが当然だと思う。
それに加えて隣に立つ人物が煌びやかなオーラを纏っているのだから、わたしの場違いレベルは急上昇中だ。
「リディ、顔が強ばっているよ?」
「し、仕方ないでしょ。慣れない隣国の王城の夜会に参加しているのよ? 緊張するなと言う方が無理な話だわ」
小声で言ってきたエリクに、ボソボソと返す。
言葉は同じでも、緊張するものは緊張する。そのうえ、エリクにすごい熱い視線があちこちから集まっていて、彼の隣にいるわたしを値踏みするような視線を感じるから、余計に緊張してしまう。
……あれ? これってほぼエリクのせいじゃない?
「緊張、ねぇ……?」
含みのあるエリクの言い方にムッとする。
わたしが緊張している原因の半分くらいはエリクのせいなのに!
「ほら、リディ。美味しそうな料理がたくさんだよ」
「あのねぇ! 食べ物で釣られるわたしじゃな……あっ! なにあの料理! 美味しそ……」
う、と言いかけてハッとする。
エリクはニコニコと笑っていた。「ほら、やっぱり食べ物で釣られるんじゃない」というエリクの心の声すら聞こえる気がする。
……だって、すごく美味しそうなんだもの。
エリクに釣られて料理の並ぶ方を見たのが間違いだった。ずらりと並んだ美味しそうな料理たち。彩りも鮮やかでお洒落。美味しそうな匂いも漂っていて、ぐうとお腹の虫が切ない悲鳴をあげた。
しかし、悲しいかな。
コルセットをぎゅうぎゅうに締められたせいで、ろくに食べれそうにない。ああ、料理と共に並ぶデザート……バウムクーヘンが食べたい…ひと欠片くらいなら食べられるかしら……。
「……リディ、わかっていると思うけど、挨拶周りが先だからね」
「もっ……もちろんよ!」
ええ、わかっていましたよ。
ただちょっとバウムクーヘンに引き寄せられそうになっただけで、ちゃんと自分の役目はわかっている。
「黙ってエリクの横でニコニコしていればいいんでしょ? そのくらいわかっているわ」
「だといいんだけど……」
なによ、その疑わしげな目は?
ニコニコしているくらい余裕だわ! これでもわたし、伯爵令嬢なので!
疑わしげなエリクににっこりと笑ってみせる。
そこに伯爵様がやってきて、わたしたちの間に漂う不穏な空気を察したらしく、首を傾げる。
「……なにかありましたか?」
「なにもないよ」
すかさずエリクがにっこりと答えて、わたしもそんなエリクの隣でニコニコとしてみせる。
伯爵様は不思議そうにしていたけれど、それ以上追求する気はないようで、わたしたちを案内し始める。
王族の方々から始まり、国の重要人物たちを紹介され、ちんぷんかんぷんな話題をするエリクの傍でただニコニコしているだけの簡単なお仕事。
いえ、でもね? 笑顔を保つって意外とたいへん。
頬が変なふうに痛い……笑顔が引き攣りそう……堪えなくちゃ……。早くバウムクーヘン食べたいなぁ……。
ようやく挨拶が終わったあとには、わたしの顔の筋肉が凝り固まって、ニコニコしたまま動かなくなっていた。
ニコニコしたくないのに、顔が動かない……頬が痛い……。
まあ、ブスッとした顔をしているよりはいいはずだから……そう思おう。そしてご褒美にバウムクーヘンを食べよう。
「リディの顔、戻らないねえ」
笑いを堪えたように言うエリクにムッとする。
ムッとしたところで、顔は動かないのだけど!
「し、仕方ないでしょ。ずっとニコニコしてたのよ。怒っている顔をしていよりはいいでしょう? そもそも、まず最初にエリクはわたしに感謝するべきだわ」
「あーはいはい。感謝してるしてる。アリガトウ」
「心が籠っていない!」
文句を言うわたしにエリクはどこ吹く風だ。
本当に意地悪なんだから!
「ずっと同じ顔されているのもねぇ……」
そうエリクが呟くと、おもむろにわたしの頬を手で挟む。
……なんか、嫌な予感が……。
「ぼくがマッサージしてあげる」
いい、と断る前にエリクがわたしの頬をふにふにと揉み出す。
いやぁ! やめて! ここ王城だから! 人目が或場所でブサイクな顔晒したくない!!
「ひゃめへ……! ひはい!」
「リディの頬触るの楽しいな……」
「はほひふぁまひへ!」
エリクの魔の手からなんとか逃れる。お陰でもとに戻ったけれど、もっと他にやり方はなかったのだろうか。まったくもう、エリクったら……レディの扱いがなってないのだから!
ともかく、バウムクーヘンのもとへ向かおうと歩き出すたと、ドンッと誰かにぶつかった。
あっ、やってしまった……!
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
ぶつかった相手は倒れてしまっていて、わたしは慌てて声をかける。
相手はわたしと同い歳くらいの女の子だった。私よりも華奢な子だから、わたしに吹き飛ばされてしまったらしい。
……ちなみに、わたしは普通の体型です。決して太っているわけではないので勘違いしないように!
彼女に声をかけると、ピクリと彼女の体が震える。
え……ちょっと当たっただけで、こんなふうになる……? 打ちどころが悪かったのかな……?
どうしたらいいのかわからなくてあわあわしていると、エリクがやって来た。
「なにをやらかしたの、リディ」
ちょっと、なんでわたしがやらかした前提なの?
確かにぶつかったけれど、どちらかといえば彼女の方からぶつかって来たのに。
そんな不満を呑み込んでエリクに現状を説明する。
「彼女とぶつかってしまって……でも、なにか彼女の様子がおかしいの」
「ふぅん……」
エリクはそう返事をすると、彼女に優しく声をかける。
「大丈夫ですか?」
しゃがみこんで彼女をエリクが抱き起こし、わたしもしゃがんで彼女にもう一度謝る。
「ごめんなさい……わたし、あまり周りよく見ていなくて……」
「…………て……」
「え……?」
小さく彼女がなにかを言ったけれど、上手く聞き取れない。
もう一度聞こうと彼女に声をかけようとすると、ガシッと思いのほか強い力で彼女に手を掴まれた。
「……たす……けて……!」
今度ははっきり聞こえたその声に目を見開いた瞬間ら彼女がゴホッ、と咳を零す。
そして、その咳と共に赤い液体が彼女の口から漏れて、綺麗な彼女のドレスを汚す。
「な、なに……ねえ、エリク、どうなっているの……?」
「まずいな……」
エリクが小さく、忌々しそうに呟いた時、周りにいた人たちが彼女の様子に気づいて悲鳴をあげる。
彼女はゴホッゴホッと苦しそうに咳をしていて、その度に血が零れた。
エリクは持っていたハンカチで彼女の口を押さえながら、「誰か! 彼女を医師のもとへ!」と指示を出す。
「エリク……」
なにか、怖いことが起きている。
どうしてこうなったのか、まったくわからないけれど、わたしたちが〝なにか〟に巻き込まれてしまったのは確かだ。
小さくエリクの服を掴むと、エリクはわたしに聞こえるくらいの声で、優しく言う。
「大丈夫。怖がらなくても大丈夫だよ、リディ。きみはぼくが絶対に守るから」
小さく、安心させるように笑ったエリクに、わたしの胸がどきんと脈打つ。
けれど、それとは対称的に、エリクがそう言うのだから絶対大丈夫だという安心感も生まれて。
「……うん」
わたしは小さく、頷いた。
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