Galaxy Day's

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地獄のパズルと根性勝負

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オリンピアスの前に現れた男、そいつの名は
・マッド・ギラン』。名字から
分かるように、俺たちが追っている
関係者であるこたぁ間違いねぇ。その上、
オリンピアスの元に行こうとしたみんなの前には
ジャーディアンやカオスキングドラゴンが
現れるわ…。こりゃあとんでもないことに
なりそうな気がするぜ。でも… その分
ワクワクが抑えきれねぇってもんだ!!



ジャークネスの西にあるメギーツネ総合病院。
そこから出ながら、俺とエレーネアは
つい昨日までここに入院していた
オリンピアスと話していた。

「いやぁ、まさか3日も眠り続けるなんてなぁ…
今までで一番 長いんじゃねぇか?」
「でもさ、今回もどこも悪いところが
なくて、よかったよかった!」
「心配をかけて実に申し訳ない…」
「あとアカイヤルにお礼言っとけよ~?
お前をずっと守ってくれたんだから」
「もちろんですとも」

先週、オリンピアスは俺たちの前に現れた、
・マッド・ギランの圧倒的な
実力を前に、持てる力全てを使い果たし、
3日間も眠り続けていたのだ。この3日間、
俺たちゃマジで気が気でなかったが どうにか
目覚めてくれて本当によかったよ…!
そして昨日、無事に退院したわけだ。

「…なるほど、あの怪しい奴は家の…
まさか、父さんでさえ ギリギリだったほどとは…」

心配そうなエレーネアとオリンピアスの顔を
よそに、俺はあることを思いつく。

「え~、というワケでっ!あの
デモール・マッド・ギランに対抗するためにも、
俺たちは今まで以上に強くなる必要がある」

早速、俺はジャークネスの郊外の広場に皆を
集めた。ジイが続いて話し始める。

「まぁ、私たちは元々 強い~!…のは、
わかってることなんですが。未だに大宇宙の各地を
回っても、いろいろとツテで調べてみても、
デモール家の情報はまるで出てきやしません」
「あぁ。今は、父の解析が頼りだよ…」

そう言うのはブルーネア。俺が惑星 ロスティアで
見つけた、デモール家の唯一の手がかりたる 謎の
資料と、謎の解読不能の文字が書かれている部屋。
それは今、ブルーネアの親父たるシュタイン教授
こと、『スカイグ・ピタラシュタイン』教授に解析を
委託している。今のところ 全く連絡がないが、
あの方なら きっとなんとかしてくれる… ハズ。

「我等が今まで調べようとしたことの中でも、
かつてないほどにガードが硬過ぎる連中です。
きっとそれを解き明かした時、彼等との
全面戦争は避けられません。その時、
恐らく 今までのようにはいかないかと…」
「あぁ。現にギランのヤツは あそこまでこの俺を
追い詰めた、正しくって感じのヤツだ。
アイツがあれぐらいなら、本丸はきっとそれ以上。
今までみたいにはいかねぇかもしれねぇな…」

俺たち一同の間を 張り詰めた雰囲気が包み込む。
特に、ミドイヤルのヤツはなんだろう?
さっきから、妙にソワソワして…

「…まっ、別に弱かったら弱かったで 
やりやすいからいいんだけどねぇ~。
でもまぁ、からしたら…
俺でさえ苦戦したギランほどのヤツを
倒すってぇのは、になる… だろ?」

俺はそれをわざとらしくミドイヤルに
向かって言った。ミドイヤルは
いの一番に大きな反応を見せた。
そして俺の元に向かってくる。

「…おい、そりゃマジでどういう意味だ…?」
「言葉の通りだ。あれだけ強さ強さ言ってた
おめぇにとっちゃあ またとないチャンスだろ?」
「ッ…」

ミドイヤルは何も言い返さず、顔を逸らした。
「マジねーわ!」とかが返ってくると思ったら。

「まぁとにかくだ!俺たちがも~っと!
強くなるために、今回 快く協力に応じてくれた
者達も呼んだ。時間的にそろそろだなぁ…」
「お待ちど~~~!!」

威勢のいい声と共に俺達のうしろに現れたのは
三機の『クアドラー』。ベターな火星人
を模した、俺たち御用達の戦闘機だ。
俺たちコズモルチーにおいても、クアドラーは
必需品のひとつ。民達の移動の足の
ひとつとして ジャークネスや宇宙を飛び回り、
侵略においても 空を覆い尽くすほどの量で
弾幕を張り、カオスキングドラゴンと共に
大活躍!!さらには 状況に応じて、地上走行形態
にも変形して、地上だって駆け抜けたり… と、
結構 万能なんですよねこれが!!

まぁ、そんな説明はさておき。地上に降り立った
クアドラーから3人が飛び降りてくる。
体格のいい男、丸眼鏡をかけた女、
白衣を肩にかける優男。3人は共通して 
中華の意図を持つ 黄色っぽい服を着ている。
そう、コイツらこそが…!

「キールス三兄妹を連れて来たよ」
「「キールス三兄妹?」」

反応するミドイヤルとグリーネア。

「おいちょっと待て この流れは完全にラー…」

まぁアオイヤルのツッコミはさておき、

「力と中華の専門家!
長男!『キールス・ドニック』!」
「押忍っ!よろしくなっ!」

「格闘術の専門家!
次女!『キールス・ミー・シェル』!」
「がんばりますっ!よろしくお願いいたします」

「頭脳と技術の専門家!
次男!『キールス・ユンピョン』!」
「よっすよっす、どうも~」

「いやもうこれ完全にラーメン… ムグゥ!?」

俺は慌ててアオイヤルの口を塞いだ。
まぁ、皆様の言いたいことはわかります。
実際、みんなはこの登場を見て エレーネア、
ジイ、オリンピアス、サヒダロン、アカイヤルの
ように吹き出す者もいれば、ヴァルーナ、
ウミギロン、ミドイヤルのように
元を知らないのか、純粋に新キャラの
登場に目をキラキラさせる者もいる。
ブルーネアとグリーネアはなんとも言えない
気まずい表情だったけど。しかし、
イエーネアだけはそのどれでもない。
驚きやら何やらが混ざった表情をしている。
そう、『キールス』って名字でわかった人も
いらっしゃるかもしれませんが…

