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エディオル=C=ダスティロス
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長く、長く眠りについていた気がする。
その間、私は夢を見ていた。
辺り一面金色の光に満ちた世界を、ただ漂う小さな存在として。
そして、時折聞こえる、可愛らしい声に耳を傾ける。
『ママ、お仕事に行ってしまうの?』
『ここで、待っているね。』
『おかえりなさい!ママ、大好き!!』
あの声は、誰なのか。母を慕う子の声と、
『変わりはなかったかい?』
『森の動物らと…?ふふっ。それは楽しかったね。』
『……しばらく、帰れない。良い子で待つのだぞ。』
心から慈しむような、優しい大人の声。
二人の会話は少ないが、満たされていた。私はその脇でただ、その情景を眺めていた。
そして、長い時間穏やかに、その存在としてあり続けたのだ。
だが、たった二人の金色の世界に、誰かが入り込んできた。
入り込んだのは、四人の若い人間。
子どもから呼び出された金色の主。
私という存在は、あの子の母、その人から離れられないらしい。
ただ、引き寄せられるようにあの子のいる場所へ向かったら、そこに異分子を見つけ、夢であるはずなのに、焦りの感情を抱いた。
この平穏な世界を乱す奴らではないか?
この幸せな親子(だと思っている)を引き裂く要因ではないのか?
私は何故、それが嫌だと感じている?
あぁ、そうか。
この長い夢の世界を漂う間に、私はこの子を…。
〈光の主を通して、私もこの子を我が子のように思っていたのか。〉
それから、金色の世界には、多くの人間が関わるようになっていた。
私は常に金色の光の主の元を離れられない。
しかし、不思議なことに、遠く離れた別の場所からでも、あの子の存在を確かに感じられる。
光の主と、あの子は不思議な何かで繋がっている。
そう感じた。
そして、ある日、ただそこにあるだけの存在であった私に、光の主が声をかけてきたのだ。
私は驚いた。
私のような小さな存在に、気を留めてくださるとは。
『近く、そなたはあるべき場所へ還るだろう。その時、私の愛する子を必ず助けてやって欲しい。』
あるべき場所?
声をかけられた時、私はすべてを思いだした。
私の国のこと。
息子の愚行。
全て、全て。
そして、これまでぼんやりと金色の光の中に居ただけの私の目に、突然鮮明になった世界。
そして側に居られたのは、美しい金色の存在。
創造神ディーテ様。
私はなんと高貴な方のお側で過ごしてきたのだろう。
そして、烏滸がましくもディーテ様の御子様に、親の感情を重ね合わせてしまった。
その羞恥と罪に居た堪れなくなった。
〈よい。余の側で見てきたのであろう?〉
そのとおりだった。
私は光の中で、ずっと眺めてきた。
あの、小さくて可愛らしい、神に拾われた人の子。
創造神の側ですくすくと育ち、真っ白な心のまま成長した、この世界を管理する存在を。
そして今、私は初めて、ディーテ神の元から離れ、あの子の側に居る。
あるべき場所、その場所へと向かって。
「………やっと、出会えましたね。ヒースヴェルト様。」
あぁ。
この身体は、私の身体だ。
自分の声はこんな感じだっただろうか?
手指の感覚も、懐かしい。
長い間眠っていた身体は、それにも関わらずヒースヴェルト様の神力のお陰でとてもよく馴染んだようだった。
そして、
〈あるべき場所へ還るだろう。〉
ディーテ様のあの御言葉に、思いを馳せる。
あるべき場所、それはこの国の王として。
あるべき場所、それはこの御方の願いを、叶えるために。
「エディオルっ……!!!」
あぁ。
懐かしい、お前の声を再び聞ける日が来るとは。
しけし、なんと情けない声であろうか。
「心配をかけたな、ガイルよ。……愚息が、すまないことをした。」
こうして私は十年の時を経て、再びダスティロスに帰還したのだった。
その間、私は夢を見ていた。
辺り一面金色の光に満ちた世界を、ただ漂う小さな存在として。
そして、時折聞こえる、可愛らしい声に耳を傾ける。
『ママ、お仕事に行ってしまうの?』
『ここで、待っているね。』
『おかえりなさい!ママ、大好き!!』
あの声は、誰なのか。母を慕う子の声と、
『変わりはなかったかい?』
『森の動物らと…?ふふっ。それは楽しかったね。』
『……しばらく、帰れない。良い子で待つのだぞ。』
心から慈しむような、優しい大人の声。
二人の会話は少ないが、満たされていた。私はその脇でただ、その情景を眺めていた。
そして、長い時間穏やかに、その存在としてあり続けたのだ。
だが、たった二人の金色の世界に、誰かが入り込んできた。
入り込んだのは、四人の若い人間。
子どもから呼び出された金色の主。
私という存在は、あの子の母、その人から離れられないらしい。
ただ、引き寄せられるようにあの子のいる場所へ向かったら、そこに異分子を見つけ、夢であるはずなのに、焦りの感情を抱いた。
この平穏な世界を乱す奴らではないか?
この幸せな親子(だと思っている)を引き裂く要因ではないのか?
私は何故、それが嫌だと感じている?
あぁ、そうか。
この長い夢の世界を漂う間に、私はこの子を…。
〈光の主を通して、私もこの子を我が子のように思っていたのか。〉
それから、金色の世界には、多くの人間が関わるようになっていた。
私は常に金色の光の主の元を離れられない。
しかし、不思議なことに、遠く離れた別の場所からでも、あの子の存在を確かに感じられる。
光の主と、あの子は不思議な何かで繋がっている。
そう感じた。
そして、ある日、ただそこにあるだけの存在であった私に、光の主が声をかけてきたのだ。
私は驚いた。
私のような小さな存在に、気を留めてくださるとは。
『近く、そなたはあるべき場所へ還るだろう。その時、私の愛する子を必ず助けてやって欲しい。』
あるべき場所?
声をかけられた時、私はすべてを思いだした。
私の国のこと。
息子の愚行。
全て、全て。
そして、これまでぼんやりと金色の光の中に居ただけの私の目に、突然鮮明になった世界。
そして側に居られたのは、美しい金色の存在。
創造神ディーテ様。
私はなんと高貴な方のお側で過ごしてきたのだろう。
そして、烏滸がましくもディーテ様の御子様に、親の感情を重ね合わせてしまった。
その羞恥と罪に居た堪れなくなった。
〈よい。余の側で見てきたのであろう?〉
そのとおりだった。
私は光の中で、ずっと眺めてきた。
あの、小さくて可愛らしい、神に拾われた人の子。
創造神の側ですくすくと育ち、真っ白な心のまま成長した、この世界を管理する存在を。
そして今、私は初めて、ディーテ神の元から離れ、あの子の側に居る。
あるべき場所、その場所へと向かって。
「………やっと、出会えましたね。ヒースヴェルト様。」
あぁ。
この身体は、私の身体だ。
自分の声はこんな感じだっただろうか?
手指の感覚も、懐かしい。
長い間眠っていた身体は、それにも関わらずヒースヴェルト様の神力のお陰でとてもよく馴染んだようだった。
そして、
〈あるべき場所へ還るだろう。〉
ディーテ様のあの御言葉に、思いを馳せる。
あるべき場所、それはこの国の王として。
あるべき場所、それはこの御方の願いを、叶えるために。
「エディオルっ……!!!」
あぁ。
懐かしい、お前の声を再び聞ける日が来るとは。
しけし、なんと情けない声であろうか。
「心配をかけたな、ガイルよ。……愚息が、すまないことをした。」
こうして私は十年の時を経て、再びダスティロスに帰還したのだった。
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