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05 宴もたけなわになってまいりました
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同じ頃、宴会場も盛り上がっていた。
燭台を囲んだ男根数珠つなぎの輪は50名ほどに増え、男女がつながったまま跳ねていた。
さらにその燭台を背景にして山羊の頭のかぶりものをした全裸の男が同じく全裸で四つん這いになった女性を背後から攻めていた。女は涙と涎と愛液を流して、大声でわめき散らしている。
七三子を連れて来た男インキュバスは黒い服などとうに脱ぎ捨て、寝台の上で血のように赤い唇をした女と対面して座ったまま交わっていた。
そこへもう1人男が来て、女の背後に座って、女の両の乳房をつかんで揉み始めた。
6名で組体操のように交わっていた者達は男1人と女2人、男2人と女1人のそれぞれ3人組に分かれて、思い思いの体位を楽しんでいる。
その隣の寝台では、男同士5人で横向きに同じ方向を見て身体を重ね合っていた。外側の男の男根が隣の男の尻に挿され、挿された男の男根がまたその隣の男の尻に、というふうに重なりあっていた。一番最後はまだ若い青年で自分の男根を自分で扱いていた。
が、そこへ若い女が来て、その男根を自らの口に咥えた。すぐに青年はこらえきれずに精を放った。
汗と生臭い匂いと香の匂いが入り交じり、宴会場には淫靡な空気が充満していた。
ホテルの13階というありえない場所にある宴会場は今やサバト真っ盛りである。
さて、七三子はというと、またしても槇村に中で出された後、意識を回復した。
七三子は自分の上で平然とした顔をしている槇村に向かって叫んでいた。
「ひどい! あんまりです! 妊娠しなくても、病気になったら」
「一応、毎月性病の検査は受けてる。今月も大丈夫だった」
「ま、毎月って、普通の人はそんなもん毎月受けないでしょ!」
「普通の人じゃないから、俺」
七三子は悪夢だと思った。上場会社のサラリーマンが毎月性病検査って、一体こいつは何なのだ。いや、問題は避妊しないことだ。
「避妊しないで、やってるんですか。それじゃ、あっちこっちに隠し子だらけじゃないですか!」
「子どもはできないようにやってる。術をかけて」
「かけてるじゃないですか、精子!」
「だから、俺は魔法使いだから魔術使ってるの」
「はあ? 寝言は寝て言ってください」
ふざけるにもほどがあると七三子は思った。魔法使い? 30過ぎて童貞だと魔法使いになると聞いたことがあるが、この男は童貞ではない。大体、魔法使いなんてこの世にいるはずがない。
「人を何だと思ってるんですかあ!」
情けなくて涙が出てきた。先ほどまで快楽にのた打ち回って流していた涙とは違う。どうしてよりによってこんなほら吹き男に意識を失うほどイカサレまくっているのだろう。自分はただあの黒シャツの男にだまされてここに連れて来られただけなのに。
その涙を槇村はぺろりと目尻から舐めとった。
「いやあ!」
七三子はまたも電流を感じ、震えた。
「七三子ちゃん、おかしいと思わないのか?」
「全部おかしいですよ。槇村さんも、インクなんとかさんも、全部!」
「そうおかしいんだ。だって、俺たち、魔法使いと魔女なんだ。普通の人じゃないんだ。」
七三子はこいつがおかしいと思った。嘘にも限度がある。
「それじゃ証拠見せてください。魔法使いだったら魔法使えるんでしょ。」
槇村はにやりと笑った。
「勿論。何がお望みかな」
望みと急に言われても困る。最大の今の望みは槇村に結合を解いてもらうことなのだが。恐らく槇村はそんなことしないだろう。
「えっと、そうだ。私の身体きれいにしてください。化粧も何もかもぼろぼろになっちゃったし」
「それでいいの?」
身体を綺麗にするなら、結合を解かざるを得ないだろうと七三子は思ったのだった。
