ヒキコモリ魔道師と、異端の生徒

春瀬さくら

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それは突然に

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ー…パアアァ!!


天井をが突如閃光を生み出した。

リオンは急いで走り、千種の前に立つ。


が。




それは、悪意のあるものでは無かった。




パラ、

閃光から一粒、何かが落ちて床に乾いた音を鳴らす。


見ると、それは。




「飴…?」


千種の言葉を合図に、閃光は無数の飴に変化した。




バラララララ!!




凄まじい音と共に飴は床に落ちた。



「きゃああ!」


リオンに庇われたので、千種に怪我は無かったが突然の飴の豪雨に驚きを隠せない。


数分後、部屋には再び静寂が訪れる。


「…?おさまった…??」


「チグサ、大丈夫か?」


「私は大丈夫。先生は?」


「ぼくも大丈夫だ。



ー…しかし、これは…」



落ち着いて見ると、飴はキャンディペーパーに包まれた様々な味がある。
裸で落ちていないので、保管は出来る。




否。


そういう問題では無いが。




「…これ、どこから…?」



「恐らくは、先程のチグサの叫びに呼応したのかもしれないな」


呆れ半分のリオン。

あの時の千種の絶叫は、「雨よ降れ」と叫んだ筈だ。


雨が飴となり降り注ぐなど、マヌケな話は無い。



(ー…しかし。


この量の飴を具現化するとなると、それなりの資質があるのかもしれない。


育ててみるのも楽しいかもしれないな…)



人知れず、ニヤリと口角を上げるリオン。

そして、かつての師であるアリルを思い返す。
あの頃の自分に、その様な気持ちを抱いて貰えたのか、と。


ー…惰性や成り行きで師弟関係になっただけだったのでは無いか…?

だから、あの時アリルにいさまは…。


簡単に自分を騙したのでは無いか…ー。



この数百年。

考えても考えても答えの無い、堂々巡りを繰り返しては、やがて考える事を放棄した。


最初こそ彼らに憎しみもあったが、時を重ねる毎にそれも疲れてしまった。

そしていつしか、再び裏切られる事を恐れて誰かと気持ちを共有する事を諦めてしまったのだ。


そんな自分が再び千種と向き合おうとしている。
彼女を無事に元の世界へ導く自信は無いが、やれるだけの事はやってみたいと思えた。







「ー…せ!リオン先生!!」



深く考え込んでいたリオン。
千種に現実に呼び戻され、パチパチと瞬きをする。


「すまない、どうした?」


「この飴、どうしよう?」


「…そうだな…」


うーん、と右手を口に当てて考える。


膨大な量の飴だが、捨てる訳にもいかない。
かと言って食べるにも限界がある。



「よし、チグサが欲しい分は置いておいて、残りは売るか」

 

「売れるの?!」


「多少だが、な」


「わかった!じゃあ、すぐ支度するね?」


リオンに手渡された入れ物に、飴を入れて行く。

初めての魔法の成功に、自ずと足取りが軽い。

嬉しそうに飴を手に取り、味の選別をして行った。




「楽しそうだな」

「うん!
やっと魔法が成功したもの!」


「…これを成功と言われても、困るな。

だが、…ま。



今日くらいはおめでとうと言っても良いかな?」


「ありがとう!リオン先生!

また明日から頑張るね」


嬉しそうにバンザイしながら、ピョンピョン跳ねる。

リオンはそんな千種を見てから、視線を少し遠くに投げながら何かを考えていた。
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