Galaxy Day's

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家族悪役!起つ

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俺様、コズモル・ロワイヤルの朝は早い…
あ、前回はジイが全編通して語り部だったから、
今回はこの俺ちん、『コズモル・ロワイヤル』が
主に語り部ってくんで、よろしこ頼むぜ~!
さて、時を戻そ…あ、間違えた。コホン 話を戻そう。
確か俺の嫁が可愛すぎて死ぬ って話だったな…
「そんな話してねーだろドアホ!!とゆーか
語り部ってくって何!?」

エレーネアの声と共に 俺の頭に振り下ろされたのは
特大ハリセン。それでお約束の如く 俺ちゃん、
頭ぶっ叩かれました☆ たまには手加減してよエレピ~♡ 

「むぅ、痛いじゃないか マルチー」
「旧姓で呼ぶなし。とゆーかいつまで寝てんのよ!
もう10時よ?な~にカッコつけて朝は早いなんて、
もうバリバリ遅いわ!!」
「あぁ?今日平日だろ? いーじゃん。にしても
昨日は呑み過ぎたかな…?なんか頭いてーや…」
「昨日何時に寝たの?」
「いやいや少なくとも、ベッドには11時には
入ったよ。そん時、オメーは既に寝てたからな…」
「もういいから行こ、朝ご飯冷めちゃうわよ」
「まだ冷めてなかったんだ」

そんな会話をしながら、俺はお姫様が使ってそうな
4コーナー遮光ベッドカーテン付きのダブルベッドから
起きて、スマホを取り、眠たい目をこすりながら
朝飯が置いてあるであろう大広間に向かった。
ダブルベッドという単語で察した奴もいると思うが、
俺とエレーネアは今でも同じベッドで寝てる。結婚して
もうだいぶ経つけど、このジャークネスのダークパレス
にいる限り、どんなことがあっても 別々の部屋で
寝たことは一回もなかった。オリンピアス、ヴァルーナ
お前達は実質あそこで産まれたんやで…♡ 何故なら…
「おいやめろ」
「なんだよ急に」
「朝っぱらから話を下ネタに持ってかないでよ」
「おいおい 一体ナニを想像したわけぇ~?」

ちょっとからかっただけなのに、エレーネアは笑顔で
武器のエレネアローを俺に向けて威嚇した。

「ちょいと黙ろうかロワピー」
「すいませんでした許してください!!」
「弱腰過ぎワロタ」

俺が慌てて謝ると エレーネアはエレネアローをしまって
再び歩き出した。こんな感じで、俺ら コズモルチーの
表の長ちゅーか、だいたい皆を纏めてんのは俺だけど、
力関係はエレーネアの方が上。エレーネアが実質的に
真のとゆーか、裏の長といっても過言ではないわけだ。
まぁ愛する俺相手に本気でやらないのは 長い付き合い
だから分かっているにしろ、いつやってもこの脅しは
恐ろしいもんだ… とはいえ、原因はからかった俺
なんだし、アイツをどうこう言う資格はないんだけど。
そう思ってるうちに大広間に着き、入った瞬間
みんなからの挨拶を浴びた。

「おはようございます、ロワイヤル様」

スマホを見ながら言うジイと、
ウミギロンとサヒダロン。

「おはよ父さん」

同じくスマホを見ながら言うオリンピアス。

「おはよー!」

同じくスマホを見ながら言うヴァルーナ。

エレーネア以外はみんなして 椅子に座ってスマホを
弄っている。皿もないし、どうやら皆とっくに
食ったらしい。まぁあたりめーか…。
俺は気怠げに挨拶を返しながら、玉座みたいな椅子に
座り、朝飯一式を覆う透き通ったラップをとった。
そこから元の暖かさと冷たさを保ちながら出てきた
本日のメニューは、

【チーズのエッグベネディクト】
【遺伝子開発で作られたトマトを使った野菜サラダ】
【昨日の晩飯の残りのテールスープ】
【オレンジの挟まった果汁100%オレンジジュース】

美味そうな匂いと共に、俺はエッグベネディクトを
食べた。ちなみに、エッグベネディクトってのは、
半分に切ったマフィンの上にベーコンやポーチドエッグ
といった具材に、オランデーズソースをかけて食べる
地球チーキュのアンメリカ~ンの料理らしい。
まぁ、オランデーズソースじゃなくて、
とろっとろなチーズがかかっているのが違いだ。
朝飯に食うにはもってこいの料理、おいちいおいちい。
俺は2つあるベネディクトをひとつ食った後、
サラダを貪り食べ始めた。それにしても前回つーか、
昨日は大変だったぜ… 目的の惑星を破壊したら、
変な装置をブルーネアの奴が拾って、それを調査しに、
惑星 オートマーリに向かって、そんで出てきた黒幕が
宇宙の平和を勝手に乱す悪魔のような怪獣 ラーベム!
そのあとも ヴァルーナがキレて八つ当たりしたり、
それでオリンピアスが吊るされてたり、
こないだ犬のフン踏んだし…
「いやいやいや!ちょっとちょっと!
最後全く関係ないんだけど!?」

真面目なオリンピアスのツッコミが飛ぶ。
でもキレはアオイヤルに比べていまひとつかな~。
解説してる間に俺は飯を全部食い終え、
その瞬間ジイから声をかけられる。

「ロワイヤル様、そういえば今朝、
こんなお手紙がロワイヤル様宛てに…」

ジイが俺に手渡したのは、どこか燻んだ白い色をした
紙に包まれた、手紙だった。おっ、もしかして…

「おっ マジか、誰から? もしやファンレターか?」
「んなわけねーだろ またこの作品始まったばかりよ」
「そうだよ 1話だけですぐファンがつかないっしょ」
「確かに、感想とかも全くないし、こんな無駄に長くて
つまんないクソ話見てる人なんて、ゼロだろねぇ」
「ホントのこととはいえ、現実メタい話すんじゃ
ねーって!!…とにかく、読んでみっか」

