43 / 96
第1章 変化の始まり
評判と依頼 #4
しおりを挟む
『なるほどな。それで統括か。気に入ってるならよかったな』
<ああ。俺様に相応しい名だろう?>
『そうだな』
<ちょっと偉そうだが悪いやつじゃないんだ>
『分かってるさクライ』
「元からこんな感じの喋り方だったし今更だな。それにこれでこそ統括だし、偉そうなのに憎めない所が俺のツボだ」
<アニキもリミルも優しくて好きだ。ギルレイと言ったか?お前も良い奴そうだ。いつでも遊びに来い>
『ああ。また来るよ』
そう言って三人は統括と別れ帰路に着いた。
翌日
朝食を取って三人はギルドに向かった。
ギルレイは取り調べに立ち会うとかで忙しい。
リミルは打ち合わせまで簡単な依頼をして時間を潰すことにした。
依頼を選ぶために依頼ボードに向き合う。
<どれにするんだ?>
「2時に間に合えば何でも…」
『あんたがリミルさんかの?』
白い髭と額に小さな先の丸い角が2つ生えた体格の良い老人に声をかけられた。
「そうだがあんたは?」
『儂はハレイ。農家をやっておる。お前さんに依頼したくて来たんじゃが会えて良かったわい』
「そうか。じゃあ受付行こう」
揃って受付へ行き依頼しに来たらしいと伝えると個室で一緒に話を聞くことになった。
リリアンと共に個室へ入りそれぞれ椅子に座るとハレイが話し始める。
『リミルの評判を噂で聞いてな。是非お前さんに頼みたいと思って』
『噂というのは?どう言った噂でしょうか?』
リリアンはいつも通り質問をしながら詳しい話を聞いていく。
情報収集も兼ねていたりするので街の噂は重要だったりする。
『ん?高位なのにオーバーフローに参加してササッと魔物達を倒してしまったとか。綺麗な白いフェンリルを連れてるとか。ギル坊と仲が良いとか。年下に絡まれても優しく対応してたとか。気さくで話しやすいとか。可愛い也して驚くほど強いとか。後は依頼をした事がある奴が言っていたが仕事が丁寧だとかじゃな。儂が聞いたのは』
『概ね事実ですね。ただ、彼の場合、優しく対応したというのも気さくに話したのも仕事が丁寧なのも相手による所があります。前に横柄な態度を取った者がいたのですがその時は怒って依頼を受けなかったんですよ。そちらの出方次第と受け取り方次第ですね。それでも良ければ話を進めましょう』
『横柄なのは儂も好かんよ。若いんじゃし感情を出すのは良いことじゃ。ただ、相手も自分のしていることに気が付かない事の方が多いと思って1度言ってみてあげる事も大事じゃぞ?我慢などして自分を傷つけないためにな。言い方もあるだろうがこればっかりは相手にもよるからの。すまんな。説教臭くなってしもうた。彼に頼みたいから話を進めてくれるかの?』
リミルは言われた事について考えてみた。
言い方を工夫して自分の主張を相手に伝えるのは大事かもしれない。
するにしてもされるにしても。
確かに自分のことを客観的に見るのは難しい。
周りから見た自分というのは、なかなか主観が抜けず、自分本位に理解してしまいがちだ。
注意されれば直す機会を貰えるって事だ。
それが優しい言葉ならばイラついたりし難いだろう。
俺は勝手に嫌われたりする前に注意される方が良い。
ならば俺もそうしよう。
"されて嫌なことはしない"がポリシーだがされて嬉しいことはどうなんだろうか?
されたら嫌な人もいるだろうが言ってくれなきゃ分からないよな?
ならばやってみるしかない。
『では話を進めましょう。依頼内容について話して頂けますか?』
『もちろんじゃ。少し遠出になるんじゃがな』
そう言ってハレイは依頼内容を話し始めた。
野菜についての話が長かったので要約するとこうだ。
イレアの南にあるルスタフという街とその西にあるノフテスという街の間にある村で新しい品種の野菜が作られたという。
その野菜と種若しくは苗を買いに行ってきて欲しいということらしい。
「そういうのって商人がやるんじゃ?」
『農家の方が直接買い付けること自体はよくありますよ。ただ危険が多いので旅商人の方が来るのを待つ方が安全です。ですが旅商人の方々は各地を回りながらなのでどうしても遅くなるんです。その点冒険者に頼むと依頼内容だけなので早く届くというわけです』
「へぇー。買い付けはやったことないな。やってみたい。けど俺街から出ないように言われてるんだけど良いのか?」
ギルレイに止められたから旅を延期したのに他の街に行っても良いのか疑問だ。
駄目なら少し残念だが良いなら良いでなら何故旅は駄目なのか、と複雑な気持ちになる。
『その点は一応別件の依頼があって確認しましたが直ぐに戻ってこられる距離であれば問題ないそうです。ちなみに数日間という期限付きになります』
クライのことは近くの街にはもう伝わっているので行っても良いそうだ。
ただそれだけではなくギルレイが今は言えないと言っていた理由に関係するのか近くにいないと困るようだ。
どうやら旅だと帰って来なくなるのが問題らしい。
帰れなくはないが自主的にであって呼び戻すことはできない。
連絡手段があれば良いのだが手紙は"移動する人"には届けられない。
基本的に"場所"に届けるからだ。
ならば連絡用の魔導具はというと例外を認めるのが難しいとのことで、高位全員に配ることが出来ないので無理だと。
