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お肉とカクテル(ALC0.00%)
しおりを挟む「うぅっ・・・ひっく。ぅぇっく。・・・うええぇぇん。」
ホテルの部屋で、さめざめと泣く可愛い子。
その原因である肉の串焼きなのだが。
(十年ぶりだもんなぁ。そりゃ感激して泣くってもんすよ)
泣きながら肉を噛む可憐な少年というシュールな光景にもかかわらず、疲労から復活したアシュトも貰い泣き。
「あっ、あの、どどど、どうしちゃったんです?」
串焼きを作った本人だけが、状況を飲み込めずに慌てていた。
「ぐすっ。いいえ、いいんです、いいんですよぉっ。ジャンニさんは最高の仕事をしたってことですよぉ~っ!ぐずっ。」
リーナに至っては、もう隠すことなく泣いている。
「ジャンニィ、あぃがとぅ、ね!・・・ひっく。すごく、ぅぇっ。おいしッ~!!ちゃんと、あのときの、お肉のお味が、するよ!
ふわぁぁぁあん!!!」
「お肉、ちゃんと食べられましたね・・・。」
フォレンはジャンニの腕を信用してなかったわけではないが、それでも遺跡であのスープを勧めてしまったことを思い出してしまって、内心不安があったのは確かだった。
しかし、震える手で串に刺さった肉を噛みちぎったのを見た瞬間、フォレンはその不安から解放された気分になった。
ヒースヴェルトが、砡の欠片以外のものを食べていらっしゃる。
(良かった・・・本当に良かった!)
あのとき、アシュトの提案の通り、大神殿に行かせて良かった。
見れたのは笑顔でなく、泣き顔だったけれど。
「ジャンニさん、これからヒー様のお食事を、お願いしますね?」
「はっ、はいぃ!!」
涙を拭きながら、リーナはヒースヴェルトに駆け寄る。
「こちらだけでなくて、ほら、神泉の水を使ったお飲み物です。喉に詰まるといけませんから。」
キラキラと金の粒子が散りばめられたような、青いカクテル。もちろん、アルコールなど入ってはいないけれど。
「ぅんっ!あぃがと!」
コップを受け取り、そっと口につける。
「っ!」
「飲めますか?」
リーナはヒースヴェルトの顔を覗き込むと、その灰紫色の瞳は、一層輝いた。
「のめゅ!すごく美味し、よ!!ジャンニィ、こぇ、好き!あしたの~、朝も飲みたいの!」
コップ半分まで飲むと、残りの串肉を食べて、お腹に手を当てて首を傾げた。
「ヒー様?」
「ふふっ。ひーたん、おなかいーっぱい、なったみたいょ!!」
満たされた!という笑顔で、串をお皿に置いて微笑む。
「ははっ。幸せそうだ。」
ディランに頭を撫でられ、更に笑みが増した。
「ジャンニ、感謝する。これからも頼むぞ。」
「はっ、はい!!頑張ります!!」
可愛い神様には泣いて喜ばれ、殿下に感謝され、ジャンニは感情が追い付いていなかった。
(ひえぇっ、こんなに重要なことだったのっ!?でっ、でも!喜んでもらえるなら、何でもいいわ!私も嬉しいし!)
照れながら、食事の後片づけを始めた。
「ぁふ・・・ふぁぁ。リーナ、眠たいよ。」
満腹になり、すぐに眠気がきてしまうあたり、まだまだ子供なのだろう。
「じゃあ、少し早いですが、もうお休みになりますか?」
「いいの?じゃあ、眠りたィ。」
ヒースヴェルトは、ベッドのある部屋へリーナに手を引かれ、行ってしまった。
それを見送ってから、ディランは口を開いた。
「アシュト、明日の午後から本部に戻るからお前も来い。」
「え?本部に?そりゃ、いいッスけど。ヒー様の警護は?」
「あぁ。それなんだが・・・。」
ディランは、先程泉であったフォレンとのやりとりを話した。
話を聞いていくうち、アシュトもその顔をしかめて、乗り気で賛成した。
「少し時間、かかるかもしれないっすけど、いいですか。」
「勿論だ。全て調べあげてこい。
ヒースヴェルト様は、うちの城でしばらく勉強をしてもらうから、警護は私とリーナで行う。」
「了解ッス。でも、本当に機械導具がそんなことのために使われたかもしれないってなら、許せないっ。」
アシュトはアルクスの中でも機械導具好きであった。
砡の見せる様々な力が好きなのだ。単純に色分けされているだけではない。
同じ色の砡でも、機械導具として力を引き出されたそれらは千差万別。
人にも、単純に身分や性別、外見だけじゃなく、無数の可能性があるのだ、と言われているみたいで。
「それを確かめるんだ。
最悪な結果だったなら、売ったアルクス側にも責任が出てくる話だろ。」
「・・・必ず、真実を見つけて来ます。」
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