紙の封を開くと、そこにやはり燻んだ白い色をした
紙が出てきて、達筆な字でこう書かれていた。


 突然 こんなお手紙を 差し上げたことをお許し
ください。貴方を初めて見た時、その端正かつ
美麗な姿を見て ドキッとしました。
 それ以来、仕事中もずっと気になって仕方が
ありません。しかし、貴方は世間を揺るがす悪党。
その上、貴方には妻も子もいる。禁断の恋… 
いけない事だと分かっています。でも つらいんです。
どうか 私の気持ち、わかってください。
今日の12:30、ナーチャロ星のリキッド広場公園で
待ってます。お返事を直接 聞かせてください。

                  M・Y


そして、その手紙と同封された一枚の写真があった。
見るとそいつは、水色かがった紫髪を後ろで束ね、
そこそこきわどいポーズをした、なかなかの美女の
写真があった。しかし、この写真を見て まず1番に
目がいくのは胸。とにかく胸。めっちゃデカい。
エレーネアに匹敵するか… いやこの大きさはそれ以上
カモ。胸があまりにもデカすぎるからなのか、大幅に
開け放たれたスーツの胸元からは黒のブラが覗いて
いた。一応言っとくけど、ブラってのはブラックでは
なく、ブラジャーのこと。俺は顔には出さなかったが
心の中で、この悪趣味さに引いていた。美貌なのは
間違いねぇが、写真越しでも悪趣味さが伝わってくる。
一方、隣に座っていたエレーネアは俺と共にこれを
見て ワナワナと震えている。するとエレーネアは
俺の肩を手で自分の方に寄せ、俺につかみかかった。

「ロワイヤルゥ…? これはなんなのぉ…?」

口調はいつものように 柔らかくも芯の通った声を
しつつも、二つくらいの悪の組織を束ねていそうな
ラスボス級のおっそろしい殺気が込められている。
まぁ実際 一つだが この組織コズモルチーを俺と共に束ねているわけ
だけど。そして顔も美しい顔で 優しく天使のように
微笑んでいるように見えて、微笑んでるだけ。
全然優しくもないし、天使のようでもない。半開きの
目には、明らかに凄まじい怒りの感情を宿している。
別に彼女は好きな俺以外がどうでもいいヤンデレ系と
いうわけでない。むしろ、そんな奴はこっちから
願い下げな上、組織や家族すら構築するのもまずムリ
だろう。自分の知らない女が、愛しい旦那様に、
ファンレターとかの類じゃない、ガチ告白に近い
手紙を、しかも写真付きで送るとなると、こうなる
のも無理はないだろう。俺だってそうなるかもだし。
とりあえず、ありのままの心をそのまま言葉に
表した。言い訳にしかならなさそーだけど。

「へっ…? いや、俺こんな奴 知らねぇよ…?
見たことも、このイニシャルも聞いたことねーし…」
「おや?この写真の女性、どこかで見たような…?
…もしや!この写真はロワイヤル様を釣るための
ハッタリで、実際の送り主は男だったりして!」
「えっ!?そっちのパターン!?」

俺の心を知ってか知らずか、子供らと共にさっきまで
驚いていたジイがかなり斜め上のフォローの言葉を
かけた。冗談じゃねーし!!俺様はホモでもBL好き
でもねぇ!!つーかそもそもそんなんだったら最初から
コイツと結婚もしてねーし!!フォローしてくれた
ジイの感謝の気持ちから一転、俺様はホモじゃないと
叫びたい気持ちになった。そして気づいたらまたしても
ありのままの心をそのまま言葉に表した。

「ふざけんな!!俺様はホモじゃねぇっ!!
もしこの手紙の送り主が男で、本気で俺様のこと
好きだってなら、叩き斬ってくれるわ!!!」
「なるほど、でも今どき 恋文ラブレターなんて…
メールとか使えば一発便利なのにさぁ」
「いやいや、こういう方がメールよりも
断然!マロンチックなんですよっ!」
「いや、ロマンチックな」
「うん、確かにLINEとか、簡単に伝える手段が
たくさんあるこの現代だからこそ、こういう昔ながらの
恋文ラブレターとかが、余計に新鮮で素敵な気持ちに
させるんですよねぇ~」
「あれこれって恋文ラブレターの話だっけ?」
「いえ、この手紙の送り主が男かどうかだって話」
「そんな議論してたら、何だかめちゃくちゃ気に
なってきたな。よし、この目で確かめに行ってくるわ。
この手紙の送り主が ジイの言う通り、男か。
それとも、この写真が示す通りの女か。をな」

結論を出し、俺は玉座を立ったが エレーネアは
心配のあまり 俺の右腕に寄り付いてくる。
その姿は実に可愛くて、とても愛らしい…♡
そして焦燥に駆られた声で俺に問う。

「ホ、ホホホ、ホントに行くの!? もしこの手紙の
送り主が女だったら、どうするつもりなの…?」
「そんときゃ そん時考える。それによ、この手紙に
かけた想いはそこそこ真剣な感じがするんだ。
行ってやんないのも、なんか悪い気がしてさぁ~。
しかも、丁度 今、惑星 ナーチャロが目の前だしな」

窓を見ると 遠くに緑色の惑星ほしが見える。
あそこが送り主が指定した場所、惑星 ナーチャロだ。

「行くタイミングならちょうど今。まっ、
これもちょっとした冒険だな。ちゃちゃっと
終わらせてくるからさ。んじゃ、いってきま~す」

そう言って俺は大広間を出た。実を言うと、あの女の
写真を見て 感じたのは悪趣味な嫌悪感だけではない。
何か、恐ろしく形容し難い嫌悪感も同時に感じたのだ。
例えるなら、昨日戦ったばかりのラーベムのように
平然と何人もの命を殺めた時に感じるような嫌悪感。
まぁ、平然と何人もの命を殺めたってのは、俺らも
全く同じで、言えた話じゃないような気もするけどな。
写真見た時は 一介のOLだと思っていたが、もしや
送り主も俺らと同じ悪党なのか…? そう、それも
この目で確かめに行くのだ。普通ならあんな手紙、
丸めてゴミ箱に投げるか、紙飛行機にして外に飛ばして
しまうのに、こんなパターンは初めてだよなぁ…。と
考えてみればそう思った。それほどこの手紙の送り主は
普通じゃねぇってことなのか。しかし、どーせすぐ
終わんだろ… とついつい油断してしまったせいで、
あんなヤツと、一家総出で戦うこととなるとは… この
時の俺ちゃんはそんなこと知る由もなかったのだった。

