空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

an

文字の大きさ
7 / 68
一章 飛空島

7 襲撃の顛末

しおりを挟む
(ヴォルカー視点)


アールベルは、まず先にティルエリー様の様子を伺いたいと言った。
それなら、寮の一階を通れば良い。だが、一つ心配事が。
「ティルエリー様は、あのレガーノ様とは違います。…優しく、友を思いやる可愛らしい方です。…これまでのクライン血族と同じと思われぬ方がいい。」
クラインを敬愛するがゆえの、アールベルの態度がティルエリー様を再び悲しませるようなことにならなければよいのだが。
「可愛らしい…?お前の口からそんな言葉がでるなんてな。まぁ、たしかに、シュトゥーリア様は本当に愛らしい御方だったしな。ご子息がお可愛らしいというのは信じられる。」
シュトゥーリア様というのは、ティルエリー様の母君だ。
数年前に儚くなられ、そのショックで御当主様は魔道具作りに没頭しつつげて居られると聞く。
アールベルはふと立ち止まった。
「………あぁ。まずいな。先に寮部屋へ行ったほうが良さそうだ。既に殺気立った生徒が上に集まっているようだよ。」
アールベルは気配を読んだのか。
王族というものは可哀そうなほどそういった負の感情を読み取ることに長けている。
「はぁ…。すぐ戻る、と彼らに伝えたのですが…先にそちらへ向かうとしましょう。遅くなりそうですね。」
良い子で待ってくれているといいが…。
2階に差し掛かると、寮長の部屋を目指す。
ティルエリー様の部屋にはかぎがかけてあるだろうし、それに、レガーノ様の信者の愚行を、寮長に見せつけるため。

「は…?一年の、寮にですか?」
「えぇ。少しお時間をいただけますか?バート君。」
彼はバート=イリアン。
フロェン出身だが、公平な目線で物事をみることができる貴重な子だ。
「構いませんが、どうしたんです?ノクティス先生がこのようなところまで…。って、え!?あ、あ、アールベル王子!?王子まで何故…?」
「私のことは気にするな。こいつの付き添いだ。」
「具合いの悪い生徒が保健室に居ましてね。今晩は保健室に泊まることにしたのですが…忘れ物をしたそうで、取りに伺うところなのです。」
と、適当な理由をつける。
「あぁ、入学前で緊張したんですかね。…分かりました。鍵を開けますので、一緒に行きましょう!」
バートはマスターキーを手に一年の寮部屋へ案内するが、その異様な雰囲気を察知し、首を傾げた。
「なんだろう…こんな時間に。ここには2年生は来ないはずなのに。」
黒のローブ姿の生徒が5人。その前には一年のマルス。
間違いない、予言通り計画を立てていたらしい。
「貴様ら!こんな時間に此処で何をやっている!」
「げっ!寮長!?ひっ、ノクティス医師…!」
アールベルは、事の終始を見てもらうため、影に控えてもらっている。
「おや。この部屋はティルエリー・・・・・・の部屋ですね…。彼に何か用事でも?」
やはりここを襲うつもりだったか。レガーノ様の姿はない…か。
「…ちっ。構わない、ぶちかませ!!!これは正当なる報復だ!!」
「…!!!」
何て奴らだ…私や寮長がいる前で…!

しかも、周囲には他の学生も大勢いるというのに!
私は周囲に被害が及ばぬよう、神聖力による結界を張り巡らせる。ティルエリー様の部屋だけを閉じ込めるように。

「やれ!!!」
結界の発動にも気づかず、2年の男子生徒は炎の魔法を繰り出した。…が、おかしい。
「なっ!?なんて威力だ…!」
バートが驚くのも無理はない。この魔法の威力は戦争級。
学生が放つ魔法ではない。
これは、間違いなく《増幅》の魔道具を併用している!!

(…殺すつもりだったのか…?)

ティルエリー様を?

