カオスの遺子

浜口耕平

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第一部 エルマの町

第四十話 覚醒 平等のロイド

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 ゴーン、ゴーンと鐘の音が世界中に響き渡っている。
 「なんだこの音は、、 どこから鳴っているんだ……?」
 「え~ん怖いよ~」
 「こっちに来なさいロード。なんだか嫌な予感がするわ……」
 鐘の音はエルマの町にいるリード達の耳にも届いていた。
 「鐘の音か? 一体どこから、、 隊長たちに何かあったのかもしれないどうするリード?」
 「俺たちの任務はこの町を守ることだ。何があろうともここを離れるわけにはいかない」
 「よし分かった!」
 リード達はこの音がどこから聞こえてくるのかは検討はついていたが、今は与えられた任務を遂行するため、鐘の音で混乱している人々を落ち着かせるように動き始めた。
 また場面は戻ってロード達の場所ではまだ鐘の音が響いている。
 「いつになったらこの音は消えるんだ」
 アレスが上を見て言うと、鐘の音が急に消え、天を一面に覆うほどの天秤が描かれた魔法陣が現れた。
 「何よコレ……」
 みんなが空にある魔法陣を見ていると光と共にロイドと思われる生物が降りてきた。
 生物は手足がなく大きな顔と長い胴体を持ち、灰色の体色と周りには魔人の腕が六本漂っており、元のロイドからは考えられない姿になってしまっていた。
 「ロイド……なの?」
 「そうだよ。よくもやってくれたね、まさか僕の魔力を奪うなんて驚いたよ。でも、もう終わりだした僕には勝てないよ」
 「フン! 姿が変わったとしてもやることは変わらんお前ら行くぞ!」
 そう言ってザクレイはロイドに向かって行ったが、ロイドは六本の腕で攻撃を防ぐとザクレイの右腕にパンチを食らわせた。
 「グッ! 腕が折れてしまったか…… まいったな」
 「痛ッ!」
 「ッ!!?」
 ザクレイしか攻撃を食らってないはずだが、後ろを見るとロード達も同様に右腕を抑えて痛みに耐えている。
 
 同じころエルマの町では混乱した人が宿舎に駆け込んできてウェインたちが人々を落ち着かせていた
 「皆さん今の鐘の音は何でもありません。落ち着いてください」
 「なあウェイン、さっきの音をちゃんと調査してくれよ! こんなんじゃ町にいても不安で眠れないよ」
 「そうだそうだ。ちゃんと調べてくれ!!」
 「分かっています。今は三地方の隊長がこの音を調べに行っています。だから、今は安心して家に帰ってください」
 「隊長が行っているのかそれなら安心だ。みんな帰ろう」
 「はいみんな解散解散!!」
 ウェインがザクレイたちが鐘の音を調査しに行っていると聞いて安心した住民たちはスタスタと帰路について行った。
 「ふ~みんな混乱しているな。リードそっちは終わった、、 うッ!!」
 ウェインは右腕に激しい痛みを覚えて、見てみると右腕が完全に折れていた。
 「どうしてだいきなり折れたのか? リード…… お前も折れてたのか? なら早く治してくれ」
 リードは自分の腕を治した後、ウェインの腕を治し始めた。
 「一体何なんだこれは? 勝手に折れるなんて、、 ん? 何やら外が騒がしいな」
 外に出てみると先ほど追い払った人々が再び宿舎に押し寄せてきた。
 「いきなりみんなの腕が折れたんだ! どうなっているんだよこの町は!! お前たち何か知っているんじゃないか!?」
 「どういうことだこれは、、 みんなの腕が一斉に折れるなんて」
 「向こうで何かあったのかもしれんな。それよりこの被害はどこまで広がっているんだ? それに、もしアイツらが死んだら俺たちは…」
 「これが遺子の力か…」
 二人は遺子のの力に慄いた。
 
