カオスの遺子

浜口耕平

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第一部 エルマの町

第五十四話 カオスの第九遺子 神眼のディーン

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  魔界の森に囲まれた小さな家で額に大きなカオスの紋様と黒い髪を持ったカオスの第九遺子、神眼のディーンがアレスとウィザールの戦いを観戦していた。
 「二千年ぶりか、、 人間界に神器を携えた英雄が現れるのは」
 「クラウディウスが葬ったはずの存在が再び現れた、ロイドはコイツに敗れたのか。しょうがない… 俺が行って始末するか、これ以上我らの脅威にならないために」
 ディーンは立ち上がると家の外に出て人間界へとつながる特異点を作り出してかた中へ入ろうとした時、思わぬ来客があった。
 「よおディーン、今から人間界へ行くのか?」
 来客はクラウディウスだった。
 ディーンは声がした方に振り替えると、「ああロイドを倒した奴のことを聞きに来たのか」と言った。
 「さっすがー話が話が早くて助かるよ。どんな奴なんだ? 俺もちょっと人間界へ行ってみようかな~」
 「兄上の出る幕はないでしょう、それに、何やら人間界で面白いことをしているようだし……」
 「フフフフ、、、」
 デカいマスクを被っているためクラウディウス素顔は分からないが、それでもなお不敵な笑みを浮かべていることが見て取れる不気味な微笑みだった。
 そして、ディーンは後ろを振り向いて人間界へと向かった。
 「殺し終わったら話を聞かせてくれよ~」
 クラウディウスは手を振って特異点に入っていくディーンを見送った。

 一方その頃、馬車の準備に手間取っていたノワール一行はダンタリオン地方へ入ったところだった。
 「もっと速く動かせないのか?」
 ノワールは長い馬移動にイラついていた。
 「馬は機械じゃないんですから我慢してください。馬も休憩の度に駿馬に変えているので速さとしてはこれが限界なんです」
 騎手はイラついているノワールを刺激しないように説明すると、ノワールは納得して反論しなかった。
 そうして、走っていると、突然騎手の前に空から黒い靄が降りてきて、馬は興奮して暴れまわり馬車は転倒した。
 ノワールは馬車が倒れる前に脱出したので無事だったが、騎手は馬車の衝撃と振りおろされたことで即死した。
 馬が往々に逃げ去っていく中で、ノワールは黒い靄の方を見て持っている剣を構えた。
 「チッ、特異点か。こっちは急いでるのに邪魔しやがってよ!」
 黒い靄を睨み付けていたノワールだったが、黒い靄から現れたディーンの額にあるカオスの紋様を見ると距離を取った。
 (あの額の紋様は、、 こんな所で会うなんてな……)
 「おい! お前はカオスの遺子だろう? お前の名は何だ?」
 ノワールがディーンに向かって叫ぶが反応はない。
 「無視するな! おい聞いているのか!」
 すると、ディーンは上の太陽を見て両手をかざして叫んだ。
 「おお母よ! 世界を統べる我らが絶対の王よ!! どうか私を導いてください、母上の意思は我ら創られた者の意思でもあります」
 とっさのディーンの行動に驚いたノワールだったが、すぐさまディーンに斬りかかった。
 「偏屈の破砕剣デビルスラッシュ!」
 持っている魔剣カイリがノワールの魔力と共鳴して、禍々しく輝く大剣となり強大な魔力の塊となったカイリがディーンにあたると辺り一帯にノワールの魔力が飛び散り、二人を中心に大地が吹き飛んだ。
 戦塵が巻き起こり、辺りが暗くなったがしばらくしてディーンが現れると、ノワールはディーンが片手で受け止め、一切のダメージを受けていないことに驚愕した。
 (な、、俺の一撃を止めただと? ふざけるな! 偏屈の破砕剣デビルスラッシュは俺の超位魔法、最強の魔法なんだぞ)
 これまで偏屈の破砕剣デビルスラッシュを使えば大抵の場合は一撃、数百年生きている魔人だって重傷を負うほどの威力のはずなのにディーンは無傷で、その上片手で受け止められたことにノワールは混乱していた。
 「何を驚いている? 混ざり者の魔法ごときで俺に傷をつけられると思っていたのか?」
 「どうやらロイドに勝ったのだからそう思っているらしいが、ロイドは俺たちの中で最弱、それも圧倒的にな」
 そう言うと、ディーンは片手で魔剣カイリを折り、神眼でノワールの目を見ると体中から力が抜けたかのように地面に倒れこんだ。
 ディーンは倒れこんだノワールに近づいて片手で顔を持ち上げると、神眼でノワールの記憶を覗いた。
 「そうか、ロイドを倒したのは神器もちの人間ではなかったのか。名前はロード、、場所はここから南へ数十キロ、エルマの町か、よし十分だお前の記憶は俺が貰おう」
 ディーンの神眼が光りだすとノワールの頭からディーンの手へ記憶が青い光と共に吸い込まれていった。
 記憶を奪い取ったディーンはロードがいるエルマの町へ向かって歩いて行った。
 それに対して記憶を吸い取られたノワールはもう何の感情も持っていなかった。ただ、虚ろな目で虚空を見つめている廃人となった。
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