<ああ。俺様に相応しい名だろう?>
『そうだな』
<ちょっと偉そうだが悪いやつじゃないんだ>
『分かってるさクライ』
「元からこんな感じの喋り方だったし今更だな。それにこれでこそ統括だし、偉そうなのに憎めない所が俺のツボだ」
<アニキもリミルも優しくて好きだ。ギルレイと言ったか?お前も良い奴そうだ。いつでも遊びに来い>
『ああ。また来るよ』
そう言って三人は統括と別れ帰路に着いた。
翌日
朝食を取って三人はギルドに向かった。
ギルレイは取り調べに立ち会うとかで忙しい。
リミルは打ち合わせまで簡単な依頼をして時間を潰すことにした。
依頼を選ぶために依頼ボードに向き合う。
<どれにするんだ?>
「2時に間に合えば何でも…」
『あんたがリミルさんかの?』
白い髭と額に小さな先の丸い角が2つ生えた体格の良い老人に声をかけられた。
「そうだがあんたは?」
『儂はハレイ。農家をやっておる。お前さんに依頼したくて来たんじゃが会えて良かったわい』
「そうか。じゃあ受付行こう」
揃って受付へ行き依頼しに来たらしいと伝えると個室で一緒に話を聞くことになった。
リリアンと共に個室へ入りそれぞれ椅子に座るとハレイが話し始める。
『リミルの評判を噂で聞いてな。是非お前さんに頼みたいと思って』
『噂というのは?どう言った噂でしょうか?』
リリアンはいつも通り質問をしながら詳しい話を聞いていく。
情報収集も兼ねていたりするので街の噂は重要だったりする。
『ん?高位なのにオーバーフローに参加してササッと魔物達を倒してしまったとか。綺麗な白いフェンリルを連れてるとか。ギル坊と仲が良いとか。年下に絡まれても優しく対応してたとか。気さくで話しやすいとか。可愛い也して驚くほど強いとか。後は依頼をした事がある奴が言っていたが仕事が丁寧だとかじゃな。儂が聞いたのは』
『概ね事実ですね。ただ、彼の場合、優しく対応したというのも気さくに話したのも仕事が丁寧なのも相手による所があります。前に横柄な態度を取った者がいたのですがその時は怒って依頼を受けなかったんですよ。そちらの出方次第と受け取り方次第ですね。それでも良ければ話を進めましょう』
『横柄なのは儂も好かんよ。若いんじゃし感情を出すのは良いことじゃ。ただ、相手も自分のしていることに気が付かない事の方が多いと思って1度言ってみてあげる事も大事じゃぞ?我慢などして自分を傷つけないためにな。言い方もあるだろうがこればっかりは相手にもよるからの。すまんな。説教臭くなってしもうた。彼に頼みたいから話を進めてくれるかの?』
リミルは言われた事について考えてみた。
言い方を工夫して自分の主張を相手に伝えるのは大事かもしれない。
するにしてもされるにしても。
確かに自分のことを客観的に見るのは難しい。
周りから見た自分というのは、なかなか主観が抜けず、自分本位に理解してしまいがちだ。
注意されれば直す機会を貰えるって事だ。
それが優しい言葉ならばイラついたりし難いだろう。
俺は勝手に嫌われたりする前に注意される方が良い。
ならば俺もそうしよう。
"されて嫌なことはしない"がポリシーだがされて嬉しいことはどうなんだろうか?
されたら嫌な人もいるだろうが言ってくれなきゃ分からないよな?
ならばやってみるしかない。
『では話を進めましょう。依頼内容について話して頂けますか?』
『もちろんじゃ。少し遠出になるんじゃがな』
そう言ってハレイは依頼内容を話し始めた。
野菜についての話が長かったので要約するとこうだ。
イレアの南にあるルスタフという街とその西にあるノフテスという街の間にある村で新しい品種の野菜が作られたという。
その野菜と種若しくは苗を買いに行ってきて欲しいということらしい。
「そういうのって商人がやるんじゃ?」
『農家の方が直接買い付けること自体はよくありますよ。ただ危険が多いので旅商人の方が来るのを待つ方が安全です。ですが旅商人の方々は各地を回りながらなのでどうしても遅くなるんです。その点冒険者に頼むと依頼内容だけなので早く届くというわけです』
「へぇー。買い付けはやったことないな。やってみたい。けど俺街から出ないように言われてるんだけど良いのか?」
ギルレイに止められたから旅を延期したのに他の街に行っても良いのか疑問だ。
駄目なら少し残念だが良いなら良いでなら何故旅は駄目なのか、と複雑な気持ちになる。
『その点は一応別件の依頼があって確認しましたが直ぐに戻ってこられる距離であれば問題ないそうです。ちなみに数日間という期限付きになります』
クライのことは近くの街にはもう伝わっているので行っても良いそうだ。
ただそれだけではなくギルレイが今は言えないと言っていた理由に関係するのか近くにいないと困るようだ。
どうやら旅だと帰って来なくなるのが問題らしい。
帰れなくはないが自主的にであって呼び戻すことはできない。
連絡手段があれば良いのだが手紙は"移動する人"には届けられない。
基本的に"場所"に届けるからだ。
ならば連絡用の魔導具はというと例外を認めるのが難しいとのことで、高位全員に配ることが出来ないので無理だと。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる