虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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アルクス・カーザス支部 sideフォレン&アシュト

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星の離宮を出て、フォレンとアシュトがまず向かったのは、アルクスのカーザス支部。
もともとは貴族のタウンハウスであったものが売りに出ていたところをアルクスが買い取った形になっており、外観は当時のまま、貴族の屋敷そのものである。
屋敷門にはアルクスの旗がかけられており、砡によるトラブルなどの相談請負業から、家庭用品の販売まで手広く行っていた。
「これは、フォレン様にアシュト君!お疲れ様です、この度は何用でこちらへ?」
カーザス支部の受付嬢のロザリーさん。
明るく、笑顔の素敵なアラサー美女。
「こんにちは、ロザリーさん。首領に《流星》を飛ばしたい。装置を借りるよ。」
フォレンは懐から金の板を取り出し、微笑んだ。
すでに報告は書き上げている。
大魔境の中程で見つけた遺跡、そこにあった、聖砡と思われる目標物。
そして、神の育てし御子の件。
あくまで指示を仰ぐ体裁を取っているが、暗号化させている部分には、神命を賜ったこと含め、主導権は全て此方にあると主張している。

アルクスのメンバーだけが入れる奥の一室に、流星の転送装置がある。
宛先を首領の執務室に設定。
「よし、これを、こうしてっ・・・と。」
金色の板を嵌め込むと、白い砡に手をかざす。
一瞬明るく光り、装置は金色の板を本部の首領執務室へと送った。
「一応、報告はしたってことで、いいですよね?ヒースヴェルト様のこと、首領はどう思われるっすかね。」
アシュトは首領とはあまり接点がなく、人柄もいまいちピンと来ていない。
フォレンは穏やかに微笑んで答えた。
「そうだね。幸い、彼も善良なるディーテ神教徒ではある。争いを好まない気性のお人だよ。」
「なら、危険は無いっすよね・・・?」
「アルクスの本質からして、砡が全てなところがあるからね。
ディーテ様のお怒りを買うような判断はなされないはずだよ。
危険があるとすれば、西の国だな。砡術士が数名、行方を眩ませているらしい。
悪いことに砡の力を使われなければいいんだけどね。」
「行方不明っすか・・・。誰か調査してるっすか?」
「西の国の支部が調査に乗り出してる。
まだ西国内の話だが、いつエンブルグ皇国に被害が出るか分からん。情報は共有させる」
「うへぇー、穏やかじゃないっすね。
っと、用事は済んだっすよね?じゃ、商店街行きません?ヒースヴェルト様の支度、整えないと。」
「そうだな。」
アルクスのカーザス支部を出て、南に向かいしばらく歩くと、日用品から服飾まで、様々な店が立ち並ぶマーケットに出る。
皇国の首都と並ぶ流行に敏感な街だ。
「ヒースヴェルト様ってどんな髪色なんでしょうね。それによって似合う服とか、変わってくるっすね~♪あ、華奢な御体だし、アクセサリーとか似合いそっすよね、チョーカーとか可愛いかなぁ。」
「なんだ?アシュト。随分楽しそうだな。子ども好きとは知らなかった。」
「妹が故郷にいるっすよ。何だか、ヒースヴェルト様見てるとナルリリーを思い出すっていうか。・・・っと、あ、すんません。」
アシュトは、フォレンの家族のことを思い出して、顔を青くして謝った。
「いや、構わないよ。妹か。いいね、今度風の民の領地を寄った際は是非会わせてくれ。」
「はっ、はい!もちろんです!」
フォレンの妹、グレイシアが亡くなったことは、フォレンがアルクスに入ったきっかけと言っても良い。
有名な話だった。禁句とまではいかないが、親しくない者からは、騒がれたくないのが心情。
アシュトはフォレンと班を組んで間もなかったため、遠慮してしまう。
アシュトの落ち込み様に、フォレンはクスリと笑い、窘めた。
「私はね、お前の風を操る能力はかなり買っているつもりだよ。
空を翔る術士の中ではお前がダントツ一番だと思ってる。自信をもて。
アシュトは間違いなく、大切な仲間だよ。」
「フォレン様っ。」
感動して瞳を潤ませ声をあげたが。
「まぁ、まだ失敗も多いがね。」
「うっ。頑張るっす!」
フォレンやディランからすれば、まだまだ若手の砡術士であるアシュトは、学ぶことも多いものの、彼の能力は優れていることは確かだった。
フォレンは大切に育てるべき人材として、親になったような感覚でいた。

「あっ、ここッスよ。子ども服から宝飾品まで何でも揃う流行の店。リーナから聞いてるっす。」
辿り着いたのは、アンティークで整えられた、上品な店。
フォレンはふと、思い出す。
ヒースヴェルトのあの暖かな眼差しと、元気に飛び回る野生児のような活発さ、けぶるような睫毛や、灰紫色の瞳だとか。
思い出しながら、ほっこりと微笑んだ。
「フォレン様、ひょっとしてヒースヴェルト様のこと思い浮かべてます?」
「どうして分かった?」
「その、顔がニヤけてますよ。
まぁ、可愛いっすもんね、ヒースヴェルト様。」
アシュトも、あの天真爛漫な彼を思い出して楽しそうに笑う。
「そうだな。リーナが今頃、風呂で磨いているはずだ。
着心地の良い布で、動きやすいデザインを選ぼう。色は・・・。」
ヒースヴェルトを包む、彼を表す色は。
「んー、やっぱ大魔境の色が良いんじゃないっすか?深い森の色、熱を帯びた赤い大地の色。彼を見つけた神殿の、白磁色。それに、」
「ディーテ様の金色、か?」
「ウッス!」
全て、彼を表すには最適。
フォレンも頷いて、そんなイメージで選んでいく。
「5着くらいあれば、とりあえず良いですかね?あとは、ご本人連れて、気に入ったもの買うとか。」
手元には様々な衣服やアクセサリー、靴やポーチまで、一揃え。
フォレンも満足そうに頷いた。
「急いで戻ろう。あの方の喜ぶ顔が見たい。」
出会って、ほんの数日しか経っていないというのに、いや、出会ったあの時から既に、フォレンは不思議と彼を慕っていた。

それはディーテ神の成せる神業なのかは分からないが。

護らなければ、ならない。

そう思わないではいられなかった。



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