だが、槇村は七三子の中に陰茎を入れたまま左手でフィンガースナップ、すなわち指ぱっちんをした。
七三子は、次の瞬間、えっと叫んでいた。
涙と涎でひどい状態になっていた顔が妙にさっぱりしていた。汗まみれになって額や首筋に張り付いた髪もさらさらとエアコンの風に揺れていた。さっきまで愛液を垂れ流していた部分もきれいになって乾いていた。ただし、槇村の陰茎はしっかり中に入っていたが。
「うそ? まさか……」
信じられなかった。もしこれだけきれいにしようと思ったら5分や10分でできるものでもない。まるでシャワーでも浴びた後のようなのだから。
「どう? 信じる気になった?」
槇村は笑った。歯並びのいい白い歯がやけにまぶしい。
「どうやってこんなこと……。魔法なんですか、ホントに」
「ああ。初歩の初歩だけど。あ、だけど結合してる部分は濡れてるから動いたらまた垂れてくると思うよ」
確かに七三子の中は濡れているようだった。だが、それ以外は汗すらきれいになくなっている。
この男は本当に魔法使いなのだろうか。何かトリックを使っているのではないだろうか。だが、手品ならいざ知らず、七三子の身体の汚れはきれいさっぱりなくなっている、こんな手品知らない。
「魔法使いって本当に……」
「いるよ。俺がそうなんだから。さっきも言っただろ。今夜はヴァルプルギスの夜で、魔法使いにとっては大事な宴のある夜なんだ。だから集まって乱痴気騒ぎってわけだ」
この男の言うことは事実と考えていいのだろうか。七三子はとにかく槇村の話を聞くことにした。
「集会自体は月一とかであるんだけど、今夜が一番の集まりだ。なにしろ本格的な春の訪れを祝う祭りだからな。そういうわけで羽目を外して生贄だのと言うのが出てくる。おまえはインキュバスに狙われたんだ。あいつの顔はおまえの好みそのままだったはずだ。インキュバスは狙った女の理想通りの姿形に身体を変えることができるんだ。本来の姿は、まあ言わないほうがいいな。狙われたら大抵の女はついていく。だから自分に隙があったとか、自分を責めないほうがいい」
自分を責めなくてもいいという言葉は少しだけ七三子の気持ちを楽にした。
槇村は七三子の髪に触れた。七三子はぞくりとしたものを背筋に感じた。さっきまでの電流とはまた違う感覚だった。
槇村の顔は七三子の好みではないのに、その目に見つめられると、なぜか顔が赤らんでくる。割れた顎の男なんて、好みじゃなかったのに。
「あいつに付け込まれたらえらいことになるからな。あいつは俺たち魔法使いと違って魔族の端くれだ」
「魔法使いって、魔族じゃないんですか」
七三子の問いに槇村は答えた。
「俺は人間だ。ただ魔法使いの血が流れているから、魔法使いとして洗礼を受けた」
槇村柊人。人間。魔法使い。上場会社の課長代理。七三子は自分の上にいる男が何者かわからなくなっていた。
「ところで、七三子ちゃん、まさか君は鬼じゃないよね」
「鬼河原の姓は先祖が瓦職人だったからです。鬼なんかいませんよ」
七三子は子どもの頃両親に教えられた通りに答えた。
「そうか。よかった。さて、そろそろ次いこうか」
「はあ?」
槇村の表情には情欲が漲っていた。
「ほんとにフリじゃなくて気絶する子なんて初めてだ」
「あの、私、いつもは感じないんですよ。今日は薬のせいですから。それにもう匂い付けたんでしょ。いい加減にしてください! 人を何だと思ってるんですか!」
これ以上されたら本当におかしくなってしまう、仕事にも行けなくなると七三子は焦っていた。
槇村はにやりと笑った。
「何って、女だよ。感じなかったのはこれまでの男が下手だっただけじゃないのか。あの薬は、本能を呼び覚ます薬なんだ。七三子ちゃんは、本能をこれまで抑圧されてただけじゃないのかな。本当は凄く淫乱なんだよ。いいなあ。淫乱大好きだよ。あ、そうだ。気絶しちゃうと感じてるのがわかんないから、気絶しないようにしたげるよ」
