虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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ジョージ=ハルネ

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日が暮れて、ハルネの屋敷の当主の部屋でのこと。
「アルクス本部が我が要請に応じて下さり、領地に来てくれた。これで領民たちは飢餓や病から抜け出せる。」
そう言うのは、アシュトらを出迎えた初老の男ではなく、若い男だった。
ただ、彼はベッドの上に上半身だけ起こした状態。顔色も悪く、精気が見られない。
「ジョージ、もうしばらくの辛抱だよ。…となり村…このまま、アルクスの支援の手を徐々に広げ、あの村へと辿り着ければ…国王を守るあの方の元へ支援が届けば…!」
初老の男は、ベッドに居る若い男をジョージと、呼ぶ。
「…だが、アルクスは武力を我々には貸してはくれぬでしょう。彼らは正義だ。…しかし、人を守ることはしても、殺める行為は決してしない。本当に…憎たらしい程に高潔な組織ですね。」
目の前に、こんなにも苦しみ、レオンハルトの殺戮の餌食になっている者たちがいるというのに。相手が魔獣ならば、どんなに良かっただろうか。
「ジョージ…。」
「私の命も残り僅か。忌々しい…まさかあの男爵が寝返るとは。…父は毒殺され…。私もその毒でこの身体だ…。畜生っ…!」
ぐ、と拳を握るが、その力も弱く。
「領民に…こんな腑抜けな姿、到底見せられぬ。…しばらくは私の代わりとして、役目を果たして欲しい。叔父上。」
「あぁ。お前の父は最期まで果敢に戦った。この暁の門を守るのは、我ら一族の勤めだ。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「…ふぅん。そういうことね。」
ハルネ邸の、領主の部屋の窓の外。
気配を消し、夜に溶け込むように。
(ヒー様に伝えたら…ジョージ殿のことも治療しちまいそうだなぁ…。)
苦笑し、機械導具の翼を展開して空に飛び立った。
「フォレン様、今いいッスか?」
宿に戻る前に、フォレンに相談。天使化したエルシオンの技術力が跳ね上がり、今や通信機は世界の何処でも通信できるようになったので、アシュトのような翼候補や《神翼》の精鋭らには、使えるように手配している。
《アシュト…?なんだ、こんな時間に…。》
「実はですね…。」
アシュトが事情を説明すると、フォレンは黒い笑みを浮かべた。
《きっと、我々が想像できないほど最悪な魂をお持ちなんだろうね、レオンハルト殿下は。弱い者を追い込むのが随分とお好きなようだ。…こちらの支援の名目は病人と、怪我人の治療と人々への食糧支援。…病人の救済は、すべきだね。ヒー様にはご自身の浄化はしないようにお願いしているから、きっと充分な神力で癒していただけると思う。…だが、ご無理だけはさせてはいけない。》
「了解ッス。俺も砡を使った回復はディーテ様に特訓されてかなり上達したッス。サポートはお任せください。…あと、風の民を何名か追加で送ってもらえると助かるッス。レジスタンスの実情を知る者で、あっちに寝返った貴族の情報も得ないと。」
《あぁ。すぐに手配しよう。ヒー様はお疲れではないか?久しぶりの馬車での長旅だったからな。
エルシオンらもうるさいくらい心配してたぞ。》
「はは。今は宿で、ジャンニさんのお菓子を食べているッスよ。リアン君のプレゼントが大いに役立ってるッス。」
ヒースヴェルトの屋敷の厨房と繋がっている、リアンがヒースヴェルトの誕生日に贈った、機械導具のアクセサリーには、いつもジャンニの作りたてのお菓子や軽食が届くのだ。
《はははっ。それを聞いたら、リアンも喜ぶだろうね。…では、成果を期待しているよ。》
「うす!」
ぴっ。
通信を切ると、アシュトは宿の近くの街路樹の上から音もなく降りた。
「それじゃ、ヒー様には、暁の門の…今の主殿の治療を頑張っていただきますか!」

宿に戻り、領主邸で見聞きしたことを伝えると、ヒースヴェルトはすぐに治療しなきゃ!!と飛び出そうとしたところを、ロシュリハインに首根っこをつままれて制止される。
「お待ちなさいな。まずはあのお屋敷に異分子がいないかを確認してからよ。聖神子がここにいるって、向こうに知られるわけにいかないの。」
「うぅー…。」
「さ、そうと分かればヒースヴェルト様?お屋敷のすべての人たちの魂を見てくださいな。そしてアタシに伝えて?私の能力で見極めるわ。」
「ロシュさんの、能力…。翼の固有能力のこと?」
ロシュリハインはその瞳の色をフレイドの神力の色、淡い水色に染めて能力を発動させる。
「えぇ。アタシ、人間やってた頃は星の滅亡まで領主やっていたからかしらね…フレイド様の翼になった時にさ。人を見極める能力が発現したのよ。この人は味方、この人は敵、この人は敵だけど迷ってる、とか。」
「ほぇ~…。」
「で、敵だけどユルーい子には、唆して味方につけちゃったりね。」
「わぁ…。天使の囁きだね…。」
ヒースヴェルトはパチパチと手を叩いて微笑むが、アシュトはロシュリハインの、お世辞にも天使には見えない黒い笑顔に、苦笑する。
(相手にとっては悪魔の囁きだろ…。)
「ただ、ここはアタシの領域じゃないから、ココの神様の読み取った魂を選別するに止まってしまうけど。」
「天使の囁きは、できないの?」
「えぇ。異世界だから仕方ないわ。…でも、似たような能力を持ちそうな子は、いるじゃない。ほら、ヒースヴェルト様を徹底管理してるイケメンちゃん。」
「…フォレンが?」
「あの子が翼になれば、次からの聖戦はかなり有利になるわよ。だからヒースヴェルト様は翼の取得を頑張らないと、ね★」
「ぁい!」

そして、翌日、領主邸の使用人が集まり、仕事を始めたころを見計らいヒースヴェルトは神眼を行使した。

その結果、潜入している敵の人間が、一人見つかった。


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