目の前に広がる赤い炎に、私の心が激しく動揺した。

「ははっ……、流石レガーノ様から賜った魔道具だぜ…。襲撃のために態々ご用意くださった!!レガーノ様を…クラインの血族様を貶める平民など死んで良いってことだッ!」


その言葉を聞いた瞬間、私の中の何かがプツリと切れた気がした。

パリンっ!

結界に罅が入った。
しまった…動揺してしまっては、結界が保てない…!

魔道具の力により増幅された火魔法は留まることを知らず、結界の亀裂から外へと暴発してしまう。

「ぁ……っ。」

私としたことが…生徒を守れぬとは。

ティルエリー様の部屋の、隣にいた男子生徒ら数名が、今の爆風で飛んだ壁の破片に当たってしまった…!
「ちっ…アールベル!すまん!!」
結界が保てない以上、私は自力でこの不届き者らを抑えねばならない。
一人では他の生徒も巻き込んでしまう…。
「らしくないな、ヴォルカー。その程度の結界も保てぬとは。そんなことでは、やはり私の護衛は勤まらぬな。」
気怠げに、ため息混じりに、だが必ず私の声に応えてくれる。
お前はいつもそうだ。…だから、信頼している。
そして、炎の根源、魔道具を携えた2年の生徒を見据え、王家の証であるエンダタールの剣に氷の魔力を纏い、振りかざした。

「学園内で起きた事件は大抵、学園内で処理される。だが、それは殺人も含まれていたかな…?
いくら気に入らぬからと…わが国の民を勝手に殺してもらっては困る。なぁ?フロェン?」
「アールベル王子…っ。なぜ此処に……!」
エンダタール王国の代表。この飛空島の管理責任者だからな。
いくらフロェンの貴族であろうと、他国の王族相手に暴行はできない。
だからこそ、ここへ連れてきたのだけど。
「何故、ここに、か。」
氷の魔力により、周囲の炎は掻き消された。
その剣、クライン当主様のお手製だと自慢していただけはあるな。凄まじい氷の威力だ。
「…私の敬愛するエンダタール王国のクライン当主殿のご嫡男……ティルエリー=クライン様の、ご愛用の枕を保健室にお届けしようと思ってね。」
炎の魔法により爆破され、粉砕された家具。焼け焦げたシーツ、見る影もない制服。
設計図を書き起こすための大判紙も、全て燃え尽きてしまっていた。
もし、ティルエリー様がこの部屋におわしたなら……と思うとゾッとする。
「…ティルエリー…クライン・・・・……?」

「あぁ。エンダタール王国のクライン次期当主殿のティルエリー様の部屋に、そなたらは何をした?」
「…あ、あぁっ!!」
魔法を放った生徒は魔道具を落とし、その場に崩れ落ちた。
「『クラインの血族を貶める者は死んでよい』のだったか……。ははっ。良いルールだな。採用しよう。」
崩れ落ちた生徒の首元に剣を当て、侮蔑の眼差しで冗談をこぼす。
(冗談に聞こえないんですがね。)
マルスも含め、実行犯らはバートとアールベルによって取り押さえられた。
そして、私は足元に転がる《赤い魔核》の魔道具を拾い上げる。
「お尋ねします。この魔道具は、どのように入手しましたか?」
「ぁ………いや、そっ、それ、は」
聞き違いでないならば、コイツはこう言ったはずだ。「襲撃のために、態々レガーノ様に賜った」と。
「フロェンのしっ…下町でッ!」
咄嗟に思いついたような嘘を吐く。
庇いたいのは分かるが…これは、あまりにやり過ぎた。
「アールベル王子、学園内の安全を担う立場として、フロェン王国に正式に抗議することを要請いたします。」
正式に、国に対して損失を賠償させるのも良いだろう。
結果として、ティルエリー様は無事だったものの、学園寮の、一室そしてエンダタール王国のクライン血族の、全ての所有物を許可もなく爆破したのだから。
「承知した。」
怪我を負った生徒らは、アールベルが保健室へ行くよう誘導したらしい。
あそこはティルエリー様の防護のために結界を張っていたが、多少の治癒効果が見込める。本当に、微々たるものだが…。


