無の王

777

文字の大きさ
1 / 15
生きる知恵

物語の始まり

しおりを挟む
窓際の一番後ろの席に座っている男は外を眺めていた。



別に珍しいものがあるわけでもない、可愛い女の子がいた訳でもない。


それでも授業を聞いているより遥かに気分が良いのである。




外を見ると心を無に出来る。

勉強に追われるのが嫌だから、ただの現実逃避である。




男の名は伊地野零。本作の主人公だ。


茶髪で少し雰囲気が暗い男である。

高校2年生、身長168センチ、顔はそこそこイケメン。

そこらにいる高校生だと思うが、この男性格が暗い故に友達も少なく、人とコミュニケーションを取るのが苦手である。


それだけならマシだ。

伊地野零は極端に頭が悪い。


「何でこの高校にいるの?」って言うほどのウルトラバカである。


バカとはいえ、知識が無いわけではない。

勉強が出来ないだけで、勉強以外の知識は豊富である。



その為、普通に会話しているだけなら馬鹿と言うより、どちらかと言えば頭が良いと思われる。





終礼が終わり、みんなは部活に行ったり、友達と帰ったりするが伊地野零は屋上に直行する。




放課後の屋上が零の至福の時である。


夕陽が落ちて行くのを眺めながら地べたに寝転がる。


今は四月なので風が涼しくて気持ちいい。

時折、寒く感じるときがある。だが、それがいい。


この瞬間こそ零が生きていると実感できる時なのである。



だが今日は風が強く、流石に寒く感じたので零は帰ろうと思い、屋上の階段を開けようとする。



その時だ。


後ろから声が聞こえた。


「あの…。伊地野くん。」

「えっ…?」

零は振り返ってみた。

するとそこには可愛い女の子が立っていた。


長い黒髪で背の低い女の子だ。

零のタイプである。零のストライクゾーンど真ん中である。



しかし、零は女の子をよく見るとこの子、どこかで見たことあると感じた。


「あの…一年のとき同じクラスだった日向飛鳥です。覚えていますか?」


女がそう言うと、零は思い出したかの様な顔をした。


彼女は一年のときに同じクラスにいた娘だ。

一年の時は余り喋らなくて、目立たない娘で正直あまり印象に残っていない。


頭が良いと言うのは聞いたことあるけど。



「あぁ、日向さんか。何か用…?」


素っ気なく言う零に飛鳥は手紙を渡して言う。


「あ、あの…。私と付き合ってください…!」



いきなりの告白。

零は一瞬固まった。

「えっ…?」としか声が出なかった。



「あ、あのっ。今日いきなり結論出さなくても良いです…。明日、放課後にまた屋上に来てください。その時に答えをください…。」


そう言い、飛鳥は去っていく。




零は状況がよく分からず、ずっと固まった状態である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...