虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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清廉な神子様

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「製作…依頼…。で、でも、機密事項じゃ。」
ヒースヴェルトはちらりとブランシュを見た。作業に集中していて、こちらの会話は聞こえていないようだった。
「んー、そっすね。そこんとこ、不安なら首領やフォレン様に聞いてみたらどっすか?あっ、聖神子様への献上品ってことでも、良いと思うし。…でも、きっとこの人なら献上してくれると思いますよ。」

アシュトの提案に、ヒースヴェルトとルシオは一理あると思った。
ただ、それには詳細を決めてから行動に移すべきで。

「とにかく、今は華護りの工法を知ることが大事、です!アシュト、今の話、後で詳しく詰めよう。フォレンと、おじいちゃんにお話通しておいてね!」
「分かりました。じゃあ、昼から…」
と、予定の確認をしはじめたアシュトに、思い出したようにヒースヴェルトは挟む。
「あっ。そうだ。お昼は、パメラって子に会う予定。その子と会ったら、そのまま謁見室で話すよ。」
「おっ?パメラに、ですか…?了解ッス。フォレン様も知ってるんすよね?」
アシュトも、彼女の師がフォレンだということは知っているらしい。
「うん!勿論。」
アシュトがラボを去り、二人はブランシュの手元をしっかりと見続け、たまに質問を飛ばしたりして。
そうすること数時間、一つの華護りが完成した。その美しさに息をのむ。
「ぼっ、ぼく、出来たばかりの華護りなんて初めて見たけどっ!」
瞳を潤ませて、出来たばかりの華護りを眺める。
「はい…。金のコーティングが、砡の色を完全に閉じ込めないのでしょうか。まるで生きているように…淡く光り、消えている。」
ルシオも感嘆の声をあげる。
「えぇ。出来上がりから数日は、このように神水と砡の欠片の粒子とが混ざりあい、美しく光ります。私も、この瞬間が最も好きなのです…。」
集中を解いて、ブランシュは微笑む。額の汗が輝いている。ヒースヴェルトも微笑み、頷いた。
「間違いなく、この工法で作れるはずだ。…でも、ぼくには無理。これはブランシュさんや、華護りの職人さんでなければ、出来ないこと。」
「聖神子様にそう言っていただけると、職人冥利に尽きますな。」
「ブランシュさん、疲れたでしょう?一度屋敷に戻って、お茶にしよ?もっと聞きたいことがあるの!」
ラボから屋敷に戻る道すがら、ブランシュはルシオに話しかける。
「聖神子様は、元々は、その…孤児のうえ、こちらに身を寄せてからはハンター稼業でご生活なされておられると、お聞きしておりましたが…。」
それは、アルクスが公式に公表した内容。
「あぁ。この大神殿で10年もの間、ディーテ様に保護され、共に暮らしておられたのを我がアルクスの調査隊が発見した。それから二年…正式にアルクスのメンバーに登録され、砡の欠片を集める仕事を今も手伝ってくださっている。それが?」
「いえ。好奇心旺盛で、研究熱心な方だと思いましてな。そして、自ら仕事をなさっておいでとは。ただ、祭り上げられるだけの、傲慢な神子様の多い世の中で…。大変喜ばしいことです。」
「その通りだな。…お前も知っての通り、旧教の連中は腐っている。ヒースヴェルト様を頂点に、私たちは世界を変えねばならない。必ず…親父らに罪を償わせる。」
「…やはり、あの頃から貴方は…。」
恨んでおいでなのですね。と、言葉にしかけて、ルシオはしぃ、と黙らせた。
(聖神子様は恨み、妬みの言葉を極度に嫌がられる。間違えてもその言葉を発するな。)
ヒースヴェルトに聞こえないよう、ルシオはブランシュに忠告する。
(承知いたしました…。)
恨み、妬みはヒースヴェルトの魂の澱みを濃くさせる。神化したとて、それは変わらないことを皆、察している。皆、清廉であろうと必死な彼を、助けたかったのだ。
「へへっ。ジャンニにおやつ作ってもらってるんだ~。」
屋敷までの回廊を歩く途中、ルシオに笑いかける。
「えぇ。楽しみですね、ヒースヴェルト様。」
ルシオの表情が、ふにゃりと溶けるように崩れ、ブランシュは驚く。あの氷のような凛としたエルフの美青年が。
「これは、驚いたな…。」

屋敷の客間に着くと、ジャンニがお茶のセットを用意して待ってくれていた。
「あー、ヒー様っ。お待ちしてました~!」
ジャンニも、最近は翼候補たちと同じく、ヒー様呼び。
「ジャンニ、ありがとう!ブランシュさん、こちらにどうぞっ!」
ヒースヴェルトは、屋敷のホストらしく椅子を引いて促す。
「恐縮です、私なんかに…。」
「どうして?ブランシュさんは、ぼくの大事なお客様!作業大変だったでしょう?本当にありがとう。」
皆が着席すると、ジャンニが丁寧にお茶を淹れてくれる。
暖かい紅茶はとても平民が口にできる代物ではなく、極上に良い香りで、ブランシュは恐縮しっぱなしであった。
「それでね、ブランシュさんに聞きたいことは……。」
お菓子をつまみながら、疑問をぶつける。
その疑問自体も、とても核心を突いており、ブランシュは脱帽であった。
「…なるほど……華護りって奥が深いんだね…。あんなに高価な理由が改めて分かったよ。」
「私は、聖神子様の博識であられることに驚かされました…。」
「はくしき?ううん、ぼくは知りたいだけ!世界の、いろんなことに触れて、知って、ママ…創造神様に感謝して…。世界を救済することが、ぼくのお仕事。そのために、ブランシュさんの技術が必要なの。」
「華護りと、世界の救済とが、どのような関係があるのか私には分かりませんが…あなた様になら、私の持てる力をお貸ししたい。心からそう思いますよ。」
ブランシュの言葉に、ヒースヴェルトは目を見開いた。そして、ルシオも好感触を得られ、確信する。
アシュトの勘がまた当たったな、と。
(あいつ…ギャンブルとか強そうだな…。)
涼やかなイメージのある風の民が、そんな俗っぽいことをするとは思えなかったが。
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