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黒髪の美少年、ひよこを眺める
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「ふおおおおっ!」
久しぶりに、町の中を歩いて、人々の生活している様子を見て、ヒースヴェルトは興奮した。
いつもは、森や山の中を駆け回って、砡の欠片を手に入れて、アシュトに売りにいってもらって。
自分は町に降りることは、一度もしなかったからだ。
ヒースヴェルトの容姿は目立つ。
本人はよく分かっていないようだが、皆が口を揃えてそう言うので、そうなのだと、無理からに自らを納得させていた。
色替えの神術を覚えてからは、アシュトやリーナの髪や目の色に似せて変身して町を歩いたが、ルートニアス領の安全な町だけ。
しかも、立ち寄る店などには公爵家からの箝口令が敷かれ、領外にヒースヴェルトの情報が漏れることは極力少なかった。
そして、今日。
「リアン、リアン!!あっちの露店は何?ひよこがめちゃくちゃ箱に詰まってる!!!可愛い!!」
「そのまんまだよ。ヒヨコ売ってんの。」
「へぇぇっ、売り物なのっ?」
天真爛漫な笑顔で、ひよこにときめく黒い髪の美少年は、瞬く間に噂になった。
「ヴェル、次はこっち。噴水公園があるんだ。」
「公園!いくいく~!」
次は公園の噴水で踊る少年が見れるのでは、とギャラリーもついて歩く。が。
「…………。」
ヒースヴェルトとりあが走っていく様を見つめ、ギャラリーを射殺せる程の冷たい眼差しで睨み付ける、銀髪のエルフがいた。
ついて来たら殺すとでも言うような。
そのおかげで、ヒースヴェルトは物凄く自由に過ごせた。
「ヒ……ヴェル様、あまり噴水に近づかないように。お体が冷えますから。」
「ぁい~♪」
不機嫌ながらも、ちゃんとヒースヴェルトのことは見ているルシオ。
コール領のどこにコルディウス村の人がいるかも分からないので、神が名乗ったとされる名を呼ぶのは遠慮したかったため、コール領内では、愛称で呼ぶことにしたのだ。
「ルシオ様って、スッゴい機械導具をたくさん作ったって姉様から聞きました。凄い、尊敬します!」
リアンが、ルシオを称賛すると、ルシオは溜め息をついて答えた。
「…全てはディーテ様と…そして、ヒ……こほん。ヴェル様のため。人々の生活が向上したのは、ついでだ。」
「うわぁ…ジャンニ姉様から聞いてたけど、凄いな、ルシオ様。何でそんなに神様がお好きなんですか?」
「…貴様に答えてやる義理はない。」
「ひぇー、こわ……。」
ルシオは元来、優しい神官だった。教会を牽引する父親を支える存在になるため、真面目に教会の仕事をこなしていた。
レイネアが聞いたディーテ神の言葉を…新たな神の存在を否定され、彼女が殺されるまでは。
それからのルシオは、そのアイスブルーの瞳に感情を持たなくなった。
そして、ヒースヴェルトに出会ってからの彼の神への愛は、謂わば執着、依存。
ヒースヴェルトが、自らの存在理由となった。
「ルシオさんはね、大好きな恋人のために…千年もぼくの存在を信じてくれていた人なの。唯一の家族だったお父さんと縁を切るぐらい、物凄い大喧嘩したんだって。
…千年だよ?ぼくも長生きすると思うけどさ、信じ続けるって、すごく大変。
そんな彼のね、心の拠り所が、ぼく。ママ以上に…ディーテ神以上に、ぼくへの執着が凄いんだぁ。だから、ぼくも頑張らなきゃ、なの。
ルシオさんが安心して依存できるように…立派な神様、目指すんだ。」
噴水の縁にちょこんと座り、照れながらも自分の目標を話すヒースヴェルトの表情は穏やかで。
「依存されて、喜ぶとか……。よくわかんねぇ。」
「ふふっ。ぼくやママはね、信じてもらって…依存されてナンボ、なの。
だから、世界中の皆が、この大地に感謝して、日々の生活に幸せを見出だしてくれたら、こんなに嬉しいことはない…です。」
「お前、やっぱり、そうなのか?…その、名前も、だけどさ…。父様がこの前話した、あの昔話。」
「…!あっ、それは、ぼくを育ててくれた、ママのこと。ぼくはね、ママからその名前を貰ったんだ。」
「………へ?」
ヒースヴェルトは口許に指をあてて、しぃ、と小さく声をたてた。
「誰にも、秘密。もうすぐ、お知らせできるから…言わないでね。」
夢の中で、ディーテが言った。
アシュトが、浄化の欠片を沢山見つけて神殿に保管している。
