とある探偵事務所の探偵業務~ラーメン事変~

哀川 羽純

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第10章 めんどくさい奴だな

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なんだ、下が騒がしい……

新は夢うつつになっていたところからハッキリと目が醒めてしまった。

「Go to home!」

え? 知り合い?
知りあいさんきてるの?

新は思った。

「愛さん、依頼人にはあんな口のききかたしないもんなー」

そーっと階段を降りて事務所を覗く。
すると、愛より身長が低くそこそこ男前の人間がいた。

「だーかーら!」

「お願い!」

え? 何してるの?

グラリ。

新の視線が揺らいだ、

やっべ、熱上がってンじゃん……

とっさに近くにある台に捕まったのだが……

。・*・:♪

 ガッシャーン!

突如、大きな音がした。

「なんだ?」

「泥棒かあンたに恨みを持つ奴だな」

「変な事を抜かすな」

愛は言い放ち音がした方へ向かう。
すると、そこには、

「新!? おい、大丈夫か?」

燭台と花瓶、新が倒れていたのだ。

「アラタ?」

「説明は後だ、手伝え」

「あぁ、やっぱり愛ちゃんだなぁ」

そう呟いたが、愛は新が心配でそんな声は耳に入らなかった。

「おい、新、新!」

「……」

「熱でクラッとしてとっさに捕まったのがこれだったのか。運が悪い奴だ。大きな怪我はないな、脳震盪か、服もびしょ濡れじゃないか」

あたしが着替えさせるのか……?
いや、いくらなんでもそれは……

「ねぇ、愛ちゃん。この人びしょ濡れだけど大丈夫?」

「大丈夫に見えるか?」

「見えないね。うん」

「よし、ちょうどいい。2階が新……こいつの部屋だ。運んでくれないか? そして着替えさせてくれないか?」

「おぉ、愛ちゃんに初めて命令じゃなくてお願いされた! つかお願いしてるとこ初めてみた。もっかい言って?」

「お前、ふざけてるのか? 新に倒れられたらあたしの稼業に支障が出るんだ。手伝ってくれるのか、くれないのか」

「人にお願いする時はそんな態度じゃダメだぞ!」

ったく、相変わらずな奴だ。

「わかった。これが最後だ。頼む、新を2階に運んで着替えさせてくれないか?」

「はーい!りょーかーい!」

「あたしはここを片付けるから頼んだぞ」

。・*・:♪

「了承したものの何が悲しくて俺が俺よりデカイ男を担いで階段を上っているんだよ。しかも、着替えまで」

あーあ、これが可愛い女の子だったらなー
と、一瞬思ったが愛がいる。

「愛ちゃんいたら愛ちゃんが担いでお世話するんだろうなぁ、愛ちゃんだもんなー」

てか、なんで俺はこんなに愛ちゃんにこだわっているんだ?
アイツの事好きなのか?

「ないない。だって工藤愛だぜ? 国家公務員試験1回でパスする強者だぜ? しかも1年ちょっとでやめるっていうもったいない奴だし」

ブツブツ言いつつ新の部屋に入り、服が濡れているのでベットはやめて合皮と思われるに寝かせた。

「あ……あいしゃん……」

「おい、デカイ奴、起きたのか?」

「え?」

まだ、完全に意識が戻ってないのか新はバケッとしている。

「依頼人だよ、依頼人」

「は、はぁ……」

よいしょ、と起き上がろうとする新を枡田は手で制した。

「もうちょい寝てろ。軽い脳震盪だ」

「あ、はい」

朦朧としていた意識はだんだん戻ってきて、起こった出来事を思い出した。

「あ、愛さんのお知り合いの方なんですよね?」

「あ?」

新を床に寝かせて枡田は近くにあった椅子に脚を組んで座っている。

「喋り方とかでそうかな、と。違いましたらすいません」

「知り合いだよ。知り合い。元、同僚」

「同僚?」

おれの前の相方か?

いやいや、俺の前はいないって言ってたし。

嘘、つかれてた?
いやいや、愛さんはそんな人じゃない。

「あぁ、法務省のな」

ほ、法務省?
法務省にいたのにやめて、儲からない探偵事務所なんか開いたのか?

