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しおりを挟む「きみ、可愛いね。待ち合わせ? 今、暇?」
真昼間、渋谷駅にある電車の形の売店の前で人を待っていたら声をかけられた。
「えぇ、待ち合わせですので」
迷惑だな。
オジサンに興味はないっつーの!
雅緒は心の中で叫びながらにこやかにナンパをかわす。
「そんな事言って! だいぶ、待ってない?」
こいつ、いつから見ていたんだ。
「トラブルみたいで。貴方に心配される様な事ではないので大丈夫ですよ。ご安心下さい」
にっこり、微笑む。
大抵の男はこの顔をすると、たちまち、だらしない顔になる。
だが、彼は違った様だ。
「本当に? さっきから何回も電話したりしてるけど、出てもらえないみたいじゃん。彼氏? ドタキャン? そんな奴、放っておいて、俺と楽しい事しようよ」
楽しい事ってどうせsexだろ。
若い女を抱きたいだけだろ。
それをステータスだと思ってるタイプだろ、お前。
そんな奴、いらねぇよ。
ウチが男と寝るのはただの嫌がらせ。
気に入らない女の男を堕として遊んでるだけ。
アンタと寝ても何のメリットも無いじゃない。
「あ、電話……って事なので! サヨナラ」
ひらひらと追い払う様に手を振って電話に出る。
「もしもし、お母さん? どうしたの? なかなか電話に出ないから心配したわ」
『雅人くんが体調悪いっていうからお母さん、看病してるの。なのに、雅緒? なんなの、忙しいのに、何回も電話して』
心がサーッと冷たくなる。
あぁ、またか。
また、あの女は兄貴を優先して、ウチとの約束を蔑ろにしたのか。
「だって、ほら、今日は一緒にお買い物しようって話だったじゃない」
「あぁ……そんな話、してたわね。でも、雅人くんが大変だから。じゃあね」
母親は一方的に電話を切った。
「なんなのあのクソババァ」
SNSアプリを開き、今日、ムカついた女の彼氏を探す。
同じクラスのあの女、武田 沙耶。
あいつ、何かとウチの事が気に入らないみたいで、よくウチの悪口を言ってる。
前に堕とした男から聞いた。
ムカつく。
次はこいつの男に決めた。
「相談したい事があるんだけど良いかな( ; ; )」
とりあえず、そう、メッセを送る。
こいつは何日で堕ちるかな。
フッと口元だけ笑う。
携帯を乱暴に鞄の中へ突っ込む。
帰りたくないけど、外にいるのもダルいから、取り敢えず帰る。
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