メープル・タイム(仮

哀川 羽純

文字の大きさ
18 / 18

18

しおりを挟む


駅のホームへ向かう。
デパートの煌びやかな装飾までイライラする。

「さっきの電話、彼氏? ドタキャン? 俺と遊ぼうよ」

「彼氏じゃないですけど、貴方とは遊びません」

冷たく言い放す。

「良いじゃん。俺、強い女の子好き」

「あっそ。じゃあ、キックボクシングジムでも行ってくれば? ウチより強い子いっぱいいるよ」

「そう言う返しする子好き。ねぇ、5万でどう? 最初はご飯から」

ご飯だけで5万?

「そそ、せっかくだから、そこらのゴミみたいな飯屋じゃなくて、ちゃんとしたホテルか料亭……何食が好き? イタリアン? フレンチ? 中華? 和食?」

ウチの家はかなり家柄が良い。
幼い頃から、テーブルマナーは叩き込まれた。

だからこそ、同級生がマナー悪く食事をしていると、気持ちが悪い。

何その、箸の持ち方。
寄せ箸? 刺し箸? 
どんな茶碗の持ち方よ。

突っ込み出したらキリがない。

お兄ちゃんもあんなに素行悪いけど、食事をとる姿勢は美しい。まぁ、顔も美しいんだけど。
ヤンチャしてる子とは思えないスタイル。

きっと、行きつけの四笠会館のシェフやウェイターはお兄ちゃんの事、イケメンで頭の良い、優等生と思ってるはず。

……ウチの事も、クラスメイトの彼氏を次から次へと寝とる様なクソビッチだとは思ってないはず。

「何処でも良いけど?」

「あ、そうそう。テーブルマナーは大丈夫? 俺、かなり気にするから、下手な子とそういうとこいくのヤなんだよね。できないならフレンチは無し。中華が1番誤魔化せるかなぁ」

私より、綺麗な男の人なんて、いない。
お父さんもお兄ちゃんも同じレベルだし、
他の男の人はだいぶレベルが低くなる。

「大丈夫よ? テーブルマナーくらい」

そう言ってから、その、ナンパ野郎の顔を改めて見る。
意外とカッコいいかも。
ディーン・フジオカに似てる気がする。

「OK!! じゃあ、俺のイチオシのフレンチでいい? 一見さんお断りの」

「なんでも良いわ」

「食べられないものある?」

「特に」

「何でも食べられるのは良い事だね」

? この人、変なの。

「じゃあ行こうか」

銀座まで行くよ。
そう言って、彼はタクシーを呼んだ。
銀座か。


タクシーの道中、ウチは外を見てきた。
運転手さんはきっと、ウチとこのオジサンは親子だと思ってる。
そんなに仲良く無いから喋らないのかな、それとも、喧嘩中かな、とかその適度じゃない?

まぁでも最近はP活とか流行ってるからそう思われてるかも。

「名前、聞いても良い?」

あぁ、このオジサンはP活ってバレても良いんだ。
また少し、興味が増えた。
今までは、妻子持ちだったりして、いつもどこか怯えてる人が多かった。
あとは、本当に遊んでる奴。

「ミヤビ」

「そう。俺は小鳥遊」

「そ。タカナシさんって呼べば良いかしら?」

「うーん、それでも良いけど、タカさんとかナッシーとかでも良いよ」 

は?
フグッ

運転席から変な声がした。
ナッシーとか変な事言い出すから、おかしくて、吹いたんだ。
ウチにはウケなかったけど、良かったね。ウケて。

「し、失礼しました……」

「いやいや、俺、本当に友達にはナッシーって呼ばれてるんよ?? 運転手さんの名前は……? 渡邊 篤? ワッキーかナベさんだな」

ワッキーって変な顔の芸能人? だっけ。なんかいたよね。

「あー、実は、学生時代はその渾名でしたね」

「やっぱ? ワタナベさんはそうだよね。しかも、このナベ難しい邊じゃん? 友達は勿論、先公にまで簡単なので書かれなかった?」

「そうですねー! 簡略化されてましたね~」

「そして、自分でも簡略化してたでしょ?」

「ええ、斯く言う私も、公的な書類以外は簡略化ですねー予約とかいちいち書いてられないし、なんならカタカナだし、テストなんて、それだけで時間取られるし、クラスに中  一 って人がいて、羨ましかったです。まぁ、中1って渾名でいじられてたんですけど」

頭の中で並べてみたら確かに中1で思わず吹いた。

「やっぱり、ミヤビちゃんは笑ってる方が可愛い」

急に変なことを言われるからウチは真顔に戻る。
あーあ、勿体無い。
小鳥遊にそう言われるがお前には関係ないだろう。
あ、でもお客さんクライアントだからある程度愛想良くしないと、お小遣いに影響するかしら?

「あ、運転手さん、俺たちがどういう関係か知りたいでしょ」

「えぇ、まぁ。気になりますね」

いや、運転手さん、小鳥遊に懐柔されすぎだろ。

「実は、俺たち、カレカノで、付き合ってんのよ」

「ちゃうわ! 私たちはっ……!!」

大声で否定してしまったが、その後が続かない。

「ミヤビちゃん?」

いやいや、運転手さんまでその呼び方かよ。勘弁……
じゃ! な! く! て!!!
何かうまい言い訳を考えないと、ポリ公に補導されてしまう。
面倒なので勘弁して頂きたい。
隣の小鳥遊がパクられようが何されようがどうでも良いが、補導は勘弁。
また、ママに嫌な顔される。パパは怒らないだろうけど、ママの耳に入ればネチネチ嫌味を言われる。
お兄ちゃんが補導されても何も言わないのに。
ほんと、ヤなババァ。

「私達はそのっ」

「相乗りだよ。困ってる子がいるなぁって声掛けたんだ。そしたら、銀座まで行きたいんだけどお金が足りないって言うじゃん? ほっといたらアヤシイオジサンの自家用車にホイホイ乗るかもしれないじゃん?じゃあ、相乗りして割り勘する? って、変質者と思われないかドキドキだったけどね」

「の、乗りませんよ!!!」

口を尖らせ、上目遣いに相手を睨む。

大抵の男はこれが可愛いっていう。
すぐに自分の非を認めたり、埋め合わせをしようとしてくる。

「どーだか。今だって、俺に着いてきてるじゃん? 行き先が駅とかじゃなくて、ホテルとか俺ン家だったらどーするよ?」

「それは……」

ないとは言えない。
運転手に賄賂渡して、なんかこう……うん。

「まぁまぁ、ナッシーさんも良い人でしょう。困ってる女の子に変質者と通報されてもおかしくないのに声掛けて下さったんだから」

まぁ、じっさいは変質者ソレに近かったけどね。ナンパだし。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻が通う邸の中に

月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...