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しおりを挟む「あれ、雅緒?」
背筋が冷たくなった。
油断した。
会員制のバーだから、知り合いなんていないと思った。
「あれ? ミヤビちゃんじゃないの?」
「えっと」
雅緒の名を呼んだのは彼女のワンナイトの同級生だ。
気に入らないクラスメイトの彼氏で、早い話寝盗った訳だ。
彼の方は勿論、本気だった。
だが、雅緒は堕としたら満足。
後はどうでも良い。
寧ろ、後腐れが嫌い。面倒。鬱陶しい。
そんな感じだった。
「私達、お会いした事ありましたっけ?」
思い切り、知らないふりをする。
アキラ達には何も知らないお嬢様という設定になっているからだ。
「酷いなぁ、一夜を共にした仲じゃん。しかも、あれっきり連絡くれないなんて、寂しすぎない?」
ワンナイトの相手はそう言った。
確か名前は、
「和田寛」
小さく呟く。
「俺、当時付き合ってた女の子と別れたんよ? 雅緒と付き合いたいから。あんな事したらOKだと思うじゃんん?」
会員制のバー。
油断した。
学校の外で派手なグループと繋がっている男は何人かいた。
同級生、同じ学校じゃなくても、他の学校の生徒やパパ活の相手。
その中にはこういった世界と繋がってる人物が何人かいた事を思い出す。
「あ、俺も知ってるよ。付属のビッチ」
別の誰かにそう言われる。
声の方を見る。
「あっ」
街でナンパされて5万で寝た相手だ。
雅緒は3万以下では寝ない。
ナンパを相手にする事は多い。
相手が自分に幾ら払うのか、それに応じて対応を変える。
その値段は雅緒にとっての優越感だ。
時には10万積んでくる相手もいる。
高い金を払ってまで寝たいと思わせられる自分が好きだ。
その金額が下がれば自分の価値が下がっている証拠。
街で、他の女の子が自分より安い金額で買われていれば鼻で笑って通り過ぎる。
その、雅緒をみて、同じ金額でナンパしてくる奴は無視。
それ以上を提示してくれば乗る。
雅緒はお金に困って、それをしている訳ではない。
全ては優越感だ。
母に否定されて、兄と比べられて、周りは雅緒自身を見ない。
自分を買う相手は、払った分、楽しみたい。満足したい。堪能したい。
思いっきり雅緒を味合う。
味合う為には彼女を、見る。
突然、若い女の身体だから、それが好きで買う相手だから、凝視されるのは当然だが、何も知らない相手が、家や、兄の事を抜きにして、雅緒自身の評価をしてくれる。
それが、彼女にとって、たまらなく幸福だった。
行為自体は別に好きでも嫌いでもない。
気持ち良いと思う事は殆どない。
適当な、甘い声を出していると、大体男は悦ぶ。
同級生は、結局、雅緒を見ていない。
彼女の家柄や怖い兄貴がいる雅緒を犯している俺。
普段は上品で品行方正で美しく儚げな雅緒を穢している俺。
そういう雅緒としている。それが気持ち良い。そんな空気を彼女は感じていた。
でも、街で会う彼らは、雅緒がどこの誰かも知らない。
彼女の父親が警察幹部だと言う事も、彼女の兄がどんなにやんちゃかも、知らない。
だからこそ、ナンパの相手は好きだった。
値踏みされてる。
値踏みする、価値がある。
雅緒は何処かで間違っていると気付きながらも辞められないでいた。
きっかけは、よく、覚えている。
それは、高校に入学後すぐの夏休みだった。
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