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プロローグ お花畑
お花畑
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「あー、今日もいい天気だ」
空は快晴。
目の前にはお花畑とかわいい女の子、それとチラチラ見える純白のパンツ。
「今日も最高だ」
いつもの日課。
俺は、背中美人を追い続ける。
この日課が始まってから、一体、何百年が経っただろう。
最初の頃は、細部までクッキリ見えた背中美人の顔も、いまやグチャグチャだ。
輪郭すらぼやけている。
まるで落書きだ。
それに加え、世界の方もグチャグチャだ。
昔はこの世界にも、様々な場所があった。
湖、森、雲……。
だけど今じゃ、このお花畑しかない。
俺の感情と一緒に、世界のほうも削り取られているようだ。
「いや、実際に削られているのかもな」
女の子を追い回しながら、1人呟く。
俺が思うに、ここは死者の終着点だ。
そう、俺は死者だ。
思い出せるのは15歳の記憶まで。
この世界に来てからというもの、生前の記憶や感情が、日を追う毎に薄れていく。
摩耗していく。
そのうち俺は、生きていたことさえ忘れてしまうんだろう。
きっと、そういうサイクルなんだ。
死んだらこの世界に来て、魂を初期化されて、次の命になる。
そんなサイクルなんだろう。
「あははははー。捕まえたぞー」
逃げる背中美人を捕まえる。
そうして振り向かせると、その娘の顔面はグチャグチャだった。
まるで潰れたトマトの上から、乱雑にモザイクをかけたような顔だ。
「…………」
女の子は、何も言わない。身動ぎもしない。
ほとんど、死体だ。
「ほら、行きなよ」
だけど、俺が手を離すとまた動き出す。
彼女たちを捕まえて、逃がす。
それが、俺に残された唯一の自由だった。
「あー、今日もいい天気だ」
空は快晴。
目の前にはお花畑とかわいい女の子、それとチラチラ見える純白のパンツ。
「今日も最高だ」
だからどうか、どうか。
今日も自分を保っていられますように。
そう願いながら、日課をこなす。
だけど、不意に目の前が真っ暗になった。
とうとう終わりが来たのだろうか……?
お花畑が消え、女の子が消え、パンツが消えていく。
「まあでもきっと、色んな人が通った道なんだよな……」
そうだ。
どうせ最期なら、威厳ある死を遂げてみせよう。
そのくらいの見栄は、許してくれよな、神様。
そんなことを考えながら、俺は闇に囚われた。
-----------
黒い空間。
そこにはただ、闇があった。
月の無い闇夜の中、まるで、まぶたを閉じているかのようだった。
なんの存在も見出せない。
俺はいま、立っているのか。
自分の他に誰かいないのか。
五感という五感が働いていなかった。
自分の体をまさぐろうとしても、そもそも手があるのかさえ分からない。
そんな中、五感のうち一感、音を司る聴覚に、刺激が届いた。
闇の霧に、すべてが押しつぶされそうな重圧の中……。
その刺激は、綺麗に耳の周辺だけを晴れ渡らせる。
『やあ』
と、やけに明るく発せられた声。
刺激という音は声となり言葉となって、俺の脳へとメッセージを送る。
男とも女ともとれない、中性的な声色だった。どちらかと言えば、男よりかもしれない。
そうして『声』を認識したとき、またも暗闇が霧散した。
今度は喉の当たりだった。
口を開閉することができるようになり、言葉を発せられるようになる。
だけど目の前は相変わらず、闇に包まれたままだ。
その重圧に、俺の息は押し潰される。
あまりの威圧感にすくんでいると、『声』は明るさを少しだけ落として、こう語りかけた。
『分かっているだろうけど、君、死んじゃったみたいだね』
「…………」
俺は、しっかりと覚えていた。死んだこと、死者の終着点にいたことを、理解できていた。
答えようとも思ったが、どうやら『声』に、俺の返事を待つ気はなかったらしい。
肯定の雰囲気だけを感じ取り、『声』は再び、言葉を紡ぐ。
