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二、開花

二、開花 23

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「そんな歪んでしまった菫さんと、愛を教えてくれなかったご両親と育ったのに、貴方はいつも澄んでいて綺麗でした。ヒートになっても甘い香りなのにストイックで、私には全く気付かない。それでも運命に振り回されるぐらいなら出会わない方がいいのかなとわたしも自分の存在を伝えなかった。私は君が好きな人ができれば二度と会いに行くのをやめようと思っていたんです」
 祖父に頼まれ菫さんの様子を見に行くたびに、目で追っていた。
 屈託なく笑う可愛い人。具合が悪くなった菫さんを、献身的に看病していた人。
 誰もお葬式に来ない。菫さんは本家との婚約を破棄し、分家からも追われ愛する人とは番うこともできず寂しく一人で過ごした人。
 
 醜い争いを全て経験した菫さんが育てた辰紀くんは、逆に汚れを知らない綺麗な男の子だった。
 ご両親さえ来ない中、菫さんのために必死で葬式を執り行い、気丈に振舞おうとしていた人。
 折れてしまいそうに繊細で、そして誰にも汚されていない愚直なほど綺麗な心の子だと思ったんです。

 だから菫さんの形見を探していた君と出会ってしまって胸が痛んだ。
 彼がお金がないのは分かっていたので、うちが保護しようと考えていた。
 最初に、セックスの経験もないのに誘ってきたときは驚きましたし、少し悲しかったかな。
 運命の本能に抗えなくて求めてきたわけじゃなく、自分には何も価値がないから身体を差し出そうとした君に。
 私は一番、君の心が欲しかったんです。
 菫さんに守れていた綺麗な心を、まだ何も知らない赤ん坊のような純粋な心を、守ってみたいと。
「笑いますよね。信用できないですよね。勝手にそう思ってしまうなんて」
 何も知らない君を、守りたいなんて。
 けれど辰紀くんが首を横に振ったので、調子に乗って話を続けた。
 花の毒に侵されたオメガは、番のアルファの匂いを移すことで救うことができる。
 抱きしめるだけでは救えないほど侵食していたので、一刻も早く毒を抜きたかった。
 なので、こうするしかなかった。私は迷いがない。祖父のように後悔はしないよ。

 ただ怖がらせ、瞼を腫らせるほど泣かせたことは、できれば一生を使って償わせてほしい。
 君をこれほど傷つけても、毒を浄化したかった一方的な僕の
 これからもずっと君と心が通わせられるように偽りなく気持ちを伝えたいと思う。
 
 だが無理やり番にした代償は必ず払う。
 これ以上、拒絶反応や禁断症状が続いた場合、君を開放することを誓う。
 手元に置くことだけが、愛を伝えることではないから。

 私は花喰らう君を、救いたいだけだ。
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