それを全て取り込めば、お前は神化するよ、と。
久しぶりに、町の中を歩いて、人々の生活している様子を見て、ヒースヴェルトは興奮した。
いつもは、森や山の中を駆け回って、砡の欠片を手に入れて、アシュトに売りにいってもらって。
自分は町に降りることは、一度もしなかったからだ。
ヒースヴェルトの容姿は目立つ。
本人はよく分かっていないようだが、皆が口を揃えてそう言うので、そうなのだと、無理からに自らを納得させていた。
色替えの神術を覚えてからは、アシュトやリーナの髪や目の色に似せて変身して町を歩いたが、ルートニアス領の安全な町だけ。
しかも、立ち寄る店などには公爵家からの箝口令が敷かれ、領外にヒースヴェルトの情報が漏れることは極力少なかった。
そして、今日。
「リアン、リアン!!あっちの露店は何?ひよこがめちゃくちゃ箱に詰まってる!!!可愛い!!」
「そのまんまだよ。ヒヨコ売ってんの。」
「へぇぇっ、売り物なのっ?」
天真爛漫な笑顔で、ひよこにときめく黒い髪の美少年は、瞬く間に噂になった。
「ヴェル、次はこっち。噴水公園があるんだ。」
「公園!いくいく~!」
次は公園の噴水で踊る少年が見れるのでは、とギャラリーもついて歩く。が。
「…………。」
ヒースヴェルトとりあが走っていく様を見つめ、ギャラリーを射殺せる程の冷たい眼差しで睨み付ける、銀髪のエルフがいた。
ついて来たら殺すとでも言うような。
そのおかげで、ヒースヴェルトは物凄く自由に過ごせた。
「ヒ……ヴェル様、あまり噴水に近づかないように。お体が冷えますから。」
「ぁい~♪」
不機嫌ながらも、ちゃんとヒースヴェルトのことは見ているルシオ。
コール領のどこにコルディウス村の人がいるかも分からないので、神が名乗ったとされる名を呼ぶのは遠慮したかったため、コール領内では、愛称で呼ぶことにしたのだ。
「ルシオ様って、スッゴい機械導具をたくさん作ったって姉様から聞きました。凄い、尊敬します!」
リアンが、ルシオを称賛すると、ルシオは溜め息をついて答えた。
「…全てはディーテ様と…そして、ヒ……こほん。ヴェル様のため。人々の生活が向上したのは、ついでだ。」
「うわぁ…ジャンニ姉様から聞いてたけど、凄いな、ルシオ様。何でそんなに神様がお好きなんですか?」
「…貴様に答えてやる義理はない。」
「ひぇー、こわ……。」
ルシオは元来、優しい神官だった。教会を牽引する父親を支える存在になるため、真面目に教会の仕事をこなしていた。
レイネアが聞いたディーテ神の言葉を…新たな神の存在を否定され、彼女が殺されるまでは。
それからのルシオは、そのアイスブルーの瞳に感情を持たなくなった。
そして、ヒースヴェルトに出会ってからの彼の神への愛は、謂わば執着、依存。
ヒースヴェルトが、自らの存在理由となった。
「ルシオさんはね、大好きな恋人のために…千年もぼくの存在を信じてくれていた人なの。唯一の家族だったお父さんと縁を切るぐらい、物凄い大喧嘩したんだって。
…千年だよ?ぼくも長生きすると思うけどさ、信じ続けるって、すごく大変。
そんな彼のね、心の拠り所が、ぼく。ママ以上に…ディーテ神以上に、ぼくへの執着が凄いんだぁ。だから、ぼくも頑張らなきゃ、なの。
ルシオさんが安心して依存できるように…立派な神様、目指すんだ。」
噴水の縁にちょこんと座り、照れながらも自分の目標を話すヒースヴェルトの表情は穏やかで。
「依存されて、喜ぶとか……。よくわかんねぇ。」
「ふふっ。ぼくやママはね、信じてもらって…依存されてナンボ、なの。
だから、世界中の皆が、この大地に感謝して、日々の生活に幸せを見出だしてくれたら、こんなに嬉しいことはない…です。」
「お前、やっぱり、そうなのか?…その、名前も、だけどさ…。父様がこの前話した、あの昔話。」
「…!あっ、それは、ぼくを育ててくれた、ママのこと。ぼくはね、ママからその名前を貰ったんだ。」
「………へ?」
ヒースヴェルトは口許に指をあてて、しぃ、と小さく声をたてた。
「誰にも、秘密。もうすぐ、お知らせできるから…言わないでね。」
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それを全て取り込めば、お前は神化するよ、と。
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