ヒキコモリ魔道師と、異端の生徒

春瀬さくら

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これからの事。

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「でも、具体的はどうしたら良いの?」

千種が改めてリオンに問う。
リオンもまだ掴めていないらしく、うーんと首を傾げる。

「まずは、チグサが何故こちらの世界に飛ばされたかを調べた方が良いかな」

何か目的があって、何者かが召還したのかもしれないし、何も無くてトラブルに巻き込まれたのかもしれない。

「誰かが意図して、チグサを呼び寄せたのなら遠くない内に迎えに来るだろうし、用が終わればきっと帰れる。


ただ…」





「ただ?」



考えられる召還理由の候補を上げた後に言葉を切る。
何やら不穏な空気を含む為、千種は息を飲む。



「もしも、何も無くトラブルに巻き込まれたのなら。


最悪、帰れない…かも…しれない…」






「ええええー!!」


リオンの不穏過ぎる言葉に、思わず叫ぶ。


「な、な、何で!?」


「落ち着け。


異世界間を渡るには、魔道で『道』を作らなければならない。
基本は一度通れば、道は消滅する。


術者が帰り道を作れる必要がある。
最初の道を作った術者が作るのが、道を通る者…この場合はチグサだな。
道を通る者にリスクが少なくて良い。

…リスクと言うのは、身体的負担や帰着点の相違、日付が狂わないか等々だな」


「た、例えばリオンさんが帰り道を作る事は可能なの!?」


「最悪、出来なくは無いだろうが…。

チグサのいたニホンが『何処どこ』にあるのかが分からないから、難しいな」



「そんな…」



思ってた事と、かけ離れた現実に千種は崩れる。
最悪、帰れないならリオンに頼めば帰れると思っていた。
だって数百年生きてるし。


でも、帰れたとしても怪我したり記憶喪失になってたり、海外に飛ばされたりするのは嫌だ。

そもそも、また違う異世界に飛ばされてしまう可能性だってある。



そうなったら。



今度こそ終わる。




「どうしよう…」



それしか言葉は出ない。


「チグサ」



いつの間に淹れたのか、テーブルには暖かい紅茶とクッキーがあった。


イスに促され、ノロノロと座る。



「リオンさん、私どうしたら…」



「まあ、上手くすれば誰かが迎えに来てくれるさ。
それまでは、ここでこの世界の事を学んでいれば良い」


「良いの?」


「ー…ああ。
寧ろ、すまないな」


「?何が?」


突然、神妙な顔で謝るリオン。
千種には、どうして謝るのか分からない。
だってリオンは人と付き合うのが嫌いで、ホントは自分といるのも苦痛かもしれないのに。

謝るのは寧ろ自分の方なのに。


「上手く帰してあげる方法が思い付かないし。


…もしかしたら、アリルさまなら。
もっと上手く。チグサにも優しく出来たとおも…」



リオンが全部言い終わる前に、チグサは両手でリオンの頬を挟み自分の顔に向ける。



「いっ…!」


「あのねぇ!」


何をするんだと抗議の視線を物ともせずに、強い口調で話す千種。



「今!目の前にいるのはリオンさん!


私を助けてくれたのも、リオンさんなの!!


そして、私が助けて欲しいのもリオンさん!!




アリルさんなんて過去の人の事なんか知らないの!」



「チグサ…」


「それだけは、覚えといて。
アリルさんが、どれだけ凄かったかは知らないけど。
もしかしたら、私をすぐに帰してくれるかもしれないけど。


それでも、私はリオンさんに助けて貰いたい。


…ダメ?」


「いや、ダメじゃない。

…ありがとう、チグサ」


改めて互いの目を見て、フフと笑う。
これからの事を考える為に、まずは先程用意した紅茶とクッキーを口に運ぶ2人であった。
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