ジャークネスを出て、ロワイヤクラウンで
惑星 ナーチャロへ向かい、早速 俺は手紙で
指定された場所の、リキッド広場公園に到着した。
ドリーム☆わっしょい橋から客船ターミナルへ伸びる
親水公園。そこの一際目立つステージのようなところ
に1人の女が立っていた。水色かがった紫髪を後ろで
束ね、スーツを着た、なかなかの美女。まさしく
あの写真そのままの女だった。もしや…と思い、
俺が声をかけると、その女はすんなり応じてくれた。

「来てくださったんですね。ありがとうございます♡」
「まぁね。一応聞かせてもらうけど、
この手紙を僕宛に送ったのはキミかい?」
「はい、どうしてもお返事が直接聴きたくて…」

俺は確認のために持ってきていた手紙をしまった。
ちなみに、目の前の彼女が写っている写真は
どうやら置いてきてしまったみたい。
それにしてもジイ、予想は大外れだったぜ。

「しっかし、初対面でいきなりこれたぁね…。
その上、僕が悪党ってことも知ってて… 
キミ、とんでもねぇ度胸っしょ。万が一、
殺されたりでもしたらどーすんのさ」
「大丈夫ですわ、格闘はやっている身なので!」

彼女はそう言って、膝を曲げた。蹴るジェスチャー
なんだろう。本気で蹴るような動作はしない方が
いい。ただでさえ、パンツが見えそうなほど 短い
タイトミニだ。蹴る動作をして、足を上げたら 
おそらくパンツが見えるのは免れないだろうな。
妻子持ちだが、俺様も所詮男。こういうのはいくつに
なっても 反応してしまうわけだ。スケベなんてもん
じゃねぇや。にしても格闘はやってるって… それで
俺様に敵うかっつーのと、彼女の命知らずっぷりに
心の中でツッコむのであった。すると、さっきとは
逆に 彼女の方から、俺に質問をしてきた。

「あの~♡ あなたの好きなものって… 何ですかぁ?」
「えっ?」

えっ?何このお見合いみたいな質問? これアレか!?
俺が好きなものを率直に答えたら、その好きなものを
使って 俺をオとすちゅー魂胆か!? ど、どうしよう…
なんとかとりあえず この場を乗り切らないと…
こういうのはウソ言ったってしょーがねぇからな…
そうだ、アレだ。アレなら彼女も どう対応すりゃいいか
分からないはず!よし、アレでいってみよう!俺様が
いっちばん 大好きな趣味及び人生の一環!

「そうだねぇ~、僕は、特撮が好きなんだよね~」
「ふえっ!?と、特撮ですか…?」

よしかかった、やっぱ彼女は知らない系のヤツか。
コイツ、人生の100万分の1は損してやがるな…
ならそれに繋がる俺の趣味をもっと出して、
この場をどうにか切り抜けてやろうぞ!

「あとあと~、フィギュアとか~、食玩とか
集めるのも趣味なんだけどね~」
「フィ、フィギュアですか… しょ、食玩…?
そっ、それも特撮…関連のものを…?」

よしこの流れでボロクソに言って結論を出そう。
んで、もし特撮を貶す言葉を彼女が言おうなら
殺っちまおう。今までそうしてきたわけだしよ。

「まぁそんな感じ。けどこれらを知らずに、顔だけを
見て よく俺ちんに告白しようと思ったな。ミーハーの
極みもいいとこだが、その行動力は褒めてやる。だが!
特撮を知らずして、俺という存在を知ることは
出来ん!!まぁ、そんなわけでお返事だけどさ、
やっぱごめんなさい だわ。それに俺、家族を
第一に愛してるんだ、そりゃあ、アンタは
確かに美しいことに違いないけどさ…」
「ホントですかぁ? ホントに… 
そう思ってるんですかぁ…♡」

彼女はそう囁くように言いながら、俺に今にもキスが
できるくらいに顔を近づけ、顎クイを行った。
俺は比較的 長身な方だが、彼女は俺と同じくらいの
身長なため、俺に顎クイは 彼女にとって容易かった。
俺と同じ身長ってことは、エレーネアよりも
身長高いらしい。アイツも比較的 長身の方だが、
俺よりも 一回りくらい背が低い。んで、普通の男は、
特に 妻子持ちってなると 突然に顎クイ&顔接近に
ドキドキ&赤面で心臓バックバクになるだろうが、
俺は全然 何も感じなかった。その理由は2つある。
1つは、俺はエレーネアを愛している。だから
エレーネア以外の女にそんなことをされても、
何も感じやしない。本気でキスしようならば、
いくら女といえど、蹴り飛ばしてやってもいい。
もう1つは、こんなことを思うのは 失礼極まりないと
思うが、彼女からどうにもイカ臭い匂いが漂って
仕方ねーのだ。最初に話をした時から 妙にイカ臭く
感じたので、最初は俺の匂いかな とも思ったが、
その匂いは彼女から明らかに漂ってきており、
彼女が顔を近づけたことで、それは確信に変わった。
しかしこんなのヤベーイな。万が一 エレーネアに
でも見られたりでもしたら大変だぜ? 

「ア"ァ"ァ"ーーーーーッ!!!
ロワイヤリュゥゥゥーーーーーッ!!!!!」

そうそう、こんな感じで叫んで… えっ?
なんで今ちょうど 思いを馳せていたアイツの… 
エレーネアの声が? 俺様の空耳? あるいは陸耳? 
そんなことを考えながら ふと前を見ると、俺に
今にもキスができるくらいに顔を近づけ、顎クイを
行っていた彼女が、オリンピアスとヴァルーナに
キックされ、吹っ飛んでいたのだ。一体 なんで
彼女がこんな? なんでエレーネアの声が?
つか、なんでオリンピアスとヴァルーナもいんの?
いろいろ考えてるうちに またも声をかけられた。

「ロワイヤル様!…よかったぁ~、
気は吸われてないみたいですよ」
「ギリギリセーフっていったところですかね」
「ロワイヤル様!大丈夫ですか~!?」

ジイにウミギロンとサヒダロンが駆け寄り、
口々に声をかけてくる。気は吸われてない?
ギリギリセーフって何? …そう ジイとサヒダロンに
ツッコミたかったが、まさにさっきの叫びを
発していたであろう、エレーネアが俺の目の前に
現れ、急に俺の腰あたりに抱きついてきた~っ!?