『実はね、僕も死にかけているんだ』
空は快晴。
目の前にはお花畑とかわいい女の子、それとチラチラ見える純白のパンツ。
「今日も最高だ」
いつもの日課。
俺は、背中美人を追い続ける。
この日課が始まってから、一体、何百年が経っただろう。
最初の頃は、細部までクッキリ見えた背中美人の顔も、いまやグチャグチャだ。
輪郭すらぼやけている。
まるで落書きだ。
それに加え、世界の方もグチャグチャだ。
昔はこの世界にも、様々な場所があった。
湖、森、雲……。
だけど今じゃ、このお花畑しかない。
俺の感情と一緒に、世界のほうも削り取られているようだ。
「いや、実際に削られているのかもな」
女の子を追い回しながら、1人呟く。
俺が思うに、ここは死者の終着点だ。
そう、俺は死者だ。
思い出せるのは15歳の記憶まで。
この世界に来てからというもの、生前の記憶や感情が、日を追う毎に薄れていく。
摩耗していく。
そのうち俺は、生きていたことさえ忘れてしまうんだろう。
きっと、そういうサイクルなんだ。
死んだらこの世界に来て、魂を初期化されて、次の命になる。
そんなサイクルなんだろう。
「あははははー。捕まえたぞー」
逃げる背中美人を捕まえる。
そうして振り向かせると、その娘の顔面はグチャグチャだった。
まるで潰れたトマトの上から、乱雑にモザイクをかけたような顔だ。
「…………」
女の子は、何も言わない。身動ぎもしない。
ほとんど、死体だ。
「ほら、行きなよ」
だけど、俺が手を離すとまた動き出す。
彼女たちを捕まえて、逃がす。
それが、俺に残された唯一の自由だった。
「あー、今日もいい天気だ」
空は快晴。
目の前にはお花畑とかわいい女の子、それとチラチラ見える純白のパンツ。
「今日も最高だ」
だからどうか、どうか。
今日も自分を保っていられますように。
そう願いながら、日課をこなす。
だけど、不意に目の前が真っ暗になった。
とうとう終わりが来たのだろうか……?
お花畑が消え、女の子が消え、パンツが消えていく。
「まあでもきっと、色んな人が通った道なんだよな……」
そうだ。
どうせ最期なら、威厳ある死を遂げてみせよう。
そのくらいの見栄は、許してくれよな、神様。
そんなことを考えながら、俺は闇に囚われた。
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黒い空間。
そこにはただ、闇があった。
月の無い闇夜の中、まるで、まぶたを閉じているかのようだった。
なんの存在も見出せない。
俺はいま、立っているのか。
自分の他に誰かいないのか。
五感という五感が働いていなかった。
自分の体をまさぐろうとしても、そもそも手があるのかさえ分からない。
そんな中、五感のうち一感、音を司る聴覚に、刺激が届いた。
闇の霧に、すべてが押しつぶされそうな重圧の中……。
その刺激は、綺麗に耳の周辺だけを晴れ渡らせる。
『やあ』
と、やけに明るく発せられた声。
刺激という音は声となり言葉となって、俺の脳へとメッセージを送る。
男とも女ともとれない、中性的な声色だった。どちらかと言えば、男よりかもしれない。
そうして『声』を認識したとき、またも暗闇が霧散した。
今度は喉の当たりだった。
口を開閉することができるようになり、言葉を発せられるようになる。
だけど目の前は相変わらず、闇に包まれたままだ。
その重圧に、俺の息は押し潰される。
あまりの威圧感にすくんでいると、『声』は明るさを少しだけ落として、こう語りかけた。
『分かっているだろうけど、君、死んじゃったみたいだね』
「…………」
俺は、しっかりと覚えていた。死んだこと、死者の終着点にいたことを、理解できていた。
答えようとも思ったが、どうやら『声』に、俺の返事を待つ気はなかったらしい。
肯定の雰囲気だけを感じ取り、『声』は再び、言葉を紡ぐ。
『実はね、僕も死にかけているんだ』
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