「ちょっと、イエーネア?どうしたのよ~?
久しぶりに、兄妹の再会でしょ?」

エレーネアがそう言うと、3人も
イエーネアに寄ってくる。

「いやぁ~、久しぶりだなぁ 姉貴!」
「元気にしてた、お姉ちゃん?」
「こうして会うのは… 半年ぶりかなぁ?姉上」

そう、イエーネアの初登場の際に言及したとは
思いますが、イエーネアは4人兄妹の一番上。
その下の弟と妹こそ、このキールス三兄妹。
コイツら正しくは、『キールス4兄妹』なのだ!
しかし、イエーネアの方はというと、
どこか気まずそうに一言だけこう呟いた。

「あ~… えっと… マママ、マジかぁ…?」



「う~ん… やっぱうめぇなぁ~!」
「久しぶりに食べたけど… 腕上げた?」
「ありがとごぜーますロワの旦那!!
わかりやすか~!?エレの姉御~!?」

現在、私達は大広間にて ドニックが作った
中華料理の数々を味わっていた。
キールス家の2番目の長男、ドニックは
4兄妹の中で最もパワーに秀でているけど、
それとは別に 料理が、特に中華料理が上手なのだ!
大広間の長いテーブルが 中華料理を
食べる時用のターンテーブルに
変わってるけど、これは食べる前…

「いやぁ、美味しそうですねぇ… ん~、
でも私的には テーブルや椅子のレイアウトも
それっぽくなってくれた方が…」
「あ、やりましょうか?」
「できんのグリーネア様!?」
「ご期待に添えられるかわかりませんけど…
ハァ~ッ…!ハガ・レンセー!!」

ジイの呟きに答え、グリーネアは輝く指を
上に向け、大広間の長いテーブルを
ターンテーブルに変え、各々の椅子の位置も
それに合うように若干 移動した。
さっきの呪文は、物体を一瞬で作り変える
ことができる一種の錬金術のひとつらしい。
…とまぁ、それを経て 現在 私たちは
ドニックの料理に舌鼓を打っているワケ。
でも、なんかイエーネアだけはどこか
浮かない顔。まぁ、姉だから 食べ慣れてる
だけなのかもしれないけど… こうして
ドニックの料理を食べるのは久しぶりのはず。
なんなら、イエーネアが一番 喜ぶはずだけど…
あたしはイエーネアに声をかけようとした矢先…

「さぁ、食べ終えたら本来の私たちの目的…
私との交流試合をやるとしましょう!」
「おぉ、ミシェルとかぁ!」
「悪邪拳法の現師範さん♪ どれだけ
腕を上げたか 楽しみだぜぃ♫」
「いえいえロワイヤル様… 私もまだまだで…」

そんな照れくさそうに笑うミー・シェル… 
もとい、『ミシェル』はイエーネアの実家がある
惑星 ベレノイアの国のひとつである 砂漠の都、
『キルフィンズ』に住む者であらば誰もが習う、
『悪邪拳法』の現師範。もともとこの拳法は、
4兄妹の両親であり、キルフィンズの現総師である
『キールス・チェン・リー』氏と、総師夫人にして
元老院の1人である、『キールス・ハン・キルネ』氏
が我流の拳法として創り上げたもの。ミシェルは、
4兄妹の中で 師範となってそれを継いだのだ。

やがてご飯を食べ終え、ミシェルについていき、
ブルーネアとユンピョン、そしてジイ以外は
ジャークネスの修練場へ。ジャークネスの修練場は
ブルーネアの最先端ホログラム技術で、
ありとあらゆる場所を舞台にして戦えるの!
今回、投影している舞台は瓦礫だらけの廃墟。
ミシェルと対峙しているのはアオイヤル!

「さぁ、まずは同じメガネ同士で
戦おうじゃないか。ミシェルちゃん」
「アオイヤルさん… いいですとも!」

2人がそうして会話を交わしていると…

「合意と見てよろしいですね?」
「え!?」

ここにはいないはずのジイの声が響く。
みんなは狼狽えながらキョロキョロしていると…
なんと、巨大化しているジイが私たちを
見下ろしてる~~~っ!?

「えぇぇ!?ちょ、オヤビン
なんでそんなところに!?」
「ホログラムに、写ってるんですか!?」

狼狽えながら問うミギヒダに、ジイは
高らかな笑い声を響かせると、

「私ほどの者となるとこれくらいの
ハジケは容易き事。え~、それよりも!
コレより、ブルース・アオイヤル様VS
キールス・ミー・シェル様の
交流試合を開始します!よろしいですか!?」
「はい!」
「いやあの… さっきの
セリフといい、そのネタって…」
「ツッコミはあと!さぁ、始めますよ!」
「あっ… はい」

戦闘や鍛錬となると殊更 厳しくなるミシェル。
鋭く言われ、アオイヤルは渋々 頷いた。

「では…、READY…… FIGHTケーーーッ!!」

ファイトと言うと同時に ニワトリみたいな
着ぐるみを一瞬で身に纏い、甲高い声をあげる
ジイ。アオイヤルもミシェルも一瞬 驚いたが、
ジイのこのテのハジケはいつものことなので、
気にせず 戦闘を開始した。

ミシェルとアオイヤルの手刀がぶつかり合う。
しっかし、アオイヤルにしては珍しい徒手空拳。
いつもは得物である槍杖、バシャバシャフトは
戦闘時に必ずと言っていいほど持ってるのに。
まぁそれはともかく、今はミシェルの方が有利。
すると、アオイヤルは何やら指からモヤのような
エネルギーを出そうとしていたけど、ミシェルの
下から上の手払いでかき消されてしまった。

「『最終的に勝てばよかろう…』 相変わらずですね、
そーゆーのは ユンピョンだけにしてほしいわ!!」

ミシェルはそう啖呵を切りながら、アオイヤルを
拳で殴り倒していき、群青の青龍のオーラを纏い…

東春青龍拳とうしゅんせいりゅうけん!ハァッ!!」

激流に乗る青龍のオーラをアオイヤルに放つ!
アオイヤルも負けじと、左腕から高圧水流を放った
けど、押し切られてしまい アオイヤルは倒れた。

「そこまで!」

ジイの静止が入り、背景も元のバーチャル空間的な
ものに戻った。負けたアオイヤルは大人しく
引き下がる。ミシェルは少し 息が上がりつつも、

「次… 誰やります?」

と、みんなに問うた。その声に応じ、来たのは…

「私、やります!」

なんと、グリーネア!珍しくこのテの特訓に
積極的な様子の彼女に、一同はどよめき立つ。
特に後ろにいるミドイヤルが。

「おいおい、マジかよグリーネア…!大丈夫なの?」
「私だって、たまには強くなりたいですから!」
「おぉう、いつになく積極的ィ… やってみな!」

ロワイヤルからの檄を受け、グリーネアは
前に出て、ミシェルと対峙する。
次の投影舞台は、建物に囲まれた広場。

「お願いします!ミシェルさん!」
「こうしてやり合うのは初めてかなぁ…?
魔法を使う上では実力者みたいですけど、
戦いはそれのみにあらず!…己が肉体の底力、
私に見せてちょうだいな!」

