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一章 飛空島
13 僕の工房
しおりを挟む「ふふっ。王子、今回は特別にタワーの部屋を貸し与えて頂いて有難うございます。そして…お世話になった皆さんをご招待します!どうぞ!!」
ばぁーん!
と、チョコレート色の艶のある両開きの扉を開ける。
ツインタワーの中程の階にある研究室の一つを、タワーの責任者である王子に貸し与えて頂いた。
その広さは何と、寮の部屋が5つは入ってしまうくらいなんだ。
元々、一つのプロジェクトを推し進めるために開けていた場所だったけど、そのプロジェクトが今年になって予算の縮小が原因で、立ち消えたんだって。
だから当面の間使う予定が無かった部屋だそう。
だけど、研究室って凄く無機質な雰囲気だったからさ、アールベル王子が内装を変えてくださったの。
この内装と調度品は、王宮にある父さんの工房と同じ業者に頼んだんだって!
だから、僕も何度も通ったことがある馴染みのある雰囲気でさ、すっごく嬉しかった。
満面の笑みでアールベル王子に感謝すると、イケメンスマイルで軽く頷いてくれた。
「気に入って貰えたようで、良かった。ティルエリー様はよく王宮のお父上の工房に通い、一緒に魔道具作りに没頭されていたと聞いていたので。」
「あ、はは。」
王宮へ入るには、事前連絡が必要なんだけれど、僕は父さんの工房に顔パスで入れてもらってたんだ。
どうしても父さんの側にいたかったんだ。
……母さんが死んでからは特に、家に帰らない父さんの職場に足を運んでた。
母さんを愛していた父さんの心が、枯れてしまわないか気が気じゃなくて。
僕の憧れの、父さんが倒れてしまわないように、って。
烏滸がましいけど、その甲斐があったと思うんだよ。必死に勉強して、できるだけ見たことないような魔核を作って、父さんの創作意欲を刺激させたり、父さんの苦手な彫金加工のデザイン案を出したりさ。
結局、父さんは今も物凄い魔核を生み出して頑張れてる。当主の力は健在だ。
「……この度の事件について、君のお父上にも我が研究所を君に一室与えたことを報告している。近く返事があると思うよ。」
「…!有難うございます!…父さん…父は、僕からの手紙って読まないんです。元気なのは分かってるから、って…。でも、飛空島の研究機関からなら、少なくとも目は通してくれる、かも。」
「………。」
ん?
あれ。王子、黙ってしまった。どうしたんだろう?隣にいるヴォルカー先生も変な顔してる…。
僕、変なこと言ったかな?
「えと、ほら!見て!設計台に、彫金台、資料コーナーに、ドリンクバーも付けてもらっちゃった!!ギーヴ、ここに来たら好きに使えよ。ウチ、フロェン国からの補償でかなり潤ったんだぁ。」
話題を変えたくて、僕は部屋の説明をした。
「すっげぇな!ティルエリーは放課後はこっちに毎日通うのか?」
「そうだね。週に3~4日はこっちかなぁ。あ、でも金曜日の日替わり定食は絶対食べたい!!」
タワーにも料理人さんが雇われているから、頼めば夕飯作ってもらえるんだ。でも、やっぱり寮の食堂も捨てがたい!
「………何故、金曜日なんですか?」
ヴォルカー先生の疑問に、ギーヴが答える。
って、え?何でお前が答えるんだよ!
「金曜日は確かパルク料理だからだな。」
しかも合ってるし!
「ティルエリー様はパルク料理がお好きなのですね?」
「う……。はい…。」
ううっ、ヴォルカー先生に笑われちゃった…!
「あ、あの、ティルエリー様、私、その…魔道具作り、また見てみたいです!」
シャルルが嬉しいリクエストをくれた。
「それは私も是非見たい。」
「ご迷惑でなければ、私も是非、拝見したいですね。」
王子も、ヴォルカー先生も。
「じゃあ、せっかくなので、何か作りましょう!」
僕は魔石と紙を用意して、頭の中の設計図を描いてゆく。
「わぁ…本当に、美しい!まるで絵画のよう…!」
「その例えは的確ですね、マルローズ嬢。そして、あの線や文字一つ一つ全てに意味があると聞きます。」
「ティルエリーの頭の中ってどうなってんだ…?」
「あぁ……。自然と図案が浮かび上がるそうだよ。これがクライン血族の御業。」
「……で、きた!」
僕は設計図を描き終えて、指先に魔力を込める。ペンで描いた図案に流し込むと、文字と線がふわりと浮き上がるんだ。
そして、予め用意していた黒い魔石に、青く光る魔力を紡いだ魔法陣が吸い込まれると、その青は黒い魔石の色を変える。
透明に…青く、鮮やかに!
「何度見ても…すげぇ……!」
「うんっ、うん!守れて良かった……!ティル様ぁ~!」
「…………さぁ、できた。これが、魔核だよ!」
明るい、アクアマリンのような海の色。魔核に刻まれた回路は《通信》。同じ回路の魔核を持つ魔道具同士で波長を合わせると遠くからでも声が伝えられるって道具。
そう説明すると、
「えっ、凄い、携帯電話みたい!」
シャルルがまた変な言葉を言っている。
「マルローズ嬢、そのケ…タイというのは、何かな?」
あ。アールベル王子がシャルルの不明語録に食いついた。
「へっ?や、あののの~小さいから携帯できるし、でっ、電光石火のように話を伝えられるって意味で!」
電光石火……?物凄く早いって意味だよね。…まぁ、そんなイメージもありか。
「ふぅん。マルローズ嬢は面白いセンスの持ち主のようだね。興味深い。…今度一緒に食事でもどうだい?」
「へぁっ!?わ、私がですか!!!?」
ぷっ。シャルルがまた変な声を出して…。退屈しないなぁ、それにアールベル王子の誘いを断れる奴なんていないよ。
そんなやりとりを微笑ましく眺めていると、ヴォルカー先生がそっと僕の手の魔核に手を伸ばして、触れて。
うわわ、手が触れちゃう!
「ティルエリー様、《通信》ということは、複数無ければ意味がないのでは…?」
「う、うん。そうなんです。だから、加工もあるし数日待っていてくださいね!」
「…?」
「加工して、差し上げます。いつでも…その……み、みんなと連絡取り合えて、便利だし。」
「あ~、なるほど!確かに!」
ギーヴも嬉しそうにうなずいてくれた。
それに…僕がまた、先生と二人でお話したい……から。
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