 そしてまた場面は戻る。
 「まさか、、お前が、、、」
 「そう、僕が母上から与えられた力は平等。僕の前では貴き者も卑しき者も一様に等しい運命をたどる。さあ今すべての生命に平等の死を!!」
 ロイドの言葉を聞いて全員がその力の強大さを実感した。
 メリナとアレスはロードを連れてロイドから背を向けて逃げだした。
 「待ってよ二人とも! まだ戦いは終わってないよ!」
 「バカ! 今はそんなこと言ってる場合じゃねえ! 奴の力を見る限り俺たちは全滅する。俺たちの力はザクレイたちにとって足手まといだ」
 「そうよロード、私たちの一人でも足を引っ張ったら隊長たちの負担が大きくなるのよ。それに、この戦いもしかしたら、私たち人間が明日を迎えられないかもしれないわ!」
 そう言って三人は必死に森の外へと向かって行った。
 「いい判断だ三人とも。おい! お前はさっきのロイドか? その姿は何だ!?」
 ナルザスが空中にいるロイドに話しかける。
 「そうだこれが僕の覚醒後の姿だ、どうだ神々しいだろ?」
 「いや、芋虫みたいで気持ち悪い」
 「ハハハ! 言ったな人間、お前たちなんて僕の力で終わりだよ。確か僕の魔力を奪った奴が向こうに逃げて行ったな」
 ロイドはロード達が逃げた方向に目をやると三人の方へ飛んでいった。
 「行かせるかよ!」
 ナルザスは森を操ってロイドの行く手を阻んだ。
 「こんなもの時間稼ぎにもならない」
 ロイドは行く手を阻んだ樹の一本をへし折ると平等の力で森がなぎ倒されて障害となる樹がすべてなくなった。
 「あのチート野郎が、おいザック! お前が行って何とかしろ!!」
 「分かってる」
 ロイドはロード達の背中が見えるところの場所まで迫っていた。
 「見つけたこれで終わりだ」
 「うわわ! 追ってきたよ二人とも!」
 「クソ! おいメリナやるぞ!」
 「ええ」
 「オメガブラスト!!」、「漸氏雷撃ロゼ!」
 しかし、二人の攻撃は全く効かない。
 「やっぱりダメか……」
 「さあ誰を殺ろう、まあ誰を殺っても結果は同じだけどね。決めた同時に殺そう」
 ロイドが三人に魔神の腕で襲いかかろうとした時、ザクレイが現れて後ろから強烈な蹴り食らわせたて三人への攻撃を防いだ。
 「ザクレイごめん、僕たち逃げられなかった……」
 「ああなった以上俺たちは奴をこの場で確実にやらなきゃ奴の言う通り全ての人間は死ぬ。それに、お前の魔法がないとアイツには勝てねえ。お前らもここからは一緒に戦え」
 「うん分かった」
 「誰が僕に勝つって?」
 蹴り飛ばされたロイドが再び再生してロード達の前に立ちふさがった。
 「僕たちだよ! 僕たちの意思はお前に届いているんだ! だから絶対に勝つ!!」
 「じゃあ試してみなよ」
 ロイドはそう言うとロード達に向かって行った。
 ロード達は構えて魔神の腕の攻撃に備える。
 ザクレイは同時に四本の腕を相手に、ロード達三人は二本の腕を相手にしている。
 魔人の腕の攻撃は空間を通して現れて攻撃しては消えの繰り返しで予測不可能である。
 この腕をロード達はお互い背中を預けて腕の唐突な出現に備え、ザクレイは混血の野生じみた勘と持ち前の反射神経で四本すべての腕を上手く対処していた。
 「じゃあこれならどうかな」
 すると、ロイドの目の前に魔法陣ができて黒い光を帯びてだんだん魔力が上がっていっている。
 「あれはまずい、、 お前らよけろぉ-!!」
 「混沌の波動カオスブレイク
 「うわああ」
 「ゴホッゴホッ! 何よあの攻撃、、 地面が…」
 ロード達はよけることができたが、ロイドが放った混沌の波動カオスブレイクは地面に大きな風穴を開け、その深さは肉眼ではとらえられず地の底まで届いていそうなほどの深さだった。
 「よけたか…… 苦しまずに逝かせられたのに…」
 「エクスプロージョン!」
 遅れて現れたグレンは再び爆裂魔法を放って辺り一面を吹き飛ばし、ナルザスは爆風からみんなを守るために樹で覆った。
 「やったか?」
 だが、ロイドの体は魔神の腕に守られて無傷だった。
 それに油断したグレンは魔神の腕による攻撃を腹に食らい吹き飛ばされ、それに伴い他のみんなも同じように吹き飛ばされた。
 「ザックこのままではまずい、俺に考えがある」
 「そうだなこのままでは負けるな。それで考えというのは何だ?」
 「この作戦には二つ必要なものがいる。一つはナルザスお前の力、それと俺の命だ」
 「……そうか分かった、お前はもう遠慮しないんだな。でも、残されたお前の妻子はどうする?」
 「ここで負けたら何の意味もねえ。それに、俺はただ命を捨てるんじゃない家族を、人々を守るために俺は死ぬんだ!」
 そう言うと、グレンはロイドの方へと行ってしまった。
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