お互い構え、2人は 未だ私たちを見下ろしている
巨大ジイの方を向くと、揃ってこう言い出した。

「「合意と見てよろしいです!!」」

ジイはそれに目が点になりつつも…

「えっ…!?あっ、はい… では!
キミルド・グリーネア様VS
キールス・ミー・シェル様の
交流試合を開始します!よろしいですか!?」
「よろしいです!」
「いいですとも!」
「では…、READY…… FIGHT」

今度は巨大な灰色の仏像になるジイ。2人は
もはやジイの方向すら見ずに、戦闘を開始した。
ジイがそれにちょっとショックを受けてた。草。
まぁそれはともかく…

グリーネアはミシェルに殴打を只管 叩き込む。
ミシェルはそれを拳で受け止める。ミシェルは
隙をついて カウンターを叩き込もうとしたけど、
グリーネアが大きくジャンプし、かわされて
しまう。グリーネアはそこから反転し、
壁を蹴って、ミシェルにハイキックをお見舞い
するが、ミシェルはそれを腕のクロスで防ぎ切り、
腕を広げると共に、グリーネアを転落させた。

「くぅぅ… やりますねぇ…!」
「なんだグリーネア!?
お前の力はそんなモンか!?」
「マジねーし、まだまだだし!」
「ちったぁ見直したかと思ったら、このザマか!?」
「もっとお前の強さを見せてみろってーの!」
「そうだそうだ!」
「ちょっと!?何やってんの!?」
「静かにしてくれます!?」

突然 グリーネアに向かって野次りだす
ロワイヤルとミドイヤル。注意するアオイヤルと
ミシェル。だが、その時 グリーネアは…

「上等…!やってやんぞクォラァ!!」

この野次に豹変。怒り狂いながらミシェルに
向かっていく。先程までの単純ながらも
堅実さが見えていた拳とは違い、只管に
吠えながら 荒々しく殴打や蹴りを繰り返す。
これにはミシェルも防戦一方。それを見てる
ロワイヤルとミドイヤルは、なんか… コレを
待ってたと言わんばかりにどこかウキウキしてる。

「…ッ!さっきまでと動きが違う…!!」
「ヴォラァッ!!」

グリーネアは一回転ジャンプして、ソ●ックの
如く 回転して、ミシェルに迫る。さっきみたいに
腕クロスでは防ぎきれないのを悟ったのか…

北冬玄武拳ほくとうげんぶけん!」

玄武のオーラを発生させ、バリアを生成する。
グリーネアはなおも回転し続け、ミシェルの方も
辛そうだ。やがてバリアは割れ、グリーネアは
回転が収まり、宙へと舞う。

「感情に飲まれるとは… やはりまだまだ未熟!
西秋白虎拳せいしゅうびゃっこけん!ハァッ!!」

今度は白虎のエネルギーを放ち、
グリーネアを吹っ飛ばしたのだった。

「あっ!そこまでそれまで~!!」

ジイの静止が入り、背景も元のバーチャル空間的な
ものに戻った。グリーネアは目を回しながら
倒れている。あらら… 的な顔をしてる
ロワイヤルとミドイヤルをあたしははたき、
さっきの野次の件を問い詰める。

「ちょっと、なんなのよ?さっきの野次は」
「いやその… ミシェル言ってたように どんなことが
あっても、感情に飲まれないようにさ…」
「うんうん!」
「だからってもっと他にやり方があったでしょう!」

ミシェル本人からも言われてる。ふと、
イエーネアの様子が目に入った。イエーネアは
さっきと同じく浮かない顔。この手の戦いは
イエーネアが一番 喜ぶハズなのに。あたしは
今度こそイエーネアに今度こそ
声をかけようとした矢先…

「「エレーネア~!助けてプリ~ズ!!」」
「あっ!ちょっ、ちょっと!?」

ロワイヤルとミドイヤルに 背中の方に回り込まれ、
ミシェルとじゃれることになってしまった。
かーっ!こーゆー時になんたる間の悪いこと…
でもきっとこれを知ってるのはあたしだけ
じゃないはず!アオイヤル辺りが気づいて
そしてワケを聞いてくれるハズ!…そう信じよう。



「いやはや、いつ見ても素晴らしいですねぇ…」

氷結工房に入った私とユンピョン。
ユンピョンは氷結工房に置いてある
我がコレクションを見て、感嘆の声をあげる。
デスクトップパソコンのところにつくと、
私は 水色のゲーミングチェアの如き椅子に座り、
目の前のディスプレイに映る 黄色のゾードの
最終調整を始める。それと同時に、
ユンピョンが話を切り出した。

「して、博士。一体、最近はどうされたのです?」
「何がだい?」

私が振り向いて問うと、ユンピョンは手刀から
電撃を放ち、作りかけのメカをいい感じに
していく。そう、これこそがユンピョン最大の
能力。4兄妹の末っ子ながら 頭脳面においては
4兄妹の中でも 頭ひとつ抜けて優れている彼。
その頭脳から、彼は独自の悪邪拳法 『明晰技能拳めいせきぎのうけん』と
いう独自の拳法を編み出した。この拳法の手捌きは
ありとあらゆる機械を 改造したりできるのだ。