「はああああ? 意味わかんない」
「それじゃ意味教えてあげるよ」
指ぱっちんの音がした。
燭台を囲んだ男根数珠つなぎの輪は50名ほどに増え、男女がつながったまま跳ねていた。
さらにその燭台を背景にして山羊の頭のかぶりものをした全裸の男が同じく全裸で四つん這いになった女性を背後から攻めていた。女は涙と涎と愛液を流して、大声でわめき散らしている。
七三子を連れて来た男インキュバスは黒い服などとうに脱ぎ捨て、寝台の上で血のように赤い唇をした女と対面して座ったまま交わっていた。
そこへもう1人男が来て、女の背後に座って、女の両の乳房をつかんで揉み始めた。
6名で組体操のように交わっていた者達は男1人と女2人、男2人と女1人のそれぞれ3人組に分かれて、思い思いの体位を楽しんでいる。
その隣の寝台では、男同士5人で横向きに同じ方向を見て身体を重ね合っていた。外側の男の男根が隣の男の尻に挿され、挿された男の男根がまたその隣の男の尻に、というふうに重なりあっていた。一番最後はまだ若い青年で自分の男根を自分で扱いていた。
が、そこへ若い女が来て、その男根を自らの口に咥えた。すぐに青年はこらえきれずに精を放った。
汗と生臭い匂いと香の匂いが入り交じり、宴会場には淫靡な空気が充満していた。
ホテルの13階というありえない場所にある宴会場は今やサバト真っ盛りである。
さて、七三子はというと、またしても槇村に中で出された後、意識を回復した。
七三子は自分の上で平然とした顔をしている槇村に向かって叫んでいた。
「ひどい! あんまりです! 妊娠しなくても、病気になったら」
「一応、毎月性病の検査は受けてる。今月も大丈夫だった」
「ま、毎月って、普通の人はそんなもん毎月受けないでしょ!」
「普通の人じゃないから、俺」
七三子は悪夢だと思った。上場会社のサラリーマンが毎月性病検査って、一体こいつは何なのだ。いや、問題は避妊しないことだ。
「避妊しないで、やってるんですか。それじゃ、あっちこっちに隠し子だらけじゃないですか!」
「子どもはできないようにやってる。術をかけて」
「かけてるじゃないですか、精子!」
「だから、俺は魔法使いだから魔術使ってるの」
「はあ? 寝言は寝て言ってください」
ふざけるにもほどがあると七三子は思った。魔法使い? 30過ぎて童貞だと魔法使いになると聞いたことがあるが、この男は童貞ではない。大体、魔法使いなんてこの世にいるはずがない。
「人を何だと思ってるんですかあ!」
情けなくて涙が出てきた。先ほどまで快楽にのた打ち回って流していた涙とは違う。どうしてよりによってこんなほら吹き男に意識を失うほどイカサレまくっているのだろう。自分はただあの黒シャツの男にだまされてここに連れて来られただけなのに。
その涙を槇村はぺろりと目尻から舐めとった。
「いやあ!」
七三子はまたも電流を感じ、震えた。
「七三子ちゃん、おかしいと思わないのか?」
「全部おかしいですよ。槇村さんも、インクなんとかさんも、全部!」
「そうおかしいんだ。だって、俺たち、魔法使いと魔女なんだ。普通の人じゃないんだ。」
七三子はこいつがおかしいと思った。嘘にも限度がある。
「それじゃ証拠見せてください。魔法使いだったら魔法使えるんでしょ。」
槇村はにやりと笑った。
「勿論。何がお望みかな」
望みと急に言われても困る。最大の今の望みは槇村に結合を解いてもらうことなのだが。恐らく槇村はそんなことしないだろう。
「えっと、そうだ。私の身体きれいにしてください。化粧も何もかもぼろぼろになっちゃったし」
「それでいいの?」
身体を綺麗にするなら、結合を解かざるを得ないだろうと七三子は思ったのだった。
だが、槇村は七三子の中に陰茎を入れたまま左手でフィンガースナップ、すなわち指ぱっちんをした。
七三子は、次の瞬間、えっと叫んでいた。