「ロワイヤルゥ!! だ、大丈夫だった…?」

エレーネアは顔を上げ、上目遣いで俺を見た。
それは可愛いなんてもんじゃなかった。子犬みたいに
優しく、そして聖母の如く 慈愛に溢れ、本気で俺を
心配していたであろうその目。そして、争いに
満ち溢れていた世界が一瞬で浄化され、平和になる
くらいの優しすぎなオーラ。極め付けに、むにむにと
俺の腰あたりに押しつけられる豊満な胸の柔らかさ。
常人じゃあこのよさに一瞬でヤられあの世行きって
感じだが、正直 俺も良すぎてこれはヤバかった。
こんなにも素晴らしい女が、奇跡の愛で結ばれた、
俺の妻と思うと… 心がたまらなく嬉しさと
満足感で溢れ、止まらなくなっていった。
さっきまであの女に顔を近づけられ、イカ臭さで
不快になっていた気持ちが一気にスッキリしていく。
やっぱ嫁の力は偉大!愛の力は偉大なり!ハッ。
俺ちん 悪のくせしてな~に言ってんだろ。そう自分に
ツッコんでたところ、ジイから声をかけられた。

「いやぁ、ロワイヤル様。いきなりすぎることで
困惑してると思いますが、実はあの女、
ロワイヤル様を食べようとしていたんですよ…」
「えっ?俺様を食べる…?」

彼女が?俺様を食べる? どゆこと? どーゆー意味?
頭からむしゃむしゃ食べるってこと? それとも…

「この状況に困惑しているのも無理はありません。
説明しましょう!鼻の穴かっぽじってよく聞く様に!」
「いや耳でしょ!」

エレーネアはそうツッコむと、俺から離れ、さっき
まで発していた天国のようなオーラをフッと消した。
残ったのはいつもの雰囲気のエレーネア。
一体、俺の知らないところで皆が何を知ったのか。
それは俺がジャークネスを出て、すぐのことらしい…
あ、こっからはその時のセリフやシーンとも
並行して、ジイが語り部ってくんでよろしこ~♬


ロワイヤル様が出て行った後、私は写真に写っていた
美女に関して、いろいろ思考を張り巡らせていました。
この写真はロワイヤル様を釣るためのハッタリで、
実際の送り主は男だったりして!…なんて言いました
が、アレはほんのジョーク。冗談冗談。…しかし、
ロワイヤル様は間に受けてキレてたし、まだまだ
私のジョークも未熟のようです。言った方が
面白がって言った冗談のつもりでも、相手側が
冗談と通じず、間に受けてしまえば それは冗談として
成立しません。間に受けてしまうのは 相手側の気持ち?
心の余裕? いろいろありますが、私が出した結論は
1つ。私のハジケギャグセンスもまだまだ。いついか
なる時も冗談とわかるくらいの面白い冗談を言わねば!
っと、話がそれましたね。あの写真に写っていた美女、
この写真の女性、どこかで見たような…? そう私は
言いましたが、本当にどこかで見たような感覚に
今現在 私は陥っているのです。本当にどこかで
見たことがあるのですが、誰でしたっけ…?

「あ~~~、ロワイヤルゥ…。今頃どーしてるのかな?
女だったら、ちゃんと断っているわよねそーよね…?」

可愛らしい仕草をしつつ、ドギマギしながら 玉座の
ような椅子に座っているエレーネア様を横目に、
私はなおも考えていました。自分でも言うのもなん
ですが、私も含め 美形揃いの我々 コズモル家と
タメをはれるほどの美貌、推定でも顔と同じくらいの
圧倒的レベルの胸、派手派手な金のネックレス、
大幅に開け放たれたスーツの胸元から覗く黒のブラ。
パンティーが見えるほどの短いタイトミニ。
このように外見だけでもあまりにも濃すぎるキャラ。
すれ違っても、その外見は一度見たらなかなか
忘れられないはず。私はこんな人会ったことがないので
おそらくどこかですれ違ったか、遠目で目撃した と
思いますが、果たしてどこで見かけたのか…?

「あぁ、父さん大丈夫かな…? 心配だなヴァルーナ」
「触んじゃねぇブス」
「なんでダメなんだよ!?
僕の手が汚いとでも言うのか!?」
「いやお前の存在が汚い」
「お前も十分汚いだろ!?」

いつものように些細なことで言い争いを始める
オリンピアス様とヴァルーナ様。いつもだったら
真っ先に私が仲裁しに行くのですが、そんな考えも
ないほどに、私の頭は写真の彼女を考えることに
支配されていたのです。

「ロワイヤル様ならきっと大丈夫ですよ~!
なんか面白いのないかな~」
「アンタったらホント呑気ねぇ、
ちょっとは心配しなさいよ全く…」

呑気に構えてスマホをいじり始めるウミギロンと
それを諌めるサヒダロン。すると、ウミギロンが
ある記事を見つけ、この場の空気は一変したのです。

「ん? 惑星 ナーチャロで有名なイケメン俳優
1日のうちに5人死亡… その他 外科医、レーサー、
ありとあらゆる有名人が次々に死亡、共通点は
いずれも比較的顔立ちの良い男性、死因は
全員 何者かに生気を全て抜きとられており…」
「惑星 ナーチャロ…? って確か、
あの手紙に指定されていた場所だよね?」
「えぇ、あっ、ネットを探って見つけましたけど、
犯人の目撃写真もありますよ!」
「かなりボヤけててよくわかんないな…」
「え!?ちょっとコレ、どっかで見たこと
ありません!? なんか この写真の人にそっくり!」

サヒダロンは、ウミギロンのスマホに映っていた写真を 
エレーネア様、オリンピアス様、ヴァルーナ様に
見せ、私も彼女についての話題と聞き、
そのボヤけてるという写真に目を向けました。