「ほぉ… 腕を上げたんじゃないの?」
「そりゃあそうですよ!なんてたってぼくは、
ブルーネア博士の弟子となる者ですから~!」
「はいはい、お弟子さん」

アッサリあしらって、パソコンへと向き直る私。

「ちょっ!そこ強調しないでくださいよ~!」
「事実だろ?私は弟子なんて取る気ないし…
それよりも… 最近は私たちがどうしたって?」

私のその言葉に、ユンピョンのギャグめいた
リアクションを表した顔は 一転して真剣かつ
凛とした顔つきへと変化した。
そして静かに話し出す。

「ここ最近、コズモルチーは惑星の支配や
破壊といった悪事率が、妙に減りつつ
あるんじゃあ あ~りませんか?」
「…確かに、前と比べると それなりに大人しくは
なったとは、私も思ってる。…しかし、
今は悪事ところの話じゃなくてね…。とゆーか、
キミがそんな恫喝めいたことを言うのかい?」
「コレに関しては、の言葉ですから
ねぇ…。ベレノイアを発つ時、その旨の
伝言を言い遣って参りましたから」

私はその名を聞いた瞬間、腕が止まる。
まぁ、今はまだ深く語る時ではない存在… 
とだけ、言っておきましょう。

…。ハァッ… そーゆーのは
メールとかにしてくれないかって、
エレーネアが言ったんじゃなかったのかい…?」
「いや、しょうがないでしょう…。
あの人 長いことガラケーで有名だった
スマホ初心者なんだから…」
「…う~ん、で?あの人はなんと?」
「…『他の組織は順調に 惑星やら異世界やら
異次元に並行世界を支配、または破壊しまくって
我等の威光を示している…。コズモルチーも
それに 後れをとっている場合じゃないぞ…?』
だそうで」

私は大きくため息をつく。だいたい予想は
してたけど、またまたお小言か… 長官お得意の。

「ロワエレめ…。よりにもよって 長官側の方に
報連相通してなかったなんて… 特にエレーネア…」

私が小さく呟くと、ユンピョンが
どこか食い気味に聞いてくる。

「博士、その悪事どころの話じゃないって
トコ… 詳しく教えてくれませんか?」
「信じるか信じないかはキミ次第だけど」
「…信じますよ、博士の言葉なら。…何より、
コズモルチーが手をこまねく程の連中なら!
…信じないってことは ありませんよ…!」

ユンピョンのその一言に、私は一瞬 コレなら
弟子にしてやってもいいかなと気を許しかけた。
だが、すぐにまだ早い と冷静になり、
とりあえず彼にについて、
判明している分の情報を話した。とりあえず、
今は彼だけに情報を共有しておこう。
ドニックとミシェルに関しては 後のことだ。
未だ全貌の掴めぬ情報… いたずらに話して
周囲にいらぬ心配をさせるわけにはいかない。
そして話し終えて、ユンピョンはとりあえず
その話を受け入れたようだ。その感情には 
驚愕やら何やらさまざまな表情が見て取れる。
やがてしばらくして、彼は私見を述べる。

「それほどまでに… コズモルチーの手を
煩わせるとなると、このボクたちが加勢したと
しても… 簡単にはいかないかと思いまする…
まぁとりあえず、ぼくの方でもできる限り
情報を集めてみますね!」
「うん。まるで雲を掴むような… いや、
存在しうるかどうかもわからないものを
掴むような話だと思っているよ…」
「存在はするんでしょうけど、それほどまでに
不明瞭な点が多いのならば、実在するのかを
疑っても おかしいことはないですしね…」
「うん…」

私とユンピョンの間に重い空気が流れる。

「…まぁ、そのデモール家とやらの
解析とかで悪事どころじゃないって、
長官様に ボクの方から報告はしておきますが…」
「あぁ、それならありがたいよ。まぁ最も、
キミと違って、長官はそれを信用して
くれるか ちょっと怪しいけどね…」
「んじゃあ!もし報告して、長官様が
それを受け入れたら、ぼくを弟子に…」
「それとこれとは話が別!」

その言葉にユンピョンはガクッと凍り付いた。
ギャグ言ったワケでもないのにねぇ。



「はぁ…」

あたし… イエーネアは交流試合を
コッソリ抜け出し、ジャークネスの某所にある 
すぐ近くにビルが聳え立つ、建物に囲まれた
広場に座っていた。さっき投影した舞台と
まるっきりそっくりな場所。

ドニック… ミシェル… あんなに腕を上げて…
それに見てないけど、ユンピョンだって きっと…。
それに比べて、あたしはどうなんだろう。
姉であるあたしは、腕を上げたのかな…?
言った手前… そうでなきゃ…!

「フフフフ… 見ぃ~つけた♫」
「ん…!?何奴!?」

不気味な声にふと後ろを振り向くと、
アレ?誰もいない… しかし、殺気は
前にあり、ふと振り向きざまに
手刀をお見舞いしようとするが、
時すでに遅し。目の前にいた
謎の青年が「あっかんべ~~~!」
…すると同時に、あたしのカラダは
光に包まれていた。


しばらく経ったのかな…? 目を開けてみると、
そこにはパズルの如く禍々しい色の
四角がずっと移動する空に、浅い池が流れ
たくさんの白いコンクリート板と列柱が並んでる。

「どこなの、ココ…?」

あたしはひたすらに出口を探そうと
走り回ってみるも、すぐまた同じところに
戻ってしまう。何度 走ってみても。
スマホを見たら、やっぱり圏外。
通信も不能。…コレはやはり。

「なるほどね~…。さっきこのあたしに 
不敬にもあっかんべしたあの男を見つけ、
倒さない事にはこの変なところからは
抜け出せないってワケね…」
「ご名答~♫」

ふと振り向くと、そこにいたのは
シルクハットに骸骨、そして肩の
部分には バラバラなパズルの
意図をした 怪人が現れた!

「アンタは何者!?このあたしが、
コズモルチーファミリー・豪将、
キールス・イエーネアと知ってのことで
こんなことやってるんでしょうね!?」
「あぁ無論さ。この愚者の迷宮は、
この『カイ・ブレン』様のパズルを解かない
限り、出られない。さぁ、解いてみせたまえ…」
「はぁ…!?ちょっとパズルって… どこよ!?」

そう言いながらあたしは電撃を放射するけど、
カイ・ブレンと名乗る男はそれをボディで
跳ね返し、電撃はあたしに直撃!

