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一、蕾
一、蕾 23
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手酷く抱かれるのかと覚悟していたが、彼は怯える僕の震えが止まるまでずっと抱きしめてくれた。
自分が震えさせているのに。
シャワーの湯気で二人が隠れるぐらい温まったころ、ようやく僕の震えが止まった。
そして彼は僕を抱き上げたのだ。
まただ。
また彼は自分だけバスローブは脱がず、バスタブの中へ僕を下ろすと湯の中に、手だけ入れてくる。足の間に指が入り、中にお湯と共に指が挿入された。サラサラした熱いお湯は、潤滑剤にはならず、中が少しだけ引きつる。指が動く度に中から白濁した液体が出てきて、お湯を汚した。
まだ僕の中に彼が放った残滓が残っていたのかと考えると寒気がする。
もしこれで子どもができていたら、どうなる。
愛がないセックスから生まれた子どもの未来なんて暗い。
多分愛があって生まれたはずの僕の存在さえ危ういというのに。
「すいません。お腹の中、気持ち悪かったでしょう」
「そう思うなら、指を抜いて出て行ってください」
中で指を曲げるたびに、お湯が汚れていくのを見て目を閉じた。羞恥心でおぼれたくないので目を閉じる。
「駄目です。今日は君の身体を休ませたかったのに、花びらを食べちゃうから」
だったら隠せば良かったのに。僕がどれだけ依存しているか探るためにわざと目立つ場所に置いて試したくせに。
指が引き抜かれ、お湯が入ってくる。
立ち上がる元気もなかった僕は、手をさ迷わせた。
ちょうど蛇口に当たり、シャワーが彼の頭の上から落ちていく。金髪の髪が濡れて額や頬に貼りついていく。それすらも厭わず、彼は僕を真っすぐに見つめてきた。
やけに綺麗な瞳だ。
恐怖の対象である相手なのに、なんて汚れていない綺麗な瞳で真っすぐ僕を見るのだろうか。
僕は、この人の番になったんだ。
なってしまったんだ。
指が引き抜かれた中が、何度が痙攣する。
彼の顔を見ただけで、昨日の記憶が体に刻まれていることはかくせなかった。
「花びらを食べなかったら、もうセックスしないんですか」
こうやって丁寧に身体をほぐすこともなく、乱暴に奥を暴かれることは無くなるんだ。
「うーん。無理かな。君は私の運命だから。ただ花びらを食べなかったら、恋人みたいな甘いキスができる。――したい」
伸びてきた手が、頬を撫でると額に、鼻に口づけしてくる。一つ一つの仕草や、触れてくる感触は優しい。
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