メープル・タイム(仮

哀川 羽純

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佐藤楓は大学でありがちなテニスサークルに入った。
彼女は絶世の美女という訳ではない。
逆に、手頃な女の子というポジションだった。
ブスすぎず、可愛すぎず、
周りの女の子達からも同じような評価で、可愛いからブスだからいじめられるとかその様な事は無かった。

悪ノリだった。誰でも良かった。
彼女を狙った訳ではない。たまたまだ。
運が無かったんだ。

犯人の大学生達は次々にそう言った。

サークルの飲み会で酔い潰れた楓を1人が送ると良い、自室に連れ込んだ。
1人だけだったので女性陣も特に心配はしなかった。

だが、問題はその後だ。

彼が自室に彼女を連れ込んだ後に、何人もの男子学生が合流したのだ。

酔った勢いで。
口を揃えて犯人達は言う。

何人もの男子学生が合流した頃には幸か不幸か楓の意識は戻っていた。

抵抗する彼女に男子学生は次々に、代わる代わる輪姦した。

それは一晩中行われた。
楓は身も心もボロボロだった。

どうして、私がこんな目に。
何で、何で、何で。

髪を掴まれ馬乗りにされたり、ありとあらゆる体位から挿入された。同時にされる事もあった。

殴られたり、蹴られたりもした。

何人もに押さえつけられて、無理矢理、それは行われた。

髪は楓の自慢だった。
それを知ってか知らずか男達は執拗に髪を引っ張った。

初めは、涙も出たし、抵抗もした。
辞めて、辞めて下さい。お願いします。
ごめんなさい。ごめんなさい。
私が、何か気に障る事をしたなら謝りますから、許して下さい。

だが、それらは虚しく、彼らには届かない。
彼らは一向に辞めようとはしない。
辞めることはおろか、激しくなるばかりだ。

あぁ、もう、何をしても、無駄なんだ。
そう、悟った時、楓は全てを諦めた。

涙は枯れ果て、抵抗も辞めた。
男達は楓が抵抗しなくなるのを喜ぶ奴らと苛立ちを覚える奴らに別れた。

無理矢理ヤりたいクソと、
従順で大人しくて、抵抗されなくて良いじゃんというクソだ。
どいつもこいつも総じてクソだった。

楓はそんなクソ共に汚されて、ボロボロになった。

夜が明けてもその行為は繰り返されてた。

誰かが腹が減った。
何か買ってこいと誰かに命令した。

楓は殆どない意識の中それを聞き取った。

「私が、行きます」

震える声でそう言った。

「逃げたり、警察に行ったりするなよ? したらこの写真、ばら撒くからな」

そう言って、サークル長がスマホで撮影した動画を見せてきた。
それは目も当てられない、酷いものだった。

写真もあるからな。
テーブルに置かれた一眼レフを首で示す。
無駄に良い一眼レフだった。

「はい」

何の為か、洋服は破られたりしておらず綺麗な状態だった。

その服を着て、ふらふらとそのマンションを出て、ふらふらとコンビニへ向かう。
何故か、楓の頭は冴えていた。

彼らは警察に行くなと言った。
じゃあ、来て貰えば良い?

冴えていた。
と言うよりは壊れていたのかもしれない。

コンビニに行き、おもむろに、商品を手に取り、それを見つめて、数分立ち止まる。店員が不審に思い何度も楓の後ろを行き来した。

楓を不審がっていたのはバイトの男子高校生だった。
バックヤードの社員に声を掛け、万が一に備えて居た。

「ごめんなさい」

大きな声で、そう言って、会釈をして、会計をせずに店を出る。
商品は置いてきた。

違和感を感じた店員は彼女を引き止める。
先の、男子高校生だ。

「大丈夫ですか」

彼は、咄嗟に彼女の腕を掴んだ。

「ひっ」

ひって、何だよ。セクハラ扱い?
男子高校生はそう苛立ちを覚えた。

が、振り払った際に袖口からあざだらけの、傷だらけの腕が見えた。
良き見ると顔からも手足からも出血が見られる。
あざも色んなところにありそうだ。

男子高校生は考えを改めた。
何かの事件に巻き込まれた?

バイトの男子高校生は背が高く、ぱっと見では高校生か大学生か分からないほどだ。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。逃げようとしてごめんなさい。ごめんなさい。警察呼ぼうとしてごめんなさい」

異常事態と判断した社員が店から出てきて、バックヤードへ誘導する。

震える楓を椅子に座らせて、男子高校生と社員が相談を始めた。

「なんか、彼女、トラブルに巻き込まれてるっぽいっす」
 
むず痒い、正義感。

「揉め事は辞めてくれよ、店長にも本社にも叱られる」  

波風立たせたくない、保守派。

「揉め事って……!」

彼は男子高校生。
こういう事に果敢になる時期だ。

社員はもういい大人。
できる事ならトラブルには巻き込まれたくない。

「じゃあ、こうしましょう、宮田さん。僕は今日は急に休みを貰った。休みを貰い、出掛けて帰りに店に寄った。そしたら、彼女が店の前で倒れていたので咄嗟に宮田さんに助けを乞いに来た。それでどうでしょう?」  

男子高校生は自信あり気に社員に提案する。

「いや、防カメ問題が面倒くさい。本当に事件だったら警察はそれを見にくるし何だったらDVD-Rに焼いていく。ありのままを話そう。仕方ない」

そう言って、宮田は店の電話を取った。

「この場合は警察か? 救急か?」  

受話器に打ち込む番号を110にするか119にするかで悩む。

「両方じゃないっすか? 僕、救急にかけますね」
 
そう言って彼は自分の携帯から119へ発信した。

「じゃあ、俺は警察か」
 
宮田は110へ。

そうして、警察と救急車は呼ばれた。

彼女は震えながらごめんなさいを繰り返している。
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