「それは解くお前が見つけるモノだ…。
さぁ、解いてみせろ…。そして
解けぬまま、そのまま絶望のままに!」

そう言って、カイ・ブレンと
名乗る男は消えていく。その瞬間…
なんか彼の左腕が光った気がする。

「ままままうるさいわ!…ッ、クソォ…
探せったって… 手がかりないし…」

あたしは空間内をくまなく探して
みたけど、パズルに該当するものなんて
全然見当たらない。時間だけが過ぎていく。

そして、スマホを見て17:00になった瞬間!
カイ・ブレンが上空から現れ…

「はいは~い、時間切れ~…
お前に解けるパズルはねぇ!」
「いや… パズルなんてどこにも…!」

反論しようとしたけど無駄だった。
空の四角パズルがより激しく動きだし、
禍々しい色の電撃が放射される。
あたしはそれを受け ボロボロになって
ぶっ倒れてしまう。

「フッフッフッフッフッ… 
アーッハッハッハッハッ!!
どうだァ!?これが俺の受けた屈辱!
ねぇねぇ今どんな気持ち?どんな気持ち?」
「屈辱… どういうことなの…!?」
「フッ… 忘れたなら教えてやろう!アレは
今から一年前!惑星 サンライで俺は
日課である、人々を愚者の迷宮に
引き込んでいた。そうして命を奪った
モノから頭脳を奪えば、俺は最高の
頭脳を手に入れることができるかもしれなかった…。
だが!あの時 偶然通りかかったっていうお前が
邪魔をしたおかげで、俺は命を奪ったモノから
頭脳を奪う、『レプリング』を破壊された…」
「…屈辱ってそーゆー… ってか、
あたしそんなこと… ウッ!!」

あたしの脳には朧気ながらも
その時の記憶がよみがえる。それも、
なにやらを助けた記憶も…。

「…!こっ、コレは…っ!?」
「その時以来、俺はお前に与えられた
雪辱を晴らすべく、ジャークネスへと
足を踏み入れた。以来、その時を
お前を見ながら、ずっと待っていたが… 
なかなか来なかった」
「くうぅぅぅぅ…!こんのぉ… ストーカーめぇ!」

あたしはなんとか立ち上がり、
殴りかかろうとするが、軽くいなされ
パズルのような手裏剣を喰らい、
更なるダメージを受けてしまう。
すると、なんとさっきまでの空間は
あたしが元居た広場に戻っていた。

「フッ… コズモルチーの豪将ともあろう者が
実に情けないな。まっ、今日のパズルタイムは
ここまでだ。復讐はジワジワと
やった方が楽しいからな…!
フッフッフッフッ… アーハッハッハッハッ!」

そう言いながら カイ・ブレンは
またも姿を消した。

「あっ!イエーネア!大丈夫か~!?」
「姉貴~!!」
「お姉ちゃ~ん!!」
「姉上~!!」

アカイヤルの声を皮切りに、みんなが
駆け寄ってくる。ボロボロのあたしに
肩を貸すミドイヤルとブルーネア。
クソォ…!情けなさすぎもいいとこだっての…!



司令室にて、俺達はイエーネアが消えた時と
戻ってきた時の映像を見て、イエーネアと対峙
していた存在について、分析をしていた。
アオイヤルがタブレットをいじりながら、
対峙した存在のデータをディスプレイに映す。

「ヤツは『ナイセル』という名で
ジャークネスの戸籍に登録されている。
だけど、ここに住み着いた真の目的は…」
『フッ… コズモルチーの豪将ともあろう
者が情けない。今日のパズルタイムは
ここまでだ。復讐はジワジワと
やった方が楽しいからな…!
フッフッフッフッ… アーハッハッハッハッ!』

映像から流れる音声に俺が呟く。

「イエーネアの復讐のため… か」
「これまで何回も 私達に復讐、
あるいは倒すためにジャークネスに
住み着いた連中はいて、その都度 
殺してきたけど… あんな風に黒星に
なるのは… 初めてかねぇ?」
「そもそも、ヤツは何故
イエーネア様に復讐を?」

ジイの問いにアオイヤルが応える。

「それについては、イエーネアちゃんが
知ってそうだったけど、
すぐに修練場に行っちゃって…」
「イエーネアさん… あんなボロボロだってんのに…」

ヴァルーナがそう言うと、俺はこれだけ返した。

「まっ… アイツが行ったから、
なんとかしてくれんだろ」
「え?」
「アイツ、一番イエーネアが
気になってたみたいだからな…」



修練場にて、あたしは舞台も投影せず
ただただがむしゃらに拳を振り上げ、
大きく脚を上げた。…が その瞬間、
へにゃへにゃに力が抜け、仰向けに倒れこんだ。
まぁ、無理もないか…。さっきまでの
ダメージを無理やりおして こんなこと
してんだから。ふと、僅かに殺気を感じ、
あたしは右から飛んできた 光の矢を
蹴り上げ、そこに電撃を放射した。

「うわあぁぁっ!?」
「…やっぱり。何の用?」

見ると、そこにいたのはエレーネア。
薄々 それっぽい殺気は感じてたけど、
いつもみたいに確たるモノじゃなかった。

「いや?なんか腕が落ちてないかな~って」
「うっ…」
「さっきあたしが放った矢を蹴ったのだって、
いつもと比べりゃ 妙に遅かったし…
あと一歩すれば 直撃してたわよ?」
「…わ、わかってるっての…」
「まぁ無理もないか… 今も
こうしてムチャして… なんかおかしい。
いつものイエーネアじゃないみたい…」
「…やっぱ、わかる?」
「わかるわよそりゃあ!もうだいぶ
付き合ってるしさぁ!とゆーか、
みんなも薄々 気づいてると思う。
…なんか、あったの?」

明るく言った後に、ちょっとあざとい
上目遣い。ずるいんだよ… こーゆーの。

「…教えてあげてもいいけど、ナイショよ?」
「勿論無論!」
「半年前かな…。キルフィンズに
久しぶりに里帰りした時さ…。
三兄妹に言ったんだ。
『もっともっと、強くなりなさい』って。
あの時は、ドニックの料理は微妙だったし、
ミシェルの動きに 今ほどのキレはなかったし、
ユンピョンだって 発明は失敗がちょい多かった」
「ほうほう…」
「んでさぁ、発つ時にも言ったのよ…
『今度会う時は、もっともっと強くなってるから』
って。…んで、みんなはめっちゃ強くなってるし…
あたしは、強くなってるのかなぁ… って思ってさ」

エレーネアはその言葉をジッと聞いてたけど、
しばらくして、あたしの頬にデコピンした。

「ファッ!?え ちょっ、何!?」
「そ~んなこと気にしてたの~?」
「いや、そんなことって… 一番上のとしてね…」
「確かに、イエーネアはみんなのお姉ちゃんだよ?
でも、あたしが今話してるのは、
キールス・イエーネアだよ?
キールス4兄妹の一番上の長姉じゃなくてね!」
「ハッ…!!」

あたしはその言葉に何かが
吹っ切れたような気がした。

「お姉ちゃんらしくじゃなくて、
、やってみたら?
そうすれば、4人だって… ね♫」

エレーネアのその優しい言葉に、気づけば
あたしは、エレーネアの肩を持ち…

「クゥッ…!」

泣いてた。エレーネアはそんな私を優しく
抱いた。…嗚呼、我等が皇妃様の
無限大の愛情…!!感無量…!!