そーいや、そこら辺の聞いてないな。
いつか聞いたらうまい具合にはぐらかされたんだった。

「ま、詳しい話は本人から聞いた方が良いだろう」

「あ、はい」

「どうだ、視界は良好か?」

「えぇ、ここまで運んでくれたんですか? ありがとうございます」

「あぁ、愛ちゃんに懇願されたんでね」

愛さんが懇願?
あの、愛さんが?
俺のしる限り、愛さんがお願いしてるところなんか見た事ないぞ。
俺はされるけど、
ご飯作ってとか、
掃除してとか、
これコピーしてとか、
仕事だし、家事だし、自分の利益になる事だけだし。

つーか、命令だし!!

って、俺は何を言っているんだ。
え? じゃあなんで頼んでくれたんだ?

「お前、新っていうのか?」

「あ、はい。宮野 新です」

「ふん、宮城 新か」

「だから宮野です!!」

「だからって俺は初めてお前を宮野じゃなくて宮城って呼んだぞ」

「色んな人に間違えられるんです! つか、分かってるから間違えないで下さいッ !」

「だって、新くん面白いんだもん」

「は!?」

依頼人だという事を、愛の知り合いだという事を忘れて叫んでしまった。

「お前、愛ちゃんの事好きなんだろ?」

「……」

「やっぱりなー! クローゼットの裏に写真貼ってあったもんなー」

「あ、あ、開けたんですか!?」

勢いで起き上がってしまって、またクラッとしたが持ち直した。

「あれ? 当たっちゃった?」

「は?」

「やっぱりー! なんか貼ってある気がしたんだよね」

「カマかけたんですか」

「うん」

悪びれもなく言い放つ枡田。

「言わないで下さいよ? この関係を維持したいんです」

「このままで良いの?」

「変に告って気不味くなりたくないんです」

「愛ちゃんならそんな事、気にするタマじゃねぇーよ?」

「知ってます! 高校時代からの知り合いなんですから」

「お、付き合い長いじゃん。じゃあわかってんでしょ?」

「はい。振った相手にもフツーに接してて、振られたほうがビビってました」

「ほら、大丈夫」

「俺がビビりたくないんですよ!」

「自分よがりな男だなぁ、男なら当たって砕けろ!」

「砕けちゃダメじゃないですか」

「まーまーまー! ま? 年齢的には愛ちゃんより俺のが先輩だから」

「それ関係ないですよね!?」

「早く着替えて降りて愛ちゃんを安心させてやるんだな。2人揃って降りてこないから心配してるはずだ」

「わかりました」

そーっと立ち上がると熱のせいなのかまだ脳震盪の影響なのかグラリと視線が揺らいだ。

「あ、危ない!」

枡田が咄嗟に腕を掴んだが、時既に遅し、2人してソファーに倒れこんだ。大きな音を立てて。

「は、早くどいて下さい」

タッタッタッ。
足音が聞こえる

「愛さんきちゃいますよ!」

「どきたいんだけど足、つったのね」

「は!? あなた普段何してるンですか!」

「俺はインドアなの! お前が早くどけばいい話だろ」

「あなたが重くてどけないです」

「勘違いされる前に脱出するんだ」

「だから貴方が邪魔で」

バタン!

大きな音がして扉開いた。

「新! 無事か!?」

「愛さん!」

「愛ちゃん!」

「これは違うんですよ!」

「俺にこんな趣味はないからな」

「は? 何の話だ」

「え?」

「は?」

「ったく、お前は使えないな。新の風邪が悪化したらどうしてくれる。新、コイツはあたしが追い出すからシャワー浴びて着替えな」

「あ、ありがとうございます……」

「ホラ、どけ、役立たず」

そういい愛は枡田のつった足を、蹴っ飛ばした。

「いってー!」

「お前、運動不足だな」

おかげで新は開放され、起き上がりフラフラしながらシャワーを浴びに行った。

「愛ちゃん、」

「なんだ、あとその呼び方はやめろと行ったはずだ」

「もうちょっと法とか憲法とか事件とか捜査以外にも興味もったほうがいいよ」

「なんの話だ、馬鹿野郎。あたしは色んなジャンルの本読んでるぞ?」

「え、じゃあ俺と新くん見てどう思った?」

「お前が新を虐めてると思った」

「どういう意味で?」

「フツーに小学生同士の虐めのような虐めだ、他に何かあるのか?」

「あ、うん……まぁ、いいや」

「めんどくさい奴だな」

。・*・:♪

その後新は気付いた
あ、愛さんってこーゆー事に疎いんだった。

高校時代も男子と女子が……
その時も気付かなかったもんなぁ……


枡田も気付いた。
愛ちゃん、恋愛興味ないんだった。
俺と女の先輩が会議室で……
その時も気付かなかったな……
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