「いやまさか、ちょっと
細かいところは似てるけど…」
「もっと写真をクローズアップしてみましょ!
ジイ、お願いできるかしら?」
「はっ!」

エレーネア様の一声で、私はウミギロンがスクショ
したであろう、写真を分析し始めました。そして
我がコズモルチーが誇る、最先端の編集と技術力で
解像度を上げ、画質をよくすることに成功したのです。
すると、その写真に写っていたのはやはり…

「やはりビンゴ… まさしく、この写真の女性です!」

私を含むその場にいた全員は驚愕を隠せません。
右腕を上げ、それで何かを吸っているような行動を
とっているこの写真の女性。もし彼女が先ほどの
事件の犯人だとすると… 被害者は皆、比較的
顔立ちの良い、男性…。ハッ!?これは大変です!
私は思わず皆に大声で提案していました。

「皆様!我々も直ちに惑星 ナーチャロへ行きましょう!
もし、この写真の女性がその事件の犯人だとすると
次に狙われるのは、まさにロワイヤル様です!」
「確かに、ロワイヤルも顔立ちの良すぎるイケメン。
あの女の標的ターゲットとしては十分考えられるかも…!
でも、ロワイヤルはあの手紙と この色気だらけの
写真で騙して呼んだわけだけど、なんでそんな
回りくどいことする必要があるのかしら…?」
「それよりも早く行こう!父さんが危ない!」
「そーだそーだ!後でそんなの聞き出しゃいい!」
「よし、いいわね!行くよ!」

エレーネア様のその一声と共に、私達は大広間を
飛び出し、惑星 ナーチャロへ向かいました。そして、
リキッド広場公園に到着し、見つけてみれば あの女が
ロワイヤル様に顔を近づけ、キス寸前の状態だったの
で、オリンピアス様とヴァルーナ様が飛び出し、
彼女にキックを浴びせた… というわけなのです。
ここから再び語り部をロワイヤル様に戻しましょう…


まぁそんなわけで、俺は危うくあの女に生気を吸われ、
殺される… 早い話が 食い物にされちまうところだった
らしい。なるほど、恐ろしく形容し難い嫌悪感…。
例えるなら、昨日戦ったばかりのラーベムのように
平然と何人もの命を殺めた時に感じるような
嫌悪感を感じたのも、これで納得できたぜ。

「いやぁ、危なかったなぁ… グッジョブ。お前ら…」
「えへへへ…///」
「いえいえ」

嬉しそうにはにかむ皆。すると、オリンピアスと
ヴァルーナも、俺たちの元に駆け寄ってきた。

「お~い父さ… ダッ!?」
「大丈… アダッ!?」

すると、2人がセリフを言い終わる前に、背後から
やたらと太い触手が、オリンピアスとヴァルーナの
後頭部と背中をぶっ叩いた。2人はその衝撃に転び、
俺達は驚愕と心配を隠せなかった。そのまま前を
見ると、今まさに先ほど、俺に今にもキスができる
くらい顔を近づけ、顎クイを行っていた彼女が
全身からやたら太い触手を出していたのだ…!
しかもその顔は 美人なのはどこへやら、恐ろしい
憤怒に満ちた顔。まるで、あと一歩のところで
自分の目論見が邪魔されたって感じの顔してるぜ…!

「いってぇなぁ…!!ってうわ何この匂い!?
めっちゃイカ臭いんだけど!?」
「くっさ…!この距離からでも鼻が曲がりそう…」

俺達全員は即座に鼻をつまんだ。オリンピアスと
ヴァルーナが抗議するほど、俺達とあの女の間には
そこそこの距離があったが、そこからでも
さっき以上に不快になるほどのイカ臭さが漂う。

「クゥッ…、あのラーベムの奴を倒したほどの実力を
持つ奴だから、どれほどの生気の味かと思ったら…
まさかこんなクソガキ共に邪魔されるなんて…!」

あぁ…? クソガキ…?

「あたし達がラーベムを倒したことを知っているの?」
「えぇ、倒すところ、そばで見ていたから当然」
「…!!そうか、分かったぞ!アンタ どっかで
見たことあると思ったら、社長やってた時の
ラーベムの元に就いてたあの美人秘書だ!!」

美人なのは違いないんだが、こんな悪趣味そうな奴を
秘書に置くなんて、感性を疑う他ないぜ、ラーベム…

「あれ?前回 私とロワイヤルの2人だけ
だった筈よね?なんでついて行ってない
ジイがそんなこと知ってるの?」
「いや、前回 語り部で彼女の
描写も言ったもんですから…」
「いや現実メタ現実メタ現実メタ現実メタい!!」
「貴様、よくも父さんの生気を喰らおうとしたな…!」
「フンッ、見た目はイケてるし、ラーベムを
倒したほどの実力だし、きっと味も格別だろうと
思って。アンタ達が 惑星 オートマーリを
出発してから、ず~っとつけてきたわけ」
「この惑星ほしの有名男性の生気を吸って
殺害した事件も、あなたの仕業ですよね!?」
「あら、ご名答。アンタ達、警察の真逆のくせに
よく暴いたわね。補足しておくと、生気を吸うのは
この惑星で79個目。うち19個はそれで滅亡したっけ」
「ネットの賜物ですから!」
「ボヤけつつ写ってたからね、目撃写真!」
「チッ…!アンタ達のアジトが次に差し掛かる惑星が
惑星 ナーチャロだったから、そこでロワイヤルソイツ
わざわざ手紙と写真を自撮りして 呼び出して、
最悪来ないことも考えたけど、ロワイヤルソイツはすんなり
来てくれて、心の中じゃあ笑いが止まらなかったわよ!
警戒心ゼロっぽくてウケたから、ちょっと遊んで
あげたわぁ… まぁでも、もし来なかったら、何回でも
手紙を送って、全裸の自撮り写真でも送ってやろうと
思ったけど… 今回はそこまでなかったわね」