でも、この時あたしは知らなかった。実はあたしの
死角に、バズトリックが止まっていたことを。



翌日、昨日 カイ・ブレンがあたしを引き摺り込んだ
場所に来たあたしは、まずドニックが
くれた、ドニックッキーを食べた。
本人曰く、『ドニックスイーツ』の一環らしく、
コレからはスイーツ系も作っていきたいとの事。
ここにいるのはあたしだけだけど、離れたところ
からみんなの殺気がめっちゃ出てる。
あぁは言ったけど、どっかで見てるみたい。

「頑張って…!お姉ちゃん…!」
「姉貴…!!」

特に、ドニックとミシェルかな?
祈りっぽい殺気をひしひしと感じる。

「さぁ、出てらっしゃい!!ナイセル…
いや、カイ・ブレン!あたしは豪将!
豪快に行くのが主義だからね!
逃げも隠れもしないわよ!!」

あたしがそう叫ぶと、どこからか声がする。

「ほぉ、待ってたぜ?」

その声と共に現れたのは… ストリート系の
ファッションに身を包んだ青年。
アオイヤルが言ってたカイ・ブレンの
人間態…  ナイセルと言うらしい。

「さぁ、やんなさいよ!」
「フッ… 今日がお前の最期だぜ?」

ナイセルが「あっかんべ~~~!」
…すると同時に、あたしのカラダは
光に包まれていた。

「パズルタイムの… 幕開けだ」


またまたやってきた、愚者の迷宮とか
言ってた謎の空間。さぁ!行くわよ!
空中に現れるは、ナイセル。そして… 
パズルのような禍々しいエフェクトと共に、
怪人 カイ・ブレンに姿を変えた。

「何度やっても結果は同じ。
お前に解けるパズルはねぇ。そして、
この俺も倒せねぇ…」
「へッ!いつまでそんな
余裕ぶってられるかな!」
「ムッ… 減らず口を…!!まぁいい、
んだ… フフフフフ…」

そう言って、またしてもカイ・ブレンは
消えていく。…な~るほど、今の
言葉、そしてまた光った左腕。
確信したわ。コイツは… 最初から
パズルなんて解かせる気なかったんだ。
この空間にパズルなんて、最初から
どこにも存在しない。人を閉じ込め、
平常心を失わせ、あらぬ嘘で惑わす。
ならば!やることはひとつのみ!!
あたしはその場から動かず、ただ時間が
過ぎるのを待った。そして一定時間が
過ぎた後… またもカイ・ブレンが
上空から現れて…

「諦めたのか?フッ… 無様な!!」

またも空の四角パズルが激しく動き、
禍々しい色の電撃が放射される。
あたしはそれを受け、またもボロボロに…

「ハ~ッハッハッハッハッ… んんっ!?」

なってなかった。むしろ、その電撃を
全身で受け止めていた。

「根性…!」
「ふんやせ我慢を!ハァッ!!」

またも禍々しい色の電撃が放射されるが、
あたしはまたも全身で受け止める。
傷つきながらも、前へ前へと進んでいく。
ここからはもう… 根性勝負よ…!!

「根性…!」
「三度目の正直!くたばれぇ!!」

またまた禍々しい色の電撃が
放射されるが、あたしはジャンプし、
それを受けながら、キックの体制に…

「ド根性ーーーーーッ!!!」
「何ィィィ!?」
「喰らえーッ!!根性電撃脚!!」

あたしは今まで全身にため込んだ
電撃を一気に右足に集中させ、
全力のキックをお見舞いした。

「これが!、やり方よーーーッ!!」
「いやお前… ずるくね…?」
「最初に禁止事項を言わなけりゃ、
やったモン勝ちだボケナスがぁぁぁぁぁっ!!」

あたしはその叫びと共に、全力で蹴り飛ばした。
次の瞬間、彼が左腕に嵌めていた
腕輪は砕け散った。この腕輪を使って
姿を消したり、この空間をコントロールしている
のだと見た。その推理はどうやら当たりらしく、
空間は崩壊し、あたしは元の場所に
戻った。そして、アイツは宙を舞い、
そのまま空中でしめやかに爆発四散。

「グワーーーーーッ!!!」

…すっかり気が抜けたのか、あたしは倒れそうに
なったけど、すんでのところでアカイヤルが
おさえてくれた。…んもぉ!そーゆーとこっ!!

