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最終話
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『い、いつから知ってたの?』
『いつから…かなぁ?
気付いたら一緒にいたし、…見てればそれ位わかるよ』
栄治の言葉に、「そっか」と納得する。
『でもなぁ。二宮、男子に人気あるからな?
気を付けて無いと取られるぞ?』
『そ、そんな事…!
分かってるし、杏菜なら大丈夫だよ!
それに…』
最初は、笑って躱そうとした。
でも、春には杏菜の隣にはいない。
そんな自分に何ができるのか。
口をついて出そうになる言葉を必死に押し込む。
栄治に八つ当たりしたって、どうにもならないのだ。
言葉の代わりに、涙がボロボロと零れ落ちた。
『お、おい、望月…』
『さーや?』
間の悪い所に、杏菜がやってきた。
もうすぐ卒業式で移動するのに、さーやと栄治がいない。
聞けば二人で出ていったらしい。
友達がキャーキャー色めき立っていたので、探しに来たのだ。
まさかのまさかで、告白して…なんて流れでも無いだろう。
でも、何か引っ掛かる。
ほんの少し様子を見るだけだ。
そう、思って来てみれば。
さーやが、ボロボロと涙を零していた。
『春人!さーやに何したのよ!
ー…大丈夫?さーや?』
キッと栄治を睨み付けたかと思えば、急ぎ足で栄治とさーやの間に入る。
栄治とは正反対な優しい口調と表情で、杏菜は話しかけていた。
『王子様かよ…』
ボソッと皮肉る。
(これじゃあ、オレが間に何か入れないよなぁ…)
絶対に覆せない、不毛な恋。
でもまあ、それならそれで、今までの関係を壊さなくて済む。
(あー、オレのが泣きそうだわ…)
さーやと杏菜を見ていて、自分の恋は完全に粉砕したのだと思い知らされた。
元から必ず上手く行くとも思っていなかったが、それでも現実を目の当たりにすれば流石に凹む。
『お前ら、適当な所で来いよ?
そろそろ移動するんだろ?』
『あ!そうだった!ありがと、春人!』
『二人とも、待ってー!』
教室に戻ろうと、さっさと背を向ける栄治。
本来の自分の用事を思い出し、慌てて栄治に続く杏菜。
そしてそれを追いかけるさーや。
(……あ)
今、ふと気付く。
栄治と杏菜は、幼なじみで家族みたいな感じなのだ。
栄治の恋が進展したら困るけど、少なくとも栄治と一緒にいてくれるなら杏菜の心配は無さそうだ。
なら、自分は離れている3年間で少しでも自分磨きを頑張って、同じ大学に進学して一緒に住もう。
後は、進むだけ。
『よし!』
『さーや?何してるの?行くよー!』
階下から杏菜の心配する声が響く。
『ごめーん!杏菜ー!今行く!』
迷いは無くなった。
さーやは満面の笑みで、杏菜の元へ走っていった。
(終わり)
『いつから…かなぁ?
気付いたら一緒にいたし、…見てればそれ位わかるよ』
栄治の言葉に、「そっか」と納得する。
『でもなぁ。二宮、男子に人気あるからな?
気を付けて無いと取られるぞ?』
『そ、そんな事…!
分かってるし、杏菜なら大丈夫だよ!
それに…』
最初は、笑って躱そうとした。
でも、春には杏菜の隣にはいない。
そんな自分に何ができるのか。
口をついて出そうになる言葉を必死に押し込む。
栄治に八つ当たりしたって、どうにもならないのだ。
言葉の代わりに、涙がボロボロと零れ落ちた。
『お、おい、望月…』
『さーや?』
間の悪い所に、杏菜がやってきた。
もうすぐ卒業式で移動するのに、さーやと栄治がいない。
聞けば二人で出ていったらしい。
友達がキャーキャー色めき立っていたので、探しに来たのだ。
まさかのまさかで、告白して…なんて流れでも無いだろう。
でも、何か引っ掛かる。
ほんの少し様子を見るだけだ。
そう、思って来てみれば。
さーやが、ボロボロと涙を零していた。
『春人!さーやに何したのよ!
ー…大丈夫?さーや?』
キッと栄治を睨み付けたかと思えば、急ぎ足で栄治とさーやの間に入る。
栄治とは正反対な優しい口調と表情で、杏菜は話しかけていた。
『王子様かよ…』
ボソッと皮肉る。
(これじゃあ、オレが間に何か入れないよなぁ…)
絶対に覆せない、不毛な恋。
でもまあ、それならそれで、今までの関係を壊さなくて済む。
(あー、オレのが泣きそうだわ…)
さーやと杏菜を見ていて、自分の恋は完全に粉砕したのだと思い知らされた。
元から必ず上手く行くとも思っていなかったが、それでも現実を目の当たりにすれば流石に凹む。
『お前ら、適当な所で来いよ?
そろそろ移動するんだろ?』
『あ!そうだった!ありがと、春人!』
『二人とも、待ってー!』
教室に戻ろうと、さっさと背を向ける栄治。
本来の自分の用事を思い出し、慌てて栄治に続く杏菜。
そしてそれを追いかけるさーや。
(……あ)
今、ふと気付く。
栄治と杏菜は、幼なじみで家族みたいな感じなのだ。
栄治の恋が進展したら困るけど、少なくとも栄治と一緒にいてくれるなら杏菜の心配は無さそうだ。
なら、自分は離れている3年間で少しでも自分磨きを頑張って、同じ大学に進学して一緒に住もう。
後は、進むだけ。
『よし!』
『さーや?何してるの?行くよー!』
階下から杏菜の心配する声が響く。
『ごめーん!杏菜ー!今行く!』
迷いは無くなった。
さーやは満面の笑みで、杏菜の元へ走っていった。
(終わり)
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