羊の夢で恋をする

うたた寝

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モテる指輪

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 そうだ。モテ過ぎて困ったら指輪を外せばいいんじゃな~い、と気付いたのは羊が10キロ弱のマラソンを終えた時だった。10キロを30分を切るくらいの帰宅部にしてはスーパーハイペースで走ってたハズなのだが、一人の脱落者も出ることなく羊に付いてきたのは、彼女たちの日頃の鍛錬の成果か、指輪の力によるトランス状態のせいか。
 指輪を外した瞬間付いてこなくなるのだから、現金なものである。いやまぁ、付いてこられても困るのだが。指輪を付けている間に起こった出来事の記憶は指輪を外した後には持続しないらしい。ふと我に返ったように何故こんな所に居るの? とキョトンとしている。
 どのあたりから記憶が無いのか定かではないが、気付いたら知らない場所に居るわけだから相当恐怖だろう。中にはここから駅への帰り道が分からない人も居るかもしれない。同情はするがとりあえず放置だ。紳士のようにこちらですよ、と案内してあげたい気持ちはあるが、急に見知らぬ男子に話しかけられても怖いだろうし、羊も羊で先ほど追いかけられたトラウマがあるので迂闊に近寄りたくない。
 そんなわけでそーっと彼女たちの視界から隠れるように草むらをほふく前進する。大人しく電車に座っていれば余裕で始業の一時間前くらいには最寄り駅に着くハズだったのに、急遽発生した10キロマラソンのせいでそこそこ時間にピンチである。羊も羊で必死に逃げたものだから現在位置を正確には把握していない。せめて学校から遠ざかる方向に走っていなければいいなぁ~、と彼が希望的観測を抱いていると、

「先輩?」

 頭上から声が降ってきた。不意の声に羊の心臓は飛び跳ねて、ほふく前進を停止させる。
 登校中に草むらでほふく前進をしているという世にも奇妙な姿を見られたから動きが止まったのではない。いや、それもあるにはあるが、声を掛けてきた相手が一番の理由だ。
 草むらの隙間から見える足。そのままスーッと視線を上に上げていくと、
「?」
 声には出さない『そちらで一体何を?』という質問を浮かべながら曖昧な笑みで首を傾げてくる美月に正直に答えるわけにもいかず、羊も羊で曖昧な笑みを返すのだった。
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