空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

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二章 宝探し

47 撤退

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僕の目の前が、真っ白に光ったのは、ヴォルカー様の結界だった。
「ヴォルカー様っ!」
「みな、無事ですか?…アールベル、倒せますか。」
「……人間ならば力量も測れるがな。……アレについては未知数だ。」
「………私の結界がヤツの一度の攻撃で…あのザマです。これは…不味いですね。」
僕らを取り囲むように張られた結界の一部が、ひび割れた硝子のように砕けていた。
「……全くの想定外。飛空島に危険な生物はいない。……が、アレは……地上の魔の物より危険因子だろう。…過去のクラインが生み出したガーディアンなど……地上でも見たことがない!」
アールベル様でさえも、焦っているようだった。そんなに、マズい相手ならば。
 
撤退。

それが一番だろう。

でも、どうやって?

ここから動けば攻撃にあう。だから結界も解けない。

魔法も大して使えない学生二人に、こんな場面では役立たずなクライン二人。

魔法と神聖力を使う神官と、剣と魔法が使える人が二人………。

そんなメンバーで、どうやったら生き残れるのか?

「………ティルエリー、魔石と紙、あるか?」
皆が硬直して、どう対処すべきか考えていたときに、ギーヴがそっと耳打ちしてくる。
「ギーヴ……?魔石なら、何個か持ってるよ。何か、考えがあるの?」
ギーヴは慎重に頷いて、今度はフェリクスさんに向き直ると。
「ヴォルカー様は勿論使えるでしょうが……王子とフェリクスさん、転移魔法は使えますよね?」
ギーヴの言葉に、アールベル様も策があると感づいたのか、話に耳を傾ける。
「無論だ。だが、それはあくまでも自分用の術が基本だ。…広範囲転移は、魔道具なしでは……。」
転移っていうのは、基本的には自分自身が移動するものだから、魔法を習い始めたばかりの一年生や、魔法を行使できないクライン血族は、転移は使えない。
だからこそ、飛空島への転移には魔道具が用いられる。
しかも一人につき、ほんの少ししか人数対応できないから、術者も複数必要なんだ。
「もしかして、ギーヴ君が言いたいのは…転移の魔道具が無ければ、ここで作り出せば良い……クライン血族が、お二人もおられるのだから。…そういうことかい?」
フェリクスさんはギーヴの考えが分かり、希望が見えたかのように声を明るくした。
そっか!!
転移魔法の範囲を広げることができれば、ここにいる全員を、この場所から離脱させられる。
転移が使える人間が3人もいるのだから。
「任せて!!転移用の魔核は大気と光。だから僕が作る。それに併せて…広範囲転移魔法に適した魔核は………《魔力強化》と《範囲拡大》!エディオ、一緒に!!!」
サポート系に長けたエディオの魔力。
それに、大気と光を紡ぐ転移の魔法。
僕たち二人なら、簡易転移装置がここで作れるんだ。
ギーヴは、その可能性をたった今の間に思いついたんだ。
流石、魔道具マニア!!


「ギーヴ君の案に賭けましょう。この結界は長くは持ちません。アイツの攻撃を分散させたい。フェリクス、アールベル、両サイドに散って撹乱してください。二人に加護を授けますから、少々攻撃が当たっても死にはしません!」
ヴォルカー様が二人に加護の光を浴びせた。
「あぁ、引き受けた!!フェリクス、お前は右ヘ行け!!」
「承知!!!」
二人の、両側からの攻撃に、人型の魔道具は翻弄されている。

よし、描くなら、今のうちだ!

僕は、あの日から常に魔石と大判用紙を小さく畳んで持っている。
なにがあっても、その場で魔核を作れるように。
僕は転移用の設計図を描きあげていく。
何度か見た転移装置の魔道具。あれをコピーすればいいだけだ。
「できたっ!!」
「ティルエリー、こっちも準備完了だ!フェリクス!!結界の中に戻れ!!」
「アールベル、こちらに!!!」
エディオがフェリクスに呼びかけ、ヴォルカー様もアールベル様を呼び寄せる。

その呼び声に反応し、人型魔道具は結界側に熱線のような攻撃を破れかけた結界に向かって飛ばしてくる。
「ヴォルカー様!!!」
ヤバい、これ以上攻撃を受けたら……結界が砕ける!!!

「ティル様!!!ごめんなさい!守護のブローチを貸して!!!」

「シャルルっ!?」

僕が、いつも付けていたブローチ。
シャルルはそれを掴み、魔法を発動させた。
守護の魔核に乗せた魔法は、強力な壁になる。

「《防護壁》ーーー!!!」
ヴォルカー様の結界が砕けるとほぼ同時に、シャルルの魔法が攻撃を防ぐ。
「アールベル!フェリクス!!急げッ!!!」
「くそっ!!!」
「ーーーっだぁーー!!」
滑り込むと同時に、転移魔法を発動させた。

『転移、工房へ!!!』

◇◆

「………………。」
「…………………………。」

「…………たすかっ………た?」

全員、いるよね?

みんな、無事?

「シャル、ぁ…ありがと………ブローチ、よく思いついたね!?」
ヴォルカー様の結界が砕ける寸前、まさかブローチを使って防護壁を構築するなんて荒業、普通の子じゃ思いつかないよ。
「え、へへ。必死でよく分からなかったけど……みんなを守りたいって、思って………こ、怖かっ………ふえぇ……。」
「ふ、ふはは。思いつきだったのかい?凄いな、シャルル嬢!」
アールベル様も、いつもの威厳なんか吹っ飛んで、腰を抜かしてて。
「……も、申しわけありません。私が神殿の遺跡を見つけてしまったから……皆さんを危険な目に……。」
フェリクスさんが、肩を落として謝罪してる。
「フェリクス、それは違うぞ。調べようとしたのは、俺らの総意。だよな、ティルエリー?」
エディオが笑顔で僕に問う。
「うんっ。誰が悪いとか、ない。僕もアーティファクトが見つけたかったし、エディオもそう。強いて言うなら、責任があるとしたら、それこそアーティファクトが見たいと言った、僕に…だよ。」
僕が、ブロディアの武器制作のためにそんなことを言い出したから。
「……ッ!だ、だったら私も責任ありますっ!ハウザー様のアーティファクトの情報を教えたのは私ッ……!!」
シャルルは目に涙を溜めていた。
「シャルル嬢、君のせいでは………。」
アールベルが慰めてる。
「あぁー……もう!やめやめ!!誰も悪くねーよ!!皆無事だったんだ、それでいいじゃねぇか!」
ギーヴの元気な声に、やぁやぁ言い合っていたみんなは黙る。
大人だからこその、責任を問われるものだと、皆が庇い合っていたのだ。でも、それは解決しない問題でさ。

「とにかく、怪我もなく戻れたし、飛空島の新たな秘密が明かされたんだ。アールベル王子殿下の仕事が増えた、そんだけだ!」

ん?

「………………ふっ………はははっ!!間違いないですね。アールベル、今回の件、あなたがしっかり研究所の部下らを酷使してください。それで良いってことにしましょう!」
ヴォルカー様まで、笑い出した。

それまでの緊迫した雰囲気がガラッと変わったことに、気が抜けてしまった。

ギーヴ、凄すぎだよ。



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