魔王様、復活のお時間です!!

二葉 夏雨

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【13時間目】魔王様、さくら子のお願い事のお時間です‼︎

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結局僕はあの後、奈賀井さんの無垢むくひとみ(あんなに厚顔無恥こうがんむちなはずなのに)に逆らえず、追加投資の50円を奈賀井さんに渡し戻ってきた。
当の本人は一緒にクラスに戻ってきたはずなのにいつのまにかつゆと消えた。
どうでもいいけど僕の周りの人、神出鬼没しんしゅつきぼつな人多くありません?割とリアルガチで妖怪説ありますこれ?

なにはともあれ、今はやっと午前の授業が終わり中休みになった訳なので僕ら生徒たちにとっては至福しふくの時間と言っても過言かごんではないお食事タイムがやってきたのだ。
この時だけは今までの事を忘れて食事にふけってもおとがめはないだろう。

僕は(うきうきと)僕の席にやってきた種田さんと聖良と僕とで食卓(と言う名の学習机の集合体)をかこみ(水原さんもさそったのだが「私は委員の仕事があるからまた今度にしてちょうだい」と言われた)食事とたわいもない話に花を咲かしていると、突如とつじょクラスの扉が勢いよく開きくだんの水原さんが怒ったような、あるいは呆れたような、そんな表情で僕たちのところへ近づいてきた。


「生徒会主導の委員会員会合に出席してほしい?」


聖良が作ってくれた手作り(本人いわく愛妻あいさい弁当との事だが)のハンバーグを口に運びながらたった今目の前に来た水原さんの言葉とともに咀嚼そしゃくしてみる。

委員会会合?それってつまりクラス委員や図書委員の人たちが集まって会議する的な事だよね?


「ちょっと回文みたいになってるじゃない……えぇ、そうよ。この学校は委員会に入った人は一度全員で顔合わせをするらしいのよ」


「だけど我が盟友も私も委員会なんて入っていないぞ。水原 さくら子はついに頭の中まで貧相になってしまったのか!?」


「しばき倒すわよ」と一言、種田さんの頭を引っ叩くと(種田さんは頭の上にできたたんこぶを涙目でさすっている。かわいい)水原さんは続けた。
聖良さん?種田さんのたんこぶにタバスコぶっかけようとしてますけどやめてあげてくださいね!?


「それを踏まえた上であなたたちに相談……と言うよりもお願い事を聞いて欲しい訳なの。どうしても出れないうちのクラスの委員のために代理出席してもらってもいい?」


「うん。分かったよ。水原さんも出るんだよね?なら僕らも出るよ」


僕は二つ返事で答えると弁当に入ってるピーマンをはしでよけた。
その瞬間を見逃さず聖良がまるで躊躇ためらわず僕の口の中にピーマンをぶっ込んでくる。
僕はき込むふりをしてピーマンをまともにまずそのまんま飲み込むとたった今いた疑問を水原さんにぶつけた。


「んぐっ!……ところでその出れない委員って何委員のやつなの?」


「図書委員よ」


間髪かんぱつ入れずに水原さんが答える。
図書委員……ん?図書委員?

僕はどこかで聞いたその言葉を思い出そうと頭をフル回転させる。
するとすぐにその答えは見つかった。そう。ちょうど11話目で、僕がおなじく水原さんに聞いた言葉だ。


(この子は奈賀井ながい 風花ふうか。私たちのクラスの図書委員よ)


あっ。図書委員って………。
なるほどな。そう言うことね。


「………やっぱり奈賀井さんですよね。ちなみに用事って何か聞いた?」


僕と帰ってくる途中で雲散霧消うんさんむしょうしてしまった奈賀井さんの代わりに水原さんに聞く。


「私も詳しくは聞いてないわ。ただ、余程よほどはずせない用なのは確からしいわ。まあ、あの子に限ってそんな用事があるとは思えないけどね……」


確かに。
僕と水原さんが目を合わしながら要らない意思疎通いしそつうはかったところで今度は聖良が口を開く。


「逢魔様。これは私たちにとってもチャンスかもしれませんよ」


「チャンス?」


なんのチャンスだろうか。
願わくばマイナス方向へのチャンスはやめていただきたいところだが。

僕は弁当の残りを一気に口にかきこんだ。
美味い。やっぱり聖良の作る料理はその一言に限る。


「それはもちろん、残りの3人の能力持ちの方を探す好機チャンスですよ」


「あ、あぁ。そういうことね…………」


ですよね……。
割と僕、これ以上新キャラの応対にキャパが足り無くなってきたような気がするんですけど、今から入れる保険とかありますかね?
てかよく考えなくてもこの子らと恋愛関係持っていくって無理ゲーもといクソゲーの匂いがぷんぷんするのですよ。


「しかし、逢魔様。逢魔様が力を取り戻さなければメイベルに平和は訪れませんよ?ただでさえ今メイベル界は……」


「わ、分かってるよ。……頑張ります」


聖良に軽いパワハラ(正論)を受けながら僕はしっかりとその委員会委員会合への意欲いよくしめした。

そういえば、僕はこの世界に来る前────つまりメイベルにいた時にはこっちの世界の事なんて微塵みじんも知らなかった訳だが、この世界の学校では委員会や何かしらの役員に入ったりしたら全員が一度はつどわなければならないのだろうか。


「いえ、そんな事はありませんよ。ただ、この学校がいささか特殊なだけです」


もはや恒例こうれいの聖良の独白どくはく読みに対して水原さんが更に仔細しさいを加える。


「まったくそうよ。たかだか建てられてから17年しか経ってない新米高のくせに世界各国から優秀な子供を手当たり次第スカウトしたりしてるらしいじゃない。おかげさまでこの学校は多国籍たこくせき化しててまともに言葉も通じない人も多いわ。生憎あいにく、このクラスは何故か日本人ばかりで助かってるけどね」


なるほど。
このクラスは日本人ばかり(後死んだ魚のような目をした人が多すぎるのは気のせいかな?)だからあまり気になっていなかったが入学式でも、通学路でもちらほら日本国籍ではなさそうな人を何人か見かけた気がする。
余程この学校のおさは教育に力を入れてるらしい。まあ、僕らにとってはなんでも良かったりはするが。


「とりあえず放課後、僕と聖良はその委員会委員会合に出るとするよ」


水原さんはそれだけ聞くと「ありがと」と一言、そして「じゃあ頼むわね。放課後、会議室で」と二言で去っていった。
相変わらず彼女はすごく忙しそうだ。やはりクラス委員だけはあるのだろうか。


「我が盟友よ……私のこと忘れてないか?」


☆そういえば居たね……!!──────


───────────────────────

【登場人物紹介】

●躑躅森 逢魔

魔王の息子で主人公。
今回めちゃくちゃ平和回だったので次回はとんでも無いことが起きるのではないかとビクビクしている。


●躑躅森 聖良

逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。
逢魔よりも学校の事を知っているらしいがこれといって教えてない。教えてやってくれ。


●種田 冬火

1人目の能力持ち厨二病コミュ障ぼっち少女。
最近全くこれといって出番やセリフがない。
最初に出番をたくさんあたえられた反動か。
次回も出るかは怪しい。頑張れ……!


●水原 さくら子

2人目の能力持ちツンデレ貧相クラス委員少女。
当初は逢魔を動かしまくろうと考えていたが思った以上にさくら子が動かしやすすぎて困惑している。
多分これからはさくら子中心に話が展開していきそう。ただでさえ忙しいのにごめんね。


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