女のこのカミングアウトは流石に全員をドン引き
させた。一同は猛烈な臭さにも構わず、鼻をつまむの
をやめると、女を即座に消さんと武器に手をかけた。

「なんだコイツ!? とんだ変態野郎じゃないか!?」
「イカ臭いわ、そんなキモい考え方だわ、
ホント吐き気がする。とっとと殺ってやるぅ!」

ヴァルーナが腰のホルスターに手をかけようとした
その時、俺は怒りのままにあの女に言葉をかけていた。

「おい… ビ●チ野郎… てめぇ、俺の
子供達をクソガキたぁ上等だなぁ…!!」

自分でも言うのはなんだが、今の俺の声は 自分でも
抑えようのないほどに怒りに満ち滾っていた。女は
その怒りを察したのか、少し怯んだ後、言い返した。

「…ハッ!?いや、クソガキをクソガキって
言って何が悪いのよ!? アンタみたいな、
特撮なんて子供騙しのもん好きなカスの子供なんて、
決まってクソガキなのよッ!ってか、子供いるって
ことはアンタ、結構 歳はあるって事…? 高校生や
大学生に見えるくらいの美男だからてっきり…」

言ったな!?上等だこの野郎!!俺はそんな憤慨の
気持ちに精神を支配され、女の言葉を遮っていた。

「言いたい事ぁ、それだけか…? そんなに言うなら、
今ここで吸ってみろよ!俺様の生気… それとも、
こんな歳ある奴の生気なんて、願い下げかなぁ…?」
「…だったらお望み通り全部吸い尽くしてやるわ!
アンタの一番愛する家族を殺すのと同時にねぇ!!」

俺の挑発にまんまと乗った女は、水上に移動し、
海に落ちず 宙に浮いたと身体中から出した墨に
身体を包み、醜悪な本性の通り、醜悪な真の姿を
現した。足のない下半身は イカのような10本の
太い触手を持ち、上半身はセミに似た顔っぽい肩を
持ち、人間の姿とは似ても似つかない 醜悪な顔立ちを
した、俺達の2倍くらいの身体の大きさを持つ怪物だ。
そしてこの姿になると同時にイカ臭さも増した。

「うわっ!?こりゃひどい!鼻がひん曲がる臭さだ!」
「外面でごまかして、本性はとんでもねぇ
醜女ブスだったわけか、テメーらしいなぁ…」

ジイは嘆きながら 一同が鼻を再びつまみ、俺が思った
ことをそのまま言って煽ると、イカ女は激昂。

「ほざけぇぃッ!!アンタなんか、この
『マラカロ・ヤーズミ』様にかかれば一発で…!」
「なるほど、確かにMマラカロYヤーズミですね…」
「やってみろよ、出来るもんならな」

すると、エレーネアは即座に止めに入った。

「まさか…!?アレ ハッタリとかじゃないの!?」
「あぁ、あいつの望み通り、
ガチで生気を吸わせてやるのさ」
「ダメだよそんなの!!死んじゃう
かもしれないんだよ!?」

そのやりとりを聞き、ヴァルーナ、
オリンピアス、ミギヒダも止めに入ってくる。

「無茶もほどほどにしてよ父さん!
どうすんのさ死んだら!」
「考え直してよ、父さん!」
「ロワイヤル様っ!!」

愛と優しさがこもった本気で俺のことを心配して
くれる眼差し。俺はそれにどこか嬉しくなって
思わず 笑みが零れてしまった。

「ヘヘッ… 大丈夫さ、このコズモル・ロワイヤル様が
あんなビッ●イカもどきに、殺られると思うか?」
「しかしっ…!」

なおも心配な一同に、俺は毎日歯磨きしてる歯を
ニッと見せて、心配すんなと 大胆不敵に宣言する。

「俺を信じろ。信じ合うのが、家族ってゆーじゃん?
オメーらが信じてさえくれりゃ、俺は問答無用で
それに応えるからさっ!!」
「いつまでウダウダ喋ってんのぉ!?」

自画自賛も甚だしいが、いいこと言った矢先に
マラカロの触手に俺は囚われてしまった!うぅ、
ドンドン身体の力が抜けていく… 生気吸ってんのか…

「ロワイヤル!!!」

駆け寄ろうとする5人を、唯一残ったジイが静止した。

「信じましょう、ロワイヤル様を。皆知ってる
でしょう?彼は、信頼を裏切るような人じゃあ、
決してありません。特に、大好きな
家族の信頼とあらば尚の事です」

分かってんじゃんジイ…!
そう諭すジイに エレーネアも、そして子供達チルドレン
思い出したかのように同調した。そういえば、
今気づいたんけど 皆 鼻つまんでなかった。俺に
至っては 手をも縛られてるから、つまみたくても
つまめなかった。近距離じゃ激増したイカ臭さが
半端じゃないんですけどこりゃ…!もしかしたら俺、
生気を吸われる前で臭いで殺られるかもしれない。

「そうね。アイツは無茶ばっかすっけど、
なんやかんや無茶な方法でこの場を切り抜ける!」
「今回も例外じゃないって事かな?」
「そうですよ!」
「えぇ!」
「よぉ~っしゃ~! あのゲソ女、父さんと同時に
あたし達を殺すって言ってたし、あたし達も
向かい打とーぜ!!ようやく活躍できる…!」
「あぁ、こんなキモい女に、
僕達も殺されてたまるかってんだ!」

エレーネアはエレネアロー、ジイは紫色の長槍、
『バトランス』、オリンピアスは2本の小太刀、
『オリンポスラッシャー』、ヴァルーナは煙をも
発する小銃、『ヴァルナスチームガン』と 刀身に
バルブがついた片手剣、『スチームダガー』を、
ウミギロンは先端部がナイフ状の槍、
『ウミギロッド』、サヒダロンは先端部が
フォーク状の槍、『サヒダロッド』を構え、
マラカロと相対した…!んで、俺はと言うと、
今にも生気がなくなりかけている & マラカロの
イカ臭すぎる体臭という二重苦に 今にも
屈しかけていた…。でもあと少しだ、あと少しで…!

