異世界に跳べない俺は今日も近所の居酒屋でアルバイトをする。

哀川 羽純

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第4章 興味ないな!?

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その日の店は無駄に忙しかった。
金曜の夜はいつも忙しいけど、いつもにましで忙しい。
政府が勝手に作ったプレミアムフライデーとかいうやつのせいだろ。
それらの恩恵を受けられてるのは一部の上場企業だけ。
俺らみたいなサービス業は全く恩恵を受けられません!
そりゃ、売り上げは上がるけど! 上がるけど!
プレミアムじゃない! 労働環境が! ブラック!
最近はアメリカの真似事か何かしらないが、ブラックフライデーなるものあったりして、訳がわからない。

まぁ、異世界転生した奴らはそんな事も関係ないんだろうけど。

ヒカルさんの前に3つ並んだスマホからは時々俺やあやめさんを呼ぶ声がしたけど、あいにく俺はは忙しい。

時々、店長が作業しながら話をしたりしてたけど、基本的にはヒカルさんが対応してくれていた。

ヒカルさんはいつも、金曜日には来ないらしい。忙しいだろうから。パパッと食べて、その後は読書をしながら晩酌をするのが好きらしい。
一人暮らしだから、準備や片付けが面倒でついつい外食になってしまうそう。

「ケンー、ちょっと、私、休憩ィ! 15分したら交代ね」

「了解っすー」

だいぶ、客足も落ち着いたから大丈夫でしょ。

あやめさんはヒカルさんからスマホを受け取り、バックヤードへ消えた。

俺はヒカルさんの元へ向かう。

「ケンくんお疲れ様」

「どもっす!」

「飲めた?」

クイっと、グラスを傾ける。

「さーせん! まだっす!」

俺は片手を顔の前に立てて軽く詫びる。

「はは、だよね、忙しかったもんね。今なら良いかな?」

店長の方を見やる。

「いいよ、何か貰いな」

「あざす! じゃあ、ジントもらいます!」

そう言って俺はバーカウンターへ向かう。

氷をカクテルグラスの中に入れる。
カランカランと高い気味の良い音がする。
氷ひとつ分くらいジンを入れる。
そこにトニック水を足す。

マドラーで軽く混ぜれば完成。
良いバーとかに行けば、こんな雑な作り方じゃないんだろうけど、ここは所詮居酒屋。こんな程度。

「いただきます!」

ヒカルさんの元へ行き、乾杯をする。
ちゃんと、自分のグラスは下にする。

「どうぞ。お疲れ様!」

『あーー!! いいな! タケル! お酒! ずるい!』

「そっちの世界(笑)は酒ねぇーの?」

『酒を飲むのは法律違反だとよ。飲むと反逆者とかならず者とか、なんか、酷い言われをするみたいだぜ?』

「あ、そ、」

『お前! 興味ないな!?』

「ねぇーよ、そんなもん。とっとと帰ってこいよなー」

『帰りたいけど、帰りたくないし、帰れない!』

「はいはいはいはい! そこでの経験を1冊の本にしてみては如何でしょーか!」

『それは、名案。印税悠々生活』

「成功すればな」

『タケルクンキビシー!』

そりゃ、そーだ。
俺がなりたくてなりたくて仕方のない職だもん。
簡単になられては困る。

まぁ、才能と運と実力と、場合によってはコネだもんなぁ……

ヒカルさんのお友達のツテでどうにかならんかな、まぁ、それこそ、コネコネのコネクションだが。

「ケン! お待たせ! ん? 良いの飲んでんじゃん。ひと口ちょーだい」

そう言ってあやめさんは俺のジントを奪う。

「あ! ちょっと! あやめさんも頂いているでしょう」

「あたしさっき、生もらってもうイッキしたもん」

「尚更ダメでしょ!」

「こらこら喧嘩しない」

「「喧嘩じゃないです!」」

「ほんと、2人は仲良しだね」

『アヤメー! 助けてー!』

あやめさんの彼氏はまた、画面の向こうから助けを乞う。

「だから、何処にいるかしらねぇーから無理! 自分でなんとかしやがれ」

アヤメさんがそう、画面に叫んだら、アヤメさんの画面はブラックアウトした。

そういえば、充電ないって言ってたね。
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