虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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創造と破壊

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東の神殿に案内された二人は、トリアの後ろをついていく。神殿の奥、佇む空色の髪の男がふと、振り返る。
『我が主、準備整いました。魂の渡航を、お願いいたします。』
恭しく礼をして、トリアは空色の髪の男に願い出た。
『………創造神様……来てくださったのですね。感謝致します。』
『フレイド。長く、よく管理したな。…次の星は決めたか?』
『…はい。主神が…澱みを浴びすぎ邪神と化した世界があるようです。まだ星は生きていけるのに。…私は、それを慰め、主神に成り代わり、治めましょう。』
『……分かった。』
ディーテの短い言葉の中には、何億年もの間この世界を愛し続けた彼への労りの心が感じられた。
『おや…?君は、どなた?』
フレイドは、ヒースヴェルトを見つけると、眼を見開いて尋ねた。
『ぼくは、ヒースヴェルトです。まだ候補だけれど、新しい世界の、主神になる、です!』
先輩神様に出会い、ヒースヴェルトは極限まで緊張していた。
目の前に、もっと気高い創造神がいるのにも関わらず。
『新しい……。そう。これから、頑張って。ははっ。終焉を誰かに見られるなんて、少し気恥ずかしいね。』
『次の世界は、邪神がいるの…?フレイド様は、浄化をしなきゃだから、眠るのでしょう?』
『…大丈夫。私の翼たちはとても、とても強いから。私が目覚めるまで戦ってくれると信じているからね。…ね?トリア。』
『勿論です。』
トリアは笑った。きっと、とても強い絆で結ばれているのだろう。
『…澱みを受け取るのは、どんな感じ…?』
ヒースヴェルトが、一番気になっていること。
『そうだね…。苦しいよ。とても。』
『!!』
正直な言葉に、ヒースヴェルトは真っ青になる。だけど、彼はそんな、辛いことをこれから行うようには、とても見えないほど落ち着いていて、驚いた。
『けれど、浄化は管理者管理者の基本。自分の管理する世界で、気に入った人間ができたら、その人の澱みを受けとる練習をすると良い。世界の終焉を迎えるときのための訓練だと思って?』
『ぁ……はいっ。』
まずは、自分の翼たちから、受け取る。そうしないと、ヒースヴェルトの戦力になれないことは、分かっている。
『創造神様、こちらの候補の子は?』
フレイドがふと、尋ねる。
『愛しい…我が子だよ。』
ふわりと笑う。
ヒースヴェルトにとってはいつもの笑顔なのだが、フレイドとトリアは目を見開いて驚いた。

(創造神様が微笑まれた……?いや、それよりも)
『創造神様の、御子様であらせられる?』
『うん!ぼくは、ディーテさまに育ててもらったの。』
さすがに、この場でママとは呼ばない。ヒースヴェルトも成長したのだ。
『ヒースヴェルトよ、澱みを受けとることは恐ろしいことではないよ。最初は…少しだけ、悲しいかもしれない。だけど…分かるようになるから。何故、神がそれを受けるのか、その理由がね。』
『……うん。』
きゅ、とディーテの腰あたりにしがみつく。その姿は本物の親子のようで。
(なんと言うことだ。創造神様が…まるで人の親のように…。)
『さて、フレイド。魂の渡航を済ませたら、ここを塵にする。』
それは、ディーテ神のこの星での最後の仕事。
『…はっ。』
『トリアも、最期の勤め、ご苦労であったな。次の世界での準備期間ではフレイドの眠りを守れ。』
トリアは深く礼をして、ふわりと飛び立った。
そして、トリアが人々の魂を連れて来るのを待つ。空の上には、渡航というに相応しい、砡でできた船。ほんの数十人が乗るだけの、小さな船だけれど。
『このお舟に、乗せてゆくの?』
いよいよ、世界が終わる時。ヒースヴェルトは不安が顔に出ていたのだろう。ディーテは困ったように笑う。
『そう。…これから管理していく世界…星までね。その間に、フレイドは魂の澱みを全て受け取り、星につく頃には、浄化を始めているだろうよ。』
それが、神様のお仕事だからね、と。虹色の髪をくしゃ、と撫でてくれた。
『フレイドさま…。』
ディーテの腰に引っ付いたまま、フレイドに視線を投げる。不安だらけで、励まそうにも何と言葉をかけて良いか分からない。そんなもどかしい気持ちだった。
『ふふっ。大丈夫。私はこれでも三度、終焉を経験しているからね。
トリアはこの世界の翼だけどね。これまで渡った中でも、とてもよく仕えてくれた翼だよ。
君も、こらからたくさんの世界を知ることになるだろうけれど…。信頼できる翼を選びなさい。世界を渡っても、変わらぬ忠誠と信頼を得られるよう。』
『…はい。』
信頼できる翼を。
それは、自信がある。ヒースヴェルトが皆を愛おしいと思っているように、皆もヒースヴェルトを支えたいと、願ってくれている。