「フンッ!何をしてももう無駄よ!アンタ達が
大好きなパッパはもう死にかけ寸前!安心なさい、
アンタ達を残して逝かないわ。何故ならアンタ達も
私の手によって死ぬ。パッパが死んだと同時に、
アンタ達にも強烈な一パツをお見舞いして
やるんだから…!フンッッッッ」

マラカロはそう言うと、俺を掴んでいる触手とは別の
残り9本の触手 及び、両手に強力な黒いエネルギーを
溜め込み、俺以外も消そうとしていた…! そして俺は
完全に生気を吸い取られ、意識を失った。

「フッ… どうやら死んだようね、じゃ、アンタ達も
死んでもらうわぁ…! ハハハハハハハハハハハ…」
「そんな、ロワイヤル様がぁ…!」
「嘘、父さんが!?」
「ハーッハハハハハハハハハハハハハ… アアッ!?」

…な~んちゃって。マラカロの怪しく気味の悪い
笑い声は己の肉体に感じた違和感によって途切れた。
と同時に溜め込んでいた黒いエネルギーも消失し、
そして右手に持ってたやつが 触手で吊るされてる俺に
かかり、それで俺は起きた。マラカロは途端に苦しみ
始め、身体中から火花を散らして、苦悶の声をあげる。
フッ、どうやらまんまとかかってくれたようだぜ…。
マラカロの触手に込められていた力は一瞬に
してなくなり、触手からスルリと抜けるのは容易
だったぜ。にしてもこの黒いエネルギーは…!!

「ああっ!?ロワイヤル様だ~!」
「父さん無事か~、無事みたい!」
「信じてたわ、なんとか切り抜けたねロワイヤル!」
「流石ですっ、ロワイヤル様!」
「ロワイヤル様、グッジョブ!」

皆が口々に喜ぶ中、俺は体中にベットリとついた
黒いエネルギー、いやイカ墨のような何かに憤った。

「うぉい!!畜生なんだよ頭からこんなイカ臭くて
ドロドロでベットリとしたやがって!
これネバネバするよぉ~///」
「いや言い方お前この野郎!!
ちょっとは自重しなさい!!!」
「ち、近くが水場で助かったぜ…。あぁ気持ち悪ぃ~」

エレーネアのツッコミをよそに、俺は近くの海に
飛び込んで、身体中についた墨をなんとか洗った。

「なっ、何故 アイツは生きてて、あたしはこんな…? 
確かに生気を吸った手応えは感じたはずなのに…!?」

マラカロは苦しみながら、俺はそう問うた。その
タイミングと同時に俺は海から上がり、その理由を
タネ明かしした。にしても墨は取れたけど、まだ
ベトベトすんなぁ… 風呂入れば落ちるかなぁ…?

「簡単な話さ… 俺様の生気が常人より凄すぎて、
それを吸ったてめぇの肉体が耐えきれず、許容範囲を
超えて 爆発を起こしたってわけさ。残念だったなww」

形勢逆転の流れに マラカロは悔しさに満ちた表情と
共に 俺達に向かって精一杯の罵倒を行った。でももう
何を言っても無駄だぜ、あとはてめぇは殺されるだけ。

「お、おのれぇ…!この… バケモノ一家めぇ!!!」
「バケモノにバケモノ呼ばわりされるなんてマジ心外」

オリンピアスにあしらわれてて草生える。すると、
ヴァルーナとミギヒダが攻撃体制に入り出す。

「それよかさっきからイカ臭すぎてもう我慢の限界
だから、さっさと殺るわ。ミギヒダ、行くよっ!」
「承知しました~!」
「御意!」

ヴァルーナは、スチームダガーの刀身と柄を分離して
ヴァルナスチームガンと合体させた銃剣型ライフル、
『ヒューメライフル』を構え、肩の装甲を開き、
ミサイルを放った。それと同時にヒューメライフル
からも、煙に乗って高弾速のエネルギー弾が放たれた。
マラカロは苦しみつつも 触手で全て受け止めたが、
ミサイルを誘導し進んでいたミギヒダが、
いつの間にか背後に周り、ウミギロッドと
サヒダロットを合わせ、強力な金と銀のビームを
発射し、マラカロに大ダメージを負わせた。

「お次は僕かい?フッ、一眼貴様を見た時からずっと
思い続けていた… イカ刺しにしてみたい!とねぇ…!」

そう言ってオリンピアスは翼を広げ、飛び立った。
マラカロはそれを見上げながら、腕からイカ墨…
もとい、黒いエネルギー弾を発射する。オリンピアス
はそのエネルギー弾からも漂うイカ臭さに怯み、
慌てて飛びながら かわすも、結構ギリギリなもので、
今にも当たりそう。見てるこっちがハラハラだぜ…。
するとそれを見かねたのか、ヴァルーナが煙になって
移動しながらヒューメライフルで狙撃し続け、
マラカロの注意を逸らせた。

「さぁ兄さん!今のうちにさっさと攻撃してよね!
ったく、世話が焼けるなぁ全く……」
「このぉ… 後でただじゃおかないぞヴァルーナ!」

オリンピアスはそう悪態をつきながら、
オリンポスラッシャーを影と共に無数に増やし、
マラカロにナイフ投げの要領で投げまくった。

「くらえ!」

腕に持つオリンポスラッシャーと別に、
オリンピアスの周りを浮いている無数の
オリンポスラッシャーも標的ターゲットに向かって飛び、
マラカロはそれを文字通り 身体で受け止めることと
なり、その衝撃ですっ転んだ。

「今度はオレの番だぜィ!触手はオレの専売特許
だからなァ!派手にやっちまうことにするぜェッ!
フォーーーーーーーーーーーーーー(0∀0)ーーーーーーーーーーーーーーウゥ‼︎」

敬語口調だったジイも、ハジケてる気分なので砕けた
口調になっている。そりゃそうだ。なんてったって
今のジイは執事ではなく、予測不能のハジケリスト。
エキセントリックな雄叫びと共にマラカロに向かって
飛び出す。マラカロはジイに向かって腕からまたも
イカ墨…ゲフンゲフン、黒いエネルギー弾を発射した。
太い触手によるパンチのおまけ付きで。それに対し、
ジイは自らの肉体を紫がかった液状に変化させて
回避すると、肉体を元の状態に再構築して戻り、
右手の袖から紫がかった触手を伸ばし、マラカロの
脇腹に触手のパンチをお見舞いし、小さな針から毒を
注入した。ただでさえ苦しんでいるマラカロに 
追い打ちをかけるかのような猛毒、マラカロは
どんどん衰弱していく。その隙をつき、ジイは左手の
袖からも触手を伸ばし、マラカロの肉体を縛り上げ、
ブンブン回して、投げ飛ばした。