「おっと… おいイエーネア、大丈夫か!?」
「そーゆーとこ…///」
「へ?」

次の瞬間、ワラワラとみんなが寄ってくる。
オリンピアス君にヴァルーナちゃん、ミギヒダに
ブルーネアとユンピョンはいないみたいだけど…

「ナイスゥ!アカイヤルの兄貴!
いやぁやったな姉貴~!!」
「お姉ちゃんならやってくれるって信じてた!」

褒めまくるドニックとミシェルに
あたしは薄らと笑みを返す。
すると、エレーネアが声をかけてくる。

「…やったね、イエーネア♫」
「フフ… エレーネアのおかげだよ。ありがと」
「いやいや、喜ぶのはまだ早いみたいだよ!」
「え?」

アオイヤルが指をさした方を見ると、突然
光がバラバラに現れ、それはパズルのピースの
ように結合していく。そして結合したそれは
巨大な人の形を成して…

「ぬぉぉーっ!!パズルタイムはこれからだ!」

お約束!やっぱりコイツも巨大化!それを
見て、ロワイヤルが張り切ってスマホを構える。

「よっしゃあ!早速メガゾー…」
「ちょっと待った!ここはあたしに
やらしてね、ロ~ワピ~♡」
「ん~?別にいいよエ~レピ~♡」
「あっ、いいんだ」

エレーネアはスマホを取り出し、
メガゾード召喚アプリを起動する。

暗黒召喚サモライズ!エレドリーン!」

まもなくして、エレドリーンは飛んできて
エレーネアはジャンプして乗り込む。
それと同時に…

「おぉ~い!姉上~!やっと完成したよ~!」
「完成したって… まさか!マジか!?」
「そう。イエーネア用のゾードだ」

ミドイヤルの驚きをよそに、ユンピョンの手に
あるのは黄色とレモン色の… 先端に聳える
ツノみたいなのが特徴的な 小さなヤツだった。

「名前わかんねーのかよ!?」
「いやだって… なにがモチーフなんだか…」
「ボクが最終調整を施した、『イエロアタッカー』!
コレを使って、皇妃様を助けてあげて!」
「いやでもよ、カラダの方は大丈夫なのか姉貴…?」
「そうよ、いくらなんでもこれ以上の無茶は…」
「そうそう、なんだったら俺が加勢して…」
「ジョブジョブ大丈夫!ドニックの
ドニックッキーのおかげで、まだまだイケるわ!」
「姉貴~ッ…!!」
「ちぇっ…」

感動するドニックと少しむくれるロワイヤル。

「ゾードアプリはもうダウンロードしといたから、
今すぐにでもイケるわよ!」
「フッ… シビれるくらいの初陣、期待してるよ?」
「OK!暗黒召喚サモライズ!イエロアタッカー!」

あたしがそうスマホに叫ぶと、イエロアタッカーは
黄色い光と共に、どんどん巨大化していった。
それにあたしは飛び乗ると、イエロアタッカーは
カイ・ブレンに射撃しているエレドリーンの元へ
飛び立った。飛ぶ系のゾードなのね、コレ…

「エレーネア!加勢するわよ~!」
「おぉ!イエーネアのゾードだ~!」

イエロアタッカーは先端のツノから電撃を放出!
カイ・ブレンにダメージを与えていく。

「おのれ… だったらコレでどうだ!ハァッ!!」

カイ・ブレンが全身からエネルギーを発した
その時、なんと!景色は一瞬にして激変!
ジャークネスのサイバーチックな夜の摩天楼は、
サイバーチックなのはそのままに、どこか
中華っぽく… そして美しい星空は、これまた
美しいのはそのままの 夕焼けに染まっていた。
ちなみに、あたし達2人とカイ・ブレン以外は
またしても消えたらしく、みんなまたしても
困惑してたのはあとから聞いた話…

「アレ!?また消えた…」
(彼女達なら… きっと上手くできるハズ…)

ブルーネアを除いて。

「コレは… さっきのイエーネアに起こった、
魔空空間的かメタフィールド的なアレかしら…?」
「そうみたい。あぁ!通信もムリだわ…」
「ここで決着をつけてやる!記号爆弾!」

カイ・ブレンはさまざまな色のさまざまな記号を
宙に出現させ、それをあたし達に向かって投げる。
着弾すると同時に爆発し、怯むあたし達。

「クッ… イエーネア!多分、構造的にソレ…
アカイヤル達のと同じっぽそうじゃん?」
「うん、あたしも見た時からそう思ったけど…
ま、まさか!?」
「そう、そのまさかよ!やり方は知ってる?」
「えっ わかってるけど… 出来んの!?」
「ぶっつけ本番はいつものことじゃん?
今はこれしか打破の方法なし!ホラ行くよ!」
「えぇーい!後は野となれ山となれってんだ!」
「まずは巨人変形メガゾードライズ!エレーネアーク!」

エレドリーンはエレーネアの一声で巨大ロボメガゾード
エレーネアークに変形した。さぁ、こっからよ…!

「イエーネア!」
「おうよ!」
「「武甲鎧装アーマードガイズ!イエロアタッカー!」」

イエロアタッカーは分離して、両腕の剣を畳んだ
エレーネアークの両手甲、鎧、そして大きなツノが
映える兜になった。鎧がエレーネアークに
合着すると共に あたしは自動的に移送され、
エレーネアと一緒のコクピットに。

「ホントにできちゃった…」
「流石はブルーネア… そしてユンピョン…!」
「よ~し!これよりこのゾードの名前は!
『エレーネアーク・オーラサンダー』よ!」
「ワァオ!鍛え上げましょオーラサンダー!」

「「エレーネアーク・オーラサンダー、活動開始アクティビティオン!」」

中華拳法の如き構えをとって決めポーズ!

「姿が変わった…!?こりゃパズルみてぇだな…
どっちにしろ敵じゃねぇ!!」

カイ・ブレンは懲りずに記号爆弾を投げてくるが、
エレーネアーク・オーラサンダーが両拳を
振り上げると共に 電撃が放出され、記号爆弾は
吹っ飛ばされ、大爆発!ヤケクソ気味に
カイ・ブレンは記号爆弾を何度も投げてくるが、
エレーネアーク・オーラサンダーは雷を纏った
拳やキックで吹き飛ばす。その爆発により発生した
爆炎の中 エレーネアーク・オーラサンダーは
飛んだ!そして、大きなツノから雷でできた
元気玉… もとい 大玉を生成し、それを両拳に
纏わせ、あたし達はカイ・ブレンに急降下!

「な、何ィッ!?」

自動的に発生した小さな雷玉… プラズマボール的な
ヤツかな…? とにかくそれを放って牽制し、
やがて大玉が直撃!カイ・ブレンは大ダメージ!
間髪入れず、パンチにキック、拳法技の雨あられ

「そろそろトドメと行きましょ!」
「OK!パズルタイムもそろそろ幕引きよ!」
「「アビリティギア全開!!」」

エレーネアーク・オーラサンダーは全身に、
内部メカに組み込まれているアビリティギアの
エネルギーを全て込め、全身を雷撃で包み込む。
すると、相対するカイ・ブレンの周りに
小さな雷玉がいくつも発生していく。

「え!?え!?何コレ!?」
「雷電千拳!」
「「サンダー・プラズマブレスター!!」」

その叫びと共に、小さな雷玉は全てに
カイ・ブレンに直撃。そして、
エレーネアーク・オーラサンダーは
凄まじいほどの雷を纏った両拳で、
カイ・ブレンにトドメのカウンター!