少しして、トリアが大小いくつかの光の玉を連れて飛んで戻ってきた。

『ヒースヴェルト、お別れしようね。』
『…次の世界でも、人々が健やかで過ごしてゆけるよう、お祈りします。…フレイドさま、が、頑張ってね!』
緊張した結果、虹の光がコントロールを失い、ポンッと、なにかが飛び出てきた。

『おやおや、これは…。』
ディーテは、困った子だねぇと言いながらヒースヴェルトの虹色の光から生まれてしまった、小さなそれをフレイドに渡した。
『これは……虹色の、鳥……?』
美しい、オパールの輝きを放つ翼。フレイドは、その稀有な鳥を腕に乗せ、驚いていた。ヒースヴェルトが生み出したのは、いつもの言霊鳥とは違う、立派な神鳥だった。
『フレイドを思い、生み出してしまったようだよ。…あぁ。とても強い《守護》の神鳥だね。眠りにつくときに、側に置いてやってほしい。きっと、守ってくれるだろう。』

『…ありがとう。…さすが、創造神様の子だね。こんなに素晴らしい鳥を貰えるなんて…。感謝するよ。』
『ぁ…ぁぅ……っ。』
応援したつもりが、神力が暴走して神鳥が出てきてしまって、ヒースヴェルトは若干混乱していたが。
『大丈夫、喜んで受けとるよ。…では、またいつか!』

フレイドと、トリアは船に乗り、空へと旅立った。
誰もいなくなった、静かな砂漠の星で。

『さぁ、これからは余の仕事。しっかりと見ておけ。』
ディーテは金色の光の粒を空じゅうに振り撒いて、両手を広げた。
ここまで広域な神聖陣は見たことがない。星を丸ごと包んでいるのだ。
『……ッ!!マっ、ママ!!いやっ!怖い!!!!』
それは、いつもと違う凍てつくほどの攻撃性を備えた金の光だった。一粒でもその身に触れたら、その体は引き裂かれてしまうだろう。
『ヒースヴェルト、側に。』
ディーテの言葉を待っていたかのようにヒースヴェルトは走り寄る。ディーテの周りだけは、安全に守られているようだ。

(ママの光が…とても怖い……ッ。星を塵にしてしまうほどの力……。これが、創造神の力…なの。
ママは、寿命を迎えた星は、塵になるって言ってたけれど、ママが塵にするんだ!!
ママは…破壊神でもあるの…?)
『…よく分かったな。余は創造神であるとともに、星を滅ぼす破壊神でもあるのだ…。お前には、しっかりと見ておいてほしくてね。…親の仕事を。』

ヒースヴェルトは息を呑み、その光景を眼に焼き付ける。
世界を終わらせるということは、こういうことなのだと、震える体を必死に奮い立たせて、しっかりと記憶した。

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