「ふぅ… 毒を注入して力を抜いたとはいえ、
やはり重いですねぇ、ふぅ… くたびれたぜ…」

さりげなく捉えようによっては失礼なことを呟くと、
ジイは頭にキラメく汗を拭いた。そして空中を浮く
マラカロに 今度はエレーネアが飛びかかった!
マラカロは 即座に触手を伸ばして応戦するが、
エレネアローサーベルに全て斬られ、瞬時に変形した
エレネアローで射抜かれて、地に落ちていく。

「よくもあたしの愛する旦那様を喰い物にしようと
したわねぇ!その上、あたしの子供達チルドレン
と、あたし達の特撮ライフラインに対する侮辱、
アンタに生きることを許す慈悲は与えないッ…!!」

その口調はいつものように 芯の通った声をしつつ、
二つくらいの正義の味方の団体を本気ガチで殺しにかかって
くるくらいの、ラスボス級のおっそろしい殺気が前面に
出て、恐ろしく感じた。でも、彼女の言ってることは
否定はしないどく。さて、この流れからするに… 

「ロワイヤル!最後思いっきり決めちゃって~ッ♡」

エレーネアの言葉と共に、俺は思いっきりジャンプ!
そしてこの惑星ほしの重力に従って落ちていく
マラカロに思いっきり蹴りをぶち込むと、
エンペライトセーバーで思いきりの怒りを込めて、
斬って、斬って、斬りまくった!そして斬りながら、
あらん限りに心に秘めたセリフを吐露し続けた。

「どうだぁこの野郎!!特撮なんて子供騙しのもん
好きなカスに、そしてそのクソガキにボッコボコに
される気分はよぉ!? 行ってやんないのもなんか
悪い気がする、俺のお人好しな気持ちも利用するわ、
俺のかわいいかわいい子供達をクソガキというわ、
挙句!俺の特撮ライフラインに対する罵倒!!こんなに人を
ムカつかせて、もうお前の末路オチは決まったなぁ!! 」

そして、エンペライトセーバーを 彼女の胸と腹の間の
部分に突き刺した。半ばオーバーキル寸前状態の
マラカロは悲鳴を上げる。言っとくけど、これでも
まだ足りないぜ…? そしてもう今にも死にそうな
彼女に向かって、俺はこう宣言した。

「死が、当然てめぇのゴールだぜ…!」

そしてエンペライトセーバーを抜くと、刀身に
思いっきり闇のエネルギーを込め、縦に一刀両断!
とどめの一撃を叩き込んだ。

「ロイヤル・ダイナミック!!!」

かくしてこれを受けた、79個の星で有名人で
イケメンの生気を吸って殺害し、19の星を壊滅させた
●ッチ悪女、マラカロ・ヤーズミは断末魔の叫びを
上げながら、海に落ちると同時に爆発四散。そして俺も
空中で一回転しながら、一際目立つステージのような
ところに着地。それと同時に皆も集まってくる。皆
の両手には、恐らくエレーネアが斬ったであろう触手
が。ジイにエレピー… もしやこれを夕飯の材料に
するとか言うんじゃ… ちょっとしばらくの間、イカは
こりごりかなぁ…。とにかく、かくしてこれで
大好きな一家を巻き込んだ、俺と1人の悪女の
一悶着は終わりを告げたのだった。

それから少し経ち、俺とエレーネアは ブルーネアに
使い道を研究してもらおうと、前回… ラーベムの
一件で入手した、惑星の爆発にも耐えられる装置を
持って、彼女のいる研究室に向かっていた。子供の頃
からずっと一緒に並んで歩いてきたからかな、歩く
歩幅は全く一緒。こんなにベストマッチな夫婦は
なかなかいないぜぇ…? と、自惚れてると、不意に
俺はエレーネアが急に俺の腰あたりに抱きついてきて、
本気で俺を心配する上目遣いで俺を見たことを
思い出した。心配してくれてありがと、エレピー。
コイツにそんなこと言ったら、[私はあなたの妻。
心配するのは、当たり前でしょ?]な~んてさも当然
かのように返されるのは脳内でイメージがつく。
それでも、今の俺は感謝の気持ちでいっぱいだった。
もうこの気持ちはおさえられない。エレーネアを
呼び止め、俺はコイツに顔を近づけ、顎クイを
行った。やることは想像はついたらしいが、突然の
この行為に、次第に顔が真っ赤になるエレーネア。
俺も多分、同じくらい赤面してる。もう付き合って
だいぶ経つはずなのに、いつまでも初心ウブな反応に
お互い苦笑すると、俺達はどちらともなく唇を重ねた。
すぐに唇を離すと、最初に口を開いたのはエレーネア。

「突然、何よっ…/// まぁ、嬉しいけど…///」
「いや、今日のお礼さ…/// お前らが動いてなきゃ、
今頃 俺、どうなってたかわかんねーからさっ…///」
「あぁ、あれウミギロンのおかげ。あの子がアイツ
の犯行の記事をネットで見つけたおかげで、私達
は動いたの。お礼ならウミギロンに言ってほしいな」
「んじゃ、アイツにはそのうち、なんかケーキでも
お土産に買ってくっかな~」
「えっ!?あたし ショートケーキ食べた~い♡」
「俺様はフルーツケーキの気分なんだよね今日…」

さっきのキスの熱い雰囲気は全く冷めやらず、
俺達はいつものようにイチャコラを繰り返す。
この場にジイがいたら、ざーとらしい咳払いで
威圧されるわけだが… 今回は違った。

ーしても冷めない

前の方から冷たく凛とした声が響き渡る。
でもセリフはまさかのおやじギャグ。そのセリフを
聞くや否や、一瞬にして俺とエレーネアの全身は
たちまち氷に包まれた。果たして言ったのは
誰でしょーか。それが明かされるのはじかーい、
次回。俺達、コズモル家の物語は性懲りも無く続く。
更なる試練を乗り越えて明日へ進むだけなのだ!
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