「グワァァァァ…!!嗚呼… 私は、そう
Brain Die… ヴァァァァァァ…ッ!!」

まともに喰らったカイ・ブレンはそう言いながら
倒れ、爆発四散!今度こそ死んだろう!

爆発を背にポーズを決める
エレーネアーク・オーラサンダー。

「ってか、スルーしてたけどいちいち
フルで言うんかお前!?」
「そーゆーのは思ってても言わないの!」
「まぁいいや… とにかく、勝利のポーズ!」

エレーネアが何やらポーズを取り出した… けど~?

「最光・完璧…」
「大勝利!!」
「ちょ、オイ!!被せてこないでっつの~!!」

やがて、景色はもとの見慣れた
ジャークネスの街並みに元通り。
あたし達は大勝利し、帰ってきたのだ!



「いやぁ~、今回はカッコよかったよ~♡」
「いやいや、今回 勝ったのはエレーネアや
みんなのおかげでもあるし。お礼を
言いたいのはあたしの方だよ」

ジャークネスの廊下を歩き、大広間に
入るあたしとエレーネア。すると…

「お礼ねぇ~…」
「ボクたち的に今はいらないかなぁ~」

声がする方向を見ると、そこには
右にミシェル、左にユンピョンが!

「え~?なんでよ~?まっ、なんか
あたしは一皮剥けたって感じかな!」
「へッ!よく言うぜ」

すると正面にはコック帽を被った
ドニックが!

「俺達ゃとっくに忘れたこと気にして、勝手に
空回って、勝手にしょぼくれてた癖によっ!」
「うぇっ!?ななな、何故それを!?」
「姉御が教えてくれたよ!」

そう言うドニック達三人の手には
バズトリックが。…ってことは…!!

「あの時の会話… 全部 聞かれてたこと~~~!?
エレーネア~~~~~…? 
ありゃナイショって言ったわよねぇ…?」
「う、うははのは~…」
「くぉんのスカポンタヌキヤローーーッ!!!」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ…」

あたしは赤面しながら
エレーネアに詰め寄る。

「このおかげで思い出しちゃったよ。
まっ、そんな宣言守らなくても
姉上は最初から強いってことは、
分かり切ってたことだけど… ねっ♫」
「…!ユンピョン…!」
「そうだよお姉ちゃん。だからあの時、
私達はお姉ちゃんの勝利だけを信じて、
それぞれ出来ることをやった。
『守り守られ、愛し合い、
信じ合うのが家族です』 ってね!」
「…! ミシェル…!」
「忘れちまったのか?弱いか強いかなんて関係ねぇ。
姉貴は姉貴だ!俺達キールス4兄妹のトップだ!
それだけで姉貴は… 十分すぎるほどだぜ!!」
「…!ドニック…!」

あたしは涙目になりながら、両腕を広げた。
3人はそれに寄って来て、あたしは3人を
ひしと抱きしめ、3人もあたしを抱きしめた。
そうだ、最近はいろいろあってすっかり忘れてた。
あたしは この子たちの長姉。でもそれと同時に…
最初っから最強の… キールス・イエーネアってね!
見ているエレーネアも感動してるのか涙目。

「まっ、ホントに強くなったって認められたきゃ…
コイツを食ってくれい!俺の新メニューだ!」

そういってドニックが持ってきたのは、全体的に
黄色めのラーメン。チャーシューの形とかは
どことなく雷を意識し、中央は炎を思わせる
ラー油がかかった… なんか、あたしみたいな
ラーメンだ。それにこの匂い… すっぱいような…?
まっ、考えるのはあとってことで!

「いいよ!んじゃ、いただきますっ!!」
「なんかうまそ~… あたしにもひとつ!」
「お兄ちゃん私も!」
「兄上ボクもお願い!」
「おうよ!『電撃ラーメン』三丁!」

ムムッ!?やっぱすっぱい!でも… うまい!!
あたしはラーメンをすする音を『豪』快に
響かせた。『豪』将だけに… ねっ!



            劇 終



「いや香港映画かよ!?」

あたし達は、アオイヤルのツッコミをよそに
今までの激闘を振り返る。
エレーネアーク・オーラサンダーの
合体の時、一度失敗したり…

「何ソレ!?そんなことあったの!?」

グリーネアがロワイヤルとミドイヤルの
野次にキレて 人格豹変して…

「あぁ、それは今回あったね… でも結局 
接戦の末 ミシェルちゃんが勝って…」

でも一回はマジでミシェルを負かして
ボコボコにしちゃって、んでNGになって、
グリーネアと 野次ったロワイヤルと
ミドイヤルはあたしとミシェルに怒られて…

「これNGシーンだったの!?
いらねぇよ誰が見てぇんだ!」

一番 過酷だったのはアレだっけ。
アオイヤルが猛スピードで自転車
乗りながら 柵を飛び越えるシーン。

将だけに、カッコよくを越えたねぇ」

ブルーネアのナイスなギャグに凍るあたし達。

「いややってねぇよそんなこと!!!
いつやったんだよそんなこと!?」

まぁ盛大に失敗しちゃったけど。

「そりゃそうだよ!!NGシーンなんだから!
とゆーか、NGでもこんなことやってない…」

あとアレもカッコよかったなぁ。
相手から投げられる椅子を
アオイヤルが華麗にかわすシーン!

「いやそんなこともやってねぇよ!?」

何回何回も かわすの失敗して
気を失ったのは何回だっけかなぁ~…

「いや椅子ぶつけられたの!?
いやなんで最後 こんないらねぇって…」

そして終わって、花束を渡されるあたし達。
みんなで抱き合いながら、
喜びと達成感を分かち合う。

「いやクランクアップしたの!?」

その中には アオイヤルと握手し合う
シントニオ会長、抱き合うあたし達4兄妹、
そしてあたしとアカイヤルに似ている
男子と女子、アオイヤルとブルーネアに
似た女子、ミドイヤルとグリーネアに
似た… ん?男?女?…みたいな子もいて、
みんなで喜びながら 抱き合い、
この達成感を分かち合っていた。
その様は、まるであたし達も
コズモル家みたいな、家族みたいで。

「何ソレ!?ちょっと、いつ撮ったのコレ!?」

そして、最後は肩を組み合う
あたしとアカイヤルで この話は終わりです!
次回をお楽しみに!

「いやメタすぎんだろうがァァァァッ!!」
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