異世界から魔王候補として召喚された

フミナベ

文字の大きさ
21 / 55

処罰と大浴場再び

しおりを挟む
【選手待機室】

大成が大会を優勝して無事に終わりを告げた後。

大成は、応急手当てと着替えをするために医療室にいた。

「ふぅ~。昔の感覚が戻って、どうにか優勝できたけど。ハァ~、この後、すぐに次の行動しないと」
大成は、誰もいない医療室の椅子に座って救急箱に手をかけようとした時、部屋のドアが開いた。

「た、大成!」
「た、大成さん!」
ジャンヌとウルミラは、すぐに大成がいる待機室に駆けつけた。
2人は、感動して涙を溢しながら大成に抱きついた。


「おめでとう、大成。あなたが、優勝するって、私は信じていたわ」
「私も信じてました。おめでとうございます、大成さん」
2人は、大成の胸に顔を埋めた。

「ありがとう。2人とも」
大成は、優しく2人を抱きしめた。


それから暫くの間、大成はジャンヌとウルミラが落ち着くのを待った。

「あっ、そうだ。急でごめんだけど頼みたいことがあるんだけど。良いかな?」
「ええ、わかったわ」
「はい、わかりました」
ジャンヌとウルミラは、大成の頼みごとを快く引き受けた。

そして、ジャンヌは式典の準備の指揮をとらないといけないので物足りなさそうな表情をして先に部屋を出ていき、ウルミラも大成の手当てを施して物足りなさそうな表情で式典の準備の手伝いに向かった。

残った大成は、次の目的を果たすため屋敷の裏庭に向かうことにした。



【屋敷・裏庭】

大成が中庭に着いた頃には、先程ジャンヌとウルミラに頼んで呼んで貰った人達が集まっていた。

「すみません。遅れました魔王様」
走って駆けつけたウルミラは、皆の前なので大成さんから魔王様に呼び方を変えている。

「構わないよ。僕が急に頼んだことだから。これで、全員揃ったかな」
大成は、周囲を見渡す。

大成の周囲には、ジャンヌ、ヘルレウス・メンバー全員に騎士団達、魔王候補達のせいで娘を失った夫婦3組、そして問題の魔王候補の3人が集まっていた。

大成と戦った魔王候補達は拘束され、かろうじて生きている状態でタンカーに横たわっており騎士団達に包囲されている。


「お忙しい中、わざわざ集まってくれてありがとう。説明を受けたとは思うが、ここに倒れている魔王候補3人の処罰をどうするかということを決めたいが、その前に何があったのかを詳しく説明する。その後に皆の判断を仰ぎたいと思う。辛いことを思い出させてしまうが、説明を頼む」

「「はい」」
居合わせていなかったローケンスや騎士団の隊長達のために、それぞれの被害にあった夫婦達は今までのことを説明をした。

だが、結局、皆は処罰の件は大成の判断に任せることに一致した。


大成は魔王候補達に近づき、一度、瞳を閉じて一息して開いた。
威圧感が増して冷酷な瞳に変わった大成は、魔王候補達を見下ろす。

大成が放つプレッシャーを受けた夫婦達と騎士団達は、緊張して息が詰まる。
ジャンヌとヘルレウス・メンバー達は、目を少し見開いた。

「おい、お前達に選択をさせてやる。お前達が襲った娘さん達の両親達に謝罪をすれば命だけ助けてやる。無論、その後は牢獄行きだけどな。それとも、今ここで処刑されて死ぬか?どうする?」
大成は、人の命を軽んじるような冷酷な瞳と表情をしており、声音は冷たく低くなっていた。

皆は、周囲の温度が下がったように感じた。


暫くの間、無言だった魔王候補3人だったが。
「うっ…。しゃ、謝罪をする…。た…頼…む…。助けてくれ…。ほ、本当にすまな…かった…」
「わ、わしも…。す、すまな…いことを…した」
「ワ…ルカッタ…」
先にプライドよりも命を選んだグランベルクが答え、他の2人も同じ選択をして謝罪をした。


