とある探偵事務所の探偵業務~ラーメン事変~

哀川 羽純

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第14章 末端価格数億円のあれ

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「愛ちゃ~ん」

「どうされました? 店長」

ってこの前きれた?」

とはたから屋が塩ラーメンを作る時に使う粉の事だ。

「切れてないと思いますよー?」

いつものストックのところじゃないっすか?
愛が言う。

ってか、今はお客なんだけどなぁ、
と苦笑い。

「おかしいなぁ……何処にいったんだろ」

店長、

「なぁ? 店長。先代はどこにいるんだ?」

「言っただろ? 入院中だよ」

「うそ」

「嘘じゃない」

「嘘はよくない」

「本当だよ?」

店はシンとしてる。

「サチコさんに顔向けできンのか?」

「……」

「お前、どんだけ先代とサチコさんに世話になったんだよ」

「愛ちゃん」

そう言って先代は包丁を握りながら下を向く。

「お前、まだレシピを継いでないだろ? だからラーメンがまずいんだよ。だから客が来ないんだよ」

「うるさあああい!」

店長は何もないまな板に包丁を振り落とした。
木のそれには包丁が深く、突き刺さった。

先代が丹精込めて研いでいた包丁だ。
愛はその音を聴きながら彼と話すのが好きだった。

だが、その彼は、

「お前、殺したんだろ? 先代の事」

「え?」

「え?」

新たと上田が声を漏らす。

「2階から漂ってるよ。屍匂が」

「うまく処理したつもりだろうけど」

愛が立ち上がって店長の前に行く。

「残念だったな?」

首を傾げて相手を挑発する。
愛の十八番だ。

つまり、死体は、2階に、ない。

「うそだ、、、先代は、、病院にいる。だって、死体は2階にない」

「そう。先代は2階にはいない」

先代の顔色がまた変わった。

「1ヶ月前からバックヤードの冷蔵庫が壊れていると言ったな?」

「だが、1年前と今月の電気代が大差ないのは何故だ? あんなデカい冷蔵庫が壊れて使えないなら電気代は安くなるはずだぞ? そこに居るんだろ? 先代は」

「屍臭がするのはそう。バックヤードからだ」

顔から汗がとまらない。
冷汗。

「違う! 屍臭なんてするわけない。だって、

「ほう。興味深い。どう処理したんだ?」

店長はハッとした。

「もう、逃げられないぞ」

「バックヤードの冷蔵庫、見せてもらいますね」

愛が言う。

店長はうなだれている。

「もう、はいっていいぞ」

愛は外に向かって言う。
枡田をはじめとする捜査員が店舗に入る。

店長を取り押さえた。
すんなりと捕まるから捜査員は拍子抜けをした。


「バックヤードに死体があるんですか?」

「違うよ」

バックヤードにあるのは

「これだよこれ」

白い 粉。

例の塩ラーンの粉でなく、

末端価格数億円のあれ。

「先代は?」

「今頃、下水処理場で綺麗にされて海かな」

愛がサラッと言い放つ。

「え?」

「あいつはきっと、そこの先代が砥いだ包丁で先代を解体して業務用ミキサーでクラッシュして、トイレに流したのさ。だからうまく処理したって」

聞いた瞬間、新たは胃の底から何かが込み上げて来るのを感じた。

「なんで? そう思ったんですか?」

「ミキサーが臭う。冷蔵庫が臭う。包丁の切れ具合。あとは、、、勘?」

「いやいやいや、勘でトイレに流されたとは思わないでしょ」

「ミキサーと包丁の調子がおかしい時点でクラッシュは確定。この辺で流せる川や海はない。よってお手洗いかと」

「言い方変えてもダメですよ」

「だめか」

「愛ちゃん?」

「ああ、枡田か。これヤクだ。どうにかしてくれ」

「どうにかって言われてもね、、愛ちゃんの法務省復帰の手土産にしたら?」

「ヤクは法務省の仕事じゃないだろ?」

「まぁ? 手柄に変わりはないじゃん? ヒラの交番勤務の子からしたら相当な手柄じゃん? 本部とかへのアシにはなったり?」

「私はしがない探偵だからね。手柄も何も関係ないね。ヤ○ザに売った方がよっぽど儲かる」

「愛さん!?!」

「しないけど、ね?」

ほんとにこの人は本気か嘘かわからない。
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