涙と涎でひどい状態になっていた顔が妙にさっぱりしていた。汗まみれになって額や首筋に張り付いた髪もさらさらとエアコンの風に揺れていた。さっきまで愛液を垂れ流していた部分もきれいになって乾いていた。ただし、槇村の陰茎はしっかり中に入っていたが。
「うそ? まさか……」
信じられなかった。もしこれだけきれいにしようと思ったら5分や10分でできるものでもない。まるでシャワーでも浴びた後のようなのだから。
「どう? 信じる気になった?」
槇村は笑った。歯並びのいい白い歯がやけにまぶしい。
「どうやってこんなこと……。魔法なんですか、ホントに」
「ああ。初歩の初歩だけど。あ、だけど結合してる部分は濡れてるから動いたらまた垂れてくると思うよ」
確かに七三子の中は濡れているようだった。だが、それ以外は汗すらきれいになくなっている。
この男は本当に魔法使いなのだろうか。何かトリックを使っているのではないだろうか。だが、手品ならいざ知らず、七三子の身体の汚れはきれいさっぱりなくなっている、こんな手品知らない。
「魔法使いって本当に……」
「いるよ。俺がそうなんだから。さっきも言っただろ。今夜はヴァルプルギスの夜で、魔法使いにとっては大事な宴のある夜なんだ。だから集まって乱痴気騒ぎってわけだ」
この男の言うことは事実と考えていいのだろうか。七三子はとにかく槇村の話を聞くことにした。
「集会自体は月一とかであるんだけど、今夜が一番の集まりだ。なにしろ本格的な春の訪れを祝う祭りだからな。そういうわけで羽目を外して生贄だのと言うのが出てくる。おまえはインキュバスに狙われたんだ。あいつの顔はおまえの好みそのままだったはずだ。インキュバスは狙った女の理想通りの姿形に身体を変えることができるんだ。本来の姿は、まあ言わないほうがいいな。狙われたら大抵の女はついていく。だから自分に隙があったとか、自分を責めないほうがいい」
自分を責めなくてもいいという言葉は少しだけ七三子の気持ちを楽にした。
槇村は七三子の髪に触れた。七三子はぞくりとしたものを背筋に感じた。さっきまでの電流とはまた違う感覚だった。
槇村の顔は七三子の好みではないのに、その目に見つめられると、なぜか顔が赤らんでくる。割れた顎の男なんて、好みじゃなかったのに。
「あいつに付け込まれたらえらいことになるからな。あいつは俺たち魔法使いと違って魔族の端くれだ」
「魔法使いって、魔族じゃないんですか」
七三子の問いに槇村は答えた。
「俺は人間だ。ただ魔法使いの血が流れているから、魔法使いとして洗礼を受けた」
槇村柊人。人間。魔法使い。上場会社の課長代理。七三子は自分の上にいる男が何者かわからなくなっていた。
「ところで、七三子ちゃん、まさか君は鬼じゃないよね」
「鬼河原の姓は先祖が瓦職人だったからです。鬼なんかいませんよ」
七三子は子どもの頃両親に教えられた通りに答えた。
「そうか。よかった。さて、そろそろ次いこうか」
「はあ?」
槇村の表情には情欲が漲っていた。
「ほんとにフリじゃなくて気絶する子なんて初めてだ」
「あの、私、いつもは感じないんですよ。今日は薬のせいですから。それにもう匂い付けたんでしょ。いい加減にしてください! 人を何だと思ってるんですか!」
これ以上されたら本当におかしくなってしまう、仕事にも行けなくなると七三子は焦っていた。
槇村はにやりと笑った。
「何って、女だよ。感じなかったのはこれまでの男が下手だっただけじゃないのか。あの薬は、本能を呼び覚ます薬なんだ。七三子ちゃんは、本能をこれまで抑圧されてただけじゃないのかな。本当は凄く淫乱なんだよ。いいなあ。淫乱大好きだよ。あ、そうだ。気絶しちゃうと感じてるのがわかんないから、気絶しないようにしたげるよ」
「はああああ? 意味わかんない」
「それじゃ意味教えてあげるよ」
指ぱっちんの音がした。
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