大成は普段通りに戻り、夫婦達を見た。

「「……。」」
夫婦達は無言で頷く。

「わかった。あとローケンスさん前に出て下さい。一緒に治療しますので」
「いや、俺は遠慮します。気持ちだけで十分です。あの闘いは、忘れたくないので自力で治して記憶に刻みたいと思っていますので」
「そうですか…。なら、グリモア・ブック、ワイド・ヒール」
大成は苦笑いしながら、ユニークスキルのグリモアを召喚して光魔法ワイド・ヒールを唱えた。

予選の時と同じ現象が起こる。
足元に魔法陣が出現して輝き、下から上へと蛍の光みたいな光が宙を舞って自分と魔王候補達の怪我を癒した。


その後、拘束されている魔王候補達は素直に騎士団達に連れられ、大人しく牢獄へと向かった。

「う~、これで一件落着だな」
大成は、両手を伸ばし背伸びをする。

「「あ、ありがとうございます、魔王修羅様」」
大成の急激な変化に対応できていなかった夫婦達は、戸惑いながら頭を下げ感謝した。

「き、気にしないで良いですよ」
(やはり、魔王修羅って呼ばれるのは流石に恥ずかしいな…)
大成は顔を引きつりながら苦笑いをし、夫婦達は立ち去っていった。


「魔王様ではなく、魔王修羅様?」
怪我で決勝戦を見ていないローケンスは、理解できないで頭を傾げる。

「フフフ…。それわね、ローケンス」
「ちょっ、ジャンヌ。わざわざ、説明しなくっていいから!」
大成はジャンヌを止めようとしたが、ジャンヌは笑いながら説明をした。

「ワハハハ、なるほど。納得です」
ローケンスは、顔を上げて手で顔を覆い隠して笑った。


それから、大成以外は式典の準備をしに行った。
大成は手伝うと言ったが、「魔王様に手伝わせるわけには、参りません」と皆から言われ断られてしまった。

そういうことで、暇になった大成は正式に魔王になったので念願の魔王専用大浴場に堂々と入ることにした。



【魔王専用大浴場】

「フフン、フン、フフン、フフ~ン…」
大成は脱衣場で鼻歌を歌いながら服を脱ぎ、タオルを肩にかけてスキップしながら浴槽に向かう。

「白い湯煙に、この温泉特有の硫黄の香り!よし、誰もいない!待ちに待ちかねてました~この時、この湯!ハァ~幸せ~だ~」
掛け湯した大成は、冷水で濡らしたタオルを頭の上に乗せて湯に浸かり目を閉じて一息着いた。

湯は、サラサラしており肌がツルツルになっていた。


暫く経ち、湯を満喫した大成は浴槽から出て身体を洗おうと風呂椅子に座り、手桶に湯を入れたその時だった。

脱衣場の扉が、ガラガラと空く音が響いた。

「っ!?」
嫌な予感がした大成は、音がした方に目をやり驚いた。

「お兄ちゃんっ!背中を流しに来たよ!」
「ダーリン!背中を流してあげる」
エターヌとマキネが、タオルを巻いて入ってきたのだ。

「えっ!?なんで、2人がここにいるんだ?」
「忘れたの?ダーリン。私はアサシンだよ。忍び込むなんて朝飯前だよ。次いでにエターヌも連れてきちゃた」
「ありがとう、マキネ姉ちゃん!」
2人は恥じらいもなく、大成に歩み寄る。


「ありがとう2人とも。あっ、エターヌ、浴室は走ったら危ないからいけないよ!それに2人とも、先に湯に浸かって身体を温めると良いよ」
今回はエターヌもタオル巻いていたので、大成は頼むことにした。

