虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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パメラ

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ブランシュと会話を楽しんだあと、ヒースヴェルトはリーナに支度を頼む。
謁見室に行くから、とだけ伝えると、リーナは直ぐ様に白の神纏を身に付けさせた。髪の毛の華護りを外し、真っ直ぐに整える。
聖神子・謁見バージョンの出来上がりである。
「パメラちゃん、ディラン様とダスティロスの教会へ潜入するんでしょう?」
リーナも、パメラのことは知っているらしく、謁見室まで同行してくれる時に少し教えてくれた。
「うん。パメラは、ぼくの故郷を知ってる人でしょう?多くは語ってくれないと思うけど…神眼で記憶を見せて貰う。…欲を言えば…ぼくの人間の家族の手がかり、見えたらいいなぁ。と思ってる。」


ヒースヴェルトの父親であるラーシュは、既に殺された第二王子に忠誠を誓った、貴族の三男で、騎士団の中でもそれなりに地位のある騎士だったそうだ。
それが、内戦で敗れ、一度実家に戻った時には、勘当されていた。「ここはお前が帰る家ではない、消えろ。」はっきりとそう言われた。
ラーシュの実家であるローゼン侯爵家が、ラーシュを切り捨て、寝返った。
実際、生き残るためにそうせざるを得なかった貴族も少なくなかった。
ラーシュの妻の家も中立をやめ、第一王子に寄せた。その代わり、娘だけは助けて欲しいと懇願したのだ。元々、現在の国王の叔母にあたる女性が嫁いだ先であったため、その要望だけは叶えられた。
しかし、産まれた子はラーシュに帰属するとされた。つまり、処分対象だと。
そして、ラーシュはまだ乳飲み子だった息子を連れ、エンブルグ皇国の国境に程近い村へと逃げたのだ。

この子だけは護りたい、と。

それに、王族に知られてはならなかった。今の王の一族の象徴である、息子の瞳の色を。
知られれば、残虐な王子に狙われる。いくら国外に逃げ延びようと、きっと殺しにかかる。

「ディランとアシュトが、前に調べてくれたでしょ?…ダスティロスが、争いが多くて大地に澱みを抱えていることは分かっているんだ。どうにかしなきゃ…星の寿命が短くなってしまう。」
しかし、戦好きの第一王子に国を継がせることは、ヒースヴェルトが望んでいない。澱みが増え続けることが明らかだからだ。
「聖神子として…他国の事情に関わることは…まだ時期尚早かと思いますね…。」
そう。まだ、早い。国内の新たな教会の建設も始まったばかり。
二神教の確立が磐石なものになるまでは、他国への介入は避けたいところ。
「誰か、いないのかな。…ダスティロスを平和に統治してくれる、立派な王になれるひと。」
うーん、と唸っているうちに、謁見室の手前まで到着し、控え室に入っておく。
「それも含めて、調査してきますよ。…ヒー様は死都市のことだけ、考えて?」
謁見室の脇にある控え室に、はいってきたのはディラン。
「調査…?ってことはアシュトも行くの?」
ディランの背後に、いつの間にか立っていたアシュトは、にこりと笑い、肯定する。
「その予定ッス。…ぁ、そろそろ時間ッスよ。パメラ、中で待ってるッス。」
「はーい。」
ヒースヴェルトは、顔が見えないようにレースのヴェールを被る。
纏で、ある程度の神気を抑え込むことはできても、神眼を使う際にどうしても神力が漏れてしまうのだ。
その力で、耐性の無いパメラが具合を悪くしては申し訳ない。
そのために、更に神気を覆い隠すヴェールを、ディーテ神の手を借り、ルシオに作ってもらった。

「あの、私…本当にここに入るのですか…?私なんかが、謁見室にって。」
くるくるとした栗色の癖ッ毛を後ろで束ねた少女は、緊張しながら師匠であるフォレンの後について歩く。
「お前はハンターをなさっておられた頃の聖神子様を、よく知らなかったな。」
「は、はい…。その頃は塔の訓練場と、依頼、そして寮の行き来ばかりで…あまり外のことを知らなかったもので。
噂には聞いていたんです。師匠のご実家で保護されておられる、ディーテ神様のご寵愛をお受けになられた方がアルクスに来たって。」
「そうだね。」
「でも、不思議に思ったのは確かでした。神の寵児であられるなら、身元の引き取りは教会ではないのかと思ったので。」
パメラは、単純な意見を述べただけだったが、教会の内情を知る者としては、教会にヒースヴェルトが奪われることだけは許されない。第一自分自身が許せない。そしてきっと、ディーテ神の怒りを買うことになる。
「あの方を教会などに渡してなるものか。…これからは我らアルクスが正式にディーテ神と新たな神の護り手となるのだから。」
「はっ、はい!聖神子様はその神様の一番近くにおられる方と聞いています!」
「その通りだ。くれぐれも不敬のないようにね。」
「はい!」
パメラは素直で、明るい性格の少女だった。亡命した後も、一人懸命にアルクスで働き、家族を養っている姿は、とても好ましかった。
「さて、この扉の向こうに聖神子様がいらっしゃる。神気に満ちた部屋故、気をしっかりと持つように。」
パメラは緊張からか、生唾を飲み込み、深呼吸していた。


「そこで膝を折り、頭を垂れろ。」
フォレンが先に、礼拝の姿勢を取り、見本を見せる。パメラはすぐに同じように姿勢を正した。
「は、はい。」
謁見の玉座にはまだ誰もいない。
パメラと、フォレンの二人だけであった。


しばらく待っていると、明らかにその部屋の空気が変わったのが分かる。
(いらっしゃったんだわ…!聖神子様が…!)

心臓の音がうるさいくらい、緊張していた。
パメラは、そっと視線だけ動かし、濃い青の美しい椅子に腰かける聖神子の姿を見るのだった。

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