後のことはバートに任せ、私はアールベルと共に保健室へと急いだ。
爆破の現場には居合わせなかったが、それでもティルエリー様の身に何があるかも分からない。
本来、あの場で瀕死の重傷を負っていたはずなのだから。

「どうか、ご無事で……。」

逸る気持ちを抑えても、歩を進める足取りはつい早足になる。
「……本当に、らしくないな。ヴォルカー。」
アールベルの呟きに気づかないほどに、私の心は波立っていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

泥酔している間に愛人契約されていたんだが

暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。 黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。 かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。 だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。 元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。 交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

【連載中/BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

架月ひなた
BL
異世界に召喚されたけど、即クビ!? しかも壊した魔法陣を直せと無茶振りされ、住む場所として案内されたところも廃墟のような別邸。 食事は小さなパンのカケラにグラスに三割しか入っていない水のみ。 帰還手段もなくどうやって生きていこうか悩んでいた千颯の前に現れたのは、もふもふ癒し系のホワイトタイガーだった(のち超絶イケメンに変化)。 「名をくれたお前をこれから先ずっと守ると誓おう」 溺愛MAXのもふもふイケメン精霊獣に「駆け落ちするぞ」ともちかけられ、元の世界へ戻る為に旅をする事になった平凡社会人(無自覚チート精霊術師)の契約異世界BLファンタジー。 行方不明になっていた祖父がこの世界で聖女に拉致されたのを知り、探し出して一緒にニホンへと帰るつもりだったが!? ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。 ※ざまあ展開にもなりそうな予感。 ※想定文字数10万〜13万文字くらい。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

祖国に棄てられた少年は賢者に愛される

結衣可
BL
 祖国に棄てられた少年――ユリアン。  彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。  その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。  絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。  誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。   棄てられた少年と、孤独な賢者。  陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。

魔力ゼロの『外れ聖女(男)』、 追放先で知識を武器に国を改革したら、孤高の獅子王に「お前は俺の宝だ」と唯一無二の番として激しく求められる

水凪しおん
BL
図書館司書のミコトは、ある日突然、異世界に『聖女』として召喚される。しかし、聖女に必須の魔力がゼロだったため、『役立たず』の烙印を押され、人間国と同盟関係にある隣国・獣人国へ『贈り物』として厄介払いされてしまう。 武力至上主義の国で待ち受けていたのは、冷徹な若き獅子王カイゼル。「我が国に益をもたらさぬ者は不要だ」と言い放つ彼に、ミコトは生き残りをかけて唯一の武器である『知識』で国を改革することを誓う。 食文化、衛生、農業――次々と問題を解決していくミコトを、民は『賢者様』と呼び、冷たいはずの王の瞳にも次第に熱が宿り始める。 「お前は私の側にいればいい」 これは、捨てられた青年が自らの価値を証明し、孤高の獅子王の唯一無二の番となって、その激しい独占欲と溺愛に蕩かされる物語。

美貌の貧乏男爵、犬扱いしていた隣国の王子に求婚される

muku
BL
父亡き後、若くして男爵となったノエルは領地経営に失敗し、多額の借金を抱えて途方に暮れていた。そこへやって来たのは十年前に「野良犬」として保護していた少年レオで、彼の成長を喜ぶノエルだったが、実はその正体が大国の王子であったと知って驚愕する。 復讐に来たのだと怯えて逃げ出すノエルだったが、レオことレオフェリス王子はノエルに結婚してほしいと頼み始める。 男爵邸に滞在すると言い出す王子は「自分はあなたの犬だ」と主張し、ノエルは混乱するしかない。見通しの立たない返済計画、積極的な犬王子、友人からのありえない提案と、悩みは尽きない美貌の男爵。 借金完済までの道のりは遠い。

処理中です...