「ごめんなさい、お兄ちゃん。先にお風呂に入ってくるね」
「フフフ…。ダーリンは優しいんだね。ますます好きになっちゃった」
2人はタオルを巻いまま、湯に浸かろうとした。


(わかっている、わかっているが…)
「2人とも湯に浸かる時は、湯にタオルを浸けたら駄目だ!」
温泉奉行の大成は、マナー違反をする2人を見て我慢ができず注意をした。

「「えっ!?」」
2人は訳がわからず、大成の言葉で固まった。


「あっ、いや、その…別に、そんな意味で言ったんじゃなく…って…」
大成は混乱し、どう言ったら良いか言い淀む。

「わかった。お兄ちゃん!」
「へぇ~大胆だね!ダーリンも男なんだね。別にダーリンならいいよ。エターヌちゃん、先にダーリンの背中を流そうよ」
「うん!わかったよ、マキネお姉ちゃん」
2人は大成に振り向き、巻いていたタオルを外して歩み寄る。


(マキネは胸が控えめでスレンダーで、エターヌは前より成長を…い、いや見たら駄目だ)
「ぼ、僕は、先にあがるよ」
つい、大成は目を離すことができずに2人を凝視してしまった。

このままだと、ヤバイ結末になると本能が訴え掛けていたので回避しようとするが…。


「待って、お兄ちゃん!」
「逃がさないよ、ダーリン!」
エターヌとマキネは何も纏わずに後ろから大成に抱きつき、逃げようとする大成を離さなかった。

「ちょ、ちょっと、これは流石にヤバイって!」
「ん?何が?お兄ちゃん?」
「具体的に言わないと、わかんな~いよダーリン!」
背中に柔らかい感触が直に伝わり、大成は顔を真っ赤にして叫んだ。

きょとんとしているエターヌは本当にわかっていないが、笑みを浮かべているマキネはわかっていて知らないフリをしているのは明らかだった。


そんな時、再びガラガラと音をたてながら扉が開いた。

「た、大成。私があなたのせ、背中を流してあげるわ」
「わ、私も手伝います」
ジャンヌとウルミラが、頬を赤く染め入ってきた。

「「……。」」
ジャンヌとウルミラは、浴場の光景を見て口を開けたまま固まった。


「こ、これには、じ、事情があるんだ…」
さっきまで真っ赤に染まっていた大成の顔は、一変して血の気が引いて真っ青に染まる。

「これは、どういうことかしら?なぜ、3人とも、は、裸で抱き合っているのかしらね~?それに、この状況、どんな事情があると思う?ウルミラ」
「そうですね~。これは事情などないと思いますよ。大成さんが、2人を招き入れたとしか考えられません。姫様」
「そうよね。ねぇ、エターヌ。1つ聞きたいことがあるのだけど?良いかしら?」
「ん?何?ジャンヌお姉ちゃん」
「床に落ちているタオルが2枚あるけど、何で2人とも裸なの?」
「ん?お兄ちゃんが取れって言われたからだよ。ジャンヌお姉ちゃん」
「「へぇ~」」
エターヌの言葉を聞いたジャンヌとウルミラは、ますます視線と声音が冷たくなり笑顔で大成に振り向いた。
だが、2人の目は居座っており、笑っていなかった。


マキネは、慌てて大成から離れてエターヌを担いで大浴場から避難する。


「あ、あの、これには…」
一人だけ残された大成は、恐る恐るジャンヌとウルミラに説明をしようとしたが既に遅かった。

ジャンヌとウルミラの片手に魔力が集中し、その手は大成に向けられていた。

「この変態!女たらし!女の敵!一度、死んで治してきなさいファイア・ボール!」
「ふ、不潔です!アイス・ボール!」
今まで静かだったジャンヌとウルミラだったが、怒りが一気に噴火した。

「何で、いつも、こうなるんだ~!」
大きな爆発音とともに大成の断末魔が響いたